ミニエンバイロメントとは
ミニエンバイロメントとは、ウェハが空気に触れる場所だけを囲い、その内側を高い清浄度に保つ方式です。 部屋の全域を最高水準へ引き上げる代わりに、守る範囲を狭く絞ります。囲いの内側を守ることで、部屋そのものはISOクラス6程度まで緩められました。ただし清浄化の費用が消えるわけではなく、送風のエネルギーは部屋から囲いへ移ることがあり、温湿度の懸念は製造装置の側が受け持ちます。
費用は床面積で増え、ウェハが空気に触れる場所は限られる
Section titled “費用は床面積で増え、ウェハが空気に触れる場所は限られる”前工程のクリーンルームで、いちばん高くつくのは面積です。天井いっぱいのフィルタ、床下の吸い込み、それらを回し続ける循環風量は、床面積に比例して増えます。一方で、ウェハが室内の空気へ直接さらされる場所は、装置の内部と、装置へ受け渡す一瞬に限られます。守る範囲と費用を払う範囲がずれていることが、この方式の出発点です。
ローレンス・バークレー国立研究所(LBNL)は、ミニエンバイロメントを製品や工程を周囲の環境から隔てるために囲いでつくる局所的な環境1と定義しています。新菱冷熱工業は、工場全体の清浄度を上げるより、半導体生産装置の周辺など半導体が触れる空間だけをきれいにするほうが効果的2だとしています。
搬送はオープンカセットからSMIF、FOUPへ閉じていった
Section titled “搬送はオープンカセットからSMIF、FOUPへ閉じていった”1980年代頃までのウェハ搬送は、カセットのまま工場内を運ぶオープンカセット方式で、ウェハ表面の清浄度がクリーンルームの清浄度に依存していました3。1980年代中頃に樹脂製のSMIFが登場してウェハが室内の空気へ直接触れる場面が減り、2000年以降の300mm量産工場では樹脂製のFOUPとOHTによる自動搬送が採用されました。
この変化は清浄度クラスの数字に表れます。1990年頃に主流となったベイ方式では、壁で仕切ったプロセスエリアをISOクラス3〜4、その周囲をクラス6〜7としていました。2000年頃からのFOUP方式では、間仕切壁をほとんど省いたボールクリーンルームが主流になり、部屋全体をISOクラス6程度まで緩められました。装置の内部やストッカ、移載装置など、ウェハがじかに空気へ出る場所では高い清浄度を保っています。
囲いはFOUP、ロードポート、EFEMの3か所に割り振る
Section titled “囲いはFOUP、ロードポート、EFEMの3か所に割り振る”現場では、囲いを3つの受け持ちへ割り振ります。
- 搬送中はFOUPが受け持ちます。信越ポリマーはFOUP300EXについて4、最大25枚の300mmウェハを安全に運べ、優れた密閉性で外部からのパーティクルや汚染を防ぎ、パーティクルの発生を抑えて寸法精度を保つ単一成型品だとしています。
- 受け渡しはロードポートが受け持ちます。FOUPの扉と装置側の扉をまとめて開き、内側どうしだけをつなぎます。
- 装置の前室はEFEMが受け持ちます。RORZEはACE EFEMについて5、25スロットの300mm FOUP(SEMI E47.1)と25スロットの300mm FOSB(SEMI M31)に対応し、消費電流4kVAにFFUを含むとしています。ケミカルフィルタもオプションに挙げています。
囲いを工場へ組み込む決まりも整えられてきました。欧州のMESICプロジェクトは、ミニエンバイロメントをIC製造施設へ統合するための標準6を示しています。
囲いが開けば、ウェハは部屋の清浄度にさらされる
Section titled “囲いが開けば、ウェハは部屋の清浄度にさらされる”3つの囲いが働いている限り、クリーンルームそのものへ要求する清浄度は一段緩められます。逆に、囲いのどこかが開いたままウェハが室内へさらされれば、ウェハ表面の清浄度は部屋の清浄度と同じところまで落ちます。ISO14644-1の表では、粒径0.5μm以上の上限濃度がISOクラス3で1立方メートルあたり35個、ISOクラス6で35,200個です3。35,200を35で割ると、約1,000倍の開きになります。LBNLも、ミニエンバイロメントを使うと粒子の清浄度を数桁改善できるとしています。
部屋を緩めると費用は下がるが、送風のエネルギーは囲いの側へ移り得る
Section titled “部屋を緩めると費用は下がるが、送風のエネルギーは囲いの側へ移り得る”ITRS 2005年版のファクトリインテグレーションの章は、ミニエンバイロメントや隔離技術(SMIF、FOUP)によるクリーンルーム清浄度の緩和が、初期投資と同様に運用コストも抑えるとしています7。FOUPを使うボールクリーンルームについては、従来型と比べてランニングコストを約40%下げられたという2006年の報告があります3。LBNLのベストプラクティスも、クリーンルームの空調を適正な規模にすることと並べてミニエンバイロメントの採用を挙げ、汚染の制御を改善し、大きなエネルギーを節約できるとしています8。
