コンテンツにスキップ

パターン倒壊とは

パターン倒壊とは、現像やリンスを終えた細いパターンが、液を抜く途中で隣に倒れて接着する現象です。 パターンを倒す力は気液界面の毛管力で、パターンを支える力は下地との密着と壁自身の剛性です。パターンを細く高くするほど、乾燥時の毛管力で倒れやすくなります。レジストを薄くすれば倒れにくくなりますが、エッチングのマスクとしての厚さが足りなくなります。対策は膜厚、リンス液、物理洗浄、乾燥方式の4つにあり、どれを動かしても別の問題が出ます。

液面が壁の間へ下がると、毛管力が壁を内側へ引く

Section titled “液面が壁の間へ下がると、毛管力が壁を内側へ引く”
乾燥中の液面と倒壊の2段階
液に浸っている液面が壁の間へピラーが付着先端の液で接着毛管力が内側へ接着したまま残るレジストの壁リンス液下地毛管力
液が壁を覆っている間は左右の力がつり合い、液面が壁の間まで下がると壁が内側へ引かれます。倒壊はピラーどうしの付着と、最後に先端に残る液だまりによる接着の2段階で進み、接着した壁はそのまま残ります。

現像を終えたウェーハの上には、細いフォトレジストの壁が並びます。液に浸っている間、壁は左右から同じように押されています。液を抜き始めると、隣り合う壁の間に残った液が気液界面を作り、界面張力による力が壁を内側に引きます。

乾燥が進んで構造体の表面が液から露出すると、構造体の内側に気相と液相の界面ができ、その接線方向に界面張力による毛管力が働いて、構造体を縮める方向の応力がかかります1。この応力は物質の密度や微細構造まで変えるため、微細構造体の倒壊や亀裂の原因になります。液体は表面張力で表面積を小さくしようとするので、ナノ構造物に付いた液体が乾くときに、その表面張力がナノ構造物を倒します2。

SCREENホールディングスと北海道大学低温科学研究所の木村勇気准教授らの研究グループは、倒壊が2段階で起こることを示しました。まず蒸発が早く進んで液面が下がったナノピラー間に働く力でピラーどうしが付着し、その後の乾燥で最後に先端部に残る液だまりがピラーどうしを接着させます2。倒壊が問題なのは、倒れた部分が後の工程でも倒れたままになる点です。接着したラインは、隣のラインと一体になったまま次のドライエッチングに進みます。

高アスペクト比の構造ほど、洗浄と乾燥の両方で倒れる

Section titled “高アスペクト比の構造ほど、洗浄と乾燥の両方で倒れる”

3Xnm世代以降では、DRAMのシリンダー型キャパシタ、NANDのSTI、ロジックの孤立したゲート電極といった高アスペクト比の構造の洗浄と乾燥が、パターン倒壊に対して非常にセンシティブになります3。課題は2種類あります。1つはパーティクル除去のための物理洗浄で起きる倒壊、もう1つはリンス乾燥時の毛管力で起きる倒壊です。原因が異なるため対策も異なり、物理洗浄ではパーティクルを除去するエネルギーと倒壊を起こすエネルギーのバランスを取りながら洗浄し、リンス乾燥では低表面張力の溶剤を使った乾燥や超臨界CO2乾燥が検討されています。

薬液や純水に溶けているガスも倒壊に関わります。リンスで使う超純水中の酸素は乾燥中のウェーハ表面の酸化やウォーターマークの形成に影響し、溶存ガスはメガソニック洗浄にも影響して、パーティクル除去とパターン倒壊の両方に及びます。倒壊のレシピを見直すときは、超純水の溶存酸素も確認項目に入ります。

現象が起きるのは洗浄工程ですが、露光の条件を直接制約します。レジスト膜厚は微細化に伴って薄くなっており、その理由は焦点深度余裕の低下とレジストの倒壊の2つです4。焦点深度の余裕と倒壊の限界が、膜厚という同じ条件に要求を出しています。

倒れやすさは、上面の寸法より断面の裾の形で決まる

Section titled “倒れやすさは、上面の寸法より断面の裾の形で決まる”

