コンテンツにスキップ

ボッシュプロセスとは

ボッシュプロセスとは、シリコンを掘るガスと側壁へ保護膜を積むガスを交互に供給し、深い穴や溝を垂直に掘るドライエッチングの手順です。 1つのレシピが保護膜を積む段と掘る段に分かれ、それぞれに割り当てる時間で側壁の形とエッチングレートが同時に決まります。掘る段を延ばせば1サイクルで進む深さは増えますが、側壁の保護膜は薄くなり、破れるとサイドエッチが出ます。保護膜を厚く積めば側壁は守れますが、掘る時間が減り、同じ深さに届くまでの時間が延びます。深さと垂直性を、サイクルごとの段差とサイクル数で買う方式です。

保護膜が残っているうちに、掘る段を切り上げる

Section titled “保護膜が残っているうちに、掘る段を切り上げる”

ボッシュ法は、SF₆ガスとC₄F₈ガスを交互に流す反応性イオンエッチングの一種です1。まずC₄F₈を流すと側壁が保護膜で覆われます。SF₆へ切り替えると底の保護膜が削られてシリコンが露出し、そのシリコンが削れます。側面の保護膜が残っているうちに再びC₄F₈へ切り替えて次の保護膜を積み、これを繰り返して高アスペクト比のエッチングが成り立ちます。

1サイクルで起きること
1 保護膜を積む2 底の膜を除去3 Siを削る4 繰り返すC₄F₈SF₆SF₆スカロップマスクSi保護膜イオン
保護膜を積み、イオンで底の膜だけを除き、露出したシリコンを削る。この3段を回すごとに溝は1段深くなり、その段が側壁にスカロップとして残ります。

TSVのようにアスペクト比の大きい孔を作る方法として、ボッシュプロセスは2010年時点で広く使われていました。エッチングガスと側壁保護膜堆積用のガスを交互に供給し、ウェーハを貫通させるほどの孔を作ります2。

条件を一定に保って掘る通常のドライエッチングと違い、掘る段と守る段が時間の上で分かれています。掘る段の長さが1サイクルの掘削量を、守る段の長さが側壁の保護膜の厚みを決め、同じ深さに届くまでのサイクル数は1サイクルの掘削量で決まります。この方式を使う装置と工程がDRIEです。

切り替えが遅れると、サイドエッチとボーイングが出る

Section titled “切り替えが遅れると、サイドエッチとボーイングが出る”

サムコの加工データでは、数百μmの深掘りでボーイング形状や、掘る途中で側壁の保護膜が破れて起きるサイドエッチなど、多くの問題が出ます3。ボーイングは穴の途中が樽のように膨らむ形、サイドエッチは側壁が横に食い込む形です。サムコはこれらを抑えた加工として、ø8インチウェハに深さ400 μm、ホール径ø15 μmの穴を掘り、チルト(面内で穴が傾く量)90°±0.3°以内、アスペクト比27、選択比40で、ボーイング形状なしに先端を順テーパーに制御した結果を示しています。

保護膜が破れなくても、1サイクルで横に進んだ量は側壁の段差として残ります。サムコは、ボッシュプロセスによるSiの深掘りでは原理上、側壁のスカロップが問題になることがあるとしています4。スカロップは、サイクルごとに側壁に刻まれる段差のことです。

加工例は、ø30 nmのピラーから深さ500 μmの貫通まで広がる

Section titled “加工例は、ø30 nmのピラーから深さ500 μmの貫通まで広がる”

同じ原理が、ø30 nmから幅100 μmまで、幅を比べると3桁を超える範囲の加工を受け持ちます。サムコの加工例では、ø30 nmのピラーパターン5をレジストマスクとの選択比を十分に取って深さ444 nmまで掘り、エッチングレートは370 nm/minです。サムコはこの加工を、位相変調機能を持つ空間光制御デバイスに応用できるとしています。幅3 μm・深さ70 μmの構造と6、幅100 μm・深さ500 μmの貫通構造は7、研究開発用シリコン深掘り装置RIE-400iPBで形成した例です。

