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静電チャック(ESC)とは

静電チャック(ESC)とは、真空中でウェハを静電気の力で吸着して保持する部品です。 エッチングやCVD、PVDのチャンバーで、ウェハを平らに保ちながら、プラズマが与えた熱を裏面から逃がします。設計を左右する量は、誘電体セラミックの体積抵抗率です。この1つの値が吸着方式を決め、必要な電圧、着脱の速さ、金属汚染のおそれまで連れて決まります。

真空では吸引もつめも足りず、静電気で面ごと引き付ける

Section titled “真空では吸引もつめも足りず、静電気で面ごと引き付ける”

大気中なら、裏面の空気を抜けば大気圧がウェハをステージへ押しつけるので、吸引で引き付けられます。チャンバーの中は真空で、抜くべき空気がすでにありません。Siウェハも次世代EUVリソグラフィのマスクも、真空の中で扱われます1。

外周をつめで機械的につかむ方式では、エッチングや成膜が届くのはつめの内側までで、外周の数mmが使えなくなります。ウェハ1枚から取れるチップ数を1個でも増やしたい工程では、この数mmがそのままチップ数の差になります。Fraunhofer IOFは、3点で支える機械的な保持が基板のたわみ、擦れ、熱の接触不良を招くとしています1。

温度にも差が出ます。エッチング装置でかつて採られていた、Siウェハの外周端を上から機械的に押し当てる方法では、押し当てた部分だけが熱を良く伝えるため、ウェハの外周端が低温になっていました2。LSIの配線パターンの微細化でウェハの温度をより精密にコントロールする必要が生じ、静電チャックの実用化が検討されました。

つめと静電チャック
つめで外周を押さえる静電チャックで面ごと吸着つめステージたわみと熱の接触不良外周が低温冷却プレート外周まで加工が届く内部電極で面全体を吸着ウェハセラミックつめ・電極ステージ・プレート低温になる外周端
つめで外周を押さえると、加工はつめの内側までしか届かず、押さえた部分だけが熱を良く伝えて外周端が低温になります。機械的な保持はたわみと熱の接触不良も招きます。静電チャックは面全体を引き付け、外周まで平らに保ちます。

静電チャックは、誘電体に電圧をかけ、ウェハとの間に働く静電気の力で面全体を引き付けます。京セラの静電チャックは、セラミックスの間に内部電極を形成して一体焼結し、表面のSiウェハーとの間に発生する静電気力で保持します3。目的はシリコンウェハーの固定・矯正・冷却などで、材質はアルミナと窒化アルミ、サイズはφ200/300mm装置用です。矯正は反ったウェハを平らに直すことで、電極間に電圧をかけると基板を保持し、必要なら平らにならすこともできます1。

平らさは露光の精度に直結します。nm寸法の構造と正確な重ね合わせでは基板の平坦さの再現性が決め手になり、凹凸は構造のゆがみになります1。平坦度の値は、板そのものの形状と、支持のしかたによる変形の和です。Fraunhofer IOFは、EUVリソグラフィのマスク用チャックで50nm PV未満の平坦さを持つ基板ホルダーを精密加工で作るとしています1。

新光電気工業の製品の用途は、ドライエッチング、アッシング、CVD、PVDの半導体製造装置およびウェハ搬送ツールです4。

プラズマの熱を、ウェハからセラミックを通して冷媒へ逃がす

Section titled “プラズマの熱を、ウェハからセラミックを通して冷媒へ逃がす”

半導体製造装置が静電チャックに課す項目の筆頭は、プロセス中のSiウェハの温度のコントロールと、パーティクルの防止です。パーティクルは回路の断線を引き起こす微小な塵です。

ドライエッチングでは、プロセス中に数千ワットのプラズマ熱が発生します2。この熱をウェハから冷媒へ効率的かつ均一に移し、ウェハを代表的な温度として80℃程度にコントロールする必要があります。エッチング品質がエッチング時の温度の影響を受けるためです。目標の温度はアプリケーションによって幅があり、室温近傍から600℃近傍まであります。

