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プラズマとは

プラズマとは、気体へ電力を加えて原子や分子の一部を電子とイオンへ分け、電子・イオン・ラジカル・中性のガスが混じり合った状態です。 半導体の製造では、ウェーハを低い温度に保ったまま強い化学反応を起こす道具として使います。電子だけを熱くできることがプラズマの価値で、その代わり中の状態は量産の現場からほとんど見えず、密度を上げて速さを取れば選択比を失います。

電子だけが熱く、イオンとガスは室温に近い

Section titled “電子だけが熱く、イオンとガスは室温に近い”
熱処理とプラズマの温度
熱処理プラズマ温度全部が同じ温度へウェーハ温度電子 数万K程度イオン・ガスウェーハ室温(容器の壁面)非平衡
熱処理ではガスもウェーハも同じ温度まで上がり、プラズマでは電子だけが数万K程度に達して、イオンとガスとウェーハは室温に近いまま残ります。

プラズマは固体・液体・気体に次ぐ4番目の状態です1。原子核と電子の間に働く力がほどけて電子が離れることを電離と呼び、離れた電子を自由電子、残された粒子をイオンと呼びます。電子が飛び交いイオンが舞う状態がプラズマです。

真空機器が関わるプラズマのほとんどは、0.1〜100Pa程度の気体へ電場を加えた放電で、荷電粒子のほかに中性のガスが大量に残る弱電離プラズマです2。電子とイオン・中性粒子の間では、衝突のときに運動エネルギーの交換が起こりにくく、低圧の放電では衝突の頻度そのものも小さくなります。そのため両者は熱的な釣り合いから離れ、イオンや中性粒子の温度は容器の壁面(室温)に近く、電子の温度は数万K程度に達することが多くなります。これが非平衡プラズマと呼ばれる理由です。

熱処理で同じ反応を進めようとすると、ウェーハに載ったレジストや下地の膜もいっしょに温めることになります。プラズマを使う理由は、温めたい相手を電子だけに絞れるところにあります。

薄膜、エッチング、洗浄の3つに使い、成膜は熱処理より低い温度で済む

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サムコは3、プラズマを薄膜の形成と微細加工へ応用しているとして、3つの使い道を挙げています。プラズマCVDでは、基板の上へ原料ガスを供給し、放電でガスをプラズマ化し、生成された物質を堆積させて薄膜を作ります。従来の熱処理による製法に比べて低い温度で膜を作れるためデリケートな基板をいたわることができ、奥行きの深い複雑な形にも応用できるとされています。

プラズマドライエッチングはその逆に、基板の表面をプラズマで削り取る技術です。サムコは、基板にイオンを衝突させてプラズマ中の物質との化学反応を促し、原子単位で削り取る化学的物理的エッチング技術3と説明し、薬液で溶かす方法に比べてクリーンで正確だとしています。3つ目のプラズマクリーニングは、基板の表面に付いた有機物をプラズマで取り除く洗浄です。

膜はイオンで叩き出しても作れます。アルバックは、ターゲットにマイナスの高電圧をかけると、プラズマのプラスイオンがターゲットに衝突して材料を叩き出し、基板に薄い膜として付着させられる4と説明しています。この方式がスパッタリングです。

放電で作り、着火は圧力と電極の間隔の積で決まる

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放電の中で起きること
電離+イオンと自由電子発光励起した原子光基底状態へ戻る再結合+中性の原子電子イオン中性の原子
加速された電子が原子を電離してイオンと自由電子を生み、励起した原子は光を出して基底状態に戻り、イオンは自由電子と再結合して中性に戻ります。

プラズマの生成方法には放電電離・熱電離・光電離の3つがあり、真空技術で用いるのは放電電離です4。放電電離は、加える電流の種類で直流放電、高周波放電、マイクロ放電、パルス放電などに分かれます。ガラス製の放電管の両端へ直流高電圧を加えると、圧力10³Pa以下・放電電流数十mA以下で安定したグロー放電が見られます。

プラズマの中では、電離と逆向きの過程も同時に進みます。イオンは自由電子を取り込んで中性の原子に戻る再結合1を起こし、励起した原子はエネルギーを光や電磁波として放出して基底状態に戻ります。プラズマが輝いて見えるのはこのためで、量産では、この光を発光分光分析で見ています。

放電が立つかどうかは、タウンゼントの放電開始理論で説明します。放電が続くために働く効果は2つです。1つは陰極を出発した電子が電場で加速され、中性のガスに衝突して電離を起こす作用、もう1つは正イオンが陰極に当たって陰極から電子を放出させる作用です。この2つから導いた放電開始電圧は、圧力と電極間距離の積だけに依存する関数になります。これがパッシェンの法則です。金属と希ガスの組み合わせでイオンの入射エネルギーが数100eVのとき、陰極から電子を放出させる確率の典型的な値は0.1程度です。

同じ電力を入れても、圧力とギャップの組み合わせ次第で着火したり着火しなかったりします。立ち上げのレシピで圧力とギャップを先に固め、そのうえでRF電源・整合器とマスフローコントローラを追い込むのは、この順番を守るためです。

