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エッチング選択比とは

エッチング選択比とは、削りたい膜のエッチレートを、残したい膜のエッチレートで割った比です。 この比を桁単位で動かすのは表面に積もる膜の量の収支で、同じ材料の組み合わせでも、ガスの加え方次第で1.3から40まで変わります。調整できるのは解離、イオンエネルギー、ウェーハ温度の3つで、どれも比を上げると速さが落ちます。選択比は「何に対して」と「どう作った膜か」を添えてはじめて意味を持つ数字で、解離、イオンエネルギー、温度、マスク材料のどれで比を稼いでも、速さか手間を差し出すことになります。

マスク側の不足は幅を、下地側の不足は深さを狂わせる

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選択比の相手は、マスクと、削り止めたい下地の2つです。マスクに対する選択比は、マスクが削れる速さと、加工したい基板が削れる速さの相対比を指します1。マスク側が不足するとフォトレジストやハードマスクが先に抜けてパターン幅が動き、下地側が不足すると削り止めたい層まで掘り進みます。

下地に対する比は、オーバーエッチの長さを買う原資です。下地の段差に沿って残るエッチング残渣をストリンガと呼び、段差部で縦方向の膜厚が厚くなるため、異方性エッチングでオーバーエッチングが不足すると起こりやすく2、歩留まりや信頼性へ影響する可能性があります。段差の厚い場所まで削り切るには余分な時間が要り、その時間を下地が耐え切れるかを決めるのが下地に対する比です。

同じ「選択比」でも、材料の組と膜の作り方で1.3から1000程度まで開く

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選択比の数字は、どの膜とどの膜を比べたかで大きく変わります。サムコの研究開発用シリコン深掘り装置RIE-400iPBの加工例では、幅3 μm・深さ70 μmの構造でレジストに対するシリコンの選択比が100対1程度3、幅100 μm・深さ500 μmの貫通構造でマスクの熱酸化膜に対するシリコンの選択比が1000対1程度です4。

選択比を同じ対数の目盛りに並べる
1101001000選択比(対数)CF₄のみ SiO₂/Si約1.3CF₄+H₂ SiO₂/Si約40典型 SiO₂/Si₃N₄20〜100ALE SiO₂/Si₃N₄100以上深掘り Si/レジスト100程度貫通 Si/熱酸化膜1000程度
選択比は、比べる膜の組と加工の方式で1.3から1000程度まで開きます。数字は相手の膜とセットで読む量です。

膜の作り方でも比は動きます。ウェットエッチングでは、エッチングレートと選択比は薬液の濃度、温度、攪拌の条件で決まります5。酸化膜のレートはドーピング、密度、組成比で変わり、熱CVDやPECVDのSiO₂はふつう熱酸化膜より速く削れます。窒化膜も、熱CVDの膜はHFでゆっくり削れ、PECVDの膜は密度と酸素・水素の含有量しだいで速く削れることがあります。SiO₂のエッチングのSi₃N₄に対する選択比は、典型的に20から100の範囲です。同じ名前の膜でも、作り方が違えば選択比は別の値になります。

H₂を足すだけで、SiO₂/Siの比は約1.3から約40へ上がる

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フルオロカーボン系では、CF₄のみだと選択比が小さく、SiO₂/Siで約1.3にとどまります6。H₂を加えるとSiのエッチング速度が低下して選択比が上がり、CF₄とH₂の混合ガスでH₂流量を増やすと、下地Siに対して約40の選択比が得られます。

仕組みは膜の収支です。H₂を入れると気相のF原子がHFとなって抜け、ラジカル全体のC対Fの比が上がって、表面にCFx系の重合膜が付きやすくなります。SiO₂の面ではエッチングの進行自体が酸素を供給するので、重合膜はCO、CO₂、COF₂などの形で除去されます。一方、Si側で重合膜を減らす経路はイオン衝撃による反応だけなので、イオンエネルギーなどの条件を選べば、Siの面だけに重合膜を残して削る速さを抑えられます。

SiO₂を同じ深さ削る間に、Siはどれだけ削れるか
CF₄のみCF₄+H₂初めの表面CO・CO₂・COF₂として抜ける重合膜が残るSiO₂SiSiO₂Si選択比 約1.3選択比 約40重合膜
SiO₂を同じ深さ削る間に、CF₄だけではSiもその1.3分の1まで削れ、H₂を加えるとSiの上に重合膜が残ってSiは40分の1しか削れません。

