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チャンバ内壁の状態とは

チャンバ内壁の状態とは、チャンバの内側の壁や部品の表面が、堆積物・温度・荒れ方によってどうなっているかという条件です。 レシピに書かれた数字とは別に、同じレシピの結果を動かします。壁はラジカルを吸って吐く反応の相手なので、壁に付いた膜の量や材質が変わると、ウェハへ届く反応種の量と選択比が一緒に動きます。現場の仕事は、壁をレシピと同じ精度で整え、整えきれない分を結果の側で補正することです。

壁はラジカルを吸って吐く反応の相手で、壁の膜がプラズマの中身を変える

Section titled “壁はラジカルを吸って吐く反応の相手で、壁の膜がプラズマの中身を変える”

ドライエッチングのレシピには、ガスの種類、流量、圧力、電力、時間が並びます。それでも同じレシピを流して、装置や日によって結果に差が出ます。SEAJの技術ロードマップ(2012年版)は、同じプロセスを走らせているつもりでも結果の性能が落ちる例はよくあるとし、その原因をチャンバ内で進むプロセスの細部のモニタ不足に求めています1。

その細部の大きな部分を占めているのが、壁です。チャンバの中では、ウェハのほかに天板も、側壁も、シャワーヘッドも、同じプラズマに浸かっています。壁の表面はラジカルを吸ったり吐いたりする相手として反応に参加するので、壁の表面が何でできているかによって、ウェハへ届く粒子の中身が入れ替わります。

壁に材料が積もってウェハへの反応種の流れが変わる現象を、エッチング装置ではシーズニングと呼びます2。影響の経路は三つあります。表面でのラジカルやイオンの付着係数が変わって気相の反応種の密度が動くこと、壁から削られた材料がウェハへの反応種の流れに加わること、そして電気的な性質が変わることです。

壁のポリマーは、選択比まで動かします。IBMの研究は紫外吸収分光で高密度エッチングプラズマを調べ、C2F6とCF4を含むプラズマでは、CF2の濃度が投入電力と圧力だけでなく、チャンバ壁のポリマーの量にも強く依存する3ことを示しました。窒化シリコンに対する酸化シリコンのエッチング選択比は、さまざまな運転条件でCF2の濃度によく沿って動きました。

2021年の研究は、壁と面内分布の関係を計算と実測で結び付けました。メンテナンス直後で天板の表面がシリコンの状態、クリーニング直後で天板が酸化された状態、加工中でチャンバがポリマー膜で覆われた状態、という三つの壁の状態で、チャンバ内の水素の分布が動く様子を可視化しました4。その分布は、実際の水素を含む窒化シリコン膜のエッチング速度の面内分布と対応しました。結論は、壁の状態を細かく読み取りながら水素量の分布を実時間で制御していく必要がある、というものです。

壁が動くと、パーティクル、エッチング速度のずれ、方式の不安定が起きる

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一つ目は、パーティクルです。装置内壁の部品もプラズマに曝されるためパーティクルが発生し、それがウェハ上に形成したパターンを断線させて歩留まりの悪化要因になっています。アルミニウム製の上部電極にコーティングした酸化イットリウム膜から粒子が脱落してダストとなり、シリコンウェハの上に落ちて配線をショートさせる経路もあります5。金属膜のエッチングでは、装置内壁に金属膜が堆積すると、エッチング性能の経時変化と異物の両方が起きます。

二つ目は、エッチング速度と均一性のずれです。シーズニングの悪い帰結として、エッチング速度や均一性が、1回の処理の途中でも、ウェハからウェハへの間でもドリフトすることが挙げられています。プラズマに触れる誘電体がスパッタされると、エッチングを止める働きを持つ種も加わります。

酸化イットリウム膜の表面と比表面積
使用初期1000時間使用後酸化イットリウム膜アルミニウム母材平均比表面積572%349%使用初期1000時間後
プラズマに曝され続けると膜表面の凹凸が削られてなめらかになり、平均比表面積は1000時間で572%から349%へ下がりました。堆積するフルオロカーボンの量が変わり、エッチングレートが動きます。