方式ごとに、圧力と電子温度の居場所が分かれる

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方式ごとの運転域
10001001010.10.01動作圧力(Pa、右ほど低い)051015電子温度(eV)CCP 約2eV・1×10¹⁶/m³ICP 2〜5eVSWP 約3eVECR 5〜15eV1〜10⁻²PaICP・SWP・ECR 10¹⁷〜10¹⁸/m³
方式ごとの代表値を圧力と電子温度の面に置くと、低い圧力で運転する方式ほど電子温度が高く、電子密度も高い側に並びます。

容量結合プラズマ(CCP)は比較的高い圧力の10〜1000Paで、電子密度1×10¹⁶/m³、電子温度およそ2eVで5、安定で大面積という特性を持ちます。誘導結合プラズマ(ICP)は圧力1〜100Pa、電子密度10¹⁷〜10¹⁸/m³、電子温度2〜5eVで、原理として外部磁場を省けるため、プロセス用に広く用いられています。電子サイクロトロン共鳴プラズマ(ECR)は動作圧力1〜10⁻²Pa、電子温度5〜15eV、電子密度10¹⁷〜10¹⁸/m³です。表面波プラズマ(SWP)は動作圧力1〜10⁻²Pa、電子温度およそ3eV、電子密度10¹⁷〜10¹⁸/m³です。

電子温度はほぼ電界強度と圧力の比に比例し、さらに圧力とプラズマ体積の積の関数で決まります。つまみを1つ回すと、ほかの量も連れて動きます。方式を選ぶことは、この面のどこで運転するかを選ぶことです。

量産で見える指標は、発光とVppなどに限られる

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エッチング装置のプラズマの電子密度は10⁸〜10¹²cm⁻³程度です6。ソニーの辰巳哲也氏は2016年時点で、電子温度を測るならラングミュアプローブ、中性粒子の密度を測るなら赤外線レーザー吸収分光法というように、個々の計測技術が確立し、研究のレベルでは有用性も検証されてきたとしています。その一方で、機器を入れると不純物の混入やプラズマの変動、異常放電といった安定性の課題やコストが生じるため、量産設備での採用はごく一部にとどまるとしています。

実際に量産で手に入るのは、加工の終点検出に使う発光分光分析と、電源からの高周波信号のピーク値であるVppなど、限られた情報です。現場のエンジニアは、この限られた指標だけを頼りに、圧力・流量・電力・周波数という外側のつまみでプラズマを動かしています。レシピが装置ごとに固有になりやすいのは、この事情によります。

密度を上げると速くなり、そのぶん選択比を失う

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絶縁膜の加工で高いエッチング速度を確保するために高い密度(1×10¹¹cm⁻³以上)のプラズマを使うと、ガス分子が受ける電子衝突の回数が増えて分子がばらばらになり、原子状のFが多く含まれるプラズマになります。原子状のFが増えるとSiやSi₃N₄の表面へポリマーを十分に厚く形成できず、選択比の確保が難しくなります。

辰巳氏は、この過剰な解離を抑えるにはプラズマ中の滞在時間を10ms程度以下に制御することが有効で、そのために電極間隔の狭い平行平板型の設備を選び、C₄F₈などのフロロカーボン系ガスを大量のArで希釈する組み立てが一般的だとしています。速さを取りにいけば選択比を差し出し、その埋め合わせに装置の形とガスの流し方を使う、という取引です。

プラズマとは何ですか?

気体へ電力を加えて原子や分子の一部を電子とイオンへ分け、電子・イオン・ラジカル・中性のガスが混じり合った状態です。固体・液体・気体に次ぐ4番目の状態で、電子が飛び交いイオンが舞う状態をプラズマと呼びます。

なぜ半導体の製造でプラズマを使いますか?

ウェーハを低い温度に保ったまま強い化学反応を起こせるためです。プラズマCVDは従来の熱処理による製法より低い温度で膜を作れるため、デリケートな基板をいたわれます。

プラズマは熱いのですか、冷たいのですか?

電子だけが熱く、それ以外は冷たい状態です。低圧の放電では電子とイオン・中性粒子が熱的な釣り合いから離れており、イオンや中性粒子の温度は容器の壁面(室温)に近く、電子の温度は数万K程度に達することが多くなります。

プラズマはどうやって作りますか?

放電で作ります。生成方法には放電電離・熱電離・光電離の3つがあり、真空技術で用いるのは放電電離で、加える電流の種類で直流放電、高周波放電、マイクロ放電、パルス放電などに分かれます。放電管の両端へ直流高電圧を加えると、圧力10³Pa以下・放電電流数十mA以下で安定したグロー放電が見られます。

放電が立つかどうかは何で決まりますか?

圧力と電極間隔の積で決まります。タウンゼントの放電開始理論から、放電開始電圧は圧力と電極間距離の積だけに依存する関数になります。これがパッシェンの法則です。

プラズマの状態はどうやって測りますか?

量産で手に入る情報は限られます。電子温度ならラングミュアプローブというように個々の計測技術は確立していますが、不純物の混入やプラズマの変動、異常放電、コストのために量産設備での採用はごく一部にとどまります。2016年時点で実際に使えるのは、終点検出用の発光分光分析と高周波信号のピーク値Vppなどです。

プラズマを強くすれば加工は速くなりますか?

速くなるかわりに選択比を失います。高いエッチング速度のために高密度のプラズマを使うと、電子衝突の回数が増えて分子がばらばらになり、原子状のFが多いプラズマになるため選択比の確保が難しくなります。

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