歩留まり(イールド)とは
歩留まりとは、作ったもののうち良品として使えるものの割合です。 ウェーハ1枚から取れるチップの総数に対し、テストを通った良品の個数が占める比率で表します。
歩留まりが費用を支配するのは、ウェーハ1枚を流す費用が結果とほぼ無関係だからです。同じ工程を同じ回数通す以上、良品が何個取れても、かかった費用はほぼ同じです。良品の個数が半分になれば、1個あたりの費用はおよそ2倍になります。
大きいチップほど、同じ欠陥密度でも歩留まりは下がる
Section titled “大きいチップほど、同じ欠陥密度でも歩留まりは下がる”欠陥がウェーハ上に一定の密度で分布しているとすれば、面積の大きいチップほど、その中に欠陥を1つ以上含む確率が上がります。同じ欠陥密度でも、大きなチップを作る製品ほど歩留まりは低くなります。面積と欠陥密度の積が歩留まりを左右します。
「歩留まり」は、段階ごとに別の数字を指す
Section titled “「歩留まり」は、段階ごとに別の数字を指す”JEITAの半導体技術ロードマップ専門委員会が公開するITRS 2005年版「歩留まり改善」日本語版は、その章の範囲を「ウェーハテスト歩留り」に限り、「ウェーハプロセスライン内の工程歩留り」「組立て/パッケージング歩留り」「製品での最終テスト歩留り」を別の数字として区別しています1。ウェーハが工程を生き延びた割合、ウェーハ上のチップが電気的に良品だった割合、パッケージへ組み立てた後の割合、出荷前の最終テストを通った割合は、それぞれ別物です。数字を受け取ったら、どの段階のものかを先に特定する必要があります。
全体の歩留まりは二つの積です。一つはライン歩留り(ウェーハ歩留り、生存率とも呼ばれます)で、「全製造ラインを通して生き延びるウェーハの確率」を指します。もう一つはバッチ歩留り(チップ歩留り、ダイソート歩留りとも呼ばれます)で、「製造ラインの最終段階で正常に機能するある特定の設計(i)の集積回路数のウェーハ内における比率」を指します。割れや傷でウェーハごと失われた分は前者へ、チップ単位の良否は後者へ入ります。
バッチ歩留りはさらに、システマティック不良に起因する成分と、ランダムに分布する不良に起因する成分の積へ分解されます。粒子の付着のようにウェーハ上へ散らばるものがランダム欠陥、設計と工程の相性や特定の形のパターンに起因して繰り返し発生するものが系統的欠陥で、この二つの成分に対応します。前者は清浄度と工程管理で減らし、後者は設計と工程の組み合わせを直して潰します。
量産に入ると、ウェーハを失う要因が支配する
Section titled “量産に入ると、ウェーハを失う要因が支配する”どちらが支配的かは時期で入れ替わります。ITRS 2005年版は、大量生産を行うメーカーでは製造の初期段階がバッチ歩留りに支配され、「ひとたびバッチ歩留りが高くなり量産が開始された後は、ライン歩留りが支配的な要因となる」1と述べています。量産が始まった工場では、チップ単位の良品率より、ウェーハそのものを失う要因のほうが歩留まりへの寄与が大きくなります。
面積と欠陥密度から、負の二項分布モデルで見積もる
Section titled “面積と欠陥密度から、負の二項分布モデルで見積もる”面積と欠陥密度の積は、実務では負の二項分布歩留まりモデルという式へ落とし込まれます。ITRS 2005年版は、ランダム成分に起因する歩留り(YR)を、チップ面積A、電気的不良密度D0、クラスタ係数αの三つを変数とするこのモデルから求めています1。Aが大きいほど、またD0が大きいほど、YRは下がります。αは欠陥の分布の偏り具合を表す係数で、同じ平均密度でも欠陥がウェーハ上で固まって分布する状況を式へ取り込むために入っています。
歩留まりを左右するのは、チップ面積よりクリティカルエリア