熱の通り道は、部品の構造そのものです。静電チャックは、Siウェハとほぼ同じ外径の円盤状のセラミック部分と、冷却用の円盤状金属プレート部分で構成され、セラミックの内部に吸着用の内部電極があります。プラズマがウェハに与えた熱は、ウェハからセラミックを通り、金属プレート内を流れる冷媒へ移ります。NGKは、高熱伝導のセラミックプレートと冷却プレートを接着・接合することで、極めて高い冷却性能を持たせるとしています5。

熱の通り道
プラズマ数千WSiウェハ約80℃セラミック内部電極金属プレート冷媒の流路熱はウェハから冷媒へ下向きに流れるウェハセラミック内部電極金属プレート
数千ワットのプラズマ熱は、ウェハからセラミックを通って金属プレートの冷媒へ移ります。ウェハは代表的な温度として80℃程度にコントロールします。

裏面の全面を吸着すると、3つの差が出ます。第一に、プラズマ熱を均一に冷媒へ移せるため、面内の温度をより均一にコントロールできます。第二に、裏面全面からプラズマ熱を奪えるため冷却効率が増し、より熱量の高いプラズマを使えるようになって1枚あたりの時間が縮みます。第三に、加工面(上面)に触れずに裏面側から吸着するため、加工面へ落ちるパーティクルを防げます。

NGKの製品は、高精度な発熱体埋設技術でセラミックヒーターと一体化し、ウエハー表面温度を±1%以下に実現するとしています。同社は、バルク電極でウエハーの吸着とRFプラズマの生成を同時に実現するとしており5、電極は吸着とRF電力の両方に使われます。

体積抵抗率が、吸着方式と必要な電圧を分ける

Section titled “体積抵抗率が、吸着方式と必要な電圧を分ける”

クーロン力型とジョンセン・ラーベック力型(J-R力型)を分けるのは、誘電層のセラミックの体積抵抗率(電気の通しにくさをあらわす量で、単位はΩ・cm)です。クーロン力型は1×1016Ω・cm以上、J-R力型は1×109〜1012Ω・cm程度です2。J-R力型はSiウェハに微小な電流を流すことで吸着するタイプで、その電流が流れる余地を作るために抵抗率を下げてあります。

電荷がたまる場所
クーロン力型J-R力型−−++電荷の間は誘電体の厚み2.0〜3.0kV−−++微小な電流1.0kV以下ウェハ誘電体セラミック電極
クーロン力型は誘電体の厚みをはさんで電荷が向き合い、2.0〜3.0kVの印加が要ります。J-R力型は微小な電流が電荷を界面まで運んで距離を縮め、1.0kV以下で足ります。

抵抗率の差は、そのまま必要な電圧の差になります。クーロン力型は必要な吸着力を得るために誘電層へ2.0kV〜3.0kVの電圧印加が要るのに対し、J-R力型は1.0kV以下で充分です。電荷が誘電体の厚みをはさんで向き合うか、界面まで運ばれて近づくかの違いで、距離が縮むぶん低い電圧で同じ保持力を得られます。TOTOはJR力型の特徴を「低電圧で高吸着力」としています6。ソディックF.Tは平板型静電チャックの吸着力の参考値を、クーロン力0.3N/cm2(無アルカリガラス、DC±2kV時)、ジョンソン・ラーベック力5N/cm2(SUS、DC±0.5kV時)としており7、吸着力はワークの種類や温度、湿度で変わります。

ただし全部をJ-R力型にすると、別の性質が対価になります。J-R力型は抵抗率を下げるために、アルミナや窒化アルミへ抵抗コントロール用の金属酸化物などの添加物を加える場合が多く、そのぶん金属汚染に注意を払う必要があります。金属コンタミネーションは、半導体デバイスの歩留まりを悪化させる金属性の汚染です。またウェハの吸着・離脱に要する時定数(電荷がたまりきる、あるいは抜けきるまでの時間の目安)が体積抵抗率に依存するため、設計時に適切な体積抵抗率を検討する必要があります。

クーロン力型は逆の性質を持ちます。純度の高いアルミナや窒化アルミを使うため金属コンタミネーションのおそれが小さく、吸着・離脱の時定数が短いので、装置が1時間あたりに通せる枚数を伸ばしやすくなります。TOTOはクーロン力型の特徴を「吸着応答時間が温度によらず一定」としており、温度が動く工程でも着脱のタイミングが読みやすい側にあたります。

