枚葉式洗浄(シングルウェハ洗浄)とは
枚葉式洗浄とは、ウェーハを1枚ずつ回転させながら、薬液と純水をノズルから供給して洗浄する方式です。 1枚ごとに新しい薬液を使うため、汚染はその1枚かぎりで排出されます。
バッチ式は槽の薬液を全枚で共有し、汚染が他のウェーハへ回る
Section titled “バッチ式は槽の薬液を全枚で共有し、汚染が他のウェーハへ回る”枚葉式が解く課題は、薬液の共有です。複数枚をまとめて薬液槽へ浸すバッチ式では、槽の中の薬液を全枚が共有します。ウェットステーションは薬液の槽と純水の槽が並んだ装置で、通常50枚のウェーハをまとめて浸します1。あるウェーハから溶け出した汚染は槽の中に残り、同じ槽を通る他のウェーハへ回ります。槽を通った枚数が増えるほど薬液の汚れも増えるため、初めの1枚と最後の1枚では薬液の状態が別になります。この持ち回りがクロスコンタミネーションで、配線工程の銅付きウェーハを洗った槽で別のウェーハを洗うと、銅汚染が生じます2。
枚葉式は1枚ごとに新しい薬液を流し、時間や量も1枚ごとに決める
Section titled “枚葉式は1枚ごとに新しい薬液を流し、時間や量も1枚ごとに決める”枚葉式では、回転するウェーハの上へノズルから新しい薬液を落とし、遠心力で表面に広げて、そのまま装置の外へ排出します。薬液を流す時間、供給量、薬液の切り替え順も、1枚ごとに設定します。
薬液に物理的な力を組み合わせる構成も取れます。荏原製作所の今井正芳は、CMP後の洗浄でパーティクルを浮かせる作用を薬液による微量エッチングのリフトオフと物理作用の組み合わせとし3、近年の微細な構造ではエッチングが制限されるため物理作用に頼る場合が多く、薬液は補助的な役割になるとしています。SCREENも枚葉式洗浄装置SU-34004と並べて、スピンプロセッサSP-2100と5、薬液によるエッチングと洗浄の機能にブラシ洗浄機能を組み合わせたハイブリッド型のスクラバーSB-3300を出しています。
生産性はチャンバの数で作り、SU-3400は24チャンバで毎時1,200枚とされる
Section titled “生産性はチャンバの数で作り、SU-3400は24チャンバで毎時1,200枚とされる”枚葉式の生産性は、1枚あたりの速さよりチャンバの数で決まります。SCREENのSU-3400は最大24チャンバを6段×4タワー構造で搭載し、搬送ロボットとチャンバ構成と配置の改善によって毎時1,200枚の実用スループット6を実現したとしています。同社はこれを枚葉式洗浄装置分野で世界最高水準とし、バッチ式にも迫る生産性と位置づけます。SCREENは1983年に枚葉式洗浄装置を開発して以来、ウェーハ上の気液界面の制御を追い続けてきました。
バッチ式では、東京エレクトロンのEXPEDIUSシリーズ7は一度に最大50枚のウェーハをバッチで洗う装置で、用途は酸化拡散前洗浄、ポストエッチクリーニング、レジスト剥離と、3D NAND向けの酸化膜と窒化膜の高選択ウェットエッチングです。同社はEXPEDIUS-iで、従来装置に比べてスループットを150 %向上させて毎時1,000枚に達したとしています。同社のCELLESTA-i8は最大20ユニットの洗浄チャンバー搭載に対応し、同社は1 m²あたりの生産性を世界最高水準だとしています。SCREENのSB-3300は9、4段積みタワー構造と16チャンバによって、ウェーハの反転を含む裏面洗浄で毎時700枚を実現したとされています。
チャンバ間差が、面内と枚数間に続く第3のばらつきになる
Section titled “チャンバ間差が、面内と枚数間に続く第3のばらつきになる”20台を超えるチャンバが並ぶ装置では、面内分布と枚数間のばらつきに加えて、どのチャンバを通ったかという第3のばらつきが乗ります。装置間差の管理と同じ作業を、1台の中でも行う形になります。SCREENはSU-3300で10、チャンバ内の気流を高精度に制御するASCという新技術がチャンバ間差の低減に寄与するとし、チャンバ内の温度と湿度を常に最適な状態にコントロールするとしています。
物理力は、ブラシの組み方と非接触の方式で当て分ける
Section titled “物理力は、ブラシの組み方と非接触の方式で当て分ける”接触式のロールブラシは筒状のPVAスポンジで、ウェーハ接触部に多数の円形のノジュールが当たる構造です。今井は、ロールに一度付いたパーティクルが再付着する場合があるため、中央からエッジへ一方通行で掃くペンシルブラシを後段の仕上げに組むとしています3。非接触式のうち、超音波洗浄は溶存気体のキャビテーションでパーティクルを剥がしますが、出力パワーと周波数帯によってはCMP後の表面にダメージを与える場合があります。二流体ジェット洗浄は、高速で微細な液滴の変形エネルギーでパーティクルを弾き飛ばします。
