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ARDE(アスペクト比依存エッチング)とは

ARDE(アスペクト比依存エッチング)とは、同じレシピで同時に掘っても、アスペクト比の大きいパターンほどエッチングが遅く進む現象です。 幅の広い溝が指定の深さへ届いた時点で、細い溝はまだ途中にあります。1枚のウェハに流すレシピは1つなので、どちらの深さに合わせるかを選ぶことになります。ARDEは、ボッシュ法のDRIEでもICP-RIEでも到達できるアスペクト比の上限を決めます1。決め手は底へ届く量で、イオン、反応ガス、生成物の排出、底の帯電のどれもがアスペクト比で変わるため、1つの条件を変えても差は残りやすく、対策にはそれぞれ別の副作用があります。

細い穴の底には、イオンもガスも届きにくい

Section titled “細い穴の底には、イオンもガスも届きにくい”

半導体製造でのアスペクト比は、エッチングなどで基板上に形成されたパターンの深さと幅の比で、深さを幅で割った値です2。この値が大きいほど加工は難しくなります。細く深い形状の底では、イオンの衝突とガスの輸送がどちらも大きく減り、エッチングが遅くなって、完全に止まることもあります。反応ガスが溝の底まで流れてシリコンと反応しにくくなり、反応でできた生成物を外へ出すのも難しくなります。

同じ時間でも細い溝ほど浅い
イオン−−+深さの差向きのずれたイオン側壁は負、底は正ガスと生成物も通りにくい幅が広い溝中くらい細い溝レジストSi
広い溝ではイオンがまっすぐ底まで届き、細い溝では向きのずれたイオンが底まで届きにくく、底の帯電とガスの通りにくさも重なって、同じ時間でも浅く止まります。

Si酸化膜のエッチングのように側壁の保護膜で異方性を作る機構では、2010年の時点で、孔径すなわちアスペクト比によってエッチング速度が大きく変わり3、マイクロローディング効果として注意を要するとされていました。異方性を側壁の保護膜で作る限り、その保護膜そのものが、底へ届く反応種の通り道を細めます。

底の帯電もエッチング速度を左右します。電子シェーディング効果では4、イオンは試料に垂直に入る一方、電子はさまざまな向きから入るため、レジストのパターンに遮られた狭いスペースでは底に届く電子の量が減ります。パターンの無い場所と比べて、レジストの側壁は負に、アスペクト比の大きいパターンの底は正に帯電し、この電位の分布が垂直に入るイオンの軌道に影響します。荷電粒子の蓄積でゲート絶縁膜が静電破壊を起こす現象は、電子シェーディングダメージと呼ばれます。

ボッシュ法では、底の保護膜を剥がすのに時間を取られ、Siを削る時間が減る

Section titled “ボッシュ法では、底の保護膜を剥がすのに時間を取られ、Siを削る時間が減る”

ボッシュプロセスは、保護膜の堆積とエッチングを交互に繰り返して深く掘ります。エッチングステップの初めに、溝の底に付いた保護膜をイオンの衝突で物理的に削り取ります。ところがイオンは正確に垂直には飛ばず、雰囲気のガスと衝突してわずかに向きを変えることがあり、深い形状の底へ届くイオンはごくわずかです。底の保護膜がなかなか除去されず、そのぶんステップの後半でシリコンがエッチングガスにさらされる時間が短くなります。ボッシュ法の細い穴では、削り始めるまでの待ち時間そのものが遅れになります。

1回のエッチングステップの内訳
1回のエッチングステップ広い溝の底細く深い溝の底Siが露出する時間短く残る底の保護膜を除去Siを削る
届くイオンが少ない細い溝の底では、保護膜の除去に時間がかかり、シリコンを削れる時間が短くなります。

現場で先に出るのは、同じ層の中の深さの差

Section titled “現場で先に出るのは、同じ層の中の深さの差”

CD制御は、エッチング前のマスク寸法からエッチング後の寸法がどれだけずれるかを抑え、そのずれの面内差と疎密差をそろえて特性の均一なデバイスを量産する仕事です。同じレシピが幅と密度の違うパターンへ違う寸法を返すので疎密差が生まれ、ARDEはこの疎密差を深さ方向へ広げた形になります。

対応は2通りです。細い穴が抜けるまで掘れば、太い穴はそのあいだずっとオーバーエッチを受けます。太い穴が届いた時点でエッチングを終えれば、細い穴は指定の深さより浅く仕上がります。オーバーエッチをどこまで許せるかは下地との選択比で決まります。

早く終えすぎる側の問題にはストリンガがあります。ストリンガは下地の段差に沿って残るエッチング残渣です。段差の部分では縦方向の膜厚が厚くなるため、異方性エッチングでオーバーエッチを短くすると出やすくなり、歩留まりと信頼性に影響する可能性もあります。

測るのは、底の径と深さのばらつき

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東京エレクトロンは2023年6月に、400層を超える積層構造にメモリチャネルホールを形成する技術として、高アスペクト比の10 µmのエッチング深さを33分で加工でき、地球温暖化係数を従来比で84%削減できるとしています5。結果として示したのは、ホールの断面SEM写真と、ホールの底をFIBで切った写真です。底の径は、断面と底のカットで測る量です。

東北大学は2026年7月に、次世代3D NANDフラッシュメモリ向けの深さ約10 µmの高アスペクト比エッチングホールを、テンダーX線タイコグラフィCTで非破壊のまま三次元可視化しました6。約67 nmの三次元空間分解能で、ホール間距離やエッチング深さのばらつきを数値で示し、深さ方向のホール径の推移や、エッチングプロセスに由来すると考えられる形状変化も数値化しています。3 GeV高輝度放射光施設NanoTerasuのビームラインBL10Uで得た結果です。

