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SPM洗浄(硫酸過酸化水素水洗浄)とは

SPM洗浄とは、硫酸と過酸化水素水を混ぜた薬液で、有機物とレジストを強く分解して落とす洗浄です。 混合時の発熱で高温になり、有機物への分解力が高くなります。

イオン注入で硬くなったレジストを、混合の発熱で分解する

Section titled “イオン注入で硬くなったレジストを、混合の発熱で分解する”

SPMが担うのは、落ちにくい有機物です。リソグラフィで使ったレジストは、露光と現像を経たあと、エッチングやイオン注入にさらされます。特にイオン注入を受けたレジストは表面が硬化し、通常の薬液では落ちにくくなります。

硫酸と過酸化水素水の組み合わせは、この用途に向きます。混合すると発熱して高温になり、有機物を分解する力が上がります。発熱そのものが薬液の状態そのものになるため、温度と混合比が管理項目になります。過酸化水素を基本にしたこれらの薬液体系の変遷は、W. Kernが1990年にまとめています1。SPMは、ウェーハ上のレジストやそのアッシング後の残渣といった濃厚な有機汚染を除去できます2。洗浄の回数はフォトリソグラフィ工程数の2〜3倍にのぼり、近年のLSI製造では100回を優に超えます。

混ぜると熱くなること自体が、洗浄の条件になります
硫酸過酸化水素水混ぜます発熱して高温になります発熱ともに上がります温度分解する力矢印は向きだけを示します発熱そのものが洗浄の条件です温度と混合比を管理します露出している金属を侵す場合があります層構成によっては別の薬液を選びます
硫酸と過酸化水素水を混ぜると発熱して高温になり、有機物を分解する力が上がります。この発熱そのものが洗浄の条件になるため、温度と混合比が管理項目になります。

液温は希釈熱で100〜120℃まで上がり、ウェーハの上では下がる

Section titled “液温は希釈熱で100〜120℃まで上がり、ウェーハの上では下がる”

発熱の中身は希釈熱です。濃硫酸と過酸化水素水を混ぜると両者が反応してペルオキソ一硫酸が生成すると言われており3、濃硫酸の希釈熱によって液温が急に上がり、当初の液温と混合比率によって差はあるものの100〜120℃程度まで上昇します。そこで水の沸騰と過酸化水素の分解で出る酸素によって発泡が起き、そのバブリング効果も均一性の向上に寄与すると言われています。泡は副産物でもあり、面内分布を助ける撹拌にもなります。

SPMは通常90〜130℃、場合によっては150℃程度で行います。温度が高いほどレジスト除去性能は上がる一方で、過酸化水素の消耗が激しくなります。剥離を速める方向と薬液を長持ちさせる方向を、温度という1本のつまみが同時に引っ張ります。

液温は下がる側にも動きます。東芝の2009年の報告では、300 mmのシリコンウェーハで一般的なノボラック系レジストが20秒程度で溶解した一方、耐酸化性の強いレジストの完全な除去には180秒を要しました。1枚ずつ回転させる枚葉スピンタイプの装置を使ったため、ウェーハ表面温度が下がった可能性が高いと同報告はみています。槽の設定温度が同じでも、ウェーハの上の液温は別になります。

液温、混合比、装置の供給の3つをつまみにする

Section titled “液温、混合比、装置の供給の3つをつまみにする”

第一のつまみは液温です。上げれば剥離が速くなり、テールの厚い硬化レジストにも届きます。代わりに過酸化水素が速く消え、薬液の寿命が短くなります。下げれば薬液は持ちますが、イオン注入を受けた層の抜けが遅くなり、時間で埋める分だけ装置の占有が伸びます。

第二のつまみは混合比と過酸化水素の濃度です。濃度の高い過酸化水素水は爆発性を持つため、運搬と保管のリスクが大きく法令の面でも制限が加わり、一般には爆発性を避けた濃度30〜35 %程度の水溶液がよく使われます。この場合65〜70 %が水であり、水の蒸発速度が過酸化水素の分解・消耗速度を下回るときは一定のタイミングで全液の交換が要ります。混合比を過酸化水素側へ振れば分解力は上がり、同時に持ち込まれる水が増えて硫酸が薄まります。

