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エッチングガスの用途は製品仕様で決まる|洗浄液は落とす汚れごとに使い分け

半導体工場のフッ素系ガスは、ウェーハ上の膜を削るものと、成膜装置のチャンバー内壁に積もった膜を取り除くものに分かれる。前者のエッチングガスは、プラズマの中で反応種になって膜を削る。ウェーハ表面の汚れを落とす洗浄液とは、微粒子、金属、有機物、酸化膜という落とす相手ごとに使い分け、順番に組み合わせる一群の薬液を指す。

しかし、分子の名前だけでは用途は決まらない。同じClF3や無水HFが、クリーニング用にもエッチング用にも製品として売られている。洗浄液も、汚れを落とすと同時に表面を少し溶かし、別の汚れを残すことがある。ガスと薬液は、何を削り、何を落とし、表面に何を残すかで選ぶ。

エッチングガスは、ウェーハの膜を削るガスとチャンバーを掃除するガスに分かれる

Section titled “エッチングガスは、ウェーハの膜を削るガスとチャンバーを掃除するガスに分かれる”

US EPAは1、半導体工場のフッ素系ガスの使い道を2つに分けている。プラズマエッチングでは、フッ素原子がウェーハの露出した絶縁膜や導電膜と反応して回路のパターンを作る。CVD装置のチャンバークリーニングでは、同じフッ素原子がチャンバーの内面に積もった余分な膜と反応して取り除く。

図1プラズマエッチングの断面
エッチングガス プラズマ ラジカル イオン ステージ ウェーハ 排気 下地 被加工膜 開口 副生成物 マスク 側壁保護膜 側壁の残渣 底の残渣
ウェーハを削るガスの働きを示す模式図。ガスはプラズマ中でラジカルとイオンになり、マスクの開口から膜を削る。溝の側壁には保護膜が、側壁と底には残渣が残る。

ガスメーカーのカタログは、この2つの用途を製品ごとに書き分けている。関東電化工業は2、C4F6、CH2F2、COSをエッチングガス、NF3、ClF3、C3F8、F2混合ガスをクリーニングガス、CF4とC4F8を両用としている。レゾナックは3、Cl2、HBr、BCl3を導体のエッチング、F2/N2混合ガスとC2F6を成膜装置のチャンバークリーニングに割り当てる。

同じ分子でも、用途は製品の仕様で決まる

Section titled “同じ分子でも、用途は製品の仕様で決まる”

セントラル硝子は4、これまでクリーニングガスに使われてきたClF3と無水HFを、エッチング向けに高純度にした製品として売っている。同社は20% F2/Arも、NF3やCF系のガスより環境負荷を抑えたエッチングガスとして載せている。同じ分子が、純度と用途を変えた別の製品として出ている。

エッチング用のガスでは、マスクと削る膜の組み合わせも選ぶ条件になる。同社のCEG 34Eは、既存のC4F6やC4F8と比べて、アモルファスカーボンなどのマスク材に対してSiO2とSiNを高い選択比で削るガスだ。

チャンバークリーニング用のNF3は、温室効果が大きく、使われる割合が排出を左右する

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チャンバークリーニングに使うNF3は、US EPA5によれば大気中の寿命が740年、100年の地球温暖化係数(GWP)が16,100の温室効果ガスだ。Motorolaは2002年の報告で、遠隔プラズマで分解するとNF3の95%以上、一般には99%以上が反応に使われ6、自社の評価ではPFCの排出を95%以上減らせた唯一の方法だったとした。NF3の経緯と、GWPがゼロのF2を工場内で作る方式は、チャンバークリーニングガスのNF3とF2で比べている。

洗浄液は落とす汚れごとに分かれ、順番に組み合わせて使う

Section titled “洗浄液は落とす汚れごとに分かれ、順番に組み合わせて使う”

