LPCVD(減圧CVD)とは
LPCVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition、減圧CVD)とは、反応室の圧力を下げた状態で行うCVDです。 圧力を下げるとガス分子の平均自由行程が伸び、ウェーハ間および面内の膜厚均一性が高まるので、多数枚のウェーハを縦に並べた炉で一度に成膜できます。
その代わり、熱で反応を進めるので基板温度が高く、既に作り込んだ配線や素子の熱予算を圧迫します。炉の中では原料が上流から先に消費され、下流のウェーハほど膜が薄くなります。
熱で反応を進めるので、熱予算に上限がある工程順ではPECVDが候補になる
Section titled “熱で反応を進めるので、熱予算に上限がある工程順ではPECVDが候補になる”熱で反応を進める点は熱CVDと共通で、基板温度は高くなります。膜質を優先できる工程順ではLPCVDが、熱予算に上限がある工程順ではプラズマで反応を促進するPECVDが候補になります。
減圧で原料が奥まで届き、縦型炉で多数枚をそろえて積める
Section titled “減圧で原料が奥まで届き、縦型炉で多数枚をそろえて積める”圧力が高い状態では、ガス分子が他の分子と頻繁に衝突するため、炉の中央付近まで原料が均等に届きにくくなります。圧力を下げると分子が衝突するまでに進む距離が伸び、原料が表面へ届くまでの経路が素直になります。
減圧が均一性へ働く道筋は二段あります。一段目は気相で、分子同士の衝突が減ると、原料は気相の途中で分解して微粒子になるより先に表面へ届きます。二段目は表面で、膜厚が原料の供給量より表面の温度で決まる側へ移った状態を、現場では反応律速と呼びます。反応律速に乗ると、炉の中の位置による原料濃度の差が膜厚差として出にくくなり、ヒーターのゾーン制御で面内分布とウェーハ間分布を追い込めます。
この均一性が、多数枚を縦に並べた炉という装置の形を決めます。KOKUSAI ELECTRICは、同社グループがLP-CVD技術、酸化技術、アニール技術、拡散技術、ALD技術に対応した成膜プロセス装置を提供しているとしており1、LP-CVDを減圧化学気相成膜と注記しています。最上位モデルはミニバッチ成膜装置Advanced TSURUGI Plus-Ⅲです。
原料は上流から消費され、下流ほど膜が痩せる
Section titled “原料は上流から消費され、下流ほど膜が痩せる”減圧しても、原料の総量には限りがあります。原料はガス導入口の近くから順に消費されるため、下流のウェーハや炉の中央付近では濃度が痩せます。これがローディング効果です。同じレシピでも、ダミーウェーハを抜いた薄いバッチと満載のバッチでは、膜厚が別の値へ落ち着きます。
KOKUSAI ELECTRICは、Advanced TSURUGI Plus-Ⅲの高性能ウェーハ反応炉が独自構造によりローディング効果を低減して膜厚均一性を向上させ1、反応ガスの置換効率を上げて成膜にかかる時間を短縮するとしています。Advanced TSURUGIは反応炉の容積を最小にしたうえで大排気を採用し、省フットプリント化を従来比マイナス10%としています。容積を絞って排気を強める設計は、炉の中の原料を早く入れ替えてローディング効果を薄める向きに働きます。
三次元積層デバイスでは、この効果が一段強く出ます。同社は、成膜が必要な表面積が一段と増大し構造がより複雑化する三次元積層デバイスへの高難易度成膜を、新技術で実現したとしています。3D NANDでは、同じ膜厚を目標にしても原料の消費量が桁で変わります。
圧力、温度、枚数のどれを回しても、何かを手放す
Section titled “圧力、温度、枚数のどれを回しても、何かを手放す”圧力を下げる向きでは、平均自由行程が伸びて原料が炉の奥まで届き、面内とウェーハ間の膜厚差が縮みます。代わりに表面へ来る分子の数が減って成膜レートが落ち、目標の膜厚まで積むために保持時間を延ばすので、熱バジェットの積分値は増えます。圧力を上げる向きでは成膜レートが伸びる一方、気相の中で分解が進んでパーティクルの素が増え、ローディング効果も強まります。
温度を上げる向きでは表面反応が速くなり、膜が緻密になって残留水素が減ります。後段のウェットエッチレートも下がるため、選択比を取りやすくなります。代わりに熱バジェットを食い、既に打ち込んだドーパントの拡散プロファイルの裾が伸びます。反応律速から輸送律速の側へ移れば、面内分布の形そのものが変わります。温度を下げる向きでは熱バジェットが浮きますが、レートが落ち、膜中の未反応種が増えます。
ボートの枚数とピッチも実際に回すつまみです。詰めれば1バッチの枚数が増えて装置あたりの生産枚数が上がり、サイクルタイムの見通しが良くなります。代わりにウェーハ間の隙間が狭くなり、原料が中心へ届く前に周辺で消費されるため、面内の膜厚が中心で痩せます。空ければ分布は素直になり、そのぶん1バッチの枚数を手放します。ガス流量を増やせばローディング効果が薄まり、マスフローコントローラの設定余裕と原料の使用量、排ガス側の負荷を差し出します。
膜厚は屈折率と一緒に測り、膜質はウェットエッチレートと応力で見る
