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OBIRCHとは

OBIRCHとは、電圧をかけたチップへ赤外レーザを走査しながら当て、当たった点の温度上昇による電流の変化を像にして、不良箇所を絞り込む解析手法です。 日本語名は光ビーム加熱抵抗変動法で、光を当てて生じる欠陥箇所の熱で抵抗が変化する性質を利用します1。故障箇所に光が当たったときの電流変化そのものを捉えるので、反応点がほぼそのまま故障箇所になります。その精度と引き換えに、DCの電流を流し続けられる不良に対象が限られます。

電源電流の増加1つに埋もれた不良を、1点ずつ温めて探す

Section titled “電源電流の増加1つに埋もれた不良を、1点ずつ温めて探す”

配線が細って高抵抗になる、ビアの底にボイドがある、隣の配線と触れているといった不良は、チップの外から測ると電源電流の増加という1つの数字にまとまり、どの1本で起きているかは隠れたままです。OBIRCHは、故障解析でその1本の位置を絞り込む手法です。

OBIRCHは、決められたバイアスをかけたままレーザを一点ずつ当て、温度上昇による回路の抵抗変化、または温度に依存するリーク電流の変化を読み取り、走査像として描きます2。エミッション顕微鏡がデバイス自身の放つ光を待つのに対し、OBIRCHはこちらから熱を与えて反応を起こさせます。メルコセミコンダクタエンジニアリングは、電圧をかけてチップを動作状態にし、配線上に波長1.3μmの赤外レーザを走査したときの抵抗変化から、異常箇所をサブミクロンの精度で特定するとしています3。

電流が流れている所だけが反応し、抵抗の温度特性が明暗を決める

Section titled “電流が流れている所だけが反応し、抵抗の温度特性が明暗を決める”
照射点と像の明暗
配線①(電流あり)ボイドビア底の高抵抗層電流配線②(電流なし)OBIRCH像やや暗い暗い変化なし明るいレーザ照射点
電流が流れる配線①では、温めた点の抵抗が上がって電流が減り、像が暗くなります。熱のこもるボイドはさらに暗く、負の温度特性を持つビア底の高抵抗層は明るく写ります。電流のない配線②は温めても変わりません。

手順は3段階です。レーザを観察領域へ走査すると、当たった配線の温度が上がって抵抗が変化します1。走査と同期して電流値または電圧値を読み取ります。ボイドや析出物は正常な配線部と抵抗温度係数が異なるため、抵抗の変化量も異なり、特異な電流値として検出されます1。

反応するのは、電流が流れている配線だけです。電流が流れていない配線は、加熱で抵抗が変わってもリーク電流は変わりません。電流が流れている配線を加熱すると、抵抗が大きくなってリーク電流が減ります4。電流の流れていない配線は、温めても像に現れないということです。

像は、定電圧をかけた状態でレーザを走査し、走査した領域の各点に対応する画面上の各点へ、電源電流の変化を明るさの違いとして映して5作ります。電流が増えた部分は明るく、減った部分は暗く表示します。配線へレーザが当たると温度が上がって抵抗が増え、電流が減るため、配線部は周囲より暗いコントラストになります。熱伝導がAlより悪いボイドやSi析出は温度上昇が大きく、電流の減少も大きいので、さらに暗く写ります。

明るく写るのは、温度が上がると抵抗が下がるものです。異物は固有の抵抗温度依存性で抵抗値が変わり、温度が上がると抵抗が減る性質の異物なら、リーク電流は増えます4。ビア底部にできた寄生高抵抗層は負の温度特性を持つことが多く、レーザが当たると抵抗が減って明るく写ります。OBIRCH像の明コントラスト部では、TEMで初めて見える数nm程度の薄いアモルファス層が確認されています6。

検出できるのは、配線の表面に出ているボイドに加えて、配線膜の中に埋もれたボイドやSi析出、ビア部のボイド、ビア底部にできた数nm程度の薄い高抵抗層です。コンタクトの抵抗異常、配線ショート箇所、ゲート酸化膜の微小リークも探せ、DC電流経路も可視化できます。コンタクトプラグやビアの底のように、削って初めて姿が分かる場所を、削る前に指し示せる点が持ち味です。

1,300nmの赤外光はシリコンを透過するので、上層配線が厚いチップは裏面から当てる

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表面照射と裏面照射
表面照射裏面照射シリコン基板吸収・拡散上層の金属配線レーザ欠陥欠陥1,300nm約半分が到達
表面から当てた光は上層の金属配線で吸収と拡散を受け、欠陥まで熱が届きにくくなります。裏面から当てた1,300nmの光はシリコンを透過し、薄化前でも約半分が配線まで届きます。

チップの表面側から当てると、上層の金属配線でレーザのエネルギーが吸収と拡散を受け、局所的な温度上昇が欠陥位置まで届きにくくなり、電気応答が弱くなる場合があります2。リークが下層配線や接合の近くのような深い位置にあり、上層の金属配線が厚い構造ほど、その傾向は強まります。そうした構造では、赤外光がシリコンを透過する性質を使った裏面照射が有効になる場合があります。Siのバンドギャップに対応する波長は約1.1μm(1,100nm)です。近赤外レーザの波長1,300nmはこれより長いのでSi基板を透過し、チップ裏面からの解析ができます4。