レジストの倒れがパターンの形に左右されることは以前から広く知られており、寸法が細くなるほど倒れやすさが急に増すとJouveらが報告しています5。JSRが2007年に試作した比較では、同じ2種類の化学増幅型レジストを膜厚1250Åで塗布し、EUV露光で65nmのラインアンドスペースを作ると、感度は10.5mJ/cm2と10.0mJ/cm2、線幅ラフネスは9.5nmと18.6nmでした。断面形状は、EUVで矩形とすそ引き、電子線でともにT-top、KrFでTop-roundingとTop-lossと分かれました。同じ寸法でも裾の太さが違えば、倒れる条件は変わります。

裾の形はCD-SEMの上面像では分からないため、断面で測ります。液体によるナノ構造物の倒壊挙動を断面方向から観察した例がなかったため、SCREENホールディングスと北海道大学は、集束イオンビーム装置で半導体表面のナノ構造物を切り出し、IPAとともに液体観察用試料ホルダーに封入して透過型電子顕微鏡で観察する手法を開発しました。液体は、電子ビームを通しやすい特殊な薄膜でできた溶液セルに封じ、試料室の高真空と薄膜で隔てて観察します。観察の結果、ナノ構造物はIPAがメニスカスを作った直後から動き始め、IPAの気液界面の変動に合わせて動く2ことが分かりました。この成果は2022年6月22日にACS Applied Nano Materials誌に掲載されています。

リンス液の表面張力を下げると、倒れにくくなる代わりに剥がれやすくなる

Section titled “リンス液の表面張力を下げると、倒れにくくなる代わりに剥がれやすくなる”
リンス液の表面張力
超臨界CO2極めて小さいフロリナート 13エタノール 約20水 約72表面張力(mN/m)毛管力が下がり倒れにくい界面に侵入して剥がれやすい
表面張力は水が約72 mN/m、エタノールが約20 mN/m、フロリナートが13 mN/mです。小さい液ほど毛管力は下がりますが、一般にレジストと基板の界面に侵入しやすく、パターン剥がれを起こしやすくなります。

ナノ構造物の倒壊は、洗浄液を表面張力の低い2-プロパノール(IPA)に置換してから乾かすことで防がれてきました。SCREENホールディングスは、7nmや5nmといったシングルナノオーダーの世代ではIPAでの洗浄でも倒壊を抑えにくくなり、表面張力の小さい液で洗って乾かす方法そのものに限界が近づいているとしています。

電気学会の技術資料は6、乾燥時のリンス液の表面張力を微細パターンの倒れや剥がれの主な原因とし、水の代わりに第3ブチルアルコール50%水溶液を使うこともあるとしています。表面張力は、フロリナートが13mN/m、水が約72mN/m、エタノールが約20mN/mです。一方で、一般に表面張力の小さな液はレジストと基板の界面に侵入しやすく、パターン剥がれを起こしやすくなります。倒れを抑える液が、剥がれの原因にもなります。

超臨界CO2は毛管力を消すが、圧力と置換速度の管理が増える

Section titled “超臨界CO2は毛管力を消すが、圧力と置換速度の管理が増える”
超臨界CO2とIPAの2成分系に要る圧力
9.28.314.813.3理想操作点二相領域点40℃121℃操作温度圧力(MPaG)
神戸製鋼グループの値では、超臨界CO2とIPAの2成分系で、操作温度40℃なら8.3〜9.2 MPaG、121℃なら13.3〜14.8 MPaGの圧力が要ります。気液界面を経ずに乾かせる代わりに、この圧力に耐える設備が必要です。

乾燥方式を超臨界CO2に変えると、気液界面ができる状態を経ずに乾燥できます。超臨界乾燥は、微細構造体内の液体溶媒を液相から超臨界状態を経て気相に移す乾燥方法で、気液共存領域での毛管力を避けられるため、半導体の微細レジストパターンの乾燥に適用できます1。かわりに、圧力に耐える設備と、置換速度という新しい管理項目が必要です。

神戸製鋼グループは、エアロゲルなど多孔体の乾燥を主な対象にした値として、超臨界CO2とIPAの2成分系で、操作温度40℃なら二相領域点8.3MPaGと理想操作点9.2MPaG、121℃なら13.3MPaGと14.8MPaGの圧力が必要としています。乾燥速度は高温・低圧が有利で、40℃と121℃では1.8倍の差があります。表面張力が極めて小さい超臨界CO2でも、乾燥を速めるためにアルコールの置換を急ぐと、超臨界CO2とアルコールの間の界面張力で収縮や割れが起きることが分かっています。

