枚葉洗浄は処理能力でバッチ機に近づいたSCREEN SU-3400は24チャンバーで毎時1,200枚、市場の8割強が枚葉式
枚葉洗浄とは、洗浄工程でウェーハを1枚ずつチャンバーに入れて洗い、そのまま乾かす方式だ。SCREENがGartnerの集計をもとに作った図では、2025年の世界市場は枚葉式洗浄装置が約54億ドル、バッチ式が約10億ドルで1、枚葉式が8割強を占める。SCREENは2007年のhigh-k/メタルゲート導入でバッチと枚葉の比率が変わったと説明し、金属イオンによるウェーハ間の汚染を防ぐのに枚葉洗浄が有利だとする2。
バッチ機と比べた処理能力の差も縮まった。SCREENはSU-3400の24チャンバーで毎時最大1,200枚という処理能力を、バッチ式洗浄装置に迫るものと説明する3。同社のバッチ機FC-3100は毎時1,000枚で4、どちらもメーカーが示す最大値だ。装置の特長として、SCREENはチャンバー間の一致性を、ACM ResearchとTELは薬液の使用量の削減を挙げる。
バッチ槽ではウェーハが同じ薬液に浸かり、SCREENは金属イオンの移りを枚葉化の理由に挙げる
Section titled “バッチ槽ではウェーハが同じ薬液に浸かり、SCREENは金属イオンの移りを枚葉化の理由に挙げる”バッチ式は、薬液を満たした槽にウェーハをまとめて沈める。TELのEXPEDIUSは一度に最大50枚5を処理する。SCREENは、2007年のhigh-k/メタルゲート導入を境にバッチと枚葉の比率が変わり、金属イオンによるウェーハ間の汚染の防止と制御に枚葉洗浄が有利だ2と説明する。
付着粒子の差を測った評価もある。ACM Researchと上海華力微電子(HLMC)は、ACMの装置を含む3方式で硫酸過水(SPM)洗浄を行い、ブランケットウェーハに増えた40 nm以上の粒子を比べた。ウェットベンチ(バッチ式)は200〜400個で、枚葉式のSPM装置とACMの併用機Ultra C Tahoeは15個未満の同程度だった6。同じ論文は、バッチ式のSPMだけでは28 nmより先の洗浄仕様を満たせず、枚葉式のSPMが唯一の解だったと書く。ACMは枚葉式とTahoeの両方を売る立場にある。
洗浄は回数の多い工程だ。Samsungではウェーハ洗浄が全工程の約3割を占め、しかも増えている7。SEMESも、洗浄は他の工程の2倍ほど繰り返され、微細化と材料の変化で枚葉式の比率が上がっている8と説明する。
枚葉式は洗浄から乾燥までを1つのチャンバーで終える
Section titled “枚葉式は洗浄から乾燥までを1つのチャンバーで終える”枚葉式は、回転するウェーハに薬液をかけ、リンスしてそのまま乾かす。ACM Researchは、枚葉式では洗浄から乾燥までの全工程を1つのチャンバーで行える9と説明する。
乾かす時点が欠陥の数を左右する。ACMとHLMCがTahoeで行った評価では、SPMとリンスの後に純水で流して窒素で乾かすと、増えた粒子は297〜331個だった6。そのウェーハをFOUPで3時間置いてから枚葉でSC1洗浄しても、117〜130個が残った。濡れたまま枚葉へ移してSC1洗浄まで続けると、増分は-1〜-9個になった。論文は、いったん乾いた残渣はSPMとSC1をやり直さないと落ちないと結論づける。
各社はチャンバーの中の雰囲気も装置で管理する。SCREENのSU-3200は、チャンバーの容積を従来機の約3分の1にして雰囲気の置換を速め、独自のノズルでウォーターマークの出ない乾燥を実現した10。ウォーターマークは乾燥時に残る水の跡だ。TELのCELLESTA-i MDは、洗浄後のチャンバー内の雰囲気制御とIPA吐出技術で、微細なパターンの倒壊を抑える11。パターンの倒壊は、乾燥の最後に壁の隙間へ残った液面が壁を引き寄せて起きる。
SCREENはチャンバー間の一致性を、ACMはチャンバーごとの独立制御を挙げる
Section titled “SCREENはチャンバー間の一致性を、ACMはチャンバーごとの独立制御を挙げる”枚葉機では、ウェーハが空いたチャンバーへ1枚ずつ振り分けられる。どのチャンバーを通ったかで、ウェーハごとの処理の履歴が分かれる。
SCREENはSU-3300の新技術ASCを、チャンバー内の気流を精密に制御し、チャンバー間の一致性に寄与する技術12として挙げる。SU-3400は、チャンバーを1つずつ止めて保守でき、高解像度のカメラ監視とIoT・ビッグデータによる異常検知を備える3。ACM ResearchのUltra C TEBOは、チャンバーごとにULPAフィルター付きの送風ユニットを持ち、処理環境をチャンバーごとに独立して制御する13。
