エレクトロマイグレーションとは
エレクトロマイグレーションとは、配線を流れる電子が金属原子を押し流し、原子が移動していく現象です。 原子が抜けた場所には空隙ができ、広がれば断線します。集まった場所は盛り上がり、隣の配線に触れれば短絡になります。寿命を決めるのは電流密度と温度で、配線を細くするほど同じ電流でも電流密度が上がるので、微細化の世代ごとに余裕が削られます。配線の角度や長さ、幅、そしてバリアとビアの材料まで、寿命を取り戻すための設計対象になります。
電子が原子を一方向へ押し、抜けた所は切れ、溜まった所は触れる
Section titled “電子が原子を一方向へ押し、抜けた所は切れ、溜まった所は触れる”金属配線の中では、電子が電界に引かれて流れています。その途中で金属原子に衝突すると、電子は原子へ運動量を渡します。1回の衝突で原子が動く量はごくわずかですが、電流密度が高くなると衝突の回数が桁で増えます。押される向きは電子の流れる向きにそろっているため、原子は一方向へ少しずつ移動します。
原子が出ていった場所には空隙が残り、それが成長して配線を横切った時点で断線します。逆に原子が集まった場所は盛り上がり、隣の配線へ触れれば短絡になります。1つの原因から、壊れ方が2つ出ます。IRDS1の寿命モデルは、ビアを1つだけ持つ配線の陰極側の端に空隙ができ、原子の移動は界面を伝う拡散で決まると置いています。
寿命は電流密度のべき乗に反比例し、温度で指数的に縮む
Section titled “寿命は電流密度のべき乗に反比例し、温度で指数的に縮む”寿命の見積もりにはBlackの式を使います。寿命は電流密度のべき乗に反比例し、温度に対しては指数的に短くなります。電流密度の指数には1から2の間の値が使われます2。
この指数の値で、平均電流で見積もれば足りるのか、電流の波形まで測る必要があるのかが決まります。式の形が、何を測ればよいかまで決めています。
100℃の差で、流してよい電流は10分の1近くになる
Section titled “100℃の差で、流してよい電流は10分の1近くになる”見積もりでまず寿命を動かすのは温度です。アルミ配線では、動作温度を25℃から125℃へ上げると、最大許容電流密度が約90%下がります3。100℃の違いで、流してよい電流が10分の1近くになる計算です。
そのためチップの中で熱がこもる場所は、それだけで配線の設計条件が変わります。同じ配線でも、チップのどこを通るかで許容電流密度の上限が上下します。
角度・ビア・長さ・幅という描き方が、材料を変えずに寿命を動かす
Section titled “角度・ビア・長さ・幅という描き方が、材料を変えずに寿命を動かす”材料でも温度でもなく、配線をどう描くかで寿命が変わります。
角度では、90度の角は避けるべきとされます3。90度の曲がりでの電流密度は、135度のような鈍角に比べて著しく高くなります。同じ経路をつなぐにしても、直角に曲げるか斜めに曲げるかで寿命が変わります。
ビアは複数並べても、電流の散り方が偏ります。並べたビアのうち、電流のほとんどを運ぶのは一部です。数を増やしても、偏ったままなら1本に集中したときと同じ寿命になります。
長さでは、Blech長より短い配線がこの現象に耐えます。Blech長は典型的には10〜100µm程度です。原子が移動して片側に溜まると機械的な応力が生じ、その応力が逆向きの移動を起こして材料の流れを打ち消すためです。IRDSも、このshort length effectが電流密度の設計ルールを支配しているとしています1。
幅は直感と逆の向きに働きます。配線幅を材料の平均粒径より細くすると、電流密度が上がるにもかかわらずエレクトロマイグレーション耐性は上がります。細い配線では粒界が配線を横切る向きに並ぶ「バンブー構造」になり、電流の向きに沿った粒界拡散の通り道が断ち切られるためです。そのため電源の配線では、細い線を多数敷いたメッシュが使われます。電源配線網については、CMPとエッジ配置誤差による加工ばらつきまで考えに入れたEM解析ツールが、arXivの論文で提案されています2。
微細化で寿命は世代ごとに半減し、Cu以外の金属とバリアで補う
Section titled “微細化で寿命は世代ごとに半減し、Cu以外の金属とバリアで補う”微細化では、配線の断面が小さくなることと最大動作周波数が上がることから、配線に求められる最大電流密度が世代ごとに上がります1。IRDSは2024年版で、寿命が配線の幅と高さの積を電流密度で割った量に比例するという幾何的なモデルを示し、この量が世代ごとにおよそ半減するとしています。