第三のつまみは装置側の供給です。東京エレクトロンのZETA+シリーズは、高温での薬液を可能にしたViPR+技術によりレジストやシリサイドを短時間で剥離するバッチスプレー式の装置としています4。最大8種類の薬液供給と密閉式のシングルチャンバーを備え、各薬液の混合比や濃度および温度をレシピで設定でき、300 mmと200 mmのウェーハに対応します。混合比と温度がレシピ側の量になれば、槽の履歴に頼らずに条件を作り直せます。

温度を上げると、剥離と薬液の寿命が逆へ動きます
混合の希釈熱で 100〜120℃通常の帯 90〜130℃〜150℃低い液温高い液温レジスト除去性能過酸化水素の消耗2本の線は向きだけを示し、目盛りとは無関係です上げた分は薬液の寿命で払います
液温は混合の希釈熱で100〜120℃程度まで自分で上がり、現場では通常90〜130℃、場合によっては150℃程度で使われます。温度を上げるほどレジスト除去性能は上がり、その分だけ過酸化水素の消耗が速くなります。

大部分はアッシングで除き、気化を免れた重金属をSPMで落とす

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実際の工程では、気相と液相を組み合わせます。酸素プラズマでレジストを気相で分解するアッシングで大部分を除き、残った残渣をSPMで落とす、という順です。役割を分けることで、それぞれの薬液の時間を短く保てます。酸素プラズマは、炭素・酸素・水素からできたレジストを二酸化炭素と水と酸素へ変えて気化させます5。一方、レジストに含まれる重金属などの不純物は気化を免れて残るため、プラズマアッシングの後にウェットステーションで洗うことが好ましいとされます。SPMが引き受けるのは、まさにこの気化を免れた側です。

ウェットでの剥離は、生産性の高さとレジスト中の微量な重金属まで取り除ける利点を持つ一方、レジスト以外の部分へ薬液が悪影響を与える可能性があります。そのため微細な回路にはプラズマアッシャ、比較的ラフな回路にはウェットステーションを使う傾向があります。露出している金属を侵す場合があるため、層構成によってはSPMを避け、別の薬液を選びます。

レジストを落とす ─ アッシングと SPM の役割分担
硬化したレジスト硬化層イオン注入で表面が硬くなるアッシング(気相)酸素プラズマ大部分を気相で分解残渣が残るSPM(液相)H₂SO₄ + H₂O₂混合時の発熱で高温残渣まで落とす純水でリンスして次工程へ気相と液相で役割を分け、それぞれの薬液の時間を短く保つ
イオン注入を受けたレジストは表面が硬化し、落ちにくくなります。酸素プラズマのアッシングで大部分を気相で分解し、残った残渣をSPMの薬液で落とします。役割を分けることで、どちらの薬液の時間も短く保てます。

代償は薬液の消費と、硫酸を回し直しにくいこと

Section titled “代償は薬液の消費と、硫酸を回し直しにくいこと”

第一に、薬液そのものを消費します。東芝はライフサイクルアセスメントで、SPM洗浄では装置1台1年当たり1.04×10⁶ MJのエネルギーと7.94×10⁷ gの二酸化炭素3、過酸化水素水を省いた電解硫酸では3.85×10⁵ MJと2.45×10⁷ gと見積もっています。SPM側で寄与の大きい項目は、過酸化水素、硫酸、稼働電力、超純水の精製用電力です。

第二に、硫酸を回し直しにくくなります。硫酸と過酸化水素の反応で生成する水と、過酸化水素水に含まれる水によって硫酸が薄まるため、硫酸のリサイクルが難しくなります。硫酸の一部を過硫酸へ転換する電解の技術では、洗浄槽でレジストの分解に伴って過硫酸が硫酸へ戻り、その液を再び電解して洗浄槽へ送るループを組むことで、硫酸を長時間連続で使えます2。過酸化水素水が要らず、レジスト剥離の効果はSPMと同等以上とされています。