Section titled “歩留まりを左右するのは、チップ面積よりクリティカルエリア”歩留まりを左右するのは、チップの面積そのものより「クリティカルエリア」です。ITRS 2005年版はランダム成分の歩留りを、「ランダム不良密度とランダム欠陥に敏感なクリティカルエリアを変数とする高次な非線形関数」1として述べています。チップの面積のうち、そこへ欠陥が落ちると不良になる部分だけが歩留まりへ影響します。配線が密に走る領域へ落ちた粒子は隣の配線とショートを起こし、空きスペースへ落ちた同じ大きさの粒子は回路をそのまま動作させます。
検査が数えた欠陥のうち、不良を生むのはキラー欠陥
Section titled “検査が数えた欠陥のうち、不良を生むのはキラー欠陥”この区別があるため、欠陥の個数と不良の個数は別に数えます。設計から期待される形状やプロファイルと実際に作られた実物との差異のうち、通常の製造ばらつきの範囲を超えるものが欠陥(Defect)です2。その欠陥は、ウェーハテスト時にチップを不良に至らしめるもの(Fault)と、物理的な形状やプロファイル上の異常にとどまるものに区別されます。前者が一般にキラー欠陥と呼ばれるものです。ITRS 2005年版の概要も「欠陥と不良/不良と欠陥の対応付けやキラー率、不良個所特定技術も重要な技術課題である」1と挙げています。検査装置が数えた欠陥の個数のうち何割がキラー欠陥かで、歩留まりへの影響は大きく違ってきます。
チップレットに分ければ、良品の回路は17組から40組へ増える
Section titled “チップレットに分ければ、良品の回路は17組から40組へ増える”面積が歩留まりを下げるなら、回路を複数の小さなチップへ分割する手が使えます。東京エレクトロンは、「チップ面積(チップレット)が大きいほど、不良チップが生まれる頻度は高くなり、歩留りが下がる」としたうえで3、あるサーバー用チップの例を挙げています。
その例では、回路全体を1チップで作ると777平方ミリメートルになり、量産初期の歩留りは4パーセントです。これを4個のチップレットへ個片化して各213平方ミリメートルにすると、量産初期の歩留りは21パーセントへ上がります。量産成熟期では、1チップ化の26パーセントに対しチップレット化は59パーセントです。1枚のウェーハから切り出せるチップ数は、1チップ化で69個、チップレット化で273個です。これを成熟期の歩留りに当てはめて計算すると、1枚のウェーハから取れる良品は、1チップ化では69個×26パーセントで17個、チップレット化では同等の回路構成に4個必要なため273個×59パーセント÷4で40個になります。同じウェーハ1枚から、同等の回路が17組から40組へ増えます。
面積を小さくする方向がなぜこれほど強く働くのかは、この桁で伝わります。分割した先で良品のチップだけを選んで組み立てる前提が付くため、この考え方は良品保証済みチップ(Known Good Die)の話題と一組になります。
見つける速さが、そのまま改善の速さになる
Section titled “見つける速さが、そのまま改善の速さになる”歩留まりを上げる手順は、欠陥を見つけ、発生源の工程をたどり、その工程を直すことの繰り返しです。そのため、見つけるまでの時間がそのまま改善のサイクル時間になります。
KLAは、eSL10が高分解能により重要なギャップ欠陥を特定し、プロセスの学習サイクル時間の短縮に寄与するとしています4。ASMLもメトロロジーおよび検査システムの製品群5をそろえています。検査と計測への投資は、装置そのものより、改善サイクルを速く回すための投資と位置づけられます。
立ち上げ時は系統的欠陥を潰して歩留まりを一気に上げる段階、量産時はランダム欠陥を低い水準に保ってばらつきを抑える段階で、重心が変わります。
ウェーハマップの模様が、対策を返す先を絞る
Section titled “ウェーハマップの模様が、対策を返す先を絞る”歩留まりという数字は、ウェーハテストで作られます。ウェーハテストは、プロセス工程を経て配線と成膜を済ませたウェーハを電気的に検査し、良品と不良品へ仕分ける検査工程です6。ウェーハプローバは「IC、LSI等が形成されたウェーハ上のダイの電気的特性を試験するために、各ダイのパッドにプローブカードのニードル等を順次自動的に接触させるウェーハ位置決め装置」で、プローブカードは、ウェーハ上のボンディングパッドへ当てて電気信号を入出力し、機能検査を行う試験治具です。チップ1個ごとの良否が座標つきで記録された結果がウェーハマップで、歩留まりはこのマップの集計です。
