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バッチALD、遅さを数十枚の一括成膜で補う|KOKUSAIはミニとラージの2系統

KOKUSAI ELECTRICは、時間のかかる原子層堆積(ALD)を、数十枚以上のウェーハを1つの炉でまとめて成膜するバッチ方式で量産の速度に乗せている。バッチ成膜とは、複数枚のウェーハを1つの炉にまとめて入れ、同じ熱とガスの履歴で薄膜を付ける方式だ。同社の有価証券報告書(2026年3月期)によれば1、バッチ成膜装置には2つの型がある。複雑な構造への難しい成膜を受け持つ最大100枚の「ミニバッチ」と、生産性を追う最大200枚の「ラージバッチ」だ。製品名では、前者がTSURUGI系、後者がAdvancedAce系とQUIXACE系に当たる。

バッチALD技術を核とする同社は、2025年のバッチALD対応装置市場で売上高世界シェア1位1だった(TechInsightsの集計)。同社は統合報告書2025で2、2024年のバッチALD市場を約7億ドル、自社のシェアを70%超と推計している。

図1装置群の受け持ち
TSURUGI系 ミニバッチ 最大100枚 重要な機能を担う膜 高アスペクト比・広い表面積 AdvancedAce系 ラージバッチ 最大200枚 犠牲膜など 低アスペクト比 VERTRON Revolution 200mm・150mm以下 300mm 200mm 150mm以下 成膜した膜 ウェーハ VERTRON Revolutionが扱うウェーハ径
KOKUSAI ELECTRICは統合報告書で、TSURUGI系を重要な機能を担う膜と高アスペクト比の構造に、AdvancedAce系を犠牲膜と低アスペクト比の構造に置く。VERTRON Revolutionは200mmと150mm以下のウェーハを扱う

ALDが遅いのは、ガスの入れ替えを1サイクルごとに挟むから

Section titled “ALDが遅いのは、ガスの入れ替えを1サイクルごとに挟むから”

成膜とは、ウェーハの上に回路の材料や絶縁膜になる薄膜を付ける工程だ。ALDは、2種類以上のガスを順番に流し、1回の供給で表面に1層分だけ反応させる。ガスを切り替えるたびに、炉内に残ったガスと反応でできた副生成物を不活性ガスで押し出す。この押し出しをパージと呼ぶ。供給、パージ、次の供給、パージを1サイクルとし、狙った厚さになるまで、このサイクルを繰り返す。方式ごとの膜の付き方は成膜方式の解説、パージにかかる時間は用語集のパージ時間にまとめている。

1層ずつ表面で反応させるので、ALDの膜は深い溝の底まで同じ厚さで付く。この回り込みのよさを段差被覆性という。代わりに時間がかかる。KOKUSAI ELECTRICは有価証券報告書で、ALDはガスの流入と流出、副生成物の除去に時間を要し、それが大きな課題だと書く。

3D NANDのような立体構造では、この課題が重くなる。同社は、構造が深く複雑になると成膜が必要な表面積が広がり、ガスの移動距離が長くなって成膜時間が延びる1と説明する。1枚ずつ処理する方式では、延びた成膜時間がそのまま1枚あたりの時間になる。

バッチ式は、1回の長い処理を多くの枚数で割る

Section titled “バッチ式は、1回の長い処理を多くの枚数で割る”

KOKUSAI ELECTRICの答えは、1回の処理時間を縮めることより、その時間を多くのウェーハで分けることにある。同社は強みの説明ページで3、ALDは時間がかかり生産性が低いので、数十枚を一度に成膜するバッチ方式を組み合わせたと書く。ALDの段差被覆性とバッチの生産性を両立させる、という位置づけだ。

図2ALDの遅さへの2つの手当て
ALDの1サイクル TSURUGIの上位機 繰り返す パージ効率を上げて総成膜時間を縮める ガスA ガスB パージ 1回に処理する枚数 AdvancedAce-IIはロット1.75倍 枚葉式 1枚 バッチ式 数十枚以上を一度に
ALDは供給とパージを繰り返すので遅い。TSURUGIの上位機はパージ効率を上げて総成膜時間を縮め、ラージバッチのAdvancedAce-IIは1回に処理するロットを従来機の1.75倍にした

1回の処理にかかる時間が同じなら、1枚あたりの時間は炉に入れる枚数に反比例する。製品ページによれば、TSURUGI系の上位機はパージ効率を上げて総成膜時間を縮め、ラージバッチ機は1回に処理するロットを大きくした。

ミニバッチは最大100枚に抑え、反応炉の設計で難しい膜を受け持つ

Section titled “ミニバッチは最大100枚に抑え、反応炉の設計で難しい膜を受け持つ”

ミニバッチのTSURUGI系は、最上位機のAdvanced TSURUGI Plus-III4、Advanced TSURUGI、TSURUGI-C²の3機種が並ぶ。製品ページは、Advanced TSURUGI Plus-IIIを同社の成膜装置の最上位機とし、構造が複雑になる3D積層デバイスで難しい成膜と高い生産性を両立する熱処理装置と説明する。

