プラズマダメージを電気特性で検出アンテナ比を変えたTSMC特許のテスト構造
TSMCの特許とHeらの論文は、プラズマエッチングの損傷を、断面の形ではなく、リーク電流や絶縁破壊電圧のような電気特性で測っている。代表的な損傷である帯電損傷とは、削っている配線がプラズマから電荷を集め、その電荷が離れた場所にある薄いゲート酸化膜を通って流れ、酸化膜を傷めることを指す。配線の形が設計どおりでも、損傷はゲート酸化膜に入っている。
一方で、金属配線のエッチングについては、損傷が入る時点を工程ごとに分けた報告がある。中国電子科技集団公司第58研究所のHeらは2013年、金属配線のエッチングを工程ごとに分けて調べ、2種類のエッチング装置のどちらでもプラズマ損傷が入ったのは金属配線のオーバーエッチの段階だけだった1と報告した。同じ論文では、チャージポンピング、絶縁破壊電圧、ゲート酸化膜のリーク電流の3つの測定結果がよく相関した。
帯電損傷は、削っている配線ではなくゲート酸化膜に入る
Section titled “帯電損傷は、削っている配線ではなくゲート酸化膜に入る”帯電損傷の仕組みは、TSMCが1997年に出願したテスト構造の特許にまとまっている。プラズマエッチングで配線やポリシリコンを形作るとき、ゲートにつながる広い導体がアンテナとなってプラズマから電荷を集め、ゲート酸化膜の両側に高い電位差を作る2。
同じ特許によれば、ゲート電極のポリシリコンを反応性イオンエッチングで削る途中までは、広く残ったポリシリコンが電荷を逃がす。削り終わりに近づいてポリシリコンが切れ切れになると、ゲートの周りに孤立して残った部分がアンテナになり、ゲートの面積に対してアンテナの面積が大きいほど酸化膜に大きな電流が流れる。レジストをプラズマで剥がすアッシングでも、ゲートにつながる金属配線のエッチングでも同じことが起きる。
電流が流れる仕組みはファウラー・ノルドハイム(FN)トンネル電流で、特許は10 MV/cmを超える電界で起き、厚さ100オングストロームの酸化膜ならゲートの電位が10 Vになるだけで流れると書く。この電流が続くと酸化膜に正に帯電したトラップができ、のちの絶縁破壊につながる。
金属配線のエッチングでは、損傷はオーバーエッチの段階で入った
Section titled “金属配線のエッチングでは、損傷はオーバーエッチの段階で入った”Heらは、金属配線のエッチングを工程ごとに分け、専用のアンテナ構造でそれぞれの影響を調べた。その結果、高密度プラズマ(HDP)エッチングと反応性イオンエッチングのどちらでも、損傷が入ったのはオーバーエッチの工程だけで、反応性イオンエッチングのほうが損傷は少なかった1。
オーバーエッチは、膜が抜けたことを検知した後も、取り残しをなくすために削り続ける工程だ。Heらが調べた金属配線のエッチングでは、残膜を取り切るために削り続けるこの段階で、プラズマ損傷が入った。TSMCの特許が描くポリシリコンの場合は、削り終わりに近づいて孤立したポリシリコンがアンテナになる。
測るのは、アンテナ比を変えたテスト構造の電気特性だ
Section titled “測るのは、アンテナ比を変えたテスト構造の電気特性だ”帯電損傷を測るには、ゲートにつながるアンテナの面積をわざと大きくしたテスト構造をウェーハに作る。TSMCの特許は、ゲート酸化膜のキャパシタを並べ、アンテナ比を変えた配線をつないだ構造を示し、工程の途中でその場所のI-V特性を測ってリーク電流を調べ、短絡の歩留まりと界面電荷の情報を得るとしている2。アンテナ比は、プラズマに触れる導体の面積をゲートの面積で割った値だ。
Heらが損傷の比較に使った量も電気特性で、チャージポンピング、絶縁破壊電圧、ゲート酸化膜のリーク電流1の3つが互いによく一致した。
設計の側では、アンテナ比の上限で損傷を抑える
Section titled “設計の側では、アンテナ比の上限で損傷を抑える”設計の側にはアンテナ規則がある3。SkyWater Technologyが公開しているSKY130の設計規則は、プロセスの種類ごとに表を分け、配線をエッチングするときにプラズマに触れる面積と、そこにつながるゲートの面積の比に上限を置く。S8D系のプロセスの表では、ポリシリコンの側面の面積とゲートの面積の比は50まで、1層目の金属は400までだ。
同じ規則には、電荷を逃がすダイオードを付けた場合の緩和もある。逆方向にバイアスされたダイオードの漏れ電流で配線の電荷を放電させるもので、緩和の大きさは層ごとに決まる。S8D系の表では1層目の金属にダイオードの面積に応じた緩和があり、ポリシリコンには緩和がない。これは公開されている1つのPDKの規則で、数値はプロセスごとに異なる。
GaNのダイオードでは、エッチング条件が逆方向のリーク電流に出る
Section titled “GaNのダイオードでは、エッチング条件が逆方向のリーク電流に出る”Sandia国立研究所のShulらは1999年、GaNのp-i-nダイオードを誘導結合プラズマ(ICP)でさまざまな条件でメサ型に削り、逆方向のリーク電流がチャンバーの圧力、イオンのエネルギー、プラズマの密度と強く関係した4と報告した。損傷が最も小さかったのは、プラズマの密度を中程度(500 W以下)にし、圧力2 mTorr以上、イオンのエネルギーを約-275 Vより弱くした条件だった。
サムコは、GaNは原子間の結合が強く、従来のICP-RIEではイオンの物理的衝撃に頼るため、デバイスにダメージが入り、リーク電流の増大などの特性劣化を招く5と書く。同社が2025年12月に発売したALE装置は、反応性ガスの吸着とイオン照射による除去を交互に繰り返し、イオンのエネルギーを精密に抑えて結晶の損傷を減らす。
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- 2TSMC:ゲート酸化膜の欠陥とアンテナ効果を測るテスト構造、米国特許6028324(1997年3月出願)patents.google.com ab
- 3SkyWater Technology:SKY130プロセスのアンテナ規則skywater-pdk.readthedocs.io ↩
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- 5サムコ:GaN向けALE装置の発売と低ダメージ加工(2025年12月)samco.co.jp ↩