金属汚染とは
金属汚染とは、ウェーハの表面に付いた微量の金属のことで、洗浄工程が取り除く汚れの1つです。 汗が蒸発したあとに残るナトリウムや、工場で使う薬液へわずかに混じる重金属の原子がその例です。ppbの桁で入れた元素が電気抵抗を左右する材料なので、同じ桁で紛れ込んだ金属も同じ重さを持ちます。金属を落とすのも薬液なので、洗う液の純度はそのまま洗浄の性能になります。
ppbの桁で抵抗を決める材料に、同じ桁の金属が入る
Section titled “ppbの桁で抵抗を決める材料に、同じ桁の金属が入る”ウェーハから取り除く汚れは、ゴミ、金属汚染、有機汚染、油脂、自然酸化膜の5つに分かれます1。金属汚染の出どころは人と薬液で、蒸発した汗に含まれるナトリウムや、工場内で使う薬液に含まれる微量な重金属原子が表面に残ります。
出発点の材料の純度が、この微量の重みを示します。シリコンウェーハは、金属不純物の濃度をppb以下(1ppbは10億分の1)まで下げた多結晶シリコン2にホウ酸(B)やリン(P)を添えて石英のルツボへ入れ、約1420度で融かして作ります。SUMCOは、ここで足したわずかなホウ酸やリンの量が、できあがる半導体の電気抵抗の高さを調整し、その特性を確定させるとしています。シリコンウェハは極端に純粋な状態で届き、工場はその状態を工程の間じゅう保ちます。
紛れ込んだ金属は、デバイスの電気的特性に表れます。ウエハ上の金属不純物は半導体デバイスの電気的特性を致命的に劣化させ、PN接合の電流リーク、酸化膜の耐圧不良、キャリアライフタイムの低下を招きます。金属が装置や配管を通って別のウェーハへ移ることは、クロスコンタミネーションと呼びます。
粒子は個数で、金属は元素の量で表す
Section titled “粒子は個数で、金属は元素の量で表す”金属汚染とパーティクルは、どちらも「汚染」と呼ばれますが、現場で比較する数字の形が違います。パーティクルは何マイクロメートル以上を何個という数え方をします。金属は原子として表面に広がるため、元素の種類と量で表します。
DRAMの集積度ごとに求められる超純水の水質でも、2種類の単位が並びます3。微粒子の欄は個/Lで、0.1マイクロメートルの50〜500個/Lから、世代が進むにつれて0.02マイクロメートルの10個/L未満まで下がります。重金属イオンの欄はppbで、256k世代の1000ppb程度から、256M〜1G世代の1ppb未満まで下がります。
ppbの桁で問題になる理由は、水そのものの性質にも表れます。栗田工業は、超純水にFe²⁺イオンが1μg/L溶けただけで抵抗率が17MΩ・cmに下がるとし3、溶けた物質がμg/L(ppb)の濃度でも問題になるほど超純水への要求は厳しくなっているとしています。
TXRFは、X線を寝かせて表面の約5ナノメートルだけを測る
Section titled “TXRFは、X線を寝かせて表面の約5ナノメートルだけを測る”金属汚染の測定で広く使われるのが、全反射蛍光X線分析(TXRF)です。リガクのTXRF装置は、周期表のほぼ全域にあたるナトリウムからウランまでを、非破壊で分析できます4。
仕組みは、X線を当てる角度にあります。材料ごとに臨界角という固有の角度があり、入射角がそれより大きいときは、X線が表面の奥まで進みます。入射角を臨界角より小さく寝かせると全反射が起こり、返ってくる蛍光X線は表面に載った汚染物から出たものだけになるため、下地の材料に由来する背景の信号は分離されます。この条件でX線が入り込む深さは、理論上およそ5ナノメートルです。TXRFの測定値は表面についての量で、現場では洗浄で落とせたかどうかの合否に使います。
リガクは、蒸気相分解(VPD)機能を併せることで最低検出限界を向上させるとし、製造過程の汚染を計測技術で防ぐうえでのインラインモニタリングの重要性5も挙げています。測る目的は、落とせたことを確かめることと、いつどこで入ったかを絞り込むことの2つです。
落とす側は、汚染の種類ごとに薬液の槽を並べる
Section titled “落とす側は、汚染の種類ごとに薬液の槽を並べる”汚染の種類ごとに薬液を分けます。最も普及した洗浄装置はウェットステーションで、1つの槽で使える薬液は1種類のため、落としたい汚染の数だけ薬液の槽が並びます1。薬液どうしが混じるのを防ぐため、槽は薬液と純水が交互に来る並びになります。金属を溶かして流す薬液は、その並びの1槽にあたります。薬液を性質で分ける考え方はRCA洗浄の骨格でもあり、塩酸と過酸化水素を含む酸性のSC-2が金属汚染を受け持ちます。
