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極低温エッチングとは

極低温エッチングとは、ウェーハを極低温の温度域まで冷やして行うプラズマエッチングです。 側面で起きる反応が抑えられ、穴が下へまっすぐ進みます。エッチングは温度を上げるほど反応が速く進みますが、深い穴では速さよりも、側面を削らずに底だけを掘ることのほうが重要で、そのためにウェーハを冷やします。シリコンの微細加工にも使われ、東京エレクトロンは絶縁膜のエッチングを初めて極低温域へ持ち込んだとしています。形の良さと引き換えに、冷却機構と温度の段取りを抱え込みます。

冷やすと、側面の反応が止まり底だけが掘れる

Section titled “冷やすと、側面の反応が止まり底だけが掘れる”

常温のエッチングでは、側面に当たった分子も反応します。深い穴ほど側面の面積が大きいため、この分が穴を広げます。

温度を下げると、側面に付いた分子が離れにくくなり、保護の膜として働きます。底では入射する粒子のエネルギーが反応を進めるため、掘り進みは続きます。

常温と極低温で、分子が働く場所
常温極低温側面でも反応して広がる側面に付いて保護膜になる底はイオンで掘り進むマスク積層膜側面に残る分子イオン側面で反応する分子
常温では側面に当たった分子も反応して穴が横へ広がり、極低温では側面に付いた分子が保護膜として残るので、イオンの当たる底だけが掘れます。

冷やすことで得られる余裕は形だけではありません。シリコンの極低温エッチングについて、AVSの国際シンポジウムの講演要旨は、低いバイアス電圧を使えるのでマスクの減りとイオンによるダメージを抑えられるとしています1。側壁の汚れもごくわずかで、エッチング残渣の洗浄に由来するCDのばらつきがなくなるとしています。

シリコンのナノ加工にも、絶縁膜の深い穴にも使われる

Section titled “シリコンのナノ加工にも、絶縁膜の深い穴にも使われる”

シリコンでは、ナノスケールの溝を掘る研究が報告されています。AVSの講演要旨の研究は、SF₆とO₂を使うシリコンの極低温プロセスを、Oxford InstrumentsのICP 380で、L18のタグチ法による実験計画で調べたものです。振った条件は圧力、温度、RFパワー、ICPパワー、ウェーハ裏面のHe圧、酸素の割合で、エッチングレート、選択比、側壁の角度、表面の粗さへの効き方を見ています。そのうえで、100 nmから10 nmまでの密に並んだシリコントレンチ向けに条件を詰め、電子線描画とナノインプリントのどちらでパターンを作った場合も、レジストとの選択比は10対1から20対1と高く、垂直で滑らかな側壁が得られました。掘ったパターンは、ナノ分光器やレーザー導波路といったナノフォトニクスのデバイスと、高解像度のインプリント用マスクに使われています。

東京エレクトロンは2023年の発表で、開発した新プロセスが絶縁膜のエッチングを初めて極低温の温度域へ持ち込み、非常に高いエッチングレートの装置になったとしています2。Lam Researchも、3D NANDのメモリチャネルを掘る極低温エッチングを発表しています。

東京エレクトロンは、速さと温暖化係数の同時改善をうたう

Section titled “東京エレクトロンは、速さと温暖化係数の同時改善をうたう”

東京エレクトロンが発表した装置は、極低温の温度域を使うプラズマエッチング装置です。同社は、深さ10 µmのエッチングを33分で完了し、温暖化係数を従来技術と比べて84%削減するとしています。速さは従来より速い水準で、温暖化係数は従来を100とすれば16です。通常は、速さと環境負荷のどちらかを改善するともう一方が悪化します。両方が同時に改善する点を、同社はこの技術の特徴に据えています。

結果として示したのは、エッチング後のメモリチャネルホールの断面SEM写真と、ホールの底をFIBで切った写真です。縦の断面には側壁の形が、底の断面には穴の形と大きさが写ります。

縦の断面と底の断面で見る
断面SEM底のFIBカット10 µm積層膜を貫く穴切断面ホールの底の形と大きさ
縦に割った断面には深さ10 µmの穴の側壁の形が、底の近くをFIBで水平に切った面には穴の底の形と大きさが写ります。

400層超の3D NANDでは、穴の形が積める層数の上限を決める

Section titled “400層超の3D NANDでは、穴の形が積める層数の上限を決める”

対象は、400層を超える3D NANDフラッシュ向けのメモリチャネルホールエッチングです。層を積むほど、貫く穴は深くなります。深い穴で形を保てるかどうかが、そのまま積める層数の上限です。この技術は、2023年6月に京都で開かれたVLSI Technology and Circuitsシンポジウムで発表されました。

細いパターンほど、保護と速さの釣り合いが難しくなる

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冷やせば何でも掘れるわけではありません。AVSの講演要旨は、50〜100 nm以下のパターンに向けてSF₆とO₂の極低温プロセスを作るうえで、課題を2つ挙げています。1つはアンダーカットをなくすための保護種の最適化、もう1つは、プロセスを制御できる程度までエッチングレートを下げることです。さらに20 nmを下回るパターンでは、エッチングの深さとアスペクト比に合わせて時間とともに条件を変えるプロセスが必要になるかもしれないとしています。同じ方式でも、ナノスケールのシリコンではレートを下げることが課題に挙がり、深い絶縁膜の穴では東京エレクトロンが高いレートを売りにしています。

形の良さを、冷却設備と段取りの複雑さで買う

Section titled “形の良さを、冷却設備と段取りの複雑さで買う”

ウェーハを極低温まで冷やし、その温度を保つには専用の機構が要るため、装置の構造が複雑になります。温度を変えるたびに時間がかかり、前後の工程との受け渡しも設計し直しになります。

露光の側は、レジストを薄くする方向へ進んでいます3。薄いマスクで深く掘る条件と、低温の条件を同時に満たす必要があります。シリコンの極低温エッチングで報告された、低いバイアス電圧でマスクの減りを抑えられる性質は、この条件に合っています。

極低温エッチングとは何ですか?

ウェーハを極低温の温度域まで冷やして行うプラズマエッチングです。側面で起きる反応が抑えられ、穴が下へまっすぐ進みます。

なぜ冷やすと形がよくなりますか?

温度が低いほど、側面に付いた分子が反応する前に離れにくくなり、保護膜として働くためです。底では入射する粒子のエネルギーが反応を進めます。

どのくらい速いですか?

東京エレクトロンは、深さ10 µmのエッチングを33分で完了するとしています。同社は、絶縁膜のエッチングを極低温域へ初めて持ち込み、非常に高いエッチングレートの装置になったと説明しています。

環境の面ではどうですか?

東京エレクトロンは、従来技術と比べて温暖化係数を84%削減できると発表しています。

どんな装置ですか?

極低温の温度域を使うプラズマエッチング装置です。シリコン向けでは、SF₆とO₂を使う極低温プロセスをOxford InstrumentsのICP 380で調べた研究があります。

どこで使いますか?

400 層を超える 3D NAND のメモリチャネルホールが対象です。深く細い穴を開ける工程です。シリコンでは、100 nmから10 nmの密なトレンチを掘ってナノ分光器やレーザー導波路を作った例があります。

いつ発表されましたか?

2023年6月9日に公表され、同月のVLSI Technology and Circuitsシンポジウムで発表されました。

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