CD-SEM(寸法測定)とは
CD-SEM(寸法測定)とは、電子線でウェーハ上のパターンを走査し、線幅や穴の径を自動で測る装置です。 現場では、工程が目標どおりに進んだかを確かめる定規として使われます。
定規である以上、ものさし自身の誤差が作りに許された幅を食います。電子線を当てて測るので、測る相手が縮むという代償も抱えます。
走査電子顕微鏡の機能のうち、測長に特化した装置
Section titled “走査電子顕微鏡の機能のうち、測長に特化した装置”CD-SEMは、走査電子顕微鏡が持つ観察・分析・測長という機能のうち測長に特化して作られた装置で1、半導体の製造ラインで工程の寸法管理に使われ、数百nm幅のパターン幅を自動で測ります。アドバンテストは、自社の装置がフォトマスクやウェーハに描かれた配線のパターンのような微細な表面の構造を、高い精度で安定して測るとしています2。対象はウェーハとフォトマスクの両方に及びます。
光学顕微鏡が解像限界に来た1980年代に、低加速電圧で実用になった
Section titled “光学顕微鏡が解像限界に来た1980年代に、低加速電圧で実用になった”1980年代に縮小投影露光方式でサブミクロン領域の微細加工が可能になった一方、その細かさが光学的な解像限界の近くまで来たので、従来の光学顕微鏡による寸法の計測と管理が問題になってきました3。走査電子顕微鏡は、光学顕微鏡に比べて焦点深度が深く分解能も高い装置です。ただ、電子線を当てると帯電で像が劣化し、素子の損傷も生じるため、当時のままでは寸法検査で使いにくい装置でした。
1984年に日立がこの課題を解き、S-6000という装置を世に送りました。電界放射型の電子銃を使い、約1kVという低い加速電圧にして帯電と素子の損傷を防ぎ、対物レンズの磁場の中を通して二次電子を拾う方式で信号の対称性を確保したうえで、1時間あたりの測定枚数が多い自動装置に仕立てたものです。1984年ごろのデザインルールは1.3μmで、1985年の商用機は加速電圧1kV程度で15nmの分解能を得ました4。
二次電子の強さの分布から、端の位置を数字にする
Section titled “二次電子の強さの分布から、端の位置を数字にする”電子銃から出たビームを収束レンズで細く絞り、偏向器で試料の上を二次元に走査します。照射で表面から出た二次電子を検出器が拾って明るさへ変換し、二次電子の量が試料の凹凸に応じて増減するので、表面の像ができあがります。その走査像のうち寸法を測る箇所を指定し、そこでの二次電子の強さの分布と倍率から寸法を演算します。端の位置を確定する方法にはしきい値を使うものなどがあり、いずれも自動で行われます。
段差になった端の部分では電子が多く発生するので、その電子を捉えれば形が分かり、パターンの寸法が測れます5。像を人が眺めて判断するかわりに波形の山の位置を数字にする点が、CD-SEMの性格を形づくっています。
現場での動きも自動です。レシピを設定するとウェーハがカセットから取り出されてステージへ運ばれ、ウェーハの中のアライメント点を使って、光学顕微鏡の像と電子ビームの像という二段階で位置を合わせます。測定点へ移動し、焦点の自動調整とパターン認識で測定点の位置を合わせてから、測長に十分な倍率へ拡大して寸法を自動で測ります。2006年時点で、1時間あたり40枚から50枚のウェーハを自動で測り切ります。
ものさしの誤差は、作りに許された幅を食う
Section titled “ものさしの誤差は、作りに許された幅を食う”CD-SEMがずれていると、良品を捨てたり不良を流したりします。さらに困るのは、装置Aと装置Bで同じウェーハが異なる値になったとき、エッチングを直すべきなのか装置を直すべきなのかで迷いが生じることです。
回路パターンが10nmから20nmのとき、目標寸法の1割までを作りのばらつきとして許すのが一般的で、許されるばらつきは1nmから2nmです。5ここで測長SEMの誤差が1nmもあれば、作りのばらつきは装置の誤差に埋もれます。作りのばらつきに対して装置間の差を1割までとするなら、0.1nmの水準まで抑え込む必要が生じます。日立製作所は、第2世代のCG7300でこの差を0.1nmに抑え、従来機種比で1割向上したとしています。
安定していることと正しいことは、別々に確かめる
Section titled “安定していることと正しいことは、別々に確かめる”安定度は三つに切り分けます。1台の装置で同じパターンを続けて測ったときのばらつきが短期再現性、同じパターンを別の装置で測ったときのばらつきが機差、同じ装置で長期にわたって測ったときのばらつきが長期再現性です。機差を詰める作業は装置マッチングと呼ばれ、一般には画像を取るときの倍率を合わせ込むところから行われます。
