コンテンツにスキップ

ドライエッチングとは

ドライエッチングとは、液体の薬品を使わず、プラズマ中の反応種とイオンでレジストから露出した部分の層を除去する方法です。 イオンが基板へ向かって入射するので縦方向へ選択的に削れ、レジストのパターン幅に近い形状を下の層へ写せます。SCREENセミコンダクターソリューションズは、微細化でラフな回路が減り、エッチング工程の9割以上がドライで行われているとしています1。形と速さの配分は化学・イオン誘起・物理の3成分の配合で決まり、異方性の根っこはイオンが向きを保ったまま底へ届くかどうかにあります。その代価はレジストの消耗と装置価格です。

縦に速く削れるので、細いパターンの幅を保てる

Section titled “縦に速く削れるので、細いパターンの幅を保てる”
異方性と等方性
ドライイオンが垂直入射開口の幅に近い形で縦に削れるウェット薬液が全方向レジストの下へ横に食い込む食い込みレジスト削る膜下地
同じ開口でも、ドライはイオンが垂直に入射して開口の幅に近い形で縦に削り、ウェットは薬液が全方向へ働いてレジストの下まで横に削ります。

ウェットエッチングでは、薬液の溶かす作用が全方向へほぼ均等に働きます。プラズマを使うと、電界で加速されたイオンが基板へ向かって入射するので、縦方向の除去が横方向より速く進みます。この偏りが異方性です。サムコは、ガスに高周波をかけてプラズマ化し、イオンやラジカルで半導体を加工する方式をRIEと呼んでいます。

異方性が要るのは、パターン幅を保つためです。横にも同じ速さで削れるとレジストの下へ食い込み、仕上がりの幅が設計より広がります。横への食い込みが同じ量でも、パターンが細いほど残る幅の割合は小さくなり、微細化が進むほど無視できなくなります。現在の半導体前工程でドライエッチングが主力を占める理由はここにあり、RIEは幅広いプロセスに対して異方性のドライエッチングを与えます2。装置の呼び名にも主力の位置が表れていて、エッチング装置およびエッチャという語は、通常はプラズマベースのドライエッチング装置を指します3。

加工できる寸法について、サムコは100nmから1000nm程度のごく細い幅で深い溝を彫れるとしています4。Oxford Instrumentsは、プラズマエッチングで広範な材料にnmスケールから数100μmまでの微細構造を作れるとし、反応性を低温でも高められるので、試料を高温にせず熱応力を少なくできる5ことも利点に挙げています。

化学・イオン誘起・物理の3成分の配合で、速さと形が決まる

Section titled “化学・イオン誘起・物理の3成分の配合で、速さと形が決まる”

エッチングプロセスの選択肢は、化学エッチング(等方的で高速)、イオン誘起エッチング(異方的で中速)、物理エッチング(異方的で低速)6の3つです。3つは同じチャンバの中で同時に進み、どの成分が優勢かでレートと形が定まります。

化学エッチングは、ラジカルが表面の原子と反応して揮発性の生成物を作る経路です。反応の向きが全方向へ散るので等方的になり、速さは3つの中で最も上です。物理エッチングはイオンの運動量で原子を叩き飛ばす経路で、向きはそろいますが、1個のイオンが除去できる原子数が限られるので低速になります。イオン誘起エッチングはその中間で、イオンが表面を活性化し、そこへラジカルが反応します。異方性を保ったまま速さを稼げるのはこの経路です。

レシピを組む作業は、この3成分の配合を選ぶことです。速さが要る場面では化学成分を増やして横方向の食い込みを差し出し、形が要る場面ではイオン誘起と物理の側へ振ってレートを差し出します。

圧力を下げるほど、イオンは向きを保って底へ届く

Section titled “圧力を下げるほど、イオンは向きを保って底へ届く”
圧力と平均自由行程
平均自由行程(対数)7m70cm7cm0.7mm700Å装置の大きさ 1〜2m蒸着装置の圧力10⁻³10⁻²10⁻¹10¹10⁵圧力(Pa、対数)
圧力を10分の1にするごとに平均自由行程は10倍に伸び、蒸着装置が使う10⁻³ Paでは7mと、装置の大きさ1〜2mを超えます。

異方性の根っこは、イオンが向きを変えずに表面へ届くかどうかです。気体分子が衝突せずに飛べる距離を平均自由行程と呼び、大気圧の10⁵ Paで700Å、10¹ Paで0.7mm、10⁻¹ Paで7cm、10⁻² Paで70cm、10⁻³ Paで7mです7。蒸着装置は普通10⁻² Paから10⁻³ Paを使い、装置の幅や高さが1mから2mなので、飛び出した分子は途中で衝突せずにまっすぐ基板へ届きます。

エッチングでも同じ理屈が働きます。Oxford Instrumentsは、ICP RIEが優れたプロファイル制御を持つ理由に低圧を保てることを挙げ8、自社のCobra ICPプラズマソースは低圧で動作して均一な高密度プラズマを作るとしています。低圧側では衝突が減り、シースで加速されたイオンが向きを保ったまま穴の底へ届きます。

