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RCA洗浄とは

RCA洗浄とは、過酸化水素を基本にした薬液の組み合わせで、シリコンウェーハから有機物・粒子と金属汚染を落とす洗浄体系です。 アルカリ性のSC-1と酸性のSC-2を順に流し、性質の異なる汚染を薬液を分けて片づけます。

SC-1が粒子を落とす作用は、表面をわずかに溶かす作用そのものです。粒子除去と表面の荒れは同じ作用の裏表で、微細化が進むほど濃度と時間の設計が結果を左右します。

有機物・粒子と金属は、同じ薬液では落ちきらない

Section titled “有機物・粒子と金属は、同じ薬液では落ちきらない”

ウェーハ表面に付く汚染は、種類ごとに性質が異なります。有機物と粒子は物理的に載っており、金属汚染は表面に取り込まれています。同じ薬液で両方を狙うと、どちらかが不十分になります。

そこで2種類の薬液を順に流します。SC-1はアンモニアと過酸化水素を含むアルカリ性で、有機物と粒子を落とします。SC-2は塩酸と過酸化水素を含む酸性で、金属汚染を落とします。過酸化水素水にアンモニア水を加えて超純水で希釈したAPM(SC-1)は、ウェーハ表面のわずかなエッチングと異物の再付着防止機能を併せ持ちます1。過酸化水素水に塩酸を加えたHPM(SC-2)は、強酸性と強酸化性で金属汚染の除去に役立ちます。

1970年に発表されたRCA洗浄は、今なおウェット洗浄の基盤技術とされています。RCA洗浄の名は、1975年頃にRCA社のKernらが考案したレシピの総称2としても使われ、この場合は高温・高濃度の硫酸過水、室温の希フッ酸、アンモニア水と過酸化水素水、塩酸と過酸化水素水による洗浄方法を含みます。シリコンウェーハ洗浄技術の変遷をまとめた標準的な参照文献は、W. Kernの査読論文「The Evolution of Silicon Wafer Cleaning Technology3」です。

SC-1 と SC-2 ─ 汚染を性質で分けて落とす
SC-1(アルカリ性)NH₄OH + H₂O₂ + H₂O対象:有機物・粒子酸化膜がわずかに溶ける→ 粒子が浮いて剥がれる表面の荒れも同じ作用で進むSC-2(酸性)HCl + H₂O₂ + H₂O対象:金属汚染金属が溶けて流れる接合の電気特性を守る最後に純水でリンスする
SC-1はアルカリ性で、表面の酸化膜をわずかに溶かして粒子を浮かせ、有機物とともに落とします。SC-2は酸性で、表面に取り込まれた金属を溶かして流します。性質の異なる汚染を、薬液を分けて順に片づけます。

SC-1は表面を溶かして粒子を浮かせ、過酸化水素が過度のエッチングを防ぐ

Section titled “SC-1は表面を溶かして粒子を浮かせ、過酸化水素が過度のエッチングを防ぐ”

SC-1は、過酸化水素でシリコン表面を酸化し、その酸化物をアルカリのアンモニアでエッチングして、リフトオフで各種パーティクルを落とします4。粒子の下のシリコン酸化膜が溶けると、パーティクルが表面から浮きます。pH10.5付近のSC-1液中ではシリコン基板とパーティクルのゼータ電位がともに負になるため、静電反発力による除去と再付着の防止が同時に進みます。

アンモニア水単独では、基板表面のエッチングが激し過ぎます5。過酸化水素水を加えて表面を薄く酸化させ、過度のエッチングを防いでいるので、過酸化水素はここでブレーキの役です。

酸性側では、pHが0〜2程度の溶液中で多くの金属が溶解してイオンとして安定に存在するため、ウェーハ上の金属不純物も溶解して除去されます。SC-1とSC-2の役割分担は、pHという1本の軸の両端にあります。

pHが対象を、酸化還元電位が強さを決める

Section titled “pHが対象を、酸化還元電位が強さを決める”

酸化還元電位が高いと金属の溶解性や有機物の分解性が高くなり、pHが高いアルカリ性ではウェーハと粒子がともに負に帯電して付着が抑えられます6。東芝はこの2軸の上で、SPMは有機物と金属、SC-2は金属、SC-1はパーティクルの除去に優れると位置づけています。

過酸化水素とオゾンはアルカリ性の雰囲気では分解するため、高い酸化還元電位を持つアルカリ洗浄液の開発は難しいものでした。東芝は、有機アルカリの塩酸塩を電解した洗浄液をSC-1と同じpH10.2に調製し、酸化還元電位がSC-1の3.6倍、エッチング速度がi線(波長365 nm)露光用レジストで2.0倍、タングステンで29.2倍になったと報告しています。

pHで対象が決まり、酸化還元電位で強さが決まります
上へ:金属の溶解性と有機物の分解性が上がりますSPM有機物の分解と金属除去SC-2(pH 0〜2)金属を溶かして流すDHF自然酸化膜を溶かすSC-1(pH 10.5前後)粒子を浮かせて剥がす電解した有機アルカリの塩酸塩同じpH 10.2でORPは3.6倍pHが低い(酸性)pHが高い(アルカリ性)右へ:ウェーハと粒子がともに負に帯電し、静電反発が働きます過酸化水素とオゾンはアルカリ性で分解するため、右上は作りにくい領域です
pHが落とす対象を、酸化還元電位が強さを決めます。SC-1とSC-2が別の薬液に分かれる理由も、アルカリ性で酸化還元電位が高い右上の領域が長く空いていた理由も、この2軸の上で読めます。