搬送の間にも汚染は進みます。通常のウェットステーションでは、ウェーハが槽から槽へ運ばれる間に、空気中のわずかな不純物が表面へ触れて、かすかな汚染が起こりえます。SCREENが挙げるワンバス型ウェットステーションは、1つの槽で薬液洗浄と水洗の両方を行い、薬液を純水で置き換えてから水洗するため、ウェーハが大気に触れる場面を省けます。厳しい洗浄の後の乾燥では、窒素ガスの中で乾燥させる方法も普及しています。
レジスト除去では、速さと金属の除去を引き換える
Section titled “レジスト除去では、速さと金属の除去を引き換える”プラズマアッシングは、レジストを酸素プラズマと反応させて気体に変える方法で、レジスト剥離で最もポピュラーな方法です6。ただし、レジストの中身には重金属などの不純物もわずかに混じっていて、これは気化しないのでアッシングの後も表面へ残ります。そのため、続けてウェットステーションで洗う形が望ましいとされています。
ウェットステーションでレジストを剥離する利点は、生産性の高さと、レジストへわずかに混じった重金属まで一緒に落とせる点です。欠点は、レジストを溶かす薬液が、レジスト以外の場所へも余計な影響を及ぼしうる点です。そのため、微細な回路の工程ではプラズマアッシャが、比較的ラフな回路の工程ではウェットステーションが選ばれる傾向にあります。
洗う液の純度は、洗浄の性能そのもの
Section titled “洗う液の純度は、洗浄の性能そのもの”金属汚染の出どころに薬液がある以上、薬液と超純水の純度は洗浄の性能そのものです。純度の低い液は、洗浄をそのまま汚染の供給へ変えます。超純水の重金属イオンの許容値は、DRAMの世代とともに1000ppb程度から1ppb未満まで下がりました。金属汚染を1桁下げる判断は、洗浄レシピだけでなく、薬液の調達と水処理の設備まで巻き込みます。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”金属汚染とは何ですか?
ウェーハの表面に付いた微量の金属で、洗浄で取り除く汚れの1つです。汗が蒸発したあとに残るナトリウムや、工場で使う薬液へわずかに混じる重金属の原子がその例です。
どこから来るのですか?
主に人と薬液です。汗のナトリウムは人から、微量の重金属原子は工場で使う薬液から入り、レジストにわずかに混じる重金属も表面に残ります。洗うために使う液が、同時に金属を持ち込む経路にもなります。
パーティクルとどう違いますか?
表し方が違います。パーティクルは大きさのしきい値を決めて個数で数え、金属は原子として広がるため元素の種類と量で表します。超純水の水質目安でも、微粒子は個/Lで、重金属イオンはppbで並びます。
どうやって測るのですか?
全反射蛍光X線分析(TXRF)が広く使われます。リガクのTXRF装置は、周期表のほぼ全域にあたるナトリウムからウランまでを、非破壊で調べられるとされています。
なぜ全反射を使うのですか?
表面だけを対象にするためです。入射角を臨界角より小さくすると全反射が起こり、返ってくる蛍光X線は表面に載った汚染物から出たものだけになって、下地の材料に由来する背景の信号が分離されます。このときの浸透深さは、理論上およそ5ナノメートルです。
どうやって落とすのですか?
汚染の種類ごとに薬液を分けます。最も普及した洗浄装置であるウェットステーションでは、落としたい汚染の数だけ薬液の槽が並び、金属を溶かして流す薬液はそのうちの1槽にあたります。RCA洗浄では、塩酸と過酸化水素を含む酸性のSC-2が金属汚染を受け持ちます。
レジストを灰にすれば金属まで片づきますか?
重金属は表面に残ったままになります。レジストに混じる重金属などの不純物は気化しないのでアッシングの後も表面へ残り、続けてウェットステーションで洗う形が望ましいとされています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”6件を表示
- 1SCREENセミコンダクターソリューションズ:洗浄工程screen.co.jp ab
- 2SUMCO:シリコンウェーハの製造方法sumcosi.com ↩
- 3栗田工業:水処理教室 No.014 純水よりはるかに純度が高い超純水kcr.kurita.co.jp ab
- 4リガク:全反射蛍光X線分析装置rigaku.com ↩
- 5リガク:半導体計測装置rigaku.com ↩
- 6SCREENセミコンダクターソリューションズ:レジスト剥離screen.co.jp ↩