膜厚と物理洗浄も、動かせば別の問題が出る

Section titled “膜厚と物理洗浄も、動かせば別の問題が出る”

レジスト膜厚を下げると、壁が低くなって倒れにくくなり、焦点深度の余裕も増えます。MEMS向けの厚膜レジストを主に扱う電気学会の技術資料は、微細パターンを作るには許される範囲まで膜を薄くするのが基本とし、レジストと基板の接触面積が同じまま膜だけが厚くなると、膜厚方向に積み上がる塗膜応力が増えて剥離しやすくなるとしています。膜厚の下限は倒壊以外の要求で決まり、薄くすればエッチングのマスクとしての厚さが減ります。

物理洗浄のエネルギーを上げるとパーティクルは除去できますが、倒す力も大きくなり、弱めればパーティクルの除去量も減ります。物理洗浄での倒壊対策では、パーティクルの除去に必要なエネルギーと倒壊を起こすエネルギーを比べながら洗浄する必要があります。二流体ジェットでは、ガス流量と薬液流量の制御とノズル形状の最適化により、液滴のサイズ、分布、吐出の運動エネルギーを制御でき、高い洗浄性を保ちながら倒壊を防げます。調整すべきなのは、出力そのものよりも液滴の作り方です。

どの対策を選ぶかは、その層で何が歩留まりを下げているかで決まります。倒壊の観察が歩留まりの検討に直結するのは、倒れたラインが後のどの工程でも倒れたままだからです。SCREENホールディングスは、微細化のペースが鈍化している理由の1つに、洗浄工程でのナノ構造物の倒壊を挙げています2。

パターン倒壊とは何ですか?

現像やリンスを終えた細いパターンが、液を抜く途中で隣に倒れて接着する現象です。構造体の表面が液から露出すると内側に気相と液相の界面ができ、その接線方向に界面張力による毛管力が働いて、構造体を縮める方向の応力がかかります。

なぜ乾燥のときに倒れるのですか?

液が壁を覆っている間は左右の壁が同じように押されますが、気液界面が壁の間に下がると片側だけに液が残り、力のつり合いが崩れます。倒壊は、ナノピラー間に残る水でピラーどうしが付着する段階と、乾燥の最後に先端部に残る液だまりがピラーどうしを接着させる段階の2段階で起こります。

どの構造で起きやすいのですか?

3Xnm世代以降では、DRAMのシリンダー型キャパシタ、NANDのSTI、ロジックの孤立したゲート電極といった高アスペクト比の構造の洗浄と乾燥が、パターン倒壊に対して非常に敏感になります。物理洗浄で起きる倒壊と、リンス乾燥の毛管力で起きる倒壊の2種類があります。

露光の作り込みとどう関係しますか?

レジスト膜厚は、焦点深度の余裕と倒壊の限界の両方で制約されます。レジスト膜厚は微細化に伴って薄くなっており、その理由は焦点深度余裕の低下とレジストの倒壊の2つです。

倒れやすさは何を測れば分かりますか?

上面の寸法に加えて、断面の裾の形を測ります。レジストの倒れがパターンの形に左右されることは以前から広く知られており、寸法が細くなるほど倒れやすさが急に増すとJouveらが報告しています。JSRの比較では、同じレジストでもEUV露光では矩形やすそ引き、電子線露光ではT-topという断面の違いが出ました。

IPA置換の限界はどこにありますか?

ナノ構造物の倒壊は、洗浄液を表面張力の低い2-プロパノール(IPA)に置換してから乾かすことで防がれてきました。SCREENホールディングスは、7nmや5nmといったシングルナノオーダーの世代ではIPAでの洗浄でも倒壊を抑えにくくなり、表面張力の小さい液で洗って乾かす方法そのものに限界が近づいているとしています。

超臨界CO2乾燥にすれば片づきますか?

毛管力はなくなりますが、圧力と置換速度という管理項目が増えます。神戸製鋼グループの値では、超臨界CO2とIPAの2成分系で、操作温度40℃なら二相領域点が8.3MPaG、121℃なら13.3MPaGです。表面張力が極めて小さい超臨界CO2でも、乾燥を速めるためにアルコールの置換を急ぐと、両者の界面張力によって収縮や割れが起きます。

6件を表示
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6