第三に、置き換えの相手には濃度の天井があります。オゾン水は非常に高い酸化還元電位を持ちながら、せいぜい100 ppm前後という濃度の低さに限界を持ち、レジストのような濃厚な有機物の除去には濃度が不足します。明電舎のピュアオゾン水生成装置は、ほぼ100 %のピュアオゾンガスと減圧生成方式によって50〜300 mg/Lのオゾン水を連続生成します6。条件は水温5〜15℃、流量0.5〜5 L/minで、用途に半導体ウエハの高イオン注入レジスト除去を挙げています。濃度の側から追いつく開発が進む一方で、現在の量産の主戦場は依然としてSPMです。

第四に、露出材料への当たりが強くなります。RCA洗浄の薬液の整理では、SPMの除去対象は有機物と金属不純物です7。コンタクトホール工程では、酸素プラズマとSPM洗浄液でレジストを除いた後も、ホール内部にドライエッチング堆積物が残るためAPM洗浄が要ります。SPM単独で工程が完結する場面は限られ、SC-1・SC-2やDHF洗浄との組み合わせで初めて次工程が要求する面になります。

SPM洗浄とは何ですか?

硫酸と過酸化水素水を混ぜた薬液で、有機物とレジストを強く分解して落とす洗浄です。混合時に発熱して高温になるため、有機物への分解力が高くなります。

SPMは何を落としますか?

レジストの残渣を含む有機物が主な対象です。ウェーハ上のレジストやそのアッシング後の残渣といった濃厚な有機汚染を除去でき、イオン注入後の硬化したレジストのように、通常の薬液で落ちにくい有機物まで分解します。

SPMの液温はどのくらいですか?

濃硫酸の希釈熱で液温が急に上がり、当初の液温と混合比率によって差はあるものの100〜120℃程度まで上昇します。SPMは通常90〜130℃、場合によっては150℃程度で行います。

液温を上げると何が悪くなりますか?

過酸化水素の消耗が速くなります。温度が高いほどレジスト除去性能は上がる一方で過酸化水素の消耗が激しくなり、薬液の寿命と剥離速度を同じつまみで引っ張る形になります。

アッシングとの違いは何ですか?

気相か液相かが異なります。アッシングは酸素プラズマでレジストを気相で分解し、SPMは薬液の中で分解します。レジストに含まれる重金属などの不純物は気化を免れて残るため、プラズマアッシングの後にウェットステーションで洗うことが好ましいとされます。

SPMの注意点は何ですか?

高温の強酸を使う点です。混合時の発熱そのものが薬液の状態そのものになるため、温度と混合比の管理が要ります。露出している金属を侵す場合があるため、層構成によっては別の薬液を選びます。

SPMとRCA洗浄の関係は何ですか?

どちらも過酸化水素を使いますが、対象が異なります。RCA洗浄のSC-1は有機物と粒子、SC-2は金属が対象で、SPMは有機物とレジストへの分解力に振った薬液です。SEAJの用語集は、RCA洗浄を高温・高濃度の硫酸・過酸化水素水や希フッ酸などの総称としています。

オゾン水でSPMを置き換えられますか?

軽い有機汚染までです。オゾン水は非常に高い酸化還元電位を持ちながら、濃度がせいぜい100 ppm前後と低く、レジストのような濃厚な有機物の除去には不足します。この濃度の低さが、レジスト剥離でSPMが使われ続けてきた理由です。

SPMの後は何をしますか?

純水でリンスし、自然酸化膜を除きたければDHF、粒子と金属をさらに落としたければRCA系へ続けます。コンタクトホール工程では、酸素プラズマとSPM洗浄液でレジストを除いた後もホール内部にドライエッチング堆積物が残るため、APM洗浄を足します。

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