そのため材料の側でも手が打たれています。IRDSは、エレクトロマイグレーションの限界のためにMOLやM1などの層へCu以外の金属が入ってきていることを挙げています。Cu配線のバリアメタルには役割が2つあり、Cuが隣の絶縁膜へ拡散するのを防ぐことと、Cuとの間に質の高い界面を作って空孔の拡散を抑え、EM寿命を確保することです1。
金属ピッチ21nm世代では、層の間のビア径が12〜14nmになり、バリアとライナが場所を取りすぎてCuの入る余地がほとんど残りません4。imecは、その影響でビア抵抗とそのばらつきが制約になったとしています。高い電流密度の要求から、EM信頼性も課題になります。imecが示す選択肢の1つは、Ru・W・Moといった別金属のビアをバリアレスでCu配線の底につなぐハイブリッドな配線です。imecは、この構成ならCu配線のバリアを2nmまで薄くしつつEM信頼性を維持し、ビアの抵抗も下げられるとしています。
導体の寿命と絶縁の寿命は、別々に証明する
Section titled “導体の寿命と絶縁の寿命は、別々に証明する”新しい配線構造を採用するときは、エレクトロマイグレーションとTDDBを別々に示す必要があります。前者は導体側の寿命、後者は絶縁側の寿命だからです。
imecは、金属ピッチ21nmのデュアルダマシン試験構造で両方を評価しました。この試験構造はバリアレスのRu配線と、比誘電率k=3.0の絶縁膜を使っています。330℃・530時間ではエレクトロマイグレーション故障が観測されず、100℃でのTDDB故障時間は10年を超えました5。2つがそろって、はじめて採用を判断できます。片方の試験が証明するのは、その片方の寿命だけです。
関連するデータ・ツール
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- 装置カタログDB ── 公式製品ページ単位のメーカーと製品family
- Cuはライナーの薄膜化と新しいlow-kで24 nmピッチまで持つ|18 nmピッチのM0はimecの計画でRuへ移る── ライナーを薄くしたときのEM寿命
- Moコンタクト、EM故障は上のCu配線|imecの試験構造、viaは約50 Ω── Moコンタクトの試験でEMが出た場所
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”エレクトロマイグレーションとは何ですか?
配線を流れる電子が金属原子を押し流し、原子が少しずつ一方向へ移動する現象です。原子が抜けた場所には空隙ができて広がれば断線し、集まった場所は盛り上がって隣の配線に触れれば短絡になります。
寿命はどう見積もりますか?
Blackの式を使います。寿命は電流密度のべき乗に反比例し、温度に対しては指数的に短くなり、電流密度の指数には1から2の間の値が使われます。
温度はどのくらい寿命を縮めますか?
大きく縮めます。アルミ配線では、動作温度を25℃から125℃へ上げると最大許容電流密度が約90%下がり、流してよい電流は10分の1近くになります。
配線の形は関係しますか?
関係します。90度の角は135度のような鈍角に比べて電流密度が著しく高くなるため避け、ビアを並べても電流のほとんどは一部のビアが運びます。
短い配線は安全ですか?
安全になる場合があります。Blech長より短い配線はエレクトロマイグレーションに耐え、その長さは典型的には10〜100µm程度です。原子が片側に溜まって生じる機械的な応力が逆向きの移動を起こし、材料の流れを打ち消すためです。
細くすると弱くなりますか?
逆になる場合があります。配線幅を材料の平均粒径より細くすると、電流密度が上がるのに耐性は上がります。粒界が配線を横切る向きに並ぶバンブー構造になり、電流に沿った拡散の通り道が切れるためです。
微細化でどうなりますか?
厳しくなります。IRDSは、寿命が配線の幅と高さの積を電流密度で割った量に比例し、世代ごとにおよそ半減するというモデルを示しています。そのためMOLやM1などにCuとは別の金属が入り、バリア金属には空孔の拡散を抑える界面を作る役割が求められます。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- TDDB(経時絶縁破壊)とは── 絶縁側の寿命
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- 1IRDS:2024 More Mooreirds.ieee.org abcd
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- 3
- 4imec:A view on the logic technology roadmapimec-int.com ↩
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