体積抵抗率の目盛り
J-R力型1.0kV以下クーロン力型2.0〜3.0kV1万倍以上NGKのAlNHA-37/38HA-12・HA-50/5110⁸10¹⁰10¹²10¹⁴10¹⁶体積抵抗率(Ω・cm、対数)
J-R力型は1×109〜1012Ω・cm程度、クーロン力型は1×1016Ω・cm以上で、2つの帯は1万倍以上へだたっています。NGKのAlNには、J-R力型の帯を含むグレードと、1015を超えるグレードがあります。

材料の側から見ると、同じ窒化アルミニウムでもグレードで性質が大きく変わります。NGKは、セラミックスを誘電体の基材に採用し、独自の体積抵抗率制御により低、中、高温度の幅広い領域に対応可能5だとしています。同社が示すAlN(窒化アルミニウム)の代表値は次のとおりで、RTは常温での測定値です。

AlNの代表値HA-12HA-37/38HA-50/51
純度(%)959999
密度(g/cc)3.33.33.3
体積抵抗率(Ωcm、RT)>1E+151E+8〜+13>1E+15
熱伝導率(W/mK、RT)17010080
強度(MPa、RT)>300>300>250

熱伝導率は170W/mKから80W/mKまで幅があり、体積抵抗率は>1E+15Ωcm(1×1015より大きい)のグレードと1E+8〜+13Ωcm(1×108から1×1013)のグレードが並びます。熱の通りやすさも電気の通しにくさも、AlNという材料名だけでは決まらず、グレード名と測定条件まで見て初めて確定します。

NGKは吸着メカニズムを「ジョンソン・ラーベック(AlN)、クーロン(Al2O3)」と併記しています。窒化アルミニウム側がJ-R力型、アルミナ側がクーロン力型という対応で、1E+8〜+13Ωcmのグレードは、J-R力型の1×109〜1012Ω・cmの範囲を内側に含みます。一方で新光電気工業はアルミナセラミックで両方式を提供しています。材料の選択と方式の選択は、体積抵抗率という1つの量を通した同じ設計判断です。

動作温度の上限は、製品で3倍以上ひらく

Section titled “動作温度の上限は、製品で3倍以上ひらく”

新光電気工業の製品は、材料がアルミナセラミックで、クーロン力型とジョンセン・ラーベック効果型の両方式があります4。寸法は最大φ300mm、セラミック厚みは0.8〜10.0mm、動作温度は−20〜+200℃です。NGKの製品は温度域が−50〜700℃、サイズは200mm、300mm、450mmウエハー対応です。上限が3倍以上ひらくのは、誘電体の材料と、内部にヒーターを組み込むかどうかで到達できる温度に差が生じるためです。目標温度は工程ごとに幅があるので、温度域は製品を選ぶときの軸になります。

表面形状も仕様の一部です。新光電気工業は、セラミック表面の溝加工、エンボス加工、表面粗さを選べるとしています4。ウェハと接する面をどう作るかが、接触面積と裏面の温度、そして発生するパーティクルの量を左右します。

作り方の違う製品もあります。ソディックF.Tは、電極層とセラミックス溶射層を特殊なプロセスで構築し、高緻密・高絶縁なので高真空下でも使えるとしており7、繊細で脆いワークも少ない負担で保持できるとしています。

内部電極を印刷したシートを積んで焼くので、多層セラミックになる

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新光電気工業は、セラミックの焼成と機械加工、組立、検査を一貫して行うとしています。焼成したセラミックを最終寸法まで削る工程が要るのは、焼成のときに寸法が縮むためです。

アルミナを主成分としたJ-R力型の工程は、さらに細かく決まっています。まずアルミナ原料に酸化チタンなどを添加して素材の体積抵抗率を所望の値にし、粉砕・混合してグリーンシート(焼く前のシート状のセラミック素地)を得ます。グリーンシートに内部電極を印刷して多数枚を積層し、成型後に脱脂・焼成します。給電部の金属電極はロー付けなどで取り付け、冷却用の金属プレートと組み付けたうえで、半導体用の精密洗浄を施して製品になります。