歩留まり管理システム(YMS)は、歩留まりモニタと欠陥検査から解析までを行い、その結果に基づいて欠陥の発生工程へフィードバックしながら、総合的に歩留まりを管理・向上させる統合システムです7。
手掛かりになるのは、マップの模様です。歩留管理システムによるゾーン解析の結果と故障モードの分類を組み合わせ、通常の統計解析ではランダム欠陥の中に埋もれてしまう水準のシステマティック不良を発見した例では2、「ウェハ外周部分で特定の Bridge 不良の発生頻度が、明らかに高い」ことが示されました。ブリッジ不良とは、配線どうしが橋渡しされてショートする不良です。
全面へ均一に散らばる不良と、特定のゾーンへ偏る不良は、返す先の対策が別です。前者はランダム成分として清浄度と工程管理へ、後者はシステマティック成分として設計と工程の組み合わせや、そのゾーンに固有の条件を持つ工程へ返ります。両者が重なっているとき、ウェーハ全体の平均値だけを追うとシステマティック側が埋もれるため、マップをゾーンで切って集計します。
目標歩留まりは、装置1台あたりの許容欠陥数へ割り付けられる
Section titled “目標歩留まりは、装置1台あたりの許容欠陥数へ割り付けられる”目標歩留まりは、装置1台ごとの許容欠陥数へ割り付けてはじめて現場の管理値になります。ITRS 2005年版は、この割り付け先を「装置許容欠陥数(Yield Model and Defect Budget)」と呼び、その根拠をPWP1(Particle per Wafer Pass、ウェーハがプロセス装置を1回通るごとのパーティクルによる欠陥密度増加)の調査データに求めています。装置許容欠陥数は一般的なプロセス装置のPWPの中央値から推定し、装置のウェーハ搬送による欠陥数も含み、ロット中の10パーセントのウェーハが検査されると仮定し、すべてのPWP予算をクリティカル欠陥サイズ(MPUでは45nm、DRAMでは40nm)に対して定めています。
見積もりの向きについて、ITRS 2005年版は「歩留りを低めに予想した場合の損害(低稼働の損害)は小さく、増産効果により隠れてしまう場合も有る。歩留りを高めに予想した場合の最大の損失要因は、スクラップとなる材料のコストである。従って、装置許容欠陥数を高めに見積もることが賢明である」としています。高く外すか低く外すかで損失の大きさに差があるため、見積もりは意図的に片側へ寄せられます。
割り付けられた管理値そのものも更新され続けます。ウェーハ表面上の微粒子許容濃度75.4個/枚(ITRSのTable FEP3による)と付着率0.9パーセントを起点に、50nm以下の微細粒子について純水中の許容微粒子濃度を0.6個/mLとする試算が2、2009年7月の国際会議へ提案されました。この提案は考え方そのものへの賛同を得たものの、試算が窒化ケイ素の微粒子に限られていたことから、2009年度版への反映は見送られました。歩留まり目標から下りてくる管理値は、こうした試算と合意の積み重ねの上にあります。
関連するデータ・ツール
Section titled “関連するデータ・ツール”- 歩留まり・欠陥解析の工程ページ── 工程分類と、この工程の公開求人
- 欠陥検査の工程ページ── 欠陥を見つける側
- 装置カタログDB ── 公式製品ページ単位のメーカーと製品family
- 欠陥検査を歩留まりに返すreview分類|AMATは0.001%のreviewで全候補分類── 見つけた欠陥を原因ごとに分ける段
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”歩留まりとは何ですか?