3機種とも、反応炉の設計でローディング効果を抑え、膜厚の均一性を上げる。上位のAdvanced TSURUGI Plus-IIIとAdvanced TSURUGIは、反応ガスのパージ効率を上げて総成膜時間を大きく縮める。ローディング効果とは、ウェーハ上で膜を付ける表面積やパターンによって膜厚が変わる現象だ。Advanced TSURUGIでは、小型化した反応炉と高い排気能力を組み合わせる。

同社は統合報告書2025で、TSURUGI系を、重要な機能を担う膜と、アスペクト比が高く表面積の大きい構造の側に置いている。同社は有価証券報告書の研究開発の項でも、ミニバッチ炉を精密な制御でより高機能な成膜を実現する炉1と位置づける。

ミニバッチは利益の柱でもある。同社は統合報告書2025で、付加価値と利益率の高いミニバッチのALD対応成膜装置と枚葉の膜質改善装置の売上比率を70%以上に上げる2中期目標を示し、2026年3月期の達成を見込んだ。

ラージバッチは1回の枚数を増やし、温度制御・搬送の自動化・パージでスループットを出す

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ラージバッチのAdvancedAce-IIは4、一度に処理できるロットを従来機の1.75倍に大きくした。QUIXACE-IIとQUIXACE-LVは1.25倍、長く売れているAdvancedAce-300は1.5倍だ。製品ページは、いずれも温度制御、ウェーハ搬送の自動化、反応炉のパージの技術で高いスループットを出すとし、深い溝への均一な成膜と低温での高品質な成膜を特徴に挙げる。処理時間が同じだとすると、ロットが1.75倍なら1枚あたりの時間は約57%になる計算だ。

製品ページがスループットを支える技術として最初に挙げるのは、温度制御だ。熱処理の温度と時間の上限はアニールとサーマルバジェットで扱っている。

ラージバッチは、ALDに加えて減圧CVD(LP-CVD)、酸化、拡散、アニールの熱工程も受け持つ。統合報告書2025の位置づけ図では、AdvancedAce系は犠牲膜のように後で取り除く膜や、アスペクト比の低い構造の側に置かれている。QUIXACE-LVは、ウェーハの搬入部を真空のロードロックにして、自然酸化膜と汚染を大きく減らす。

200mmラインと膜質改善には、別の装置群を当てる

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同じ製品ページには、200mm向けのVERTRON Revolutionと、膜質改善装置のMARORAとTANDUOも並ぶ。VERTRON Revolutionは、150mm以下にも対応する200mmのバッチ熱処理装置で、過去のモデルとのプロセス互換を打ち出す。200mmラインの更新候補としての比較は200mmの縦型炉の更新を扱う記事で詳しく見る。

膜質改善装置は、成膜した膜にプラズマや熱を加えて不純物を抜き、膜を安定させる。MARORAはプラズマ窒化とプラズマ酸化、TANDUOは低温アニールとキュアを受け持つ。同社の半導体業界の説明ページは5、前工程を成膜、膜質改善、フォトリソグラフィ、エッチング、洗浄、検査の6つに分け、同社は成膜と膜質改善を中心に事業を行うとしている。

図3前工程の6区分と成膜
成膜 膜質改善 フォトリソグラフィ エッチング 洗浄 検査 KOKUSAI ELECTRICの中心事業 成膜:膜を形成する TSURUGI・AdvancedAce QUIXACE・VERTRON ガス 膜質改善:熱とプラズマ MARORA・TANDUO 不純物を減らす
KOKUSAI ELECTRICは前工程6区分のうち成膜と膜質改善を中心に事業を行う。膜質改善装置は、形成した膜に熱とプラズマを加えて不純物を抜く
装置群主な機種1回の枚数製品ページに載る特徴
ミニバッチAdvanced TSURUGI Plus-III、Advanced TSURUGI、TSURUGI-C²最大100枚ローディング効果を抑える反応炉、パージ効率の改善による総成膜時間の短縮(上位2機種)
ラージバッチAdvancedAce-II、QUIXACE-II、QUIXACE-LV、AdvancedAce-300最大200枚ロット1.75倍・1.25倍・1.5倍、深い溝への均一な成膜、低温成膜、真空ロードロック
200mmバッチVERTRON Revolutionオプションで175枚、天井の低い工場向けに100枚150mm以下に対応、過去モデルとのプロセス互換
膜質改善MARORA、TANDUO枚葉プラズマ窒化・酸化、低温アニール、キュア

縦型のバッチ成膜装置で同社と競うのは、東京エレクトロンだ。同社の統合報告書20252で同社がGartnerの数値をもとに計算した2024年のシェアでは、東京エレクトロンが47.4%、KOKUSAI ELECTRICが41.0%で、足すと88%になる。シェアと各社の装置の比較はバッチ成膜装置のシェアを扱う記事にまとめた。

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