ボッシュプロセスの加工例の幅と深さ
10 nm1 μm100 μm100 nm10 μm1 mmパターン幅(対数)深さ(対数)アスペクト比10010ø30 nmピラーø70 nmホール3 μm・70 μmø15 μm・400 μm50 μm・128 μm100 μm・500 μm
ø30 nmのピラーから幅100 μm・深さ500 μmの貫通まで、同じ方式の加工例がパターン幅で3桁を超えて並びます。

スカロップも加工の規模で桁が動きます。ø30 nmのピラー加工ではスカロップを8.6 nm以下に抑え、ボッシュプロセス対応のICPエッチング装置でSiを深掘りしたアスペクト比52の加工では、側壁はスムーズでスカロップサイズは100 nm以下です。掘る規模が2桁動けば、スカロップの値も2桁動きます。

速さの評価は立場で割れます。理化学研究所は2017年に、TSV作製ではボッシュ法が一般的に使われている一方で、エッチング速度が遅いことと、レジストを使うリソグラフィ過程が必要なことを問題に挙げています。装置メーカーのサムコは、高速と高アスペクト比を製品の売りにしています。

段差と傾きは断面で、マスクの減りは選択比で測る

Section titled “段差と傾きは断面で、マスクの減りは選択比で測る”

段差とボーイングの位置は、断面観察で側壁の波形と膨らみの位置を写して測ります。CD-SEMが返すのは上から見た開口寸法なので、深さ方向のどこが膨らんだかは断面の側で測ります。チルトは面内分布として集計し、均一性の面内成分に乗ります。RIE-800iPBの特長は、チルトを抑制したø8インチウェハでの良好な均一性です。

選択比は、掘りたい層のレートをマスクの減るレートで割った比です。幅3 μm・深さ70 μmの加工ではレジストに対するシリコンの選択比が100対1程度、幅100 μm・深さ500 μmの貫通加工ではマスクの熱酸化膜に対して1000対1程度です。どちらも山形県工業技術センターが研究開発用のRIE-400iPBで加工した例で、サムコが2018年の雑誌記事から引用しています。装置仕様では、RIE-800iPBがレジストとシリコンの選択比1対500以上でのエッチングに対応します。

調整できるのは、時間配分とマスクと電力

Section titled “調整できるのは、時間配分とマスクと電力”

1つ目は、1サイクルの中で守る段と掘る段に時間をどう配分するかです。掘る段を延ばせば1サイクルの掘削量が増え、同じ深さに届くサイクル数が減る代わりに、側壁の保護膜が尽きやすくなります。守る段を延ばせば側壁は保たれますが、底の保護膜を破る時間が増えます。サムコによると、RIE-800iPBは0.1秒のガスの高速切り替えで低スカロップ加工ができます8。切り替えを速くするほど、段差は小さくなります。

2つ目は、マスクの厚さと材料です。アスペクト比52の加工について9、サムコは加工深さがマスク厚で制限を受けているとし、マスクが厚ければアスペクト比をさらに伸ばせて、マスク厚が足りていれば300 nmのパターンでアスペクト比100まで届くとしています。ø70 nmのホール加工(深さ552 nm、アスペクト比7.9、レート460 nm/min)でも、マスクを厚くするかSiO₂マスクを用いればアスペクト比15以上の加工が可能だとしています。いずれも同社製品での加工例の値です。厚い側は到達アスペクト比を伸ばし、薄い側ではマスクが先に消えて深さがそこで打ち切られます。メタルハードマスクとフォトレジストのどちらを載せるかが、到達アスペクト比を左右します。

3つ目は、プラズマ源へ入れる電力です。RIE-800iPBは放電方式に誘導結合プラズマを採用した装置で、MEMSやTSVに向けた高速・高アスペクト比のシリコンエッチングを狙っています。サムコは、ボッシュプロセス専用のICPコイルで5,000 Wの高RFパワーを効率よく印加でき、45 μm/min以上の高速シリコン深掘りと100以上の高アスペクト比加工ができるとしています。研究開発用のRIE-400iPB10の特長は、30以上の高アスペクト比加工です。同一メーカーでも、公表されている到達アスペクト比は量産向けが100以上、研究開発用が30以上です。