ただし再現性や装置間の一致は安定性の指標にとどまり、測った値そのものが真の寸法とずれていては困ります。そこで、ピッチの間隔が外部の標準へたどれるグレーティング試料を10万倍程度で測長し、校正値に合うように倍率を較正します。標準マイクロスケールのような倍率標準試料での較正も、測定精度を上げるために行われます。
電子線で測る代償は、レジストの収縮と測れる枚数
Section titled “電子線で測る代償は、レジストの収縮と測れる枚数”電子線を当てて測る以上、測る相手が少し縮みます。フォトレジストのうちArF露光用のパターンは電子線の照射で収縮するため、撮像時の照射量を小さくせざるを得ず、信号対雑音比の低い状態で測ることになります。像を鮮明にしたければ電子を多く当てたいのに、当てるほど相手が縮みます。この綱引きが、CD-SEMの測長アルゴリズムを難しくしている理由です。1kV以下という低加速電圧も、帯電を避けると同時に試料の損傷を防ぐための選択です。
時間も差し出します。2006年の1時間あたり40枚から50枚は走査電子顕微鏡として速い部類でも、測れる枚数と点数には限りがあります。したがって実務ではサンプリングの設計が要ります。どのロットの、どのウェーハの、どの座標を測るかを選ぶ作業が、装置の性能と同じくらい結果を左右します。
50nm以下の世代では、端のうねりも測る
Section titled “50nm以下の世代では、端のうねりも測る”50nm以下の世代では、直線の端の局所的なうねりまで測るようになり、これはラインエッジラフネスとして管理されます。幅という一つの数字に加えて、端のうねりもEUV世代の管理対象へ加わりました。
関連するデータ・ツール
Section titled “関連するデータ・ツール”- CDシフトはADIとエッチバイアスで切り分け|レジスト線はCD-SEM測定で1.6 nm縮小── 測っている間の縮みがADIの値を動かす例
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”CD-SEMとは何ですか?
電子線でウェーハ上のパターンを走査し、線幅や穴の径を自動で測る装置です。走査電子顕微鏡が持つ観察・分析・測長のうち測長の機能に特化した装置で、半導体の製造ラインで工程の寸法管理に使われます。
電子線を使う理由は何ですか?
光学顕微鏡が分解能の限界に達したためです。1980年代の縮小投影露光でサブミクロンの加工が可能になった一方、その細かさが光学的な解像限界の近くまで来て、光学顕微鏡による寸法計測と管理が問題になりました。
どうやって寸法の数字を求めているのですか?
二次電子の強さの分布から端の位置を求めます。走査像のうち測る箇所を指定し、そこでの二次電子の強さの分布と倍率から寸法を演算して、しきい値法などの端の検出で自動的に求めます。
測った値はどこで使いますか?
露光やエッチングの条件へ反映します。目標値との差を確かめて次のロットの条件を調整するため、CD-SEMは工程を合わせ込むための入口になります。
なぜ装置ごとの差が問題になるのですか?
どちらの数字を信じるかで迷いが生じるためです。目標寸法の1割を作りのばらつきに許し、そのばらつきに対してさらに1割まで装置間の差を認めると、0.1nmの水準まで差を抑える必要が生じます。
CD-SEMは何を差し出していますか?
測る相手が少し縮む点です。ArFレジストのパターンは電子線の照射で収縮するため撮像時の照射量を小さくせざるを得ず、信号対雑音比の低い状態で計測することになります。
測った値が真の寸法に近いことは、どう担保しますか?
外部にたどれる標準試料で倍率を較正します。再現性や装置間の一致は安定性の指標にとどまるため、ピッチの間隔が外部の標準へたどれるグレーティング試料で倍率を較正します。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- オーバーレイ計測とは── 同じ露光後の計測で、こちらは層と層の位置のずれを測ります
- エリプソメトリとは── 同じ非破壊の計測で、こちらは膜の厚さを光で測ります
- 断面観察とは── 切って直接観察する側で、CD-SEMは切らずに上から測ります
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- 1日本電子:走査電子顕微鏡 基本用語集「測長SEM」jeol.co.jp ↩
- 2アドバンテスト:測長SEM/欠陥レビューSEMadvantest.com ↩
- 3半導体歴史館:測長SEM(CD-SEM)shmj.or.jp ↩
- 4日本表面科学会:CD-SEMによる微細寸法計測技術 表面科学 第27巻 第11号(2006年)jstage.jst.go.jp ↩
- 5日立製作所 研究開発:世界トップシェアの測長SEMで最先端半導体の開発を下支えしつつ、さらなる究極の高精度化の実現をめざす。rd.hitachi.co.jp ab