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ISSG(その場水蒸気生成)とは

ISSG(その場水蒸気生成)とは、酸化に使う水蒸気を、加熱したウェーハのある反応室の中で生成しながら進める、枚葉式の酸化方法です。 酸化の装置はファーネス(炉)酸化と枚葉酸化に分かれ、ISSG(In situ Steam Generation)は枚葉酸化に含まれます1。炉による酸化は多数枚をまとめて処理でき、生産性が高い方法です。それでも数nmの薄い膜や溝の内壁の酸化では、1枚ずつ短時間で処理するISSGが使われます。

炉は数十枚を数時間、枚葉のランプは1枚を数十秒で焼く

Section titled “炉は数十枚を数時間、枚葉のランプは1枚を数十秒で焼く”

熱酸化は、酸素などのガスの中でウェーハを加熱し、表面に酸化シリコンの膜を作る方法です2。手順は単純で、難しいのは、どれだけの厚さを、どれだけそろえて、どれだけ短い時間で作るかです。

酸化は長い間、炉で行われてきました。酸化拡散の装置はバッチ式と枚葉式の二つに大別され、バッチ式では数十枚のウェーハを一定間隔に並べ、電気ヒータで800〜1200℃に数十分から数時間加熱します3。まとめて処理できるので生産性が高く、1回に数十枚を処理できる拡散炉が量産の基盤です。

一方、枚葉式の赤外線ランプアニール装置は、数十秒で1,000℃まで昇温でき、厚さ10nm以下の超薄型シリコン酸化膜を作れます。多品種小ロットの生産にも向きます。ISSGはこの枚葉の酸化の一つで、名前は水蒸気をその場、つまりウェーハのある反応室の中で生成することを表します。

バッチ炉と枚葉ランプの温度履歴
バッチ炉枚葉ランプ1200℃800℃保持数十分〜数時間数十枚1,000℃数十秒1枚10nm以下の膜
炉は数十枚を800〜1200℃に数十分から数時間保ち、枚葉のランプ加熱は1枚を数十秒で1,000℃まで上げて、厚さ10nm以下の膜を作ります。

活性な酸素原子が、弱いSi-Si結合まで酸化するとされる

Section titled “活性な酸素原子が、弱いSi-Si結合まで酸化するとされる”

ISSGは、ゲート絶縁膜を作る新しい工程として報告された4酸化方法です。報告した研究グループは、Deal-Groveモデルをもとに、活性な酸素原子がSi-Si結合を切ってSi-O-Si結合を作る酸化の仕組みを提案しています。MOSキャパシタで炉のウェット酸化と絶縁破壊の特性を比べ、ISSGの膜は弱いSi-Si結合が十分に酸化されるため電気特性が優れ、サブミクロンのIC製造に有望だとしています。

活性な酸素原子による酸化
酸化前酸化後SiSiO活性な酸素原子弱いSi-Si結合SiSiOSi-O-Si結合
活性な酸素原子がSi-Si結合を切って2個のシリコンの間に入り、Si-O-Si結合になると考えられています。弱いSi-Si結合が十分に酸化されることが、膜の電気特性につながるとされています。

形のある構造でも、ラジカルで進む酸化が使われます。素子分離のSTIプロセスでは、エッチングで掘った溝の内壁を10nm程度だけ先に酸化し、その後で酸化膜を埋め込みます。溝の側面、底、角まで同じ厚さで酸化したい工程です。ラジカルの反応力で進む酸化は、すべての面方位のシリコン表面に同じ速度で膜を作れるため5、3次元の立体構造に向いています。

SiGeでは、Ge組成の差で5秒の酸化量が約8倍変わる

Section titled “SiGeでは、Ge組成の差で5秒の酸化量が約8倍変わる”

SiGeの酸化では、ISSGに別の難しさがあります。ナノシートのデバイスでは、Ge組成の違うSiGe層の間で酸化速度をそろえる必要があります。2019年のAVSの講演では、800℃のISSGと、室温〜300℃のPEALDの酸化を、Ge組成xが0.25〜0.80のSi1−xGex膜で調べています6。

講演者らの測定では、ISSGの酸化はxで三つの領域に分かれました。xが0.5未満の領域Iでは酸化速度がとても小さく、5秒で1.7 nmしか育ちません。0.5〜0.67の領域IIではxとともに速度が急に上がり、領域IIとIIIの境界で5秒13.8 nmの最大に達し、0.67を超える領域IIIではGeがすべて昇華して急に下がります。この二つの値を比べると、5秒の膜厚は約8倍違います。講演者らは、領域IとIIの間の急な増加のために、ナノシートで使う広いGe組成の範囲で酸化膜厚をそろえにくいとしています。一方、PEALDの酸化速度は300℃まで上げても領域IとIIの境界で変わらず、膜厚をそろえられると報告しています。

SiGeのISSG酸化量
5秒の酸化膜厚Ge組成 x0.250.50.670.80領域I領域II領域III1.7 nm13.8 nmGe昇華で急減ISSG 800℃
800℃のISSGで5秒酸化すると、Ge組成xが0.5未満では1.7 nm、0.67の境界では13.8 nmになり、それを超えるとGeの昇華で急に下がります。

