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チャージングダメージとは

チャージングダメージとは、プラズマを使う工程でウェーハ表面へ残留した電荷が、薄いゲート絶縁膜へ電圧をかけて絶縁膜を劣化させたり破壊したりする損傷です。 プラズマを使う工程では、イオンを加速する電圧で異方性のエッチングを作りますが、同じ電圧がゲート絶縁膜にかかると膜を壊します。加工の性能を保ったまま電荷を残さない条件を探すのが難しい点です。

電子とイオンの届き方の差が、表面に電荷を残す

Section titled “電子とイオンの届き方の差が、表面に電荷を残す”

ドライエッチングはデバイスへ物理的および電気的な損傷を与える可能性があり、電気的な損傷をチャージダメージ1と呼びます。チャージダメージはゲート酸化膜を破壊するか、その信頼性を低下させます。発生の要因は、プラズマの不均一と電子シェーディング効果とされています。

シリコン基板をプラズマの励起空間に置くと、照射イオンのエネルギーが非常に大きくなります。さらに高周波放電でプラズマを励起するため、負電荷の電子電流と正電荷のイオン電流が交互に流れ込んで基板表面に電荷が残ります2。この電荷が、MOSトランジスタの薄いゲート酸化膜に大きな電圧をかけて破壊します。

電圧の大きさは、RIEの自己バイアスから見積もれます。自己バイアスは、高周波の電界に電子は追従できてもイオンは追従が遅れるため、電極が負に帯電して生じる電圧です。13.56メガヘルツがよく使われる平行平板型ではウェーハ側の電極を負に帯電させられ、この電圧が数百ボルトになるので、プラズマ中のイオンを加速してウェーハ表面に垂直に入射させ、異方性のエッチングができます。同じ数百ボルトが、異方性を生むと同時に、ゲート絶縁膜を壊す原因にもなります。

ウェーハの置き場所と表面の電荷
プラズマ励起空間表面に電荷が残るゲート絶縁膜に大きな電圧プラズマ励起空間拡散プラズマ領域電子電流とイオン電流が常に等しい表面に電荷が残らない電子イオン
ウェーハをプラズマ励起空間の中に置くと、電子電流とイオン電流が交互に届いて表面に電荷が残ります。励起空間から離れた拡散プラズマ領域では2つの電流が常に等しくなり、表面に電荷が残りません。

電荷が溜まる場所は、パターンの形とプラズマの偏りで決まる

Section titled “電荷が溜まる場所は、パターンの形とプラズマの偏りで決まる”

電子シェーディング効果は3、イオンが試料に垂直に入るのに対して電子はランダムな方向から入るため、レジストパターンに遮られた狭いスペースの底に届く電子の量が減る現象です。その結果、レジスト側壁は負に、高アスペクト比パターンの底は正にチャージアップします。

この偏りがそのまま損傷になります。電子シェーディングダメージは、電子シェーディング効果によるプラズマ中の荷電粒子の蓄積で、ゲート絶縁膜が静電破壊を起こすことです。同じウェーハ、同じレシピでも、アスペクト比と疎密が違う場所で影響の大きさが変わります。

面内分布の測り方も結果を左右します。プラズマの不均一も要因の1つなので、プラズマの偏りとパターンの偏りは別々に重なります。プラズマ診断と静電チャックによる面内制御が、2つの偏りを切り分ける手がかりになります。

壊れ始めるエネルギーは、膜の種類で3倍以上違う

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シリコン基板表面に照射するアルゴンイオンのエネルギーが25電子ボルト、13電子ボルト、7電子ボルト以上になると、それぞれ単結晶シリコンのSi-Si結合、Si3N4膜、SiO2膜が壊れます。そのため、照射イオンのエネルギーをこの臨界イオンエネルギー以下に抑えるのが方針です。電子温度が十分に低い拡散プラズマ領域ではプラズマ電位が10ボルト程度以下になり、接地したチャンバ内面に照射するイオンエネルギーは常に10電子ボルト程度以下になります。各種金属材料がイオン照射でスパッタされ始める臨界エネルギーは、12〜13電子ボルト程度とされています。