作ったもののうち、良品として使えるものの割合です。ウェーハ1枚から取れるチップの総数に対し、テストを通った良品の個数が占める比率で表します。
なぜ歩留まりが重要なのですか?
費用がほぼ枚数で決まるためです。ウェーハ1枚を流す費用は、そこから何個の良品が取れるかとはほぼ無関係です。良品の個数が半分になれば、1個あたりの費用はおよそ2倍になります。
チップが大きいと歩留まりは下がりますか?
下がります。同じ密度で欠陥が分布していれば、面積が大きいチップほど欠陥を1つ以上含む確率が上がります。大きなチップを作る製品ほど、同じ欠陥密度でも歩留まりの影響を強く受けます。
ランダム欠陥と系統的欠陥の違いは何ですか?
分布の仕方が違います。ランダム欠陥は粒子の付着のようにウェーハ上へ散らばります。系統的欠陥は、設計と工程の相性やパターンの特定の形に起因して、同じ場所や同じ形のパターンで繰り返し発生します。対処の仕方も異なります。
歩留まりはどうやって上げますか?
欠陥を見つけて発生源をたどり、その工程を直します。KLAは、eSL10が高分解能により重要なギャップ欠陥を特定し、プロセスの学習サイクル時間を短縮できるとしています。見つける速さがそのまま改善の速さになります。
立ち上げ時と量産時で何が違いますか?
重心が違います。立ち上げ時は系統的欠陥を潰して歩留まりを一気に上げる段階です。量産時はランダム欠陥を低い水準に保ち、ばらつきを抑える段階になります。
歩留まりには何種類ありますか?
段階ごとに別の数字があります。ITRS 2005年版は、ウェーハが工程を生き延びる割合を指すライン歩留り、ウェーハ上のチップの良品率を指すバッチ歩留り(ダイソート歩留り)を区別し、さらに組立て/パッケージング歩留りと、製品での最終テスト歩留りを別の数字として挙げています。同じ「歩留まり95パーセント」でも、どの段階の数字かで意味が違ってきます。
検査で見つかった欠陥は、すべて不良になりますか?
一部です。ウェーハテスト時にチップを不良に至らしめるものと、物理的な形状やプロファイル上の異常にとどまるものは区別され、前者をキラー欠陥と呼びます。検査装置が数えた欠陥の個数のうち、何割がキラー欠陥かで歩留まりへの影響が違ってきます。
チップレットにすると歩留まりはどれくらい上がりますか?
東京エレクトロンが挙げたサーバー用チップの例では、回路全体を1チップにすると777平方ミリメートルで量産初期の歩留りは4パーセント、これを4個のチップレット(各213平方ミリメートル)へ個片化すると21パーセントです。量産成熟期では26パーセントに対し59パーセントとなります。これに当てはめて計算すると、ウェーハ1枚から取れる同等の回路は17組から40組へ増えます。
ウェーハマップの模様から何が絞れますか?
発生源の候補が絞れます。歩留管理システムによるゾーン解析と故障モード分類を組み合わせ、通常の統計解析ではランダム欠陥に埋もれてしまう水準のシステマティック不良を見つけた例があります。その例では、ウェーハ外周部分で特定のブリッジ不良の頻度が明らかに高くなっていました。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”7件を表示
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- 2JEITA 半導体技術ロードマップ専門委員会:平成21年度報告 第13章 WG11 歩留向上semicon.jeita.or.jp abc
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- 4
- 5
- 6日本半導体製造装置協会(SEAJ):半導体製造装置用語集(検査)seaj.or.jp ↩
- 7日本半導体製造装置協会(SEAJ):半導体製造装置用語集(計測)seaj.or.jp ↩