三つ目は、時間とともに進む部品の変化です。東芝マテリアルが2018年に報告した測定では、酸化イットリウム膜をコーティングした装置部品の平均比表面積が、使用初期の572パーセントから1000時間使用後には349パーセントへ下がりました。プラズマに曝され続けることで膜表面の凹凸が削られ、なめらかになるためです。表面積が大きいほど堆積するフルオロカーボンの量が増え、クリーニングのときに多くのフルオロカーボンをプラズマ中へ放出してチャンバ内の部品に付き直します。すると次のエッチングで酸素ラジカルが多く消費され、デバイス自体のエッチング速度が下がります。膜の表面形態が動くとエッチングレートが変化し、プロセス条件の調整が必要になります。

四つ目は、方式そのものの成否を分けるほどの影響です。2007年の時点で、高密度プラズマ方式が酸化シリコンの生産現場で主流から遠ざかった理由の一つとして、チャンバ上面や側面の誘電体は温度調整が難しく壁の状態が一定しにくいこと6、誘電体自体がエッチングされて放出されるガスも不安定要因になったことが挙がっています。重合物を作りやすいガスで長時間の深掘りを行うと、その間にチャンバ壁へ膜が付着してダスト源となり、加工面へ舞い降りると表面が粗くなります。

ロット内は部品の温度、ロット間は生成物と消耗が安定性を左右する

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安定性は、ロット内とロット間の二つに分けて考えます。ロット内の安定性はチャンバ内部品の温度変化に左右されるため、ロットを流す前にダミーランやヒータ加熱を挟み、部品の温度をエッチング中の水準まで先に上げておく必要があります。ヒータで加熱する場合、チャンバ内部品の温度を200℃程度の高温に保つ必要があります1。ロット間の安定性は、チャンバ内へたまっていく反応生成物の量と、チャンバ内部品の消耗に左右されます。フルオロカーボン系のガスでエッチングすると蒸気圧の低い反応生成物が出て、これがエッチングの安定性を損なううえにパーティクル源にもなります。

内壁の温度と反応生成物
内壁が低温ヒータで内壁を加熱生成物が内壁に付着生成物は蒸気のままヒータ内壁付着膜反応生成物プラズマウェハ
内壁が冷たいと蒸気圧の低い反応生成物が壁に積もりますが、ヒータで高い温度に保つと生成物は蒸気圧を持ち、壁への堆積を防げます。

対策は二つあります。ヒータで内壁を、反応生成物が蒸気圧を持つだけの高い温度に保つ方法と、その場でのプラズマクリーニングで内壁に付いた反応生成物を除去する方法です。前者は、ドライエッチングで内壁の温度を上げて壁へのフルオロカーボン膜の堆積を抑える形でも使われています。壁へ届かせない手もあり、磁場を使ってプラズマ領域をチャンバ壁まで到達させない方法が挙がっています。

壁は直接測らず、結果を測って前段へ返す

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測れている量には限りがあります。量産のエッチング装置に標準で載っている装置管理システムと発光分光によるモニタリングに加えて、これらの情報を入力とした数値シミュレーションや機械学習による面内分布の予測が要るとされています。量産工場では、終点検出による制御や、エッチング後に測った寸法を装置側の条件へ返して自動で調整している例もあります。

シーズニングの制御を扱った2007年の講演要旨は、センサにエッチング速度センサ、発光分光、バイアス電力を、操作量に電源電圧、ガス流量、ガス混合比を挙げています2。壁だけ見ても足りない理由も示されていて、前のウェハの終わりと次のウェハの始まりで壁の状態が必ずしも変わらなくても、新しいウェハには再付着物がありません。壁とウェハの条件が変わるにつれて、プロセスが中性種で律速される状態からイオンで律速される状態へ移るので、その移り変わりに対応するには複数のセンサと操作量が要る場合があるとしています。壁そのものを直接測るかわりに、壁の影響が出た後の結果を測って前段へ返すのが、現在の主な手当てです。

