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パターン倒壊は乾燥の最後の液面で決まる|IPAで水の3分の1、疎水化でほぼゼロ、超臨界で液面ごと消す

パターン倒壊とは、洗浄の後に細く高いパターンが隣どうしで倒れてくっつく不良を指す。倒れるのは、薬液をかけている間ではない。リンス液が乾く最後の段階で、壁と壁の隙間に残った液面が壁どうしを引き寄せて倒す。倒す力は液の表面張力、液と壁の接触角、隙間の幅で決まる。隙間の幅は設計で決まるので、洗浄側が動かせるのは表面張力、接触角、液面の有無の3つになる。

量産の標準は、まず水を表面張力の低いIPA(イソプロピルアルコール)に置き換えて乾かすIPA乾燥だ。しかしTELの技術者は2013年、IPAの表面張力は水の3分の1しかなく、この方式はプロセスの余裕の限界に近づいている1と報告した。SCREENも、7 nmや5 nmの製造プロセスではIPAを使っても倒壊を防ぎにくくなっている2と説明する。その先の手段は、壁の表面を水をはじく状態に変える疎水化乾燥と、液を超臨界流体に置き換えて液面をなくす超臨界乾燥だ。

倒す力は隙間に残った液面の圧力で、隙間が狭く壁が高いほど急に強くなる

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液が壁を全部覆っている間は、壁は左右から同じ力で押されている。乾燥が進んで片側の隙間だけに液が残ると、液面の曲がりが圧力差(ラプラス圧)を生み、壁を液の側へ引く。TELの2013年の報告は1、この圧力差を表面張力γ\gamma、接触角θ\theta、隙間の幅SSを使ってΔP=2γcos⁡θS\Delta P=\frac{2\gamma\cos\theta}{S}で表し、壁にかかる力をこの圧力に壁の高さと奥行きを掛けた値とした。式のもとは、田中らが1993年にレジストの倒壊で示したモデルで1、以下の乾燥法はこの式の上で比較できる。

この式から、倒壊が微細化とともに急に厳しくなる理由が分かる。隙間を半分にすると圧力は2倍になる。さらに、片持ち梁の曲げの式で見積もると、同じ圧力を受けた壁のたわみは高さの4乗に比例し、壁の厚さの3乗に反比例する。高さを2倍にすると、たわみは16倍になる。TEL九州の2017年の報告は3、たわみが隙間の半分に達したとき壁どうしが接触するという条件で倒壊の起こりやすさを表した。隙間が狭いほど、接触までの余裕も小さい。

倒れ方はばらつく。imecとLam Researchは2011年、ピッチ90 nmのシリコンのピラーでアスペクト比を最大28まで振り、倒壊はアスペクト比に対して急に立ち上がり、どのピラーが倒れるかは確率的に決まる4ことを示した。倒れ始めるアスペクト比は2つの洗浄方法で18と13に分かれ、18まで持ったのは1つ目の方法だった。倒れたピラーはHF処理で元に戻せたので、曲がり自体は弾性変形だった。

SCREENは北海道大学と共同で、乾燥中のシリコンピラーを液中の透過電子顕微鏡で観察した。ピラーはIPAがメニスカスを作った直後から動き始め、ピラー間に残った液でまず付着し、最後に先端に残った液だまりが接着剤のようにピラーを固定する2という2段階で倒れた。

接触角を90°に寄せる疎水化は表面張力を下げるより効き、液面をなくせば力はゼロになる

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隙間を20 nm、壁への接触角をTELの計算と同じ10°とし、表面張力に20℃の文献値5を入れて式を計算すると、圧力は水で約7.2 MPa、IPAで約2.3 MPaになる。

幅20 nmの隙間に残った液が壁を引く圧力を乾燥法ごとに比べた横棒グラフ。水が約7.2 MPa、20℃のIPAが約2.3 MPa、70℃のIPAが約1.9 MPa、フッ素系溶剤が約1.4 MPa、疎水化した面の水がほぼゼロの約0.25 MPa、超臨界CO2が0。
表面張力を下げる手段は水の約3分の1から5分の1までしか圧力を下げられず、接触角を90°に寄せるとほぼゼロ、超臨界ではゼロになる。

表面張力を下げる手段の基本はIPAで、圧力を水の約3分の1にする。ホットIPAは同じ項をさらに下げる。IPAの表面張力は1℃上がるごとに約0.079 mN/m下がるので5、70℃と仮定すると20℃の23.0 mN/mが約19.1 mN/mになり、下がり幅は2割弱だ。Lam Researchの特許は、IPAが飛びきる前にウェーハを40〜82℃に温める6条件を示している。表面張力がさらに低いフッ素系溶剤も候補になるが、TELの計算に使われた値は14 mN/mで1、IPAから4割近く下がるにとどまる。