酸化のずれはやり直せず、気づくのも最終テストまで遅れる

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LSIの製造でやり直しができるのはホトリソくらいで、洗浄にも回数の制限があるものがあります1。各工程にはばらつきがあり、同じレシピを使っても結果が毎回ずれることも、製造の問題点です。

量産ではウェーハが常に流れているため、最終テストで不具合が分かっても既に遅くなります。KEKの資料は、8インチ工場の規模とウェーハ価格をもとに、中程度の生産量で低コストの製品でもウェーハの仕損費用は億円単位になる1と見積もっています。工程が長いため、納期にも響きます。酸化を工程内で管理することは、膜の出来だけでなく費用と納期にも関わります。

測るのは膜厚とn/k、難しいのはウェーハに触れずに測る温度

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炉酸化でも枚葉酸化でも、ロットごとの管理項目は1膜厚とn/kです。n/kは膜の光学定数で、膜厚と合わせて膜の性質を表します。どのパラメータにどれだけの許容値を持たせるかを決め、工程ごとの管理値を設けて統計的に管理します。

難しいのは温度です。高温のウェーハは汚染されるため、熱電対のような接触式の温度計を当てられません3。現場では処理の前に、石英の保護管に入れた熱電対で反応管の内側の温度を測り、それが均一になるヒータ設定を選んでからウェーハを流していました。加熱時間が短くなるほど反応管の内側とウェーハの温度の差が大きくなり、ばらつきを抑えにくくなりました。

枚葉のランプ加熱では、触れずに測って、光を配ります。ハイソルの大気圧ランプアニール装置は、最高到達温度1250℃、最高昇温速度150℃/秒の非接触加熱で、450〜1250℃を測るパイロメータと、10ゾーンに分けたランプ出力制御による面内温度の均一性を備えるとしています7。動かす手は、ゾーンごとのランプ出力と、ガスの流量と、時間です。

短く焼くほど熱バジェットは減り、1回に流せる枚数も減る

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短くできるかわりに、まとめて流す道を手放します。熱をかける時間の桁は、炉の拡散が分から時間、RTAが秒、FLAとLSAがミリ秒で、いずれも温度は1200℃までです。時間を短くできる装置ほど、1回に処理できるウェーハは少なくなります。

炉の側も、時間を縮める方向へ改良が進んでいます。東京エレクトロンは、バッチ式の熱処理装置がホットウォール内の熱均衡空間で加熱することで良好な膜質を実現し、クリーンルーム面積あたりの生産性が高いとしています8。同社のTELFORMULAは常圧と減圧の酸化、ラジカル酸化、酸窒化、各種アニールに対応し、昇温時間と反応後の冷却時間を短くするために高速昇降温ヒーターを採用し、リアクターの熱容量を最小化しています。

同じ熱の話は、後ろの工程にも及びます。先に打ち込んだ不純物は、その後の高温で動きます。枚葉で短く焼く選択は、熱バジェットの節約と、1時間あたりの枚数との取り替えになります。どちらを取るかは、その膜が薄いかどうか、溝の内壁が相手かどうかで決まります。

ISSGとは何ですか?

酸化に使う水蒸気を、加熱したウェーハのある反応室の中でその場で作りながら進める、枚葉式の酸化のやり方です。名前のIn Situ Steam Generationが、その場で水蒸気を作るという意味を表しています。

炉でまとめて焼く酸化と、何が異なるのですか?

1回に処理するウェーハの枚数と、熱をかける時間です。バッチ式では数十枚を一定間隔に並べ、800〜1200℃で数十分から数時間加熱します。枚葉のランプ加熱では、数十秒で1,000℃まで上げられます。

なぜ枚葉で短く焼くやり方が要るのですか?

薄い膜を作るためです。枚葉式の赤外線ランプアニール装置では厚さ10nm以下の超薄型シリコン酸化膜を作れ、多品種小ロットの生産にも向きます。ISSGの膜は炉のウェット酸化より電気特性が優れるという報告もあります。

現場では何を測っているのですか?

膜の厚さと光学定数です。炉酸化でも枚葉酸化でも、ロットごとの管理項目は膜厚とn/kです。

温度はどうやって測るのですか?

ウェーハに触れずに測ります。高温のウェーハは汚染されるため接触式の温度計を当てられず、炉では石英の保護管に入れた熱電対で反応管の内側の温度を先に測っていました。ランプ加熱の装置では放射温度計を使い、ハイソルの装置は450〜1250℃の範囲を測るパイロメータを備えます。

酸化がずれると、どうなりますか?

多くの場合、そのまま次工程へ流れます。LSIの製造でやり直しができるのはホトリソくらいで、洗浄にも回数の制限があるものがあります。

炉は使われているのですか?

使われています。東京エレクトロンは、バッチ式の熱処理装置がホットウォール内の熱均衡空間での加熱によって良好な膜質を実現するとしており、同社のTELFORMULAは常圧および減圧の酸化、ラジカル酸化、酸窒化、各種アニールに対応します。

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