解離、イオンエネルギー、温度のどれで比を上げても、速さが落ちる

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膜が積もる速さを左右するのは、ガスの解離の度合いです。高密度プラズマでフルオロカーボンガスが高度に解離してF原子が多くできることは、選択比が低い原因の1つで6、チャンバ体積が大きいこともガスの滞在時間を延ばして解離度を上げていました。逆に、マグネトロンRIEは3cm程度の電極間隔とCOまたはArガスの大流量でガスの滞在時間を短くしてフルオロカーボンガスの分解を抑え、Si₃N₄膜に対するSiO₂の高選択比エッチングを実現しています。解離を制御する指針は、ガス分子が排気されるまでにプラズマ中で受ける電子衝撃の回数、つまり滞在時間と電子密度と衝突解離レートの積を制御することです。流量を上げれば滞在時間が短くなって比は上がりますが、ガスの使用量と排気能力が必要になります。

イオンエネルギーは両方向に効きます。イオンが基板SiO₂表面にエネルギーを与える深さは数nm程度で、この活性な領域で単位時間に何個のCF系活性種中のFが反応するかでエッチング速度が決まります7。表面に定常的にできるC-Fポリマーは、その厚さに応じてイオンを減速します。京都大学の斧高一氏らによるICP装置のCl₂プラズマでの2分のエッチング実験では、イオンエネルギーの増大とともにSiとSiO₂のエッチング速度がともに増え、Si/SiO₂の選択比は下がりました8。エネルギーを上げれば速くなり、その分選択比が落ちます。

ウェーハ温度も同じ列に並びます。1980年代から1990年代中期には、ウェーハを0℃から液体窒素温度という低い温度に保って選択比や形状を制御する6低温エッチング技術が提案され、静電チャックで吸着したウェーハと電極の間へ1kPa程度のHeガスを入れて温調する構成が同じ時期に進みました。

まとめると、エッチング速度や選択比はラジカルが多いほど有利で、ダメージ低減と選択比向上には低いイオンエネルギーが好ましく、速度と選択比とダメージ低減は基本的にトレードオフの関係にあります。均一性だけは、ほかの特性と独立に制御しやすい特性です。

量産では、選択比を間接的な指標で推し量る

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量産で直接取れる量は限られます。2007年時点では、量産設備で実際に応用されている機器が少なく7、観測窓の外の光ファイバで分光する簡易的なOESと、基板のRF供給系の一部分の電位、基板電極の温度のモニタリングなど、極めて限られた範囲に留まっていました。選択比そのものは、この終点検出と電位の指標から間接的に推し量ることになります。

マスクは、解離を抑えた薄い膜で守るか、材料を替える

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HARC加工では高いエッチレートと高いマスク選択比が求められるので、付着係数が高く比較的厚いフルオロカーボンポリマーを堆積させてマスクを守りながら、1〜3keVの高エネルギーイオンでエッチングします9。日立製作所中央研究所が圧力を0.7Paから8Paまで変えた実験では、堆積速度が低い低圧力条件ほどArFレジストのダメージが抑えられ、良好な形状が得られました。解離が抑えられた堆積膜ほど、また薄い堆積膜ほどダメージは小さく、膜を厚くするだけでは守りきれません。

希釈ガスの選び方も効きます。HARC加工の希釈ガスをHe、Ar、Ar+Xe(20%)、Xeの順に替えるとArFレジストのダメージが改善し、アッシング後の形状はAr+Xe(20%)希釈で最も良好でした。Xe希釈では電子温度が低いのでフルオロカーボンガスの解離が抑えられ、XPSで見積もった堆積膜のF/C比がほかの希釈ガスより高くなります。ここでも、選択比を得るために解離を抑えています。レジスト自体を硬化させる方法もあり、EBキュアでArFレジストのダメージは改善しますが、4000μC/cm²のドーズ量では、エッチング後のマスクトップ寸法がキュアなしより約100nm小さくなりました。

形状とマスク選択比も引き合います。AVSの国際シンポジウムの講演要旨は、ネッキングの位置を散らすようにプロセス条件を最適化すると形状は良くなる一方、マスク選択比はふつう下がるとしています10。発表者らは、DC重畳型のCCPではマスク選択比を保ったまま良好な形状が得られ、ボーイングも少なく底のCDも十分だったとしています。

レジストだけで足りない場合は、マスク材料を替えます。フォトレジストをそのままエッチングのマスクにする方法では、微細化で深く鋭く削る必要が出たときに樹脂製のレジストが加工の負荷に耐えきれず、マスクが減ったりパターンの形が崩れたりしたため11、レジストの下に金属膜を1層敷くメタルハードマスクが採用されました。まずレジストを一時的な型紙にして金属膜を削り、次にその強固な金属膜を本番の型紙にしてエッチングします。材料には高硬度のTiNが使われ、膜の密度を保つ条件で成膜すると強い圧縮応力を持つ膜になり、応力が大きいとウェーハの反りや微細パターンの倒壊が起きます。材料で選択比を上げる場合は、転写の工程が1段増え、応力の管理も必要になります。