段差を消すなら、非ボッシュで速さを手放す

Section titled “段差を消すなら、非ボッシュで速さを手放す”

非ボッシュプロセスでは側壁にスカロップが出ません。サムコは非ボッシュプロセスで、□50 μmのホールパターンを深さ126 μmまで掘った例を示し、開口部を73°の順テーパーに調整してボーイングを抑え、エッチングレート7.9 μm/minで平滑な側壁を維持しながら100 μm以上の深掘りが可能だとしています。ボッシュ側では、幅50 μm・深さ128 μmの加工11でエッチングレートが18 μm/minです。18 μm/min側が研究開発用のRIE-400iPB、7.9 μm/min側がø8インチ対応のRIE-800iPBと装置は別でも、段差を消す側と速さを取る側が、同じメーカーの50 μm級・深さ130 μm弱という近い条件で並びます。

ボッシュと非ボッシュの側壁
ボッシュ非ボッシュ50 μm□50 μm128 μm126 μm段差73°平滑18 μm/min7.9 μm/min
ほぼ同じ幅と深さで、ボッシュは段差の刻まれた側壁を18 μm/minで、非ボッシュは平滑な側壁を7.9 μm/minで掘ります。

サイクルを刻む方式そのものにも欠点があります。1サイクルあたりの掘削量を小さくすれば段差は小さくなりますが、同じ深さに届くサイクル数は増えます。ガスの供給と排気を毎サイクル切り替えるので、エッチングガスの切り替えの応答とチャンバ内壁の状態が、サイクル間の再現性を左右します。細い穴だけが浅く仕上がる現象はARDEです。深い構造が必要なTSVやMEMSはこれらの欠点を許容できるため、この方式が使われ続けています。

ボッシュプロセスとは何ですか?

シリコンを掘るガスと側壁へ保護膜を積むガスを交互に供給し、深い穴や溝を垂直に掘る手順です。SF₆ガスとC₄F₈ガスを交互に流す反応性イオンエッチングの一種です。

切り替えの条件はどこにありますか?

側面の保護膜が残っているうちに、再びC₄F₈に切り替えて次の保護膜を堆積し、これを繰り返します。掘る段を延ばすほど、この条件の限界に近づきます。

切り替えが遅れると何が出ますか?

サイドエッチとボーイングです。サムコの深さ400 μmの加工データでは、数百μmの深掘りで、ボーイング形状や、掘る途中で側壁の保護膜が破れて起きるサイドエッチなど、多くの問題が出ます。

スカロップはどのくらいの大きさですか?

加工の規模で2桁動きます。サムコの加工例では、ø30 nmのナノピラー加工(深さ444 nm、レート370 nm/min)で8.6 nm以下、アスペクト比52の深掘りで100 nm以下です。

到達アスペクト比は何で決まりますか?

マスクの厚さが到達深さを制限します。サムコは、マスク厚が足りていれば300 nmのパターンでアスペクト比100まで届き、ø70 nmのホールではマスクを厚くするかSiO₂マスクを用いてアスペクト比15以上が可能だとしています。

段差を消す方法はありますか?

非ボッシュプロセスを選ぶ道があり、原理上スカロップが出ません。サムコは□50 μmのホールを深さ126 μmまで掘った例で、開口部を73°の順テーパーに調整し、エッチングレート7.9 μm/minで平滑な側壁を保てるとしています。ボッシュ側では幅50 μm・深さ128 μmの加工で18 μm/minです。

どの工程で使いますか?

深い構造そのものが要る工程です。TSVのようにアスペクト比の大きい孔を作る方法として、2010年時点で広く使われていました。MEMSの可動構造やTSVの貫通孔が代表例で、サムコはø30 nmのピラー加工を位相変調機能を持つ空間光制御デバイスに応用できるとしています。

11件を表示
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10
  11. 11