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窒化処理とは

窒化とは、すでにできている膜やシリコンの表面を窒素と反応させて、その表面に窒素を取り込ませる工程です。 ゲート絶縁膜が3nm程度以下になる世代では、ポリシリコンのゲート電極からのボロンの突き抜けを抑えるため、酸化膜の表面をプラズマで窒化する工程を入れます1。窒素を入れると突き抜けは抑えられますが、界面に届いた窒素はNBTIを増やします。窒化の出来を決めるのは、窒素の量よりも、窒素を膜のどの深さに置くかです。

窒化膜を積む成膜と、下地を窒素と反応させる窒化は別の工程

Section titled “窒化膜を積む成膜と、下地を窒素と反応させる窒化は別の工程”

窒素を使う工程には、性格の異なる二つがあります。一つは、窒化膜を上に堆積する成膜です。STIやLOCOSの素子分離では、シリコンの上に薄い酸化膜と窒化膜を先に積み、その窒化膜をエッチングのマスクやCMPのストッパーに使い、最後にホットリン酸で除去します1。この窒化膜は、途中で役目を終えて取り除かれる膜です。

もう一つが窒化です。窒化処理は、下地膜やシリコンそのものを窒素と反応させて表面近くに窒化層を形成します。ラジカル窒化では、XeとNH3を1プラズマの励起空間に送ります。中間の励起状態になったXeがNH3分子とぶつかってNHラジカルを効率よく作り、そのラジカルがシリコンと反応して、600℃の低温で質の高いSi3N4膜を作ります。下地と反応するので、できた層は元の表面より内側にも入り込みます。

始める前に表面を整えます。質の高いSiO2膜やSi3N4膜を得るには、酸化や窒化を始める前に、シリコン表面のダングリングボンドを終端している水素原子を、Kr+イオンやXe+イオンの照射で完全に取り除いておく必要があります。

薄いゲート絶縁膜では、電極のボロンが膜を突き抜ける

Section titled “薄いゲート絶縁膜では、電極のボロンが膜を突き抜ける”

問題は、電極から漏れてくる不純物です。日立国際電気(現KOKUSAI ELECTRIC)は2003年に、ゲート絶縁膜を薄くすると経時絶縁破壊の特性が低下し、ストレス誘起リーク電流が増え、ボロンをドープしたゲート電極ではボロンの突き抜け耐性が下がってデバイス特性のばらつきが大きくなるとし2、その対策として窒素プラズマによるゲート酸化膜の窒化を有望視していました。

窒素が働くのは、密度の高い網目を作るからです。国際半導体技術ロードマップは短期的な技術解としてシリコン窒化膜を挙げ、高いボロン拡散抑止能と7という比較的高い誘電率が魅力的だとしています3。止めたいものを止めながら、誘電率も稼げます。

この道筋の始まりは古くにあります。1970年代後半に富士通が、シリコン熱酸化膜を活性窒素で熱処理した酸窒化膜のほうがゲート絶縁膜として優れていることを世界で初めて実証した4とされています。すぐには使われず、2000年代に2nm以下の膜厚が要る90nm世代で使われ始め、65nm世代で世界中の標準になったとされています。45nm以降でHigh-k材料が入ったあとも、シリコンとの界面を守るバリア層には窒化酸化膜が要ると見られています。

窒素は膜の表面側に入れ、界面からは遠ざける

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窒素を入れてよい場所は限られます。三菱電機、ルネサステクノロジ、東北大学の共同研究が扱った45nmノードでは約1nmのゲート絶縁膜が必要で、シリコン酸化膜をラジカル窒化したSiON膜が使われています5。窒化の目的は、ボロン拡散によるしきい値電圧のシフトとばらつきの増大を防ぐことです。一方、酸化膜とシリコンの界面近傍に入った窒素は負バイアス温度不安定性(NBTI)を増やすため、表面を強く窒化しつつ、界面の窒化はできる限り抑える必要があります。