方式の分け目は、プラズマ密度とイオンエネルギーを別々に制御できるか

Section titled “方式の分け目は、プラズマ密度とイオンエネルギーを別々に制御できるか”

RIEは、反応性ガスのプラズマ中でイオンを基板へ加速して当てる基本形式で、単一のRFプラズマ源でイオンの密度とエネルギーを同時に決めます。Oxford Instrumentsは、性能はICP-RIEより下でも、絶縁体マスクのエッチングのように高いエッチングレートが要らない場面では、優れたマスクを作るのに十分な垂直性が得られるとしています5。

ICP-RIE(誘導結合プラズマRIE)は、ICPでプラズマを作る電源とイオンを加速する電源を分けます。Oxford Instrumentsは、RF発生器とICP発生器を分けることでイオンエネルギーとイオン密度を別々に制御でき9、高いプロセス自由度が得られるとし、設計目標に高いエッチレート、高い選択比、低ダメージを挙げています。基板のDCバイアスはRF発生器で独立に制御し、プロセスに合わせてイオンエネルギーを決めます。同社はICP-RIEについて、エッチング速度を非常に高速から超低速まで制御でき、ダメージが小さく、マスク材料や基板材料の選択性と形状制御性が高いとしています。同じ系統の非接触のプラズマポリッシュでは、炭化ケイ素を選択的に除去して高い表面品質と基板ダメージの抑制を狙うとしています。

PE(プラズマ励起エッチング)は、Oxford Instrumentsがプラズマエッチングのうち最も指向性が低い方式に位置づけていて、微細で垂直な形状には向きません。用途は、アンダーカットが許容される高選択的な等方性プロセスや、下層の材料を大面積で除去する場面です。

ALE(原子層エッチング)は、表面を化学的に改質する段と、その改質層だけを取り除く段を交互に繰り返します。背景にあるのは、10nm以下の微細化と極薄の2D材料が原子スケールの精度を要することです。Oxford Instrumentsは、ALEが200mmウェーハまで±2%以内の均一性(ティピカル値)と高精度の深さ制御を与え10、標準的なICPと組み合わせて使えるとしています。1サイクルあたりのエッチングレートは2Åから7Åで、刻みの細かさは1サイクルの単位そのものです。そのぶん、連続のエッチングに比べて時間を差し出します。深い溝や穴にはDRIE(深堀り反応性イオンエッチング)を使います。

圧力・バイアス・温度・ガスを動かすと、得るものと差し出すものが同時に動く

Section titled “圧力・バイアス・温度・ガスを動かすと、得るものと差し出すものが同時に動く”

圧力を下げると平均自由行程が伸びて異方性が強まり、上げると反応種の数が増えてレートが伸びます。下げる側ではレートを、上げる側では垂直性を手放します。

基板側のバイアス電力を上げると、イオン誘起と物理の成分が増えて形が締まります。差し出すのは選択比とレジストの残り厚です。Oxford Instrumentsは、低いイオンエネルギーによって選択性とダメージを制御するとしています8。イオンエネルギーを下げるとマスクと下地は守られ、代わりに等方成分が相対的に増えて幅が広がります。

温度の設定範囲
PlasmaPro 80・100PlasmaPro 800TEL現行機(ブライン)クライオジェニックマイナス数十度-150080400設定温度(℃)
PlasmaPro 80と100は-150℃から400℃まで振れ、TEL現行機のブライン温度は0度から用途により80度で、クライオジェニックエッチングではそこからマイナス数十度まで下げます。

ウェーハ温度について、Oxford Instrumentsは電極温度の設定範囲を-150℃から+400℃とし6、ハードウェア表ではPlasmaPro 80とPlasmaPro 100を-150℃から400℃、PlasmaPro 800を10℃から80℃としています。ウェハクランプでのHe裏面冷却によって最適なウェハ温度制御を得るとも述べています。東京エレクトロンの現行機はブライン温度が0度から用途により80度で11、クライオジェニックエッチングではマイナス数十度まで下げます。温度を下げると側壁の堆積物が残って形が締まり、上げると堆積物が抜けてレートが伸びます。差し出すのは冷却系の能力と静電チャックまわりの設計余裕です。

ガス種を替えると、形状と環境負荷が同時に動きます。東京エレクトロンは、高アスペクト比のエッチングに炭素とフッ素を含むCF系ガスが一般に使われてきたこと、C₄F₈などの主なガスの地球温暖化係数が高いことを挙げています。同社は2014年ごろに新技術の開発に着手し、2023年に3D NANDの400層を超える積層にコンタクトホールを作るクライオジェニックエッチングをリリースしました。東京エレクトロンは、この技術で深さ10μm以上の穴を従来比2.5倍の速度でまっすぐ掘れるようになり、消費電力を40%以上削減したとしています11。極低温ではCF系ガスに代えてHFガスを使え、同社はCF系ガスの91%をHFガスへ置き換え、第一世代機と比べて80%以上のカーボンフットプリント削減を果たしたとしています。極低温エッチングはLam Researchが2019年から量産で使い、TELは400層NAND向けの装置を2027年から顧客の量産ラインに入れると説明しています。