Section titled “膜厚は屈折率と一緒に測り、膜質はウェットエッチレートと応力で見る”膜厚は膜厚測定で追います。単層の絶縁膜であればエリプソメトリで屈折率と膜厚を同時に取れるため、膜質のずれが屈折率側に出ます。面内は中心と周辺の差、ウェーハ間はボートの上段・中段・下段に入れたモニタウェーハの差として持ち、SPCの管理図へ載せます。複数号機で同じレシピを回すなら、号機間の差を装置マッチングとして別に持ちます。
膜質側は、ウェットエッチレートと応力を指標に取ります。ウェットエッチレートが上がった方向は、膜が疎になり残留水素が増えた方向と対応します。応力は反りとして出るため、薄いウェーハでは後工程の搬送エラーへ化けます。石英のボートやチューブは使用時間とともに変質するので、石英部材の交換履歴も膜厚のドリフトと同じ時間軸へ載せます。
1バッチの枚数は口径と世代で決まり、ローディング効果は総面積で決まる
Section titled “1バッチの枚数は口径と世代で決まり、ローディング効果は総面積で決まる”ジェイテクトサーモシステムのVF-5300は2、8インチウェーハ最大150枚またはカセット20個のストッカを備えた連続大バッチ量産型の縦型拡散炉で、ボートの最大長は960mm、外形はW900×D2300×H3300mmです。用途は低温アニールから窒化膜(Si3N4)やポリシリコンのLPCVD、さらに酸化と拡散までにわたり、同社は二珪化モリブデン(MoSi2)ヒーターでSiCパワーデバイスのゲート酸窒化のような超高温域にも向けられるとしています。
300mm世代のVF-5900は3、300mmウェーハ最大100枚またはFOUP16個を1バッチとし、ボート長1040mm、外形W1250×D4300×H3450mmの大バッチ量産型縦型拡散炉で、酸化・拡散・LPCVDを対応プロセスに挙げています。8インチの150枚から300mmの100枚へ枚数が減っても、面積で数えれば1バッチで成膜する総面積は増えます。ローディング効果の見立ては、枚数より総表面積で持つほうが実測と合います。
温度域の広さも装置の性格を決めます。同社は製品群で低温域から1850℃までの熱処理をカバーするとしています4。NOアニール炉 VF-3000HS5は200mmまでのウェーハを1バッチ50枚、3インチから8インチ、700〜1400℃という帯で受け持ち、炉内をメタルフリー構造にして洗浄頻度を下げるとしています。LPCVDのレシピを移す際は、この温度帯と口径の組み合わせが移植先の上限になります。
KOKUSAI ELECTRICは、1ロットで流せる量の伸び幅を世代差として示し、AdvancedAce-300を同社比で最大1.5倍、AdvancedAce-Ⅱを最大1.75倍、QUIXACE-ⅡとQUIXACE ULTIMATEを最大1.25倍としています。いずれも深溝形状への均一な膜形成と低温での高精度な成膜を特長に挙げています。200mm世代のVERTEX Revolutionには高生産性炉で175枚、低天井対応炉で100枚のオプションがあり、200mm以外の150mm以下にも対応するとしています。1バッチ175枚という数字は、そのまま炉内の総表面積とローディング効果の大きさに跳ね返ります。
原料を時間で切り分けるとALDになり、厚膜はLPCVDに残る
Section titled “原料を時間で切り分けるとALDになり、厚膜はLPCVDに残る”同じ減圧の炉でも、原料の供給を時間で切り分けるとALDになります。LPCVDは原料を同時に流し続けるため、膜厚は成膜レートと保持時間の積で決まります。ALDは前駆体と反応剤を交互に流し、各ステップが自己停止するため、膜厚はサイクル数で決まります。サムコのAD-800LPは6、有機金属原料と酸化剤などを交互に反応室へ供給して表面反応のみで成膜し、原料を数百ミリ秒以下のパルスで供給してロスを減らす装置で、トレイ搬送でø8インチウェーハ、またはø4インチウェーハ3枚の同時成膜に対応するとしています。
この差は、アスペクト比の高い構造で判断材料になります。自己停止する供給では段差被覆性がほぼ形状に依らずに揃う一方、1サイクルで積む厚みが原子層レベルなので、厚い膜ではサイクル数と時間が膨らみます。LPCVDは厚い膜を短時間で積める側にあり、その代わりに溝の入口と底の膜厚差を面内均一性とは別に管理します。厚膜のライナやスペーサはLPCVD、薄く精密な高誘電率膜はALDという分け方が、ここから出ます。
この用語に対応する装置と製造メーカー
Section titled “この用語に対応する装置と製造メーカー”関連するデータ・ツール
Section titled “関連するデータ・ツール”- CVD・PECVDの工程ページ── 工程分類と、この工程の公開求人
- 酸化・拡散の工程ページ── 炉を共有する熱処理系の工程
- 装置カタログDB ── 公式製品ページ単位のメーカーと製品family
- バッチALD、遅さを数十枚の一括成膜で補う|KOKUSAIはミニとラージの2系統── TSURUGI系とAdvancedAce系の違い
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”LPCVDとは何ですか?
LPCVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition、減圧CVD)は、反応室の圧力を下げた状態で行うCVDです。KOKUSAI ELECTRICは、同社グループがLP-CVD技術に対応した成膜プロセス装置を提供しているとしています。
なぜ圧力を下げるのですか?
圧力を下げるとガス分子の平均自由行程が伸び、分子が他の分子と衝突するまでに進む距離が長くなります。原料がウェーハ表面へ届きやすくなるため、ウェーハ間および面内の膜厚均一性が高まり、多数枚を同時に成膜するバッチ形式と相性が良くなります。
LPCVDとPECVDの違いは何ですか?
反応を進めるエネルギーの出どころが異なります。LPCVDは熱で反応を進めるため基板温度が高くなり、膜質が安定します。PECVDはプラズマで反応を促進するため、より低い基板温度で膜がつきます。熱予算に上限がある工程順ではPECVD、膜質を優先できる工程順ではLPCVDが候補になります。
LPCVDでどんな膜を作りますか?
SiN(窒化シリコン)やポリシリコンが代表例で、膜厚均一性と膜質が要る膜で選ばれます。縦型炉で多数枚を同時に成膜する形式が広く使われ、ジェイテクトサーモシステムの縦型炉VF-5300は窒化膜(Si3N4)やポリシリコンのLPCVDから酸化・拡散まで使えるとされています。
LPCVDのローディング効果とは何ですか?
原料が上流や炉の入口側で先に消費され、下流や炉の中央まで届く量が痩せる現象で、ウェーハ間および面内の膜厚差として出ます。KOKUSAI ELECTRICは、Advanced TSURUGI Plus-Ⅲの高性能ウェーハ反応炉が独自構造によりローディング効果を低減し、膜厚均一性を向上させるとしています。
LPCVD装置は1バッチで何枚流せますか?
装置と世代で違います。ジェイテクトサーモシステムのVF-5300は8インチウェーハ最大150枚またはカセット20個、VF-5900は300mmウェーハ最大100枚またはFOUP16個を1バッチとします。枚数を詰めるほど装置あたりの生産枚数は増え、そのぶんウェーハ間の膜厚差が広がります。
LPCVD装置のメーカーはどこですか?
KOKUSAI ELECTRICが代表的なメーカーです。同社はLP-CVD技術、酸化技術、アニール技術、拡散技術、ALD技術に対応した成膜プロセス装置を提供し、ミニバッチ成膜装置Advanced TSURUGI Plus-Ⅲを最上位モデルとしています。縦型炉ではジェイテクトサーモシステムも縦型・横型の炉ファミリーを持ちます。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- CVDとPVDの違い(成膜プロセス比較)── 成膜原理、段差被覆性、成膜温度、代表装置メーカー
- 酸化・成膜工程の全体像── 成膜工程が前後の工程とどう並ぶか
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- 1KOKUSAI ELECTRIC:製品kokusai-electric.com ab
- 2ジェイテクトサーモシステム:VF-5300jtektthermos.com ↩
- 3ジェイテクトサーモシステム:VF-5900jtektthermos.com ↩
- 4ジェイテクトサーモシステム:半導体jtektthermos.com ↩
- 5ジェイテクトサーモシステム:VF-3000HSjtektthermos.com ↩
- 6サムコ:ALD装置 AD-800LPsamco.co.jp ↩
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