混合比、温度、薬液の寿命が、現場で動かすつまみになる

Section titled “混合比、温度、薬液の寿命が、現場で動かすつまみになる”

第一のつまみは混合比です。一般的なAPM洗浄液の組成は、アンモニア水と過酸化水素水と水の容量比1:4:20で、このときのアンモニア濃度は約1 %です。関東化学は、容積比1/2/12のSC-1洗浄液を比較の基準に使っています。アンモニア側へ振れば粒子の落ち方が良くなり、同時に表面の荒れとタングステンなどの露出膜の目減りが増えます。過酸化水素側へ振れば表面の酸化が勝ち、荒れは減る一方で粒子の抜けが悪くなります。

第二のつまみは温度です。SC-1とSC-2は、ともに70℃前後の加熱プロセスです。上げれば反応が速く進み、下げれば薬液の寿命と表面の荒れが有利になります。希フッ酸以外の薬液はすべて高温で用いるため、エネルギー消費と濃度の維持の難しさが以前から問題として指摘されてきました。その答えとして、APMとHPMの低濃度化と低温化という部分的な変更が半導体製造各社に普及しました。

第三のつまみは、薬液の作り方と装置です。東京エレクトロンは、ZETA+シリーズ7の適用プロセスにRCA洗浄とDHFウェットエッチを挙げ、最大8種類の薬液供給と密閉式のシングルチャンバーを備えて、各薬液の混合比や濃度、温度をレシピで設定できるとしています。薬液側では、キレート剤を加えて金属水酸化物の形成を妨げる方法があります。ただし代表的なEDTAは、SC-1洗浄液の調製直後には各種金属とキレート結合を作るものの、30分ほどで結合が不安定になります。pH10.5付近では、アルミニウムのような両性金属とのキレート形成もごく限られます。薬液の寿命そのものが管理項目になります。

結果を測る単位も決まっています。関東化学は、洗浄液へ各種金属不純物を1〜10 ppbの範囲で強制的に加えて再付着を測り、開発した洗浄液で銅、鉄、アルミニウムを10¹⁰ atoms/cm²のレベルまで落とせたとしています。住友化学は、粒子側の測定に0.23 μmの標準ポリスチレン粒子を使い、原子間力顕微鏡で測った表面荒れを算術平均粗さ0.45 nmから0.36 nmという桁で示しています。

骨格を保ったまま、希薄化と枚葉化で使われ続けている

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RCA洗浄は、濃度と装置の形を変えながら使われています。薬液の使用量と表面の荒れという2つの課題に対して、濃度を下げた希薄版、1枚ごとに新しい薬液を使う枚葉式装置への適用、DHFやSPMなど目的別の薬液との組み合わせとして発展してきました。

関東化学は、300 mmウェハの導入で、数十枚を1槽でまとめて浸漬するバッチ式から枚葉式洗浄装置への移行が加速したとし、枚葉式ではスループットの向上が必至なため、従来のRCA洗浄では対応が難しくなりつつあるとしています。同社の希薄側の例では、開発した酸タイプの洗浄液を室温で10〜30倍に希釈して使えるとしています。

2つの課題が、発展の向きを決めています
2つの課題薬液の使用量表面の荒れこの2つに答える形で発展しています発展の形濃度を下げた希薄版枚葉式装置への適用1枚ごとに新しい薬液を使います目的別の薬液との組み合わせDHFやSPMなどと組みます骨格は共通です ── 過酸化水素を基本に、有機物・粒子を落とす側と金属を落とす側を分けます
薬液の使用量と表面の荒れという2つの課題が、希薄版、枚葉式装置への適用、目的別の薬液との組み合わせという発展を導いています。過酸化水素を基本に、落とす対象で薬液を分ける骨格のほうは共通のまま引き継がれています。

形が変わっても、過酸化水素を基本にして、有機物・粒子を落とす側と金属を落とす側を分けるという設計は、現在の薬液体系に引き継がれています。

代償は、面の荒れ、戻る汚染、露出材料の制約、工程数

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第一に、面を荒らします。関東化学の記事によると、SC-1はシリコン表面を酸化してエッチングするため、洗浄後のマイクロラフネスが増えます。電荷蓄積容量の関係から薄膜化が進むゲートシリコン酸化膜には、これが非常に深刻です。45 nmや32 nmの世代では、数nm程度まで薄くなったゲート酸化膜に対し、SC-1によるマイクロラフネスの増大が無視しがたいレベルになりました。粒子を落とす作用と面を荒らす作用は同じものですから、この取引をずらす手立ては薬液の側にあります。