エッチングガスの選択はレシピと排ガス設備の両方に及びます。CF系ガスを使えば高アスペクト比の形が取れる一方で排ガスの負荷を差し出し、HFガスへの置き換えはその反対側へ動く選択です。流量はマスフローコントローラで決めます。増やせば供給が増えてレートが伸び、代わりに滞留時間が短くなって解離の度合いが下がります。減らせば解離は進みますが、深い穴の底での供給が細くなります。

代価はレジストの消耗と、ウェットの2倍以上の装置価格

Section titled “代価はレジストの消耗と、ウェットの2倍以上の装置価格”

SCREENセミコンダクターソリューションズは、ドライエッチングの反応性イオンのパワーが大変強く、対象の膜が十分に削れた時点で、マスクとして働いていたフォトレジストは半分以上が失われ、一部が変質してポリマになるとしています1。この消耗が、バイアスとパワーを上げて速く掘る側の上限になります。ポリマを回路に付けたまま残すとICの欠陥につながるので、除去には専用機が要り、ウェットステーションまたはスピンプロセッサで薬液洗浄します。レジストを灰化して剥がすアッシングとは別に、洗浄が1工程分積み上がります。

同社によると、装置価格はウェット側が1億円から3億円程度、ドライ側がその2倍以上です。ウェットは1度に50枚のバッチ投入ができ、ドライは1枚ずつ処理します。ラフな回路をウェットへ、微細な回路をドライへ振り分ける使い分けは、この価格と処理枚数の差から来ています。サムコは、自社のドライエッチング装置が研究用途やLED製品の生産用途で使われているとしています。

この用語に対応する装置と製造メーカー

Section titled “この用語に対応する装置と製造メーカー”

装置カタログDBから、この用語に一致する製品familyを持つメーカー 3社/3family を引いています。 各行は各社の公式製品ページを出典とします。 DBからの生成日: 2026-08-21

出典は各社の公式製品ページです。 装置カタログDB では、同じ製品familyを工程・メーカー横断で検索できます。

ドライエッチングとは何ですか?

液体の薬品を使わず、プラズマ中の反応種とイオンでレジストの開口部にある層を除去する方法です。エッチングには、プラズマベースのドライエッチングと液体ベースのウェットエッチングの2種類があります。

ドライエッチングとウェットエッチングの違いは何ですか?

削れる向きの偏りが違います。ウェットは薬液が全方向へ均等に働いてレジストの下へ横に食い込み、ドライはイオンが基板へ向かって入射するので縦方向へ選択的に削れます。RIEは幅広いプロセスに対して異方性のドライエッチングを与えます。

ドライエッチングにはどんな種類がありますか?

RIE(反応性イオンエッチング)、ICP-RIE(誘導結合プラズマRIE)、ALE(原子層エッチング)、DRIE(深堀り反応性イオンエッチング)が代表で、指向性の低いPEエッチングもあります。分け目は、プラズマ密度とイオンエネルギーを別々に制御できるかどうかです。

異方性エッチングとは何ですか?

縦方向の除去が横方向より速く進む削れ方です。イオンが基板へ向かって入射することで偏りが生まれ、偏りが大きいほどレジストのパターン幅に近い形状を下の層へ写せます。

エッチング装置はドライエッチングを指しますか?

通常はドライエッチング装置を指します。エッチング装置およびエッチャという語は、通常はプラズマベースのドライエッチング装置を意味します。

ドライエッチング装置のメーカーはどこですか?

ラムリサーチ、東京エレクトロン、Applied Materials、日立ハイテク、アルバック、NAURA、AMEC、Oxford Instruments Plasma Technologyなどです。装置カタログDBで、ドライエッチングやプラズマエッチングに一致する製品familyを持つメーカーを公式製品ページ単位で引けます。

ドライエッチングの削れ方は1種類ですか?

3区分あります。化学エッチング(等方的で高速)、イオン誘起エッチング(異方的で中速)、物理エッチング(異方的で低速)で、形を取るほど速さを差し出す並びです。レシピはこの3成分の配合として組みます。

現在のエッチング工程はドライとウェットのどちらが多いですか?

ドライです。SCREENセミコンダクターソリューションズは、微細化でラフな回路が減り、エッチング工程の9割以上がドライになったとしています。装置価格はウェット側が1億円から3億円程度、ドライ側がその2倍以上で、ウェットは1度に50枚のバッチ投入、ドライは1枚ずつです。

ドライエッチングでレジストはどれだけ減りますか?

対象の膜が十分に削れた時点で、マスクのレジストは半分以上が失われ、その一部が変質してポリマになります。ポリマを回路に付けたまま残すとICの欠陥につながるので、除去に専用機が要り、ウェットステーションまたはスピンプロセッサで薬液洗浄します。

ドライエッチングはどのくらい細い形状を作れますか?

サムコは、ドライエッチング装置で100nmから1000nm程度の細い幅の深い溝を彫れるとしています。Oxford Instrumentsは、プラズマエッチングで広範な材料にnmスケールから数100μmまでの微細構造を作れるとしています。

11件を表示
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10
  11. 11