アルゴンイオンのエネルギーと壊れ始める材料
拡散プラズマ領域(〜10 eV)12〜13 eV 金属がスパッタされ始める0102030 eV7 eV SiO₂膜13 eV Si₃N₄膜25 eV 単結晶Si
アルゴンイオンの照射エネルギーが7 eV以上でSiO₂膜、13 eV以上でSi₃N₄膜、25 eV以上で単結晶シリコンのSi-Si結合が壊れます。拡散プラズマ領域の照射エネルギーは10 eV程度以下で、SiO₂膜の7 eVを超える範囲を含みます。

許せる乱れの線も示されています。京都大学の斧らは、10ナノメートル幅のゲート加工で許容される電極形状の加工寸法精度を1ナノメートル以下としました4。あわせて、厚さ2ナノメートル以下の薄い下地ゲート絶縁膜を残したまま加工する高い選択性と、ゲート絶縁膜の下に広がる半導体基板の変質層を1ナノメートル以下へ抑えることも条件に入れています。選択性は、狙う膜と残したい膜の削れ方の比を指します。

リーク電流と寿命を測れば、損傷の重さが分かる

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損傷は、ゲート絶縁膜のリーク電流と寿命へ出ます。TDDBは、破壊電界強度より低い電界でも印加が続くと、やがて絶縁性が劣化する現象です5。電子注入で絶縁膜内に電子トラップが発生し、臨界量を超えた時点で降伏へ至ると考えられています。厚さ4ナノメートル以下程度の極薄絶縁膜では、破壊までの時間がゲート電圧のべき乗で決まるパワーローの関係が示されています。

絶縁劣化は3つに分かれます。SILCはストレス印加の初期に出る1〜2桁のリーク電流増加、ハードブレークダウンは完全に絶縁性が失われてオーミック特性を示す破壊、ソフトブレークダウンはその中間で、状況によってはデバイスの故障にならないものです。実使用条件のような低い電圧では、ほとんどの事象がソフトブレークダウンになると考えられています。軽いチャージングの痕跡はSILCとして、重い痕跡はハードブレークダウンとして現れます。

面積を変える測定も使われます。膜厚5.4ナノメートルのMOSダイオードでは、面積を1×10⁻⁶、1×10⁻⁵、1×10⁻⁴平方センチメートルの3水準に変えた絶縁破壊特性が、横軸に12〜16メガボルト毎センチメートルの電界強度、縦軸にLn(−Ln(1−F))をとって示されています。等価絶縁膜厚2.4ナノメートルの膜では、50パーセントの試料が破壊されるまでの寿命のゲート電圧依存性も示されています。

置き場所、イオンエネルギー、ラジカルの3つで調整する

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1つ目は、ウェーハの置き場所とプラズマ源です。東京エレクトロンと東北大学が開発した装置6で比べると差がはっきりします。13メガヘルツで励起する従来のPECVD装置では、電子温度が高いためイオン衝撃ダメージが大きく、ウェーハがプラズマ励起領域に置かれるのでチャージアップダメージも大きくなります。2.45ギガヘルツのマイクロ波で励起する装置では、ウェーハが励起領域から離れた拡散プラズマ領域にあり、周りには電子温度の低い電子やイオンだけがあるので、損傷が非常に小さくなります。この低い電子温度が成り立つ条件は、500メガヘルツ程度以上の高い周波数の電磁波か、水平方向の直流磁界が500ガウスを超える強い磁界です。置き場所を変えるには、装置の周波数や磁界の条件を満たす必要があります。

2つ目はイオンエネルギーそのものです。臨界エネルギー以下に下げれば膜の結合を保ったまま加工できますが、削る速さが落ちます。ソニーセミコンダクタソリューションズの久保井氏らは、入射イオンの低エネルギー化と単色化が低ダメージ化に有利だとしながら、SiO2のエッチングレートの低さをALEの大きな課題としました。SiO2膜とSi3N4膜のポリマー膜厚の差を使ってエッチングステップのバイアスを順に上げると、高い選択比を保ったまま毎分40ナノメートルまで改善できましたが、実プロセスで必要なエッチングレートの10分の1程度にとどまります7。この結果は同社のシミュレーションと考察に基づきます。バイアス電力を下げると、この速さの問題が出ます。

