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ドライ酸化とは

ドライ酸化とは、酸素ガスだけを流した高温の炉でシリコンの表面を酸化させ、酸化シリコンの膜を育てる方法です。 水蒸気を使うウェット酸化より成長が遅く、厚い膜には時間がかかります。その遅さのおかげで薄い膜の厚さを合わせやすく、膜もち密になるので、ゲート絶縁膜のように薄くて質の高い膜はドライ酸化だけで育てます1。

熱酸化はシリコン自身を膜に変え、厚さの44%は元の表面より下にできる

Section titled “熱酸化はシリコン自身を膜に変え、厚さの44%は元の表面より下にできる”

成膜の方法はスパッタ、CVD、熱酸化の三つに大きく分かれます2。熱酸化は、酸素などのガスを入れた反応室でウェーハを加熱し、表面に酸化シリコンの膜を作る方法で、多数枚をまとめて処理できるため生産性も高くなります。外から材料を運んで積むCVDと違い、熱酸化では下地のシリコンが膜の材料になります。

1,000Åの熱酸化膜を作るときには、表面のシリコン440Å分が反応に使われ3、シリコンは2.27倍の厚みの膜に育ちます。何もないシリコン表面を酸化すると、膜厚の44%が元の表面より下に、56%が上にできます4。1,000Åの膜に当てはめると、元の表面から下へ440Å、上へ560Åです。

酸化で使われるシリコン
酸化前酸化後シリコン元の表面O2熱酸化膜シリコン560Å440Å1,000Å
1,000Åの熱酸化膜のうち440Åは元の表面より下のシリコンを酸化してできた部分で、上へ伸びるのは560Åです。

酸化に何を当てるかで名前が分かれます。MOSトランジスタのゲート絶縁膜は1000℃程度の高温の熱酸化で作られてきており5、酸化種は酸素(O2)分子と水(H2O)分子です。熱酸化は通常800〜1200℃で行い、分子状の酸素を酸化剤に使うものをドライ酸化、水蒸気を使うものをウェット酸化と呼びます4。

酸素は膜を通り抜けて界面で反応するので、膜が厚いほど成長が鈍る

Section titled “酸素は膜を通り抜けて界面で反応するので、膜が厚いほど成長が鈍る”

熱酸化膜は、膜厚が厚いほど成長速度が遅くなります。酸素はすでにできた熱酸化膜の中を突き抜けて、膜とシリコンの界面にたどり着く必要があり3、膜が厚くなるほど通り抜ける距離が伸びて、到達までに時間がかかるためです。薄い領域では時間あたりの膜厚の変化が大きく、厚い領域では時間をかけても膜厚が増えにくくなります。成長速度の見積もりにはDeal-Groveモデルがよく使われます4。

膜厚と成長速度
O2O2酸化膜シリコンシリコン界面薄い膜厚い膜膜厚酸化時間成長が速い成長が鈍る
酸素は膜を通り抜けて界面で反応するので、膜が厚いほど届くまでの道のりが伸び、同じ時間で増える厚さが小さくなります。

ドライ酸化は時間あたりに育つ厚さが小さく、ウェット酸化より遅い工程です1。厚い膜が要る工程では炉の時間を食いますが、数nmの膜を目標の厚さで仕上げる工程では、この遅さが有利に働きます。速く育つ方法では、目標の厚さを通り過ぎる余地が大きくなるためです。フィールド酸化膜はゲート酸化膜よりずっと厚く、成長速度はウェット酸化のほうが速くなります1。

実習の手順では、1000℃の乾燥酸素で40分かけて約40 nmを育てる

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ジョージア工科大学の実習では、酸素だけでシリコン基板を熱酸化し、約40 nmの薄いゲート酸化膜を育てます1。酸化温度は1000℃で、炉は毎分10℃で昇温するので、900℃から1000℃までに約10分かかります。炉には乾燥した酸素を流し、流量計で2000 sccmに合わせます。手順は、窒素中でウェーハを入れ、乾燥酸素で40分酸化し、窒素中で取り出す流れです。

ゲート酸化の手順例
炉の温度時間1000℃900℃毎分10℃10分40分膜厚 約40 nmN2で投入乾燥O2 2000 sccmN2で取出し
900℃から毎分10℃で約10分かけて1000℃まで上げ、乾燥酸素を2000 sccm流して40分酸化すると、約40 nmのゲート酸化膜ができます。

現場で動かすものは、炉の温度分布、流すガスの種類と流量、保持する時間です。測るものは仕上がった膜厚と面内のばらつきで、目標との差を次のロットの時間と温度へ返します。

同じ炉は、ガスを替えれば別の工程にもなります。共用の横型ウェハー酸化炉では、試料室を乾いた酸素の雰囲気にも、水分を含んだ酸素の雰囲気にも、窒素の不活性ガス雰囲気にもでき6、使用ガスはO2、N2、H2Oです。ガスを切り替えるだけで、ドライ酸化にもウェット酸化にもアニールにもなります。この炉の常用温度は1100℃、到達時間は2時間で、4インチのウェーハを一度に25枚まで入れられます。

