コンテンツにスキップ

超臨界CO₂乾燥とは

超臨界CO₂乾燥(Supercritical CO2 Drying)とは、リンス液をCO₂へ置換し、温度と圧力を臨界点より上へ上げて液相と気相の境界をなくした後、相境界を横切らない経路で減圧して微細構造を乾かす工程です。 液面が引くときの毛管力を抑え、細いパターンや可動構造の貼り付きを減らします。結果を決めるのは、乾燥の途中で液面が一度でもできるかどうかです。液面をなくす代わりに、高圧装置と流体の置換が必要になり、単に水を蒸発させる乾燥とは工程が異なります。構造の倒壊を抑える効果と処理時間を合わせて判断します。

液から気体へ変わる瞬間の表面張力が構造を倒す

Section titled “液から気体へ変わる瞬間の表面張力が構造を倒す”

洗浄の後に構造の隙間へ残った液は、蒸発で引いていくとき液面を作ります。コーネル大学のナノ加工施設は、水、イソプロパノール、アセトンが液相から気相へ変わる時点の表面張力が、毛管力で微小デバイスを壊しうる1と説明しています。細い柱が隣どうしで倒れてくっつくパターン倒壊や、浮かせた梁が下地に貼り付く不良がこの力で起きます。

液面の有無
乾燥前蒸発で乾かす超臨界を経由毛管力微細構造リンス液超臨界CO₂基板
蒸発では柱の間に残った液面が柱を引き寄せます。超臨界状態の流体は液と気の区別がなく、柱の間を一様に満たしたまま、表面の力を避けて抜けます。

臨界点を越えると、「液体」と「気体」の密度が同じになります1。日本半導体製造装置協会(SEAJ)の用語集は、超臨界CO₂を臨界温度と臨界圧力以上で液体と気体の中間的な性質を示す状態とし2、液体のようでありながら粘性が非常に低く、拡散係数が非常に大きく、物質を溶かしやすい2流体としています。境目のない流体で隙間を満たし、そのまま気体へ移せば、液面は最後まで現れません。

臨界点の上を回り込めば、相境界を横切らずに気体へ戻せる

Section titled “臨界点の上を回り込めば、相境界を横切らずに気体へ戻せる”
CO₂の相図と乾燥の経路
温度圧力臨界点31℃73.8 bar液体気体超臨界流体液面を通る昇温・昇圧減圧
液のまま境界線を横切って気体へ移ると、その途中で液面ができます。臨界点より高い温度と圧力へ一度上げてから減圧すれば、境界線の端を回り込んで気体へ移れます。

液と気の境界線は臨界点で途切れます。ベルリン工科大学の電子顕微鏡施設の手順では、乾燥装置の試料室が温度と圧力をCO₂の臨界点より上に保ち3、超臨界状態では液と気の相境界がもう存在しないので、膜のような繊細な構造を変形させる表面の力を避けたまま、CO₂を試料室から抜いても像を乱す変形が残らないとしています3。NISTの臨界点乾燥装置も4、液体CO₂を高温・高圧へ移し、液相と気相の境界を横切らずに乾かして表面張力を避ける機構をとります。

CO₂が選ばれるのは、臨界点が基板の耐える範囲にあるから

Section titled “CO₂が選ばれるのは、臨界点が基板の耐える範囲にあるから”
水とCO₂の臨界点
0100200300400100200温度(℃)圧力(bar)CO₂ 31℃・73.8 bar水 374℃・228.5 bar
水を直接超臨界にするには374℃・228.5 barが要り、通常は基板が持ちません。CO₂は31℃・73.8 barで臨界点を越えられます。

水のままでは、臨界点を越える条件に通常は基板が耐えられません。コーネル大学の施設は、水の臨界点が228.5 barと374℃で、この高圧と高温は通常は基板を壊してしまうため1、臨界点が73.8 barと31℃のCO₂のような中継の流体で基板を処理するとしています1。2つの臨界圧力を比べると、CO₂は水の約3分の1です。SEAJの用語集も、ほかの物質も超臨界流体になるものの、半導体プロセスでは主に不活性な超臨界CO₂を使う洗浄・乾燥工程が検討されているとしています2。