波長は材料で選びます。シリコンデバイスでは赤外レーザ、SiCのようなワイドバンドギャップデバイスでは532nmなどの短波長可視レーザを使います。可視レーザのほうが高い空間分解能を得られますが、実デバイスではOBIC電流が電源電流として流れてOBIRCH像を妨げます。ルネサスは、OBIC信号を抑える工夫をしないとOBIRCH像は得られず、その工夫は通常は非常に難しいとしています5。そのため、OBIC信号の起きにくい1,300nmの近赤外レーザが実デバイスへ適用しやすく、チップを薄くする前でも約半分のレーザが配線へ到達します5。ウェーハ薄化の手間を抑えたまま裏面から進められるのは、このためです。裏面からの感度の例として、5V電源で50μA、3V電源で30μA、1.5V電源で20μAを、チップ裏面から電流像として検出した報告があります6。

浜松ホトニクスのPHEMOS-Xは7、OBIRCHやDALS、EOP、レーザマーカ用の光源を最大7個まで搭載できます。発光を待つ検出系と熱をかける光源が、1台に同居します。

広い視野で電流経路を追い、狭い視野で異常点まで絞り込む

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視野の絞り込み
13mm角2.6mm角0.65mm角0.26mm角電流経路異常点
13mm角の広い視野で電流経路を追い、0.26mm角までの狭い視野で異常点を絞り込みます。

材料科学技術振興財団の装置は、測定視野が0.26mm角、0.65mm角、2.6mm角、13mm角で1、位置精度が数μm程度、ロックイン機能のための変調周波数が5kHzまたは20kHzです。広い視野で電流経路を追い、狭い視野で異常点まで絞り込みます。5mm角という広い範囲で電流経路を検出した後、狭い視野に絞り込み、物理的な原因箇所まで検出できる6とした報告もあります。

位置が決まって初めて、断面や表面を削る工程へ渡せます。明るく写った箇所の正体をTEMで確かめたように、OBIRCHは削る場所を決め、物理解析が原因を決めます。その結果を歩留まりや信頼性試験の改善として工程へ返します。

反応点がほぼ故障箇所になるかわりに、電流を流し続ける条件を払う

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得るものは位置の確度です。ソニーセミコンダクタソリューションズは、IR-OBIRCHが故障箇所へ近赤外レーザが当たったときの電流変化そのものを検出するため、発光解析と違って、反応が出た場所がほぼそのまま故障箇所になるとしています8。ロームも、反応点が故障箇所そのもの、または故障に直結する異常部の近くになりやすいとしています。

払うものは3つあります。1つ目は測定の状態です。解析がDCレベルに限られるため、ソニーセミコンダクタソリューションズは、半導体試験装置を使って初めて再現するような不具合モードには不向きだとしています。

2つ目は、デバイスへ電気と熱を与え続ける条件です。材料科学技術振興財団の装置は、印加電圧がDC±25V/100μAとDC±10V/100mAです。レーザ照射で電流や電圧が不安定になるデバイス、レーザ照射で損傷する試料、オーミック接触の取れない試料は、測定へ悪い影響を及ぼします1。東芝デバイスソリューションのIR-OBIRCH解析は9、温度環境が常温のみで、有効な故障モデルはショート不良と微少リーク不良です。

3つ目は、届く範囲です。ソニーセミコンダクタソリューションズは、配線ビア起因の不良について、エミッションやIR-OBIRCHのような既存の解析手法では絞り込みが難しい場合があるとし、電子ビームの吸収電流を使うEBACを併用する構成を挙げています。1つの装置で決着する場面はむしろ少数で、複数の手法を重ねて絞り込みます。

OBIRCHとは何ですか?

電圧をかけたチップへ赤外レーザを走査しながら当て、当たった点の温度上昇による電流の変化を像にして、不良箇所を絞り込む解析手法です。日本語名は光ビーム加熱抵抗変動法です。

どんな不良を探せますか?

配線やビア内のボイドと析出物の位置、コンタクトの抵抗異常、配線ショート箇所、ゲート酸化膜の微小リークを探せ、DC電流経路も可視化できます。東芝デバイスソリューションは、IR-OBIRCH解析が有効な故障モデルとしてショート不良と微少リーク不良を挙げています。

なぜボイドが暗く写るのですか?

温度の上がり方が周囲と異なるからです。Alより熱伝導の悪いボイドやSi析出へレーザが当たると温度上昇が大きく、抵抗の増加も電流の減少も大きくなるため、その部分が暗い像になります。

明るく写る箇所は何ですか?

ビア底部にできた寄生高抵抗層です。この層は負の温度特性を持つことが多く、レーザが当たると抵抗が減って明るい像になります。明コントラスト部をTEMで調べ、数nm程度の薄いアモルファス層が見つかった報告があります。

表面と裏面のどちらから当てますか?

構造で選びます。表面側から当てると上層の金属配線でレーザのエネルギーが吸収と拡散を受け、電気応答が弱くなる場合があります。そうした構造では、波長1,300nmの赤外光がシリコンを透過する性質を使った裏面照射が有効になる場合があります。

レーザの波長はどう選びますか?

材料で選びます。シリコンデバイスでは赤外レーザ、SiCのようなワイドバンドギャップデバイスでは532nmなどの短波長可視レーザを使います。波長1,300nmの近赤外レーザはOBIC電流の妨害が起きにくく、実デバイスへ適用しやすい波長です。

エミッション顕微鏡とどう使い分けますか?

IR-OBIRCHでは反応が出た場所がほぼそのまま故障箇所になります。一方で解析がDCレベルに限られるため、ソニーセミコンダクタソリューションズは、半導体試験装置を使って初めて再現するような不具合モードには不向きだとしています。

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