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ローディング効果とは

ローディング効果とは、同じレシピのまま、ウェーハ上で削る面積やパターンの疎密、穴の深さが異なるだけで、エッチング速度と加工形状に差が出る現象です。 同じ名前の下に、仕組みの違う2つの速度低下があります。削る面積が増えて1か所あたりの反応種が足りなくなる供給不足と、穴が深くなって底へ反応種が届きにくくなる輸送の低下です。同じ条件で流しているのにパターンによって深さや形が変わるので原因の切り分けが難しく、面積による差か深さによる差かで、効く対策が変わります。

削る面積が増えると、1か所あたりの活性種が減る

Section titled “削る面積が増えると、1か所あたりの活性種が減る”
活性種の行き先
ガス解離・電離・励起で活性種壁と反応排気開口が1つ開口が3つ1か所の取り分が減る表面数nmで消費
活性種はプラズマを囲む壁と反応して排気され、その一部が基板へ届いて開口部で消費されます。生成量が同じなら、開口が増えるほど1か所あたりの取り分は減ります。

供給不足の側は、活性種の収支で説明できます。装置へ導入したフルオロカーボンガスは、プラズマ中の電子衝突で解離・電離・励起されます。生成した活性種は滞在時間のあいだにプラズマを囲む壁と反応したのち排気され、その一部が基板上へ輸送されてエッチング反応で消費されます1。イオンが基板の酸化シリコン表面へエネルギーを与える深さは数ナノメートル程度で、この活性な領域で単位時間に何個のCF系活性種中のフッ素が反応するかでエッチング速度が決まります。削る面積が増えれば、消費の側が増えます。

パターンが疎か密かでエッチ速度と加工形状に差が出る現象には2、マイクロローディング効果という古くからの名前があります。MITの学位論文は、トランジスタのゲート電極となるパターン付きポリシリコンのエッチングを記述するために、エッチング速度、酸素の効果、ローディング効果を定量化し3、測定から導いた反応速度モデルをモンテカルロ法の形状シミュレータへ組み込んで、さまざまな条件での形状の変化を計算しています。

ソニーセミコンダクタソリューションズの久保井信行氏らは、加工特性がばらつく要因として3つを挙げています4。加工の途中で大きくなるアスペクト比、チャンバ壁の表面状態で変わるバルクプラズマのイオンとラジカルの組成と面内分布、ポリマーの再堆積量を左右するウェハ内とチップ内の開口率です。開口率による差は、再付着で決まる側壁保護膜の厚さと同じ原因から来ています。

深い穴ほど遅くなるRIE-lagは、支配的な要因が条件で変わる

Section titled “深い穴ほど遅くなるRIE-lagは、支配的な要因が条件で変わる”

輸送の低下の側は、アスペクト比が上がるほどエッチングレートが落ちる現象で、RIE-lagと呼ばれます。キオクシアの大村光広氏らは、高アスペクト領域でのレート低下の原因候補として、イオンのシャドウイング、細孔内での中性粒子の輸送、側壁と穴底のチャージアップを挙げています。どの要因が支配的かはアスペクト比とプロセス条件で変わるため、機構はまだ特定されておらず、研究が続いています。

3次元フラッシュメモリのメモリホールのアスペクト比はすでに40を超え、さらなる大容量化では100を超えると予想されています。大村氏らは、エッチングレートがそのまま単位時間あたりの生産量になり、メモリのコストに大きく影響する点を、RIE-lagが課題として残る理由に挙げています。

現場では、エッチング時間の伸びとマスクの後退として先に現れる

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寸法が細るほどレジストは薄くなり、加工パターンのアスペクト比が大きくなるほどエッチング速度が落ちます5。マイクロローディング効果と呼ばれるこの速度低下の分だけエッチング時間が延び、マスクが後退します。レジストをそのままマスクに使う従来プロセスでは、マスクが大きく後退し、ホール上部の寸法が広がります。

東芝の大岩徳久氏は対策として、レジスト、SOG、塗布カーボン膜を積層した多層レジストプロセス(S-MAP)を挙げ、上層のレジスト膜厚を300ナノメートル以下、中間層のSOGを80ナノメートルとし、寸法180ナノメートルのホールエッチングで従来のレジストプロセスと比べた結果を示しています。多層レジスト方式は、プラズマ耐性の高いアモルファスカーボン膜などにいったんパターンを転写してから被加工膜を削るので、ArFレジストのエッチング負荷を減らせます1。日立製作所中央研究所の根岸伸幸氏と伊澤勝氏は、その代わりに工程数の増加による製造コストの増大や、各工程での厳密な寸法管理といった課題が多くあるとしています。マスクの耐性を上げる方法にはメタルハードマスクもあります。