膜が薄いほど、酸化前の表面と炉の清浄さが仕上がりを決める

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酸化はシリコンの表面をそのまま取り込む反応なので、酸化前の表面に残ったものは膜と界面に持ち越されます。ゲート絶縁膜を作る前には、洗浄でパーティクル汚染、金属汚染、有機物汚染を除去してから酸化します5。炉の側も汚さないように運用され、先の共用炉では炉心管の汚染を防ぐため、金属の付いた試料やSi以外の基板を入れられません。

膜を薄くするほど、前工程への要求は厳しくなります。等価酸化膜厚が0.7nm以下になる領域では、従来の酸化炉や7RTAの前洗浄より低い炭素濃度と酸素濃度が要求されてきました。膜そのものを測っても分かることには限りがあり、酸化炉に入る前の状態が仕上がりを左右します。

炉の構造も、この問題と向き合ってきました。1960年代前半の横型拡散炉では、800〜1,100℃程度に加熱した炉へ酸素または水蒸気を含んだ酸素を流して8シリコン酸化膜を作っていました。横型炉は石英ボートに100〜150枚のウェーハを並べて全体を加熱する構造で、挿入時に巻き込む大気で自然酸化膜が成長することが微細化の障害になり始めました9。1986年に国際電気から酸化・拡散・CVD用の縦型炉が販売され、ウェーハの回転機構によって面内の均一性が大きく向上しました。縦型炉はいまも、200mmラインで酸化・拡散・アニール・CVDを担う装置として更新が続いています。

遅い成長は時間と熱バジェットを使い、OH基のないち密な膜を得る

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一つ目の代償は、時間と熱です。昇温だけで時間がかかり、厚くするほど育ちが鈍るので、厚い膜をドライ酸化だけで作ると炉の占有時間が伸びます。同時に、ウェーハがすでに持っている不純物の分布も動きます。使った熱は熱バジェットの合計へ足されるため、工程の後ろへ行くほど使いにくくなります。

二つ目は、使える場面の狭さです。熱酸化が進むのは露出したシリコンの上に限られ、下地が金属や絶縁膜になった後の工程では別の方法へ移ります。膜そのものが要るだけなら、外から材料を運ぶLPCVDやCVDがあります。

引き換えに得るのが膜質です。ドライ酸化の膜は原理的に水酸基(OH基)を含まず10、水蒸気を使うパイロジェニック酸化より高い温度で酸化するためち密になります。これが絶縁破壊電界が高くなる理由です。シリコンの熱酸化膜の絶縁破壊電界は、一般に約12MV/cmです。

膜の質と界面の質は別々に決まる

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東芝が炭化ケイ素(SiC)の炭素面に1,100℃のドライ酸化で作ったMOSキャパシタでは、絶縁破壊電界がシリコンの酸化膜と同等の12MV/cm付近に分布しました。一方、ドライ酸化だけで作ったトランジスタは界面準位密度が高く、チャネル移動度は測定できないほど低くなりました。東芝は、ドライ酸化でち密な膜を作った後に水蒸気で界面を作り直す組み合わせを考案し、破壊までの注入電荷量を17.5C/cm2まで伸ばしています。膜の内部はドライ酸化で作り、界面はその後の処理で作り分けます。

ドライ酸化とは何ですか?

酸素ガスだけを流した高温の炉でシリコンの表面を酸化させ、酸化シリコンの膜を育てる方法です。熱酸化の酸化種には酸素(O2)分子と水(H2O)分子があり、ゲート絶縁膜は1000℃程度の熱酸化で作られてきました。このうち酸素分子を使うのがドライ酸化です。

「ドライ」とは何が乾いているのですか?

炉に流すガスです。乾いた酸素だけを流すのがドライ酸化、水蒸気を使うのがウェット酸化です。熱酸化は通常800〜1200℃で行います。

膜はどこから来るのですか?

ウェーハ自身のシリコンから供給されます。1,000Åの膜を作るときにはシリコン440Å分が使われ、膜厚の44%が元の表面より下に、56%が上にできます。

なぜ膜が厚くなるほど育ちが遅くなるのですか?

酸素が、すでにできた膜を通り抜けてから下のシリコンに届くためです。膜厚が増えるほど通り抜ける距離が伸び、界面に届くまでに時間がかかります。

ウェット酸化とどう違いますか?

成長速度と膜質が違います。水蒸気を使うパイロジェニック酸化はドライ酸化より酸化力が強く、ドライ酸化の膜は原理的に水酸基(OH基)を含まず、ち密になります。

現場では何を動かすのですか?

炉の温度と、流すガスと、時間です。実習の手順では1000℃で乾燥酸素を2000 sccm流し、40分で約40 nmのゲート酸化膜を育てます。共用の横型酸化炉はO2、N2、H2Oを切り替え、乾いた酸素、水分を含んだ酸素、窒素のどの雰囲気にもできます。

ドライ酸化の膜なら界面もよくなりますか?

膜の質と界面の質は別に決まります。東芝が炭化ケイ素(SiC)の炭素面で試作した例では、1,100℃のドライ酸化で絶縁破壊電界が12MV/cm付近に届いた一方、ドライ酸化だけで作った素子は界面準位密度が高く、チャネル移動度が測定できないほど低くなりました。

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