CD-SEMとOCDが返すのは上面の寸法と光学的な平均値なので、深さ方向のどこで絞られたかは断面観察とこの種の非破壊三次元計測で測ります。同じ層の中での散らばりは、均一性の疎密成分として集計します。

温度・工程分割・マスクで深さを稼ぐと、別の項目が悪化する

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1つ目はウェハ温度です。高アスペクト比のエッチングでは、プラズマのエネルギーによるウェーハの昇温を抑えるため、装置の中に低温のブライン(不凍液)を流しています7。現行機のブラインの温度は0度から、用途によっては80度です。クライオジェニックエッチングではマイナス数十度の極低温のブラインを流せるため、東京エレクトロンは、深さ10 µm以上の穴を従来比2.5倍の速度でまっすぐ加工でき、エッチングレートが高いので消費電力も従来比40%以上減るとしています。一方で、装置内の循環液に使われるPFASや冷凍機のフロンなどが、今後置き換えを進める素材に挙げられています。ウェハの温度制御は静電チャックが担います。

2つ目は工程の分け方です。現状はアスペクト比1対100の工程を複数組み合わせてより微細な加工を施しており、目指す先は1回で1対200のエッチングができる環境です。3回に分けていた加工を2回で済ませられれば、その差だけ製造コストを抑えられるとしています。分ければ深さへ届き、その代わりに工程数と時間がかかります。

3つ目はマスクです。ø70 nmのホール加工8(深さ552 nm、アスペクト比7.9、エッチングレート460 nm/min)について、サムコは、70 nm前後のパターンならマスクを厚くするかSiO₂マスクを使うことでアスペクト比15以上まで掘れるとしています。アスペクト比52の加工9でも加工深さはマスク厚で制限されており、サムコは、300 nmのパターンで十分なマスク厚があればアスペクト比100の加工も可能としています。マスクを厚くすれば到達アスペクト比は伸びますが、厚いマスクを作る工程が増えます。

到達アスペクト比は、幅と深さの組で比べる

Section titled “到達アスペクト比は、幅と深さの組で比べる”
同じ幅で描いた到達アスペクト比
7.91015以上52100200ø70 nm実測TSVの要求厚いマスクSi深掘り300 nmで可能1対1001回で1対200数字はアスペクト比基板掘った穴
幅をそろえると、アスペクト比の数字はそのまま穴の深さの違いになり、ø70 nmの実測7.9と1回で掘りたい1対200の開きが見えます。

サムコのアスペクト比52の加工データでは、アスペクト比を競う場合はトレンチの幅が狭いほど有利です。アスペクト比は深さを幅で割った値なので、同じ深さでも幅を細くすれば数字が上がります。装置の到達アスペクト比は幅と深さの組をまとめた1つの値なので、比べるときは幅の条件も確かめます。

要求値の側にも幅が付きます。2017年時点で、TSVの作製には穴径50 µm以下、アスペクト比10程度が要求されていました。ø70 nmで実測7.9、300 nmで100が可能という数字と、50 µm以下で10程度という要求は、幅の桁がまるで違う場所の話です。ARDEが幅ごとに別のレートを返す以上、幅と深さを両方そろえてはじめて比べられます。

ARDEとは何ですか?

同じレシピで同時に掘っても、アスペクト比の大きいパターンほど1分あたりに進む深さが小さくなる性質です。細く深い穴の底ではイオンの衝突とガスの輸送が大きく減り、エッチングが遅くなって、止まってしまうこともあります。

なぜ細い穴のほうが遅いのですか?

底へ届く量が入口で絞られるためです。向きのわずかにずれたイオンは底まで届きにくく、反応ガスは底へ流れ込みにくく、反応生成物も抜けにくくなります。電子シェーディング効果では、狭いスペースの底が正、レジストの側壁が負に帯電します。

現場では何が先に出ますか?

同じ層の中での深さの差です。CD制御はエッチング後の寸法のずれを抑え、その面内差と疎密差をそろえる仕事で、ARDEはこの疎密差を深さ方向へ広げた形になります。

底の形はどうやって測りますか?

断面と非破壊の三次元計測です。東京エレクトロンは2023年にホールの断面SEM写真とホールの底をFIBで切った写真を示し、東北大学は2026年7月に深さ約10 µmのホールを約67 nmの三次元空間分解能で非破壊可視化して、ホール間距離やエッチング深さのばらつきを数値で示しました。

温度を下げると何が動きますか?

2024年10月時点で、現行機のブライン温度は0度から用途によっては80度です。クライオジェニックエッチングではマイナス数十度のブラインを流せるため、深さ10 µm以上の穴を従来比2.5倍の速度でまっすぐ加工でき、消費電力も40%以上減ると東京エレクトロンはしています。

工程を分けると何が悪化しますか?

工程数と時間です。現状はアスペクト比1対100の工程を複数組み合わせており、目指す先は1回で1対200を掘れる環境です。3回に分けていた加工を2回で済ませられれば、その差だけ製造コストを抑えられます。

装置の到達アスペクト比はそのまま比べられますか?

幅の条件を確かめて比べます。アスペクト比は深さを幅で割った値なので、同じ深さでも幅を細くすれば数字が上がり、トレンチの幅が狭いほど有利になります。

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