薬液の供給系も、メーカーごとに特長の挙げ方が違う。SCREENのSU-3200は、薬液の供給系を装置の背面に置いて供給源からウェーハまでの距離を縮め、供給方式をDDI(Dynamic Direct Injection)とキャビネット方式から選べる10。SCREENは自社の枚葉洗浄の機能として、DDIによる柔軟な薬液調合と、複数種の薬液の回収・再利用を挙げる2。TELはCELLESTAの特長に、薬液のリサイクルによる運転費の低減11を挙げる。
処理能力はチャンバー数と1枚あたりの処理時間で決まる
Section titled “処理能力はチャンバー数と1枚あたりの処理時間で決まる”各社が示す最大処理能力は次のとおりだ。SCREENのSU-3200は12チャンバーで毎時800枚10、SU-3400は24チャンバーで毎時1,200枚3。ACM ResearchのUltra C SAPSは、8チャンバーで毎時225枚、12チャンバーで375枚、18チャンバーで800枚だ14。TELのCELLESTA-iは最大20ユニットの洗浄チャンバー11、Lam ResearchのEOSは最大16チャンバー15を積む。
1チャンバーあたりに直すと、SAPSは毎時28〜44枚、SU-3200は67枚、SU-3400は50枚で、2倍以上の幅がある。チャンバー数が同じでも、搬送の速さと1枚あたりの処理時間で処理能力は変わる。SU-3400の1チャンバーあたり毎時50枚は、1枚72秒で回し続けた場合の平均になる。ACMは年次報告書に、TEBOの洗浄は他の技術より最大5倍長くかかる16と書く。
チャンバーを増やすと床面積が増えるので、各社は段を積む。SU-3300は4段6列で24チャンバーだった12。SU-3400はチャンバーを小さくして6段4列に組み替え、同じ24チャンバーのまま床面積を30%減らした3。TELはCELLESTA-iの1 m²あたりの生産性を世界最高水準とする11。SCREENとTELはともに、床面積あたりの生産性を仕様に挙げている。
枚葉式SPMは薬液の大半を排液にし、ACMとTELは使用量を減らす装置を出している
Section titled “枚葉式SPMは薬液の大半を排液にし、ACMとTELは使用量を減らす装置を出している”枚葉式のSPMでは、高温の薬液をウェーハにかけても、大部分は回転で振り切られて排液に流れる6。ACMのTahoeは、SPMを槽で使い回し、槽の薬液を決めた寿命か処理枚数で交換する。仕上げのSC1洗浄だけを枚葉で行う。ACMは、1日2,000枚の処理で枚葉式SPM装置と比べると、硫酸を1日1,608リットル(33%)、過酸化水素を852リットル(94%)減らせる6と試算する。比較のレシピは、Tahoeが槽のSPM 300秒、相手の枚葉機がSPM 90秒だ。
既存の枚葉機も薬液を減らしている。TELのCELLESTA Pro SPMはSPM薬液のコストを最大50%下げる17。SU-3400は排気、窒素、薬液をまとめた環境負荷を20%減らした3。使うSPMの薬液は硫酸と過酸化水素の混合液だ。
バッチ式は、処理時間の長い工程に残る。TELは、バッチ洗浄の重点を3D NAND向けの窒化膜とタングステンのエッチングなど、長時間の処理と高度なプロセス技術を要する工程18に置く。同じ資料でTELは、ウェットベンチと枚葉処理を組み合わせた新装置ZEXSTAを示した。長時間の液処理は槽で、乾燥と粒子の管理は枚葉で行う。逆向きの動きもある。SCREENは、3D NANDで階段構造を使わない新しいワード線コンタクト工程が入ると、バッチから枚葉SPMへの置き換えが進む2と見込む。
主要5社は、シェアを数える対象の区切り方が違う
Section titled “主要5社は、シェアを数える対象の区切り方が違う”| 会社 | 主な枚葉機と公式仕様 | シェア・売上の記述 |
|---|---|---|
| SCREEN | SU-3400:24チャンバー、毎時最大1,200枚 | 2025年の世界シェアは枚葉式34%、バッチ式43%、スピンスクラバー56%(Gartnerをもとに同社作成) |