窒素を置く深さ
ゲート電極シリコンボロンは表面側で止まるSiON界面の窒素はNBTIを増やす窒素の量表面界面表面側に多く界面は少なく
窒素は膜の表面側に多く置いて電極からのボロンを止め、シリコンとの界面ではできる限り少なくします。界面の窒素はNBTIを増やすためです。

界面の窒素量は、ガスの組み合わせと基板の電位で変わる

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窒素の深さ分布そのものが管理の対象になります。この共同研究では、フッ酸で膜を少しずつ薄くしながらX線光電子分光で測り、窒素の深さ分布と化学結合の状態を調べています。希ガスと窒化ガスの組み合わせをAr/N2、Xe/N2、Ar/NH3、Xe/NH3と変えるとラジカルの生成効率が変わり、界面近傍の窒素の量はAr/NH3、Xe/NH3、Ar/N2、Xe/N2の順に少なくなりました。同じ装置でも、ガスの選び方で界面の窒素量が変わります。

装置側で調整するのは電位です。日立国際電気の装置では、サセプタの高周波インピーダンスを制御するとプラズマ空間電位と基板表面の電位差を制御でき、酸化膜の表面を高濃度に窒化しながら窒素の深さプロファイルを整えられます2。酸素と不活性ガスの混合ガスを使えば、400℃以下で面内均一性を±1.5%以下に保ちながら、時間を変えるだけで0.8〜4.0nmの膜を再現性よく作れます。いずれも同社製品での値です。同じ反応室で酸化と窒化を続けて行えば、ゲート界面層の汚染を最小限に抑えられます。

プラズマなら400℃以下で窒化できるが、ウェーハは励起空間から離す

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熱で窒化すると、他のものまで動きます。従来の高温の酸化プロセスは格子欠陥を誘発し、すでに作ったデバイスの不純物を再拡散させ、ウェーハの大口径化に伴ってウェーハの反りも招きます2。窒素を入れるだけのために、熱バジェットを多く使うことになります。プラズマを使えば、温度を上げずに反応を進められます。電子温度1eVのプラズマは10,000℃の高温に相当し、熱では反応しにくいガスもプラズマ中では容易に反応するので、ウェーハを400℃以下に保ったまま窒化できます。

ただし、装置に条件があります。ラジカル酸化やラジカル窒化には、基板表面を汚染やダメージから守れるプラズマ装置が必要で、当時のプラズマ装置は基板に大量の汚染とダメージを与えるため、トランジスタの製造には使えませんでした1。壊れ始めるエネルギーは低く、Ar+イオンが25 eV、13 eV、7 eV以上になると、それぞれ単結晶SiのSi-Si結合、Si3N4膜、SiO2膜を壊します1。

イオンが壊し始めるエネルギー
壊さない壊すSiO2膜Si3N4膜単結晶Si7 eV13 eV25 eV0Ar+イオンのエネルギー
Ar+イオンは7 eV以上でSiO2膜を、13 eV以上でSi3N4膜を、25 eV以上で単結晶SiのSi-Si結合を壊し始めます。

そのため置き場所が決まります。シリコン基板はプラズマ励起空間に置かず、そこから離れた拡散プラズマ領域に置くべきだ1とされています。ラジカルは励起空間で作られ、離れた位置の基板まで拡散して届きます。

ラジカル窒化の反応室
プラズマ励起空間拡散プラズマ領域Xe*NH3NH*シリコン基板Si3N4膜基板を置かない
NH*ラジカルは上の励起空間で作り、離れた拡散プラズマ領域に置いた基板へ届けてSi3N4膜を作ります。基板を励起空間に置くと、イオンで膜と結晶が傷みます。

現在の装置は、この条件を正面から掲げています。東京エレクトロンは、枚葉の成膜装置Triase+のSPAシリーズについて、SPA(Slot Plane Antenna)で作る高密度で電子温度の低いプラズマを使い、低温でダメージの少ないプラズマ処理を特長としています6。バイアス機能を備えて膜質と高いカバレッジを両立させ、ゲート窒化、ゲート修復酸化、STIライナー酸化、High-k窒化に対応するとしています。