SCREENはSB-3300で、薬液の供給とブラシ洗浄を同時に行う機能を業界初とし、緻密なノズル動作と薬液吐出制御によるコントロールエッチングが高精度な面内均一性とウェーハの反り抑制に寄与するとしています。
乾燥は、速さと静電気・ウォーターマーク・引火リスクの取り合いになる
Section titled “乾燥は、速さと静電気・ウォーターマーク・引火リスクの取り合いになる”スピンドライヤは遠心力で水を振り切るため乾燥時間が短い一方で、回転中のウェーハと空気の摩擦による静電気と、脱水の後に残る1ウォーターマークが起きやすくなります。IPAベーパドライヤはその心配が小さい代わりにアルコールガスの引火リスクを持つため、装置の設計と運用に注意が要ります。
Rotagoni乾燥法は、300〜1000 rpmで水平回転させながら純水とIPA蒸気のノズルを中心から半径方向へ動かし、遠心力とマランゴニ効果によって純水のキャリオーバー層を20秒程度で除去します2。スピン乾燥より回転数が低く、ウェーハ上部に高速の乱流ができにくいため、雰囲気汚染を受けにくい方式です。リンスでは、純水リンス中にゼータ電位の相対的な電位が変わって付着を防ぐ作用が薄れるため、純水の流速を速くする必要があります。
代償は床と価格、有機廃液、1枚あたりの時間
Section titled “代償は床と価格、有機廃液、1枚あたりの時間”第一に、床と価格を差し出します。SCREENがSU-3400で、SU-3300と同じ24チャンバのままフットプリントを30 %削減した点を先頭の特長に掲げ、東京エレクトロンがCELLESTA-iで1 m²あたりの生産性を指標に据えるのも、この床の取り合いが厳しいためです。
第二に、有機廃液が増えます。微細化に伴ってパターン倒壊を防ぐためにIPAの使用量が増え、IPAと水の混合廃液が、廃液の後始末にかかる環境負荷とコストの原因になっています11。SCREENグループは微細孔を持つ膜の分子ふるい効果でIPAと水を分離する技術に取り組み、当初は実験とシミュレーションに20 %程度あった誤差を、条件の最適化と温度管理の精緻化で数 %まで縮めたとしています。1枚ずつ乾かす方式は、乾燥の質を上げるほど有機溶剤の消費が伸びます。
第三に、薬液の使用量は工夫で取り返す領域になります。SCREENはSU-3400で、洗浄ノズルの改良と効率的な薬液循環システムによって薬液の使用量を大幅に節減し、全自動気流制御による排気流量の削減も合わせて、装置使用時の環境負荷を20 %低減したとしています。東京エレクトロンはCELLESTA-i MDで薬液のリサイクル機能を向上させ、CELLESTA MS2では両面同時洗浄で単位面積当たりの生産性を従来装置比1.5倍以上にしたとしています。バッチ側でも、SCREENのFC-821L12はハーフピッチ搬送で槽を小型化して薬液と純水の使用量を削減し、1つの槽で薬液と水洗を行うワンバス方式によって微細パターン内部までの濡れ性と自然酸化膜の抑制を両立させ、5種類の薬液を1槽で使えるとされています。
第四に、1枚あたりの時間は伸びます。バッチ洗浄装置の利点は生産性の高さと1枚あたりの洗浄コストの安さ1、枚葉洗浄装置の特長は多品種少量生産への向きで、実際の半導体工場ではコストと目的に合わせて両者を使い分けるのが一般的です。厚い膜を長い時間かけて洗う用途では、いまもバッチ式が使われます。
この用語に対応する装置と製造メーカー
Section titled “この用語に対応する装置と製造メーカー”関連するデータ・ツール
Section titled “関連するデータ・ツール”- 洗浄・表面処理の工程ページ── 工程分類と、この工程の公開求人
- 洗浄の求人一覧── 現在この工程で募集している企業
- 装置カタログDB ── 公式製品ページ単位のメーカーと製品family
- パターン倒壊は乾燥の最後の液面で決まる|IPAで水の3分の1、疎水化でほぼゼロ、超臨界で液面ごと消す── IPA乾燥の先にある乾燥方式
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”枚葉式洗浄とは何ですか?