3つ目は、イオンを使うかラジカルだけを使うかです。酸素プラズマによるアッシングではゲート電極やそれにつながる配線が直接さらされるため、プラズマを反応室と分けて作り、ラジカルだけを反応室に入れるケミカルドライエッチング方式が使われます。一方、異方性のエッチングは自己バイアスで加速したイオンの垂直入射で実現されるので、ラジカルだけの構成ではイオンの方向性が使えません。

3つの調整は、どれもチャージングと生産性を同時に動かす

Section titled “3つの調整は、どれもチャージングと生産性を同時に動かす”

置き場所を変えれば装置の周波数と磁界の条件が変わり、イオンエネルギーを下げればエッチングレートが落ち、ラジカル主体にすればイオンの方向性が使えなくなります。3つとも、チャージングと生産性の両方に同時に影響します。

面内の測定点も課題です。久保井氏らは、量産のエッチング装置に標準で付いているEESとOESによるモニタリングだけでは不十分とみて、これらの情報を入力にした数値シミュレーションや機械学習による面内分布の予測を示しました。パターンで電荷の偏りが決まるので、ポリマー成分の再堆積に影響するウェーハ内とチップ内の開口率について、久保井氏らはダミーパターンの配置を含むマスクレイアウトの設計を挙げています。チャンバ内壁の状態が変わればプラズマの組成と面内均一性も変わるので、装置の使用履歴も影響します。

チャージングダメージとは何ですか?

プラズマを使う工程でウェーハ表面へ残留した電荷が、薄いゲート絶縁膜へ電圧をかけて絶縁膜を劣化させたり破壊したりする損傷です。ドライエッチングによる電気的な損傷をチャージダメージと呼び、ゲート酸化膜を破壊するか、その信頼性を低下させます。

なぜウェーハ表面へ電荷が残るのですか?

電子とイオンの届き方に差があるためです。高周波放電でプラズマを励起すると、負電荷の電子電流と正電荷のイオン電流が交互に流れ込み、基板表面に電荷が残ります。残った電荷がゲート絶縁膜に大きな電圧をかけます。

電子シェーディング効果とは何ですか?

イオンは試料に垂直に入る一方、電子はランダムな方向から入るため、レジストパターンに遮られた狭いスペースの底に届く電子の量が減る現象です。その結果、レジスト側壁は負に、高アスペクト比パターンの底は正にチャージアップします。

どのくらいのイオンエネルギーで壊れ始めますか?

シリコン基板表面を照射するアルゴンイオンのエネルギーが25電子ボルト、13電子ボルト、7電子ボルト以上になると、それぞれ単結晶シリコンのSi-Si結合、Si3N4膜、SiO2膜が壊れます。SiO2膜がいちばん低い側にあります。

何を測ると分かりますか?

ゲート絶縁膜のリーク電流と寿命です。絶縁劣化はSILC、ソフトブレークダウン、ハードブレークダウンに分かれ、SILCはストレス印加の初期に出る1〜2桁のリーク電流増加です。厚さ4ナノメートル以下の極薄膜では、破壊までの時間がゲート電圧のべき乗で決まるパワーローの関係が示されています。

イオンエネルギーを下げれば済む話ですか?

エッチングの速さが落ちます。ソニーセミコンダクタソリューションズの久保井氏らは、入射イオンの低エネルギー化と単色化が低ダメージ化に有利だとしながら、SiO2のエッチングレートの低さを原子層エッチングの大きな課題としました。選択比を保ったまま毎分40ナノメートルまで改善しても、実プロセスで必要な値の10分の1程度にとどまります。

アッシングで気を付けることは何ですか?

ゲート電極とそこへつながる配線がプラズマへ直接さらされる点です。酸素プラズマによるレジスト除去でこの状態になるため、プラズマ生成を反応室と分離してラジカルだけを反応室へ導入するケミカルドライエッチング方式が用いられます。

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