ALEでは、サイクルを切り替える時刻で選択比を作る

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絶縁膜のALEでは、SiO₂膜の場合、入射Ar⁺イオンが膜まで届くと、膜から出る酸素がポリマー膜をさらに削り、SiO₂の削れる速さがそこで最大になります12。Si₃N₄膜では、入射Ar⁺イオンがポリマー層の下部まで入り始めると、膜から出る窒素がポリマー膜の中で強いCN結合を作り、エッチングが止まる方向に働きます。酸素を含むSiO₂膜との違いはここにあります。

この性質を使い、1サイクルを26秒として、Si₃N₄膜上にポリマー膜が残っている段階で次のサイクルに切り替えると、高い選択比を保ったままSiO₂を原子1層ずつ加工できます。ソニーセミコンダクタソリューションズの久保井信行氏らのシミュレーションでは、6サイクルでSi₃N₄膜上のポリマー層を厚くしたうえで、7〜11サイクルのAr⁺イオンエネルギーを80Vから650Vに、続く12〜21サイクルで1000Vに上げると、Si₃N₄膜との選択比を100以上に保ったまま、SiO₂のエッチングレートが通常のALEの0.1nm/minオーダーから40nm/min程度まで上がりました。実プロセスで使うには、さらに1桁のエッチングレート向上が必要とされています。

ALEのサイクルごとのイオンエネルギー
806501000Ar⁺イオンエネルギー(V)80 Vから650 Vへ161121サイクル(1回26秒)ポリマーを厚く選択比100以上のまま40 nm/min程度へ
久保井氏らのシミュレーションでは、Si₃N₄の上のポリマーを6サイクルで厚くしてから、イオンエネルギーを650 V、1000 Vと段階的に上げると、選択比100以上を保ったままレートが40 nm/min程度まで上がりました。

ドライエッチングで選択比とレートを両立させる設計は、ここまで細かい時間の制御に及んでいます。

エッチング選択比とは何ですか?

削りたい膜のエッチレートを、残したい膜のエッチレートで割った比です。相手はマスクと下地の2つで、前者はマスクが最後まで残るかを、後者はオーバーエッチの長さをどれだけ取れるかを左右します。

選択比はどのくらい動きますか?

同じガス系のままで桁ごと動きます。フルオロカーボン系では、CF₄のみだとSiO₂/Siが約1.3にとどまり、H₂を加えて流量を増やすと下地Siに対して約40の選択比が得られます。サムコの深掘りの例では、熱酸化膜マスクに対するシリコンの選択比が1000対1程度に達します。

なぜガスを足すだけで比が上がるのですか?

表面に積もる膜の収支が材料ごとに違うためです。H₂を入れると気相のF原子がHFとなって抜け、ラジカル全体で見たC対Fの比が上がって、表面にCFx系の重合膜が付きやすくなります。SiO₂側では膜が酸素とともにCOやCO₂の形で運び去られ、Si側で膜を運び去る道はイオン衝撃だけになります。

選択比を上げるには何を調整しますか?

解離の度合い、イオンエネルギー、ウェーハ温度です。マグネトロンRIEは3cm程度の電極間隔とCOまたはArガスの大流量でガスの滞在時間を短くしてフルオロカーボンガスの分解を抑え、Si₃N₄膜に対するSiO₂の高選択比エッチングを実現しました。ウェーハを0℃から液体窒素温度に保つ低温エッチングもあります。

選択比を上げると何が悪化しますか?

速さです。ICP装置のCl₂プラズマによる実験では、イオン入射エネルギーの増大とともにSiとSiO₂のエッチング速度がともに増え、Si/SiO₂の選択比は下がります。エッチング速度と選択比、ダメージ低減は、基本的にトレードオフの関係にあります。

マスクに対する選択比はどう作りますか?

膜で守るか、材料を替えるかの2通りです。HARC加工では、付着係数が高く比較的厚いフルオロカーボンポリマーを堆積させてマスクを保護しながら、1〜3keVの高エネルギーイオンで加工します。材料を替える場合はレジストの下に金属膜を敷くメタルハードマスクを使い、その材料にはTiNが使われます。

量産では選択比を何で追っていますか?

間接的な指標です。2007年時点では量産設備で実際に応用されている機器が少なく、観測窓の外の光ファイバによる簡易的なOESと、基板のRF供給系の一部分の電位、基板電極の温度など、極めて限られた範囲に留まっていました。

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