クリーニングは温暖化係数10000前後のガスを使い、材料で受ける道もある

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クリーニングには請求書が付きます。多くの成膜プロセスでガスによるチャンバのドライクリーニングが行われており、熱CVDでは塩化物系のガスが、プラズマCVDでは比較的安定なフッ化物系のガスが用いられます。多くのクリーニングガスは温暖化防止のため排出を制限すべきガスとして考慮する必要があり、低次のPFCであるCF4やC2F6の地球温暖化係数は10000前後になります。改善の例として、クリーニングで使うC2F6の流量を詰め、C3F8を入れることで、CF4を使っていたころと比べて装置ごとの差はあるものの3分の1程度まで減らせる案が挙がっています。

RIE中の部材のエッチングレート
石英アルミナ(バルク)酸化イットリウム1.1810.1130.0090.0010.010.1110µm/時(対数)
同じRIE装置の中で、石英は毎時1.181 µm、アルミナのバルク材は0.113 µm、酸化イットリウムのバルク材は0.009 µm削られました。

もう一つの道が、壁の材料そのものを強くすることです。RIE装置の中でプラズマに曝したときのエッチングレートは、石英が毎時1.181マイクロメートル、アルミナのバルク材が毎時0.113マイクロメートル、酸化イットリウムのバルク材が毎時0.009マイクロメートルでした。内壁部品のセラミックス膜に求められる性質は、高いプラズマ耐性、緻密であること、表面積が小さいことの三つです。京セラはイットリアを耐プラズマ性に優れた材料として掲載し、半導体製造装置などプラズマを使う工程の部品に求められるパーティクルや不純物汚染の低減に効果を発揮するとしています7。

壁を強くしても、壁は反応の相手のままです。整える手を持ち、変化を測り、結果で補正します。この三つを回し続けることが、レシピを一定に保つための仕事になります。

チャンバ内壁の状態とは何ですか?

チャンバの内側の壁や部品の表面が、堆積物、温度、荒れ方によってどうなっているかという条件です。レシピに書かれた数字とは別に、同じレシピの結果を動かします。

壁の状態は何に影響しますか?

プラズマの中身に影響します。壁の表面状態が動くとバルクプラズマのイオンとラジカルの組成や面内均一性が動き、C2F6やCF4のプラズマでは壁のポリマーの量でCF2の濃度が変わり、酸化膜と窒化膜の選択比もそれに沿って動きます。

どんな壁の状態がありますか?

メンテナンス直後で天板の表面がシリコンの状態、クリーニング直後で天板が酸化された状態、加工中でチャンバがポリマー膜で覆われた状態の三つです。2021年の研究は、それぞれで水素の分布が動く様子を計算で示しました。

壁が荒れると何が起きますか?

パーティクルが出ます。装置内壁の部品もプラズマに曝されるためパーティクルが発生し、ウェハ上のパターンを断線させて歩留まりの悪化要因になっています。

壁の状態は時間とともに動きますか?

動きます。酸化イットリウム膜をコーティングした装置部品では、平均比表面積が使用初期の572パーセントから1000時間使用後には349パーセントへ下がり、それに伴ってエッチングレートが変化してプロセス条件の調整が要ります。

現場では何をして整えるのですか?

ロットを流す前にダミーランやヒータ加熱を挟んで部品をエッチング中の温度まで先に温めること(ヒータ加熱なら200℃程度)、ヒータで内壁を反応生成物が蒸気圧を持つ高い温度に保つこと、その場のプラズマクリーニングで内壁の付着物を除去することの三つです。

クリーニングの代償は何ですか?

時間とガスです。多くのクリーニングガスは温暖化防止のため排出を制限すべきガスとして考慮する必要があり、低次のPFCであるCF4やC2F6の地球温暖化係数は10000前後になります。

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