| TEL | CELLESTA-i:最大20ユニットの洗浄チャンバー | 洗浄装置全体で2025年の世界シェア20%(Gartnerをもとに同社作成) |
| Lam Research | EOS:最大16チャンバー | 公式ページでは低欠陥と高スループットを掲げる |
| SEMES | 超臨界CO2の洗浄装置をSamsungだけに供給 | Samsungが90%超を出資する装置子会社 |
| ACM Research | Ultra C SAPS:最大18チャンバー、毎時800枚 | 2025年の洗浄装置売上6億2,600万ドル |
SCREENは、Gartnerの出荷金額の集計をもとに、2025年の世界シェアを枚葉式洗浄装置で34%、バッチ式で43%、スピンスクラバーで56%とし1、いずれも首位とする。TELも同じGartnerの集計をもとに、枚葉式、ウェットステーション、バッチスプレー、スクラバーなどを合わせた洗浄装置全体で2025年のシェア20%とする18。SCREENは機種ごとに、TELは洗浄装置全体で数えている。
Lam Researchは、EOSで最大16チャンバーと、3D NANDの反りを調整する裏面膜の除去15を掲げる。SEMESはSamsungが90%超を出資する装置子会社で、超臨界CO2でウェーハを洗う装置を世界で初めて開発し、Samsungだけに納めている19とKorea Heraldは報じた。
ACM Researchの2025年の枚葉・Tahoe・準クリティカル洗浄装置の売上は6億2,600万ドルで、全売上の69.5%だった16。同社は自社の洗浄装置が狙える2025年の市場を約73億ドルと見積もり、その約9%を取った計算になる。ACMは洗浄、めっき、炉の主な競合として、Lam Research、NAURA、SCREEN、SEMES、TELなど16を挙げる。売りものは、メガソニックの位相を交互に切り替えてウェーハ全面に均一にエネルギーを届けるSAPSと14、気泡の崩壊によるダメージを抑えてアスペクト比60のパターンにも使えるTEBOだ13。メガソニックは液に高周波の音波を当てて粒子を浮かせる方法だ。
SCREENはhigh-k/メタルゲートの広がりで枚葉洗浄の需要が増えると見る
Section titled “SCREENはhigh-k/メタルゲートの広がりで枚葉洗浄の需要が増えると見る”SCREENは、high-k/メタルゲートが32 nmと28 nmのロジックから、DRAMとNANDの周辺回路、イメージセンサーの画素へ広がり、枚葉洗浄の需要はこれまで以上に高まる2と見る。同社が枚葉式の利点に挙げるのは、金属イオンによるウェーハ間の汚染の防止だ。
一度選ばれた装置は長く使われる。ACM Researchは年次報告書で、半導体メーカーはウェット装置を製造ラインに認定して組み込むまでに大きな投資をするので、いったん認定した装置を、仕様を満たす限りその工程とノードで使い続ける16と書く。
19件を表示
- 1SCREEN:ファクトブック2026、洗浄装置の世界市場とシェア(2026年9月)screen.co.jp ab
- 2
- 3
- 4SCREEN:バッチ式洗浄装置FC-3100の仕様screen.co.jp ↩
- 5TEL:バッチ式洗浄装置EXPEDIUSシリーズtel.co.jp ↩
- 6
- 7マイナビニュース TECH+:UCPSS 2025のSamsung基調講演、洗浄は全工程の約3割(2025年11月)news.mynavi.jp ↩
- 8SEMES:洗浄工程と枚葉式の比率(製品紹介)semes.com ↩
- 9ACM Research:ウェットプロセスの方式(バッチと枚葉)acmr.com ↩
- 10SCREEN:枚葉式洗浄装置SU-3200の仕様screen.co.jp abc
- 11TEL:枚葉洗浄装置CELLESTAシリーズtel.co.jp abcd
- 12SCREEN:枚葉式洗浄装置SU-3300の仕様screen.co.jp ab
- 13ACM Research:Ultra C TEBOの仕様acmr.com ab
- 14ACM Research:Ultra C SAPSの仕様acmr.com ab
- 15Lam Research:枚葉ウェット洗浄装置EOSlamresearch.com ab
- 16
- 17TEL:CELLESTA Pro SPMの発売(2019年3月)tel.co.jp ↩
- 18
- 19