面内のばらつきも同じ原因から生じます。パターンの加工寸法(CD)の変換差の制御には均一性が強く影響し、生成物、ラジカル、イオンの面内のむらが、側壁保護膜の厚さのばらつきとして現れます。均一性を管理する工程は、ローディング効果と同じ対象を測っていることになります。

面積の差とレシピの差は、モニタウェーハをそろえて切り分ける

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疎密の差を同じウェーハに載せて断面を比べる方法は、古くから使われています。日立は1989年に、5インチウェーハの半分にだけレジスト(OFPR800を220度でベーク)を塗ったサンプルでAl-Si-Cu膜を加工し、レジスト端面からの距離が5ミリメートル、20ミリメートル、40ミリメートルの位置で断面形状を比べ2、マイクロ波プラズマ方式はこの極端なパターンでも寸法と形状の差が小さく、疎密の厳しいASICの加工に向くとしました。Al合金膜のRIEではエッチング中のガス圧力が高いのでマイクロローディング効果が出やすく、マイクロ波プラズマエッチングでは従来のRIEより真空度の高い領域で高密度のプラズマを安定して作れるので、マイクロローディング効果を小さく保てます。

終点検出の信号にも面積が影響します。ソニー半導体事業本部の辰巳哲也氏は、量産設備で実際に使われているモニタリング機器を、反応生成物の発光の変化からエッチングの完了時点を見積もる終点検出(EPD)用の簡易的なOES(光ファイバで観測窓越しにプラズマ光を分光します)と、基板のRF供給系の一部の電位や基板電極の温度の監視に限られるとしています。反応生成物の発光で終点を決めるので、削る面積が信号の大きさに影響します。プラズマ診断(終点検出)の波形を比べるとき、開口率の違うモニタウェーハを混ぜると、レシピによる差と面積による差が区別できなくなります。日々の管理では、CD-SEMの実測値をSPC(統計的工程管理)に使う前に、この条件をそろえます。

圧力は方向性とラジカル供給を、滞在時間は選択比と活性種の量を引き換える

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用途ごとの圧力帯
M-328EX 0.1Pa台ガラス 0.2〜2PaMEMSのSi深掘り 3〜100Pa0.1110100圧力(Pa、対数)イオンの方向性ラジカル供給のレート
マイクロローディング効果がほとんど出ないとされる酸化膜エッチング装置は0.1パスカル台、ガラスは0.2〜2パスカル、高いエッチ速度が要るシリコン深掘りは3〜100パスカルを使います。低圧はイオンの方向性を、高圧はラジカル供給によるレートを取ります。

圧力を下げると、面積の差は小さくなります。日立は酸化膜エッチング装置M-328EXについて、0.1パスカル台でエッチングでき、マイクロローディング効果がほとんど出ず、径の小さい高アスペクト比の穴を垂直に加工できるとしています6。同じ装置ではBPSG膜のエッチング速度700〜1,000ナノメートル毎分で、アスペクト比の高い0.5〜0.35マイクロメートルのコンタクトホールを加工しています。穴径が小さくなるとレートは下がり、穴底での下地シリコンに対する選択比は高くなる傾向がありました。

圧力を下げて手放すのは、ラジカルの供給によるレートです。MEMS分野のシリコン深掘りでは、高いエッチ速度を得るために3〜100パスカルの高い圧力が使われ、ガラスのエッチングでは、イオンが基板に届く効率の良い0.2〜2パスカルが使われます。圧力が高いと、イオンが基板に届くまでに他の原子や分子と衝突してエネルギーを失い、エッチ速度が下がります。低圧にすればイオンの方向性と到達効率が上がり、高圧にすればラジカルの供給によるレートが上がります。

ガスの滞在時間は、解離の度合いを決めるもう1つのつまみです。名古屋大学の関根誠氏は、ガス分子1個が排気されるまでにプラズマ中で受ける電子衝撃の回数を解離制御の一指針とし、その回数はガスの滞在時間、電子密度、衝突解離レートの積に相当するとしています。関根氏は、ICP(誘導結合プラズマ)は構成上チャンバ体積が大きく、滞在時間が増えてフルオロカーボンガスが高度に解離し、多く生成されたフッ素原子が低選択比の一因になったと説明します。マグネトロンRIEでは、3センチメートル程度の電極間隔と一酸化炭素またはアルゴンの大流量導入で滞在時間を短くし、窒化シリコン膜に対する酸化シリコン膜の高選択比エッチングを実現しています。CF4単体では酸化シリコンと下地シリコンの選択比が1.3程度と小さく、水素を加えると40程度まで上がるとも関根氏はしています。滞在時間を縮める側は解離を抑えて選択比を取り、伸ばす側は活性種の生成量を取る配分になります。