ただし、送風のエネルギーが消えるわけではありません。LBNLは、エネルギーの使いどころが従来のクリーンルームの空調から、個々の工程を囲うミニエンバイロメントへ移り得るとしています。囲いの内側の換気回数は、高さによっては、同じ清浄度クラスを狙う一般的なクリーンルームの循環空気の換気回数をはるかに上回ることがあります。
その移り先を測った例があります。LBNLは、床が2フィート×4フィート、内部の高さが7フィート7インチのミニエンバイロメントで、天井のファンフィルタユニットから給気し、前面の下寄りの排気口から抜く形を使いました。さまざまな運転条件で、気流の量、電力、圧力を測る設計です。FFUの吹き出し面の平均風速はマノメータにつないだ風速グリッドで測り、空気を送る系統へ供給される電流、電圧、力率、実電力を電力計で記録しています。
気流を減らした分の懸念は、製造装置の側が受け持つ
Section titled “気流を減らした分の懸念は、製造装置の側が受け持つ”清浄度要求の緩和は気流の削減を伴うため、温度、湿度、清浄度、メンテナンスに関する懸念を生みます。ITRS 2005年版はこの懸念を製造装置の側で受け持つ必要があるとし、一般のファブ清浄度がISOクラス6になった場合には、装置内に組み込むか、局所清浄空気をつくる可搬型の換気フードを使う必要があるとしています。
囲いの内側にも課題があります。FOUPのような箱を使う仕組みは主に粒子の汚染を抑える目的で組み立てられており、箱を構成する樹脂から出るアウトガスやプロセスガスによるクロスコンタミネーションで、箱の内側が汚れる点が今後の課題です。箱の中の清浄化には、クリーンドライエアーなどを使う技術が注目されています。部屋を緩めた分の管理は、装置と箱の中へ移ります。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”ミニエンバイロメントとは何ですか?
ウェハが空気に触れる場所だけを囲い、その内側を高い清浄度に保つ方式です。新菱冷熱工業は、工場の全域の清浄度を上げるよりも、半導体生産装置の周辺など製品が空気に触れる範囲へ清浄化を絞るほうが効果的だとしています。
部屋全体を清浄にする方式と何が違いますか?
費用を払う範囲が違います。部屋の全域を高い清浄度に保つ場合、フィルタも循環風量も床面積に比例して増えます。囲いの内側だけを高い清浄度に保てば、部屋そのものへ要求する水準を一段緩められ、エネルギーの使いどころは部屋から囲いへ移ることがあります。
どこを囲いますか?
3か所へ割り振ります。搬送中はFOUP、受け渡しはロードポート、装置の前室はEFEMが受け持ちます。RORZEはACE EFEMについて、25スロットの300mm FOUPに対応し、消費電流4kVAにFFUを含むとしています。
部屋の清浄度はどこまで緩められますか?
1990年頃のベイ方式ではプロセスエリアがISOクラス3〜4、その周囲がクラス6〜7でした。FOUPを使うボールクリーンルームでは、部屋全体をISOクラス6程度まで緩められました。
囲いが開いたままになるとどうなりますか?
ウェハ表面の清浄度が、部屋の清浄度そのものになります。粒径0.5μm以上の上限濃度はISOクラス3で1立方メートルあたり35個、ISOクラス6で35,200個で、割ると約1,000倍の開きです。
費用はどれくらい下がりますか?
FOUPを使うボールクリーンルームでは、従来型と比べてランニングコストを約40%下げられたという2006年の報告があります。
代わりに何を払いますか?
清浄度要求の緩和は気流の削減を伴うため、温度、湿度、清浄度、メンテナンスに関する懸念を生みます。ITRS 2005年版は、これらの懸念を製造装置の側で受け持つ必要があるとしています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- クリーンルームとは── 部屋そのものの清浄度を受け持つ側です
- 気流(ダウンフロー)とは── 部屋の側で粒子を運び去る仕組みです
8件を表示
- 1ローレンス・バークレー国立研究所:ミニエンバイロメントの気流と電力の測定報告(LBNL-56767)eta-publications.lbl.gov ↩
- 2新菱冷熱工業:クリーンルームshinryo.com ↩
- 3電子情報通信学会:知識ベース 10群2編5章 クリーン化技術ieice-hbkb.org abc
- 4信越ポリマー:FOUP300EXshinpoly.co.jp ↩
- 5RORZE:ACE EFEMrorze.com ↩
- 6欧州委員会 CORDIS:MESICプロジェクト概要cordis.europa.eu ↩
- 7JEITA 半導体技術ロードマップ専門委員会:ITRS 2005年版 ファクトリインテグレーションsemicon.jeita.or.jp ↩
- 8ローレンス・バークレー国立研究所:クリーンルーム空調の省エネルギーのベストプラクティスbies.lbl.gov ↩