窒化はリークを減らすが、プロセスの余裕も削る

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窒素を入れれば、突き抜けは止まり、リークも減ります。日立国際電気は、同じ反応室で酸化と窒化を続けて行うことで、移動度の劣化を抑えながら実効酸化膜厚を1.2nm以下まで下げ、窒化を省いた酸化膜に比べてリーク電流を1けた以上減らせたとしています2。同社が2003年に示した見通しです。膜そのものを窒化膜にする道もあります。1nm程度の極薄ゲート絶縁膜ならラジカルSi3N4膜で十分実現でき、リーク電流密度は1 A/cm2程度に抑えられています1。

High-k膜に窒素を入れる場合も、得るものと失うものがあります。NISTの研究者らは、HfSiO膜の窒化が結晶化温度や相互拡散への耐性を改善する7一方で、軟X線光電子分光、酸素K端のX線吸収、分光エリプソメトリで調べると、バンドギャップが1.50 eV±0.05 eV狭まり、価電子帯と伝導帯のオフセットもそれぞれ1.2 eV±0.1 eVと0.33 eV±0.05 eV小さくなったと報告しています。

窒化は、プロセスの余裕を減らします。窒素は界面に届けば劣化の原因になり、プラズマは装置と置き方を選び、窒化の前には表面を整えておく必要があります。ゲート酸化膜を薄くする代わりに窒化を加えると、工程が1つ増え、その工程のプロセスウィンドウも狭くなります。数nmの膜の表面側と界面側を作り分ける精度が、そのまま歩留まりに影響します。

窒化とは何ですか?

すでにできている膜やシリコンの表面を窒素と反応させて、その表面へ窒素を取り込ませる工程です。上から窒化膜を積む成膜とは別に、下地そのものを窒素と反応させます。

なぜ窒素を入れるのですか?

ゲート電極のボロンが絶縁膜を突き抜けるのを抑えるためです。ゲート絶縁膜が3nm程度以下になる世代では、ポリシリコンのゲート電極からのボロンの突き抜けを抑えるため、酸化膜の表面をプラズマで窒化する工程を入れます。

窒素はどこに入れたいのですか?

膜の表面側です。SiO2の表面を強く窒化しつつ、SiO2とシリコンの界面の窒化はできる限り抑える必要があります。界面に入った窒素が負バイアス温度不安定性(NBTI)を増やすためです。

界面に窒素が入ると何が起きるのですか?

界面近傍に導入された窒素はNBTIを増加させます。窒素の深さ方向のプロファイルを制御して界面の窒素を減らせば、トランジスタ特性を保ったまま窒化できます。

熱で窒化するのとプラズマで窒化するのは何が異なるのですか?

ウェーハの温度です。電子温度1eVのプラズマは10,000℃の高温に相当し、熱エネルギーでは反応しにくいガスもプラズマ中では容易に反応するため、酸素や窒素のプラズマなら室温から400℃以下の低温でも短時間で酸化や窒化ができます。

プラズマを当てるとウェーハは傷みますか?

装置と置き方で異なります。Ar+イオンは7 eV以上でSiO2膜を、13 eV以上でSi3N4膜を壊すため、ウェーハはプラズマ励起空間から離れた拡散プラズマ領域に置きます。日立国際電気は、自社のMMTプラズマはダメージが極めて少なく、400℃以下で酸化や窒化を行ってもダメージ回復のためのポストアニールを省けるとしています。

High-k材料が入ったあとも窒化は要りますか?

45nm以降でHigh-k膜が採用され始めた後も、シリコンとの界面を保護するバリア層には窒化酸化膜が必要と見られています。High-k膜そのものも窒化され、HfSiOを窒化すると結晶化温度や相互拡散への耐性が改善します。

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