水を溶媒へ、溶媒をCO₂へ置き換えてから昇圧する

Section titled “水を溶媒へ、溶媒をCO₂へ置き換えてから昇圧する”

置換は2段で進みます。洗浄した構造の液を適切な溶媒へ置き換え、CO₂を用いる高圧処理へ送ります。ベルリン工科大学の手順では、まず試料中の水を例えばエタノールに置き換えます3。半導体の乾燥ではIPA乾燥と同じくIPAが溶媒になることもあり、IPA乾燥や疎水化乾燥と並べた乾燥法の比較はパターン倒壊と乾燥の解説にあります。溶媒を液体CO₂へ置き換えたら超臨界状態を経由し、液気界面を作らずに流体を排出して、乾いた構造を取り出します。

管理するのは、液の置換、温度、圧力と減圧です。水や溶媒が残っていないか、流体が構造の内部まで届いたかを確かめます。急な減圧による温度変化も避けます。毛管力を減らせる分、高圧装置と流体の置換が必要になり、処理時間がかかるのがこの方式の代価です。

MEMSでは、浮かせた構造を下地へ貼り付かせないために使う

Section titled “MEMSでは、浮かせた構造を下地へ貼り付かせないために使う”

コーネル大学の施設は、臨界点乾燥装置をMEMSデバイスのHFリリースの後に、デバイスの貼り付き(スティクション)を防ぐために使う1のが典型としています。MEMSの犠牲層リリースで梁や膜を浮かせた直後の構造が対象です。NISTの装置Tousimis Autosamdri-815 Series Bは、液体CO₂で基板を制御しながら乾かし、MEMSの浮いた構造を解放する4ための装置で、直径25 mmのウェーハから小片まで4を入れられます。ベルリン工科大学の装置の試料室は容積185 mLで、形と大きさしだいで複数の試料を入れられます3。

乾燥後は、液がどこに残ったかを段階ごとに切り分ける

Section titled “乾燥後は、液がどこに残ったかを段階ごとに切り分ける”

乾燥後は、残滴、ウォーターマーク、微細構造の貼り付き、パーティクルの再付着を確認します。表面が見かけ上乾いていても、溝や梁の下へ液が残れば後で汚染になります。不良が出たら、液置換、排出、相変化のどの段階で毛管力や残液が生じたかを工程条件へ戻します。

超臨界CO₂乾燥は何をする工程ですか?

リンス液をCO₂へ置き換え、温度と圧力をCO₂の臨界点(31℃・73.8 bar)より上へ上げて液相と気相の境界をなくし、相境界を横切らない経路で減圧して微細構造を乾かす工程です。液面が引くときの毛管力を抑え、細いパターンや可動構造の貼り付きを減らします。

どの段階で行いますか?

洗浄とリンスの後です。構造の中の水をエタノールなどの溶媒へ置き換え、その溶媒を液体CO₂へ置き換えてから高圧処理へ送り、超臨界状態を経由して液気界面を作らずに流体を排出します。MEMSでは、HFで犠牲層を除いて構造を浮かせた直後に使うのが典型です。

どこを管理しますか?

液の置換、温度、圧力と減圧を管理します。水や溶媒の残りと構造内部への流体の到達を確かめ、急な減圧による温度変化を避けます。

  • 洗浄── 関連する工程・材料の説明
  • 枚葉式洗浄── 関連する工程・材料の説明
4件を表示
  1. 1
  2. 2
    SEAJ 半導体製造装置用語集seaj.or.jp ・ 2026年10月12日閲覧 abc
  3. 3
  4. 4
    NIST Critical Point Dryernist.gov ・ 2026年10月12日閲覧 abc