腐食とパーティクルが、静電チャックを交換部品にする

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静電チャックは、プラズマに直接さらされる面を持ちます。最先端の装置では、プラズマに対する耐食性が課題です。最先端のドライエッチング装置のプラズマで、従来のセラミックは著しく腐食し、最新の素材は腐食を受けにくくなっています2。耐腐食性をより高めたセラミックス素材が開発されましたが、その素材でも次世代の装置の要求レベルには届かなくなるだろうと見込まれています。

パーティクルも同じ方向です。Siウェハに付着するパーティクルへの要求は数でも大きさでも厳しさを増しており、発生を極限まで減らす新しい表面加工技術や洗浄技術が要るだろうとされています。表面の溝やエンボスは、この要求に対する作り込みの一部です。

腐食が進んだ面はパーティクルの発生源になり、吸着力とウェハ裏面の温度の再現性も落ちます。静電チャックが装置部品でありながら定期的な交換や再生の対象になるのは、この2つが同じ面で同時に進むためです。TOTOは材料からの一貫した管理により高い耐久性と低パーティクルを実現するとしており、寿命そのものが製品の性能項目に入っています。

静電チャックとは何ですか?

真空中でウェハを静電気の力で吸着して保持する部品です。新光電気工業の製品は、エッチング、アッシング、CVD、PVDの半導体製造装置と、ウェハ搬送ツールを用途としています。

つめでつかむ方式との違いは何ですか?

真空中では吸引でウェハを引き付ける方法が使えず、外周をつめでつかむ方式では、エッチングや成膜が届くのはつめの内側だけになります。3点で支える機械的な保持は、たわみや擦れ、熱の接触不良も招きます。面全体を静電気で引き付ければ、外周まで加工が届き、裏面の温度も面で均せます。

どんな材料でできていますか?

誘電体のセラミックで、アルミナと窒化アルミニウムが使われます。新光電気工業の製品はアルミナセラミック製で、セラミックの厚みは0.8〜10.0mm、最大寸法はφ300mmです。

クーロン力型とジョンセン・ラーベック型の違いは何ですか?

電荷が働く場所が違います。クーロン力型は誘電体をはさんだ両側に電荷をため、ジョンセン・ラーベック型は誘電体をわずかに導通させ、界面まで電荷を運びます。新光電気工業は、両方式をアルミナセラミックで提供しています。

使える温度はどのくらいですか?

新光電気工業の製品は−20〜+200℃、NGKの製品は−50〜700℃です。対応温度域は材料とヒーター内蔵の有無で幅があります。

表面に溝が入っているのはなぜですか?

ウェハと接する面の作り方が、接触面積と裏面の温度、発生するパーティクルの量を左右するためです。新光電気工業は、セラミック表面の溝加工、エンボス加工、表面粗さの選択に対応しています。

静電チャックはウェハの温度に何をしていますか?

ドライエッチングではプロセス中に数千ワットのプラズマ熱が発生し、静電チャックはこの熱をSiウェハから冷媒へ効率的かつ均一に移して、ウェハを代表的な温度として80℃程度に保ちます。エッチング品質がエッチング時の温度の影響を受けるためです。

2つの吸着方式は、どの数値で分けられますか?

誘電層のセラミックの体積抵抗率です。クーロン力型は1×10の16乗Ω・cm以上、ジョンセン・ラーベック力型は1×10の9乗から12乗Ω・cm程度です。必要な印加電圧はクーロン力型が2.0kV〜3.0kV、ジョンセン・ラーベック力型が1.0kV以下です。

アルミナと窒化アルミニウムは、どう使い分けますか?

NGKは吸着メカニズムを「ジョンソン・ラーベック(AlN)、クーロン(Al2O3)」と併記しています。NGKのAlNは熱伝導率が170/100/80W/mK(RT)、体積抵抗率が1E+15超/1E+8〜+13/1E+15超Ωcm(RT)とグレードで大きく異なります。新光電気工業はアルミナセラミックで両方式を提供しており、同じ材料から両方式を作る例もあります。

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