第二に、装置と液から汚染が返ります。関東化学の記事によると、SC-1洗浄液中に鉄などの金属不純物があると、シリコンウェーハ表面へ非常に吸着しやすくなります。SC-2の塩酸は金属製の部材の腐食を進め、パーティクルの発生源になります。薬液の純度と配管材の選定が、そのまま洗浄結果の一部になります。

第三に、露出材料を選びます。住友化学の技術誌によると、タングステンをメタルゲートに使うとAPM洗浄でサイドエッチングが起き、アンモニア濃度約1 %という一般的な組成では短時間で膜がエッチングされて制御が難しくなります。住友化学は、5 %の過酸化水素水へ45℃で10分浸けたタングステン膜の表面に、穿孔状の腐食を観察しています。銅はアンモニア水と容易に水溶性の錯体を作って溶け出し、過酸化水素も銅と接触すると容易に分解するため、銅を成膜したウェーハのAPM洗浄では、APMが洗浄液としての役割を失います。同社の測定では、BPSG膜とUSG膜を積層したホールでBPSG側のAPMエッチングレートがUSG膜の数倍から十倍程度速く、ホール側面に数百Åの凹凸が出ます。

第四に、工程数と資源を差し出します。RCA洗浄は工程が長く、廃水と廃液が多いため、スループットの面から工程数の短縮が課題になっています。電子情報通信学会の知識ベースによると、これらの洗浄は大量の薬液とリンス用超純水を消費し、大量の廃液を出します。洗浄の回数はフォトリソグラフィ工程数の2〜3倍で、近年のLSI製造では100回を優に超えます。1回あたりの負荷が小さくとも、回数がそれを大きくします。

RCA洗浄とは何ですか?

過酸化水素を基本にした薬液の組み合わせで、シリコンウェーハから有機物・粒子と金属汚染を落とす洗浄体系です。シリコンウェーハ洗浄技術の変遷は、W. Kernの査読論文「The Evolution of Silicon Wafer Cleaning Technology」がまとめています。

SC-1とSC-2の違いは何ですか?

落とす対象が異なります。SC-1はアンモニアと過酸化水素を含むアルカリ性の薬液で有機物と粒子を、SC-2は塩酸と過酸化水素を含む酸性の薬液で金属汚染を落とします。順番に流して、性質の異なる汚染をまとめて片づけます。

なぜアルカリと酸を分けるのですか?

汚染の性質が異なるためです。有機物と粒子はアルカリ側で表面をわずかに溶かしながら剥がすほうが、金属は酸性側で溶かして流すほうが落ちます。SC-2のようなpH0〜2程度の酸性溶液中では、多くの金属が溶解してイオンとして安定に存在します。

SC-1で粒子が落ちるのはなぜですか?

表面をわずかに溶かすためです。過酸化水素でシリコン表面を酸化し、その酸化物をアンモニアでエッチングして粒子をリフトオフします。pH10.5付近のSC-1液中ではシリコン基板と各種パーティクルのゼータ電位がともに負になり、静電反発力で除去と再付着防止が進みます。

SC-1やSC-2の温度はどのくらいですか?

SC-1とSC-2はともに70℃前後の加熱プロセスです。希フッ酸以外の薬液はすべて高温で用いるため、エネルギー消費と濃度の維持の難しさが以前から指摘されてきました。

SC-1の混合比はどのくらいですか?

一般的なAPM洗浄液の組成は、アンモニア水と過酸化水素水と水の容量比1:4:20で、このときのアンモニア濃度は約1 %です。容積比1/2/12のSC-1洗浄液を比較の基準に使う例もあります。現場では希薄側へ振った組成も広く使われます。

RCA洗浄は今も使われていますか?

基礎として使われています。1970年に発表されたRCA洗浄は今なおウェット洗浄の基盤技術とされ、APMとHPMの低濃度化と低温化という部分的な変更が半導体製造各社に普及しました。枚葉式装置への適用や、DHFやSPMなど目的別の薬液との組み合わせとしても発展しています。

RCA洗浄の弱点は何ですか?

薬液の使用量と、表面の荒れです。SC-1はシリコン表面を酸化してエッチングするため洗浄後のマイクロラフネスが増え、薄膜化が進むゲートシリコン酸化膜には深刻です。SC-2の塩酸による金属部材の腐食はパーティクルの発生源になり、工程が長く廃水と廃液が多い点も課題です。

新しい材料には使えますか?

露出材料を選びます。タングステンをメタルゲートに使うとAPM洗浄液でサイドエッチングが起き、アンモニア濃度約1 %では短時間で膜がエッチングされて制御が難しくなります。銅はアンモニア水と容易に水溶性の錯体を作って溶け出し、過酸化水素も銅と接触すると容易に分解します。

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