ウェーハを1枚ずつ回転させながら、薬液と純水をノズルから供給して洗浄する方式です。複数枚をまとめて薬液槽へ浸すバッチ式に対して、1枚ごとに条件を作れる点が特徴になります。
バッチ式と何が違いますか?
薬液を共有するかどうかが違います。ウェットステーションでは通常50枚をまとめて槽へ浸し、槽の薬液を全枚が共有するため、あるウェーハから出た汚染が他へ回ります。枚葉式では1枚ごとに新しい薬液を供給するため、汚染はその1枚かぎりで排出されます。
枚葉式の利点は何ですか?
枚数間のばらつきが小さくなること、薬液の使用量を抑えやすいこと、薬液を流す時間や供給量を1枚ごとに変えられることです。微細化が進むほど、1枚ごとに条件を細かく作れる利点が大きくなります。
1台でどのくらい洗えますか?
SCREENのSU-3400は、最大24チャンバの6段×4タワー構造で毎時最大1,200枚を実現したとしています。東京エレクトロンのCELLESTA-iは最大20ユニットの洗浄チャンバーを搭載でき、NS300Zは最大8スピンモジュールで毎時最大1,000枚です。
枚葉式の弱点は何ですか?
1枚あたりの洗浄に時間がかかることです。同じ枚数を洗うにはチャンバーを増やす必要があり、装置あたりの占有面積と価格が上がります。厚い膜を長い時間かけて洗う用途では、いまもバッチ式が使われます。
チャンバ間差はどう管理しますか?
装置側の雰囲気制御で詰めます。SCREENはSU-3300で、チャンバ内の気流を高精度に制御するASCがチャンバ間差の低減に寄与し、チャンバ内の温度と湿度を常に最適な状態にコントロールするとしています。20台を超えるチャンバを積む装置では、この差そのものが面内分布と並ぶ管理項目になります。
乾燥では何が起きますか?
水滴の居残りがウォーターマークになります。スピンドライヤは乾燥時間が短い一方で静電気とウォーターマークが起きやすく、IPAベーパドライヤはその心配が小さい代わりにアルコールガスの引火リスクを持ちます。300〜1000 rpmで回転させながらIPA蒸気を吹き付けるRotagoni乾燥法では、純水のキャリオーバー層が20秒程度で除去されます。
ブラシ洗浄とは何ですか?
ブラシで表面をこすって粒子を落とす方式です。SCREENのスクラバーSB-3300は、薬液によるエッチングと洗浄の機能にブラシ洗浄機能を組み合わせたハイブリッド型の装置です。CMPの後など、粒子が多く残る工程の後で使われます。
枚葉式洗浄装置のメーカーはどこですか?
SCREENは枚葉式洗浄装置SU-3400、スピンプロセッサSP-2100、スクラバーSB-3300など、東京エレクトロンはCELLESTAシリーズとNSシリーズを出しています。当サイトの装置カタログDBでは、他社を含めて洗浄の製品familyを引けます。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- 洗浄と表面前処理── 工程としての洗浄の全体像
- SCREENの洗浄技術── 洗浄装置メーカーの成り立ち
13件を表示
- 1SCREENセミコンダクターソリューションズ:技術ガイド 洗浄工程screen.co.jp abc
- 2日本半導体製造装置協会(SEAJ):半導体製造装置用語集(ウェーハプロセス)seaj.or.jp ab
- 3
- 4SCREENセミコンダクターソリューションズ:SU-3400screen.co.jp ↩
- 5SCREENセミコンダクターソリューションズ:製品一覧screen.co.jp ↩
- 6SCREENセミコンダクターソリューションズ:枚葉式洗浄装置 SU-3400screen.co.jp ↩
- 7東京エレクトロン:洗浄 EXPEDIUSシリーズtel.co.jp ↩
- 8東京エレクトロン:洗浄 CELLESTAシリーズtel.co.jp ↩
- 9SCREENセミコンダクターソリューションズ:ウェーハ裏面洗浄装置 SB-3300screen.co.jp ↩
- 10SCREENセミコンダクターソリューションズ:枚葉式洗浄装置 SU-3300screen.co.jp ↩
- 11SCREENセミコンダクターソリューションズ:有機廃液削減技術screen.co.jp ↩
- 12SCREENセミコンダクターソリューションズ:ウェットステーション FC-821Lscreen.co.jp ↩
- 13東京エレクトロン:洗浄 NSシリーズtel.co.jp