ウェーハの洗浄回数は多い。電子情報通信学会の知識ベースによれば、洗浄の回数はリソグラフィ工程の2〜3倍で、LSIの製造では100回を優に超える7。その基本は1970年に発表されたRCA洗浄で、同じ資料は薬液ごとの役割を次のように説明している。

薬液落とすもの働き方
SC-1(APM:アンモニア水、過酸化水素水、超純水)微粒子表面をわずかにエッチングし、異物の再付着を防ぐ
SC-2(HPM:塩酸、過酸化水素水、超純水)金属汚染強い酸性と酸化力で金属を溶かす
SPM(硫酸、過酸化水素水)レジスト、アッシング後の残渣などの濃い有機汚染高温で使う
DHF(希フッ酸)シリコン酸化膜酸化膜を溶かし、酸化膜に取り込まれた金属まで落とす
機能水(オゾン水、水素水)SPM・HPMの代わり(オゾン水)、軽い微粒子汚染(水素水)室温で使い、水素水は微量のアルカリを加えて超音波で洗う
図2薬液ごとの除去対象
SC-1 SC-2 SPM DHF・BHF 機能水(水素水) ウェーハ 除去 微粒子 金属 レジスト、有機残渣 酸化膜 軽い微粒子 破線と矢印:洗浄で除かれる汚れ
洗浄液は落とす汚れごとに分かれる。微粒子はSC-1、金属はSC-2、濃い有機汚染はSPM、酸化膜はDHFが受け持つ。

同じ資料によれば、これらの洗浄は大量の薬液と超純水を使い、希フッ酸以外は高温で使う。その改善として、APMとHPMの低濃度化と低温化が各社に広まった。オゾン水と水素水による全室温の洗浄も組み立てられたが、水素水は表面を溶かす必要がある強い汚れには向かない。洗浄工程全体の流れと、洗った表面を次工程まで保つ管理は洗浄と表面前処理にある。

落とす力と副作用は、同じ組成の中で同時に動く

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SC-1は表面をわずかに溶かして微粒子を落とすので、落とす力と下地への作用を切り離せない。SC-1の組成を振ったECS Transactionsの研究では8、H2O2の濃度を上げるとCu汚染とパーティクル除去効率がともに下がった。研究は、Cu汚染を低く保ちながら除去効率を高くするには組成の最適化が必要だと結論している。

HF系の薬液では、混ぜる比率で働きを調整する。ステラケミファは9、超高純度フッ化水素酸をシリコンウェーハのウェットエッチングとウェット洗浄向けとし、バッファードフッ化水素酸を50% HF水溶液と40% NH4F水溶液を任意の比率で混ぜた製品として載せている。電子情報通信学会の知識ベースによれば、BHFはHFとNH4Fの比率を調整して、種類の違う酸化膜の側壁に凹凸を作らずにコンタクト底の自然酸化膜を除く7ために使われる。

薬液の純度も製品の仕様として示されている。三菱ケミカルのEL塩酸は10、金属不純物10 ppt以下を掲げる。この値と、容器や装置を通ってウェーハに触れる液の値との差は、薬液グレードと使用点の清浄度で測定例を並べている。

パターン倒壊は乾燥の段階で起き、薬液は表面の濡れ方を通じて関わる

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洗浄の後には、細く高いパターンが隣どうしで倒れてくっつくパターン倒壊が起きることがある。Applied Materialsの2015年の発表要旨は11、乾燥の段階で気液界面に生じる不均衡な毛管圧力が線のゆがみに寄与するとし、比較した乾燥法のうちスティクション(貼り付き)が起きなかったのは超臨界CO2乾燥だったと報告している。

薬液は、乾くときの表面の濡れ方を変えることで倒壊に関わる。セントラル硝子のPK剤は12、洗浄工程でウェーハ表面を撥水化し、乾燥工程でのパターン倒壊を防ぐ薬液だ。液面が壁を引く力の式と、IPA乾燥、疎水化乾燥、超臨界乾燥の比較は乾燥とパターン倒壊にまとめている。

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