開口率はマスクレイアウトでそろえ、深い穴の速度低下には極低温エッチングが挙がる

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深さと工程の数
メモリホール40超現行の1工程1対100工程を重ねるいくつも重ねる目標の1工程1対2000100200
メモリホールのアスペクト比はすでに40を超え、現状は1対100の工程を重ねて深い穴を作っています。東京エレクトロンは、工程を1回にまとめて1対200を加工できる環境を目標にしています。

面積の差は、エッチングの手前で手を打ちます。久保井氏らは、ウェハ内とチップ内の開口率について、ダミーパターンの配置も含めてマスクレイアウトを細かく設計する必要があるとしています。開口率をそろえる対策はマスク設計の工程で行い、ドライエッチングの側では、面積の差があるまま許容範囲に収める条件を探します。

深さの差には温度で手を打ちます。大村氏らは、エッチングレートの低下を改善する技術として注目されているクライオエッチングプロセスを挙げ、30年近く前から検討されてきた技術ながら、絶縁膜エッチングの報告例は限られるとしています。東京エレクトロンは2023年6月9日、400層を超える積層膜にメモリチャネルホールを開ける技術として7、絶縁膜のエッチングではこれまで実用化されていなかった極低温の領域で速度を大きく上げるプロセスを開発しました。同社は、高アスペクト比の深さ10マイクロメートルを33分で加工でき、地球温暖化係数を従来比84パーセント削減できるとしています。

同社は2024年10月21日に、現行機のブラインの温度は0度から、用途によっては80度で8、クライオジェニックエッチングではマイナス数十度の極低温のブラインを流せるので、深さ10マイクロメートル以上の穴を従来比2.5倍の速度でまっすぐ加工でき、消費電力も40パーセント以上減るとしています。現在はアスペクト比1対100の工程をいくつも重ねて加工しており、同社の目標は工程を1回にまとめて1対200を加工できる環境です。3回に分けていた加工を2回で済ませられれば、その分製造コストを抑えられます。RIE-lagを抑える取り組みは、3D NANDの積層数と工程の分割数の設計に直結します。

ローディング効果とは何ですか?

同じレシピのまま、削る面積やパターンの疎密、穴の深さが違うだけで、エッチング速度と加工形状に差が出る現象です。原因は反応種の供給不足と穴の中での輸送の低下の2種類で、後者はアスペクト比に依存するレート低下としてRIE-lagとも呼ばれます。

マイクロローディング効果はどう区別しますか?

パターンの疎密や寸法という局所的な差で、エッチ速度と加工形状に差が出る現象を指します。ウェーハ全体の開口面積で活性種の消費量が変わる現象は、開口率の問題として扱います。

RIE-lagとは何ですか?

アスペクト比が上がるほどエッチングレートが落ちる現象です。原因候補はイオンのシャドウイング、細孔内での中性粒子の輸送、側壁と穴底のチャージアップで、どれが支配的かはアスペクト比とプロセス条件で変わるため、機構はまだ特定されていません。

現場では最初にどんな症状として出ますか?

エッチング時間の延長とマスクの後退です。アスペクト比が大きくなるほどエッチング速度が落ち、その分エッチング時間が延びてマスクが後退し、ホール上部の寸法が広がります。面内では、側壁保護膜の厚さのばらつきを通じてCDの変換差に現れます。

何を調整して抑えますか?

圧力とガス滞在時間、ウェーハ温度、マスクレイアウトです。日立は自社の酸化膜エッチング装置について、0.1パスカル台でエッチングでき、マイクロローディング効果がほとんど出ず、径の小さい高アスペクト比の穴を垂直に加工できるとしています。温度側の手段は極低温のクライオエッチングです。

圧力を下げると何を手放しますか?

ラジカル供給によるレートです。MEMS分野のシリコン深掘りでは高いエッチ速度を得るため3〜100パスカルの高い圧力を使い、ガラスのエッチングではイオンが基板に届く効率の良い0.2〜2パスカルを使います。

開口率はエッチングのレシピで揃えられますか?

対策はマスク設計の工程に移ります。ポリマーの再堆積量を左右するウェハ内とチップ内の開口率は、ダミーパターンの配置も含めてマスクレイアウトを細かく設計する必要があります。

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