接触角を変える手段は、効きがこれより大きい。cos⁡θ\cos\thetaは接触角が90°でゼロになるので、壁の表面を水をはじく状態に変えれば、表面張力の高い水のままでも圧力はほぼ消える。92°では符号が反転し、液はわずかに壁を押し広げる側に回る。TELはこの考え方を疎水化乾燥(Hydrophobized Surface Dry)と名づけ、シリル化剤TMSDMAで酸化膜上の水の接触角を約90°にした。線幅18 nmのシリコン線で計算すると、倒壊が起きるアスペクト比の上限はIPA乾燥の1.7倍に上がり、アスペクト比約19の線ではIPA乾燥で3本が付着したのに対し、疎水化乾燥では倒壊がなかった1。Applied Materialsは同じ2013年に、自己組織化単分子膜で表面を疎水化する乾燥を業界で採用されている先進的な乾燥法の一つ7と書いている。

液面そのものをなくす手段は、昇華乾燥と超臨界乾燥だ。前者は液を固体に、後者は超臨界流体に置き換える。

リンスから乾燥への切り替わりで残った水が、倒壊とウォーターマークの両方を生む

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リンスから乾燥までの流れ。上段は薬液洗浄から純水リンスへ進む共通の工程で、純水リンスの後に4つの経路に分かれる。IPA乾燥はIPAへ置換し、液面を外周へ送って乾燥する。疎水化乾燥は疎水化剤で処理し、水のまま乾燥する。昇華乾燥は昇華材を充填し、固化させてから昇華させる。超臨界乾燥はIPAへ置換し、濡れたまま別室へ運び、CO2で置換して減圧する。
どの乾燥法も純水リンスの後に分かれ、リンス液を次の液へどれだけ残さず渡せるかで倒壊と汚れの出方が決まる。

純水リンスから乾燥への切り替わりは、倒壊と汚れが同時に決まる区間だ。ここで残った水は2つの害を出す。1つは倒す力で、水が残った隙間では圧力がIPAの約3倍に戻る。もう1つはウォーターマーク(乾燥跡)だ。日本半導体製造装置協会(SEAJ)の用語集によれば、シリコンが露出した表面に水滴が残ると、溶け出したシリコンが水滴の蒸発後にクレータ状の水和物として残り、後のゲート酸化膜などの欠陥を誘発すると言われる8。

回転で水を振り切るスピン乾燥では、小さな水滴ほど残りやすい。表面技術協会の1998年の解説は、水滴にかかる遠心力は直径の3乗に、表面への付着力は直径の2乗に比例するので、水滴が小さくなると付着力が上回る9と説明する。IPAへ置き換える方式でも、IPAに水分が増えると不良が出る。同じ解説は、使っているうちにIPA中の水分が2000 ppm以上に増えると、異物やウォーターマークが出る場合がある9という報告を紹介している。装置メーカーはチャンバー内の湿度まで制御する。SCREENのSU-3300はチャンバー内の温度と湿度を常に制御して高アスペクト比パターンの倒壊を抑え10、TELのCELLESTA-i MDは洗浄後のチャンバー内の雰囲気制御と独自のIPA吐出技術11を掲げる。

回転数の決め方も、乾燥ガスの組成と組み合わせて考える。SEAJの用語集が説明するRotagoni乾燥法では、300〜1000 rpmで回るウェーハの中心から純水ノズルとIPA蒸気のノズルを並べて外へ動かし、約20秒で水の層を除く。スピン乾燥より回転数が低く、上方に高速の乱流ができないので雰囲気の汚染を受けにくく、固液界面の表面張力の作用で液中の粒子もウェーハ面に残りにくいと言われる8。荏原製作所の特許は、乾燥ガス中のIPA濃度を2 mol%未満にすれば、100 rpm以下の低速にしなくても約500 rpmで欠陥を減らせるとした12。同じ特許は、リンス水が上面全体を覆う遠心力を得るためにリンス段の回転数を約300〜500 rpmとし、リンス膜の乱れを避けるため加速を毎秒50 rpm以下にしている。

超臨界乾燥では、この切り替わりに移し替えと昇圧の工程が加わる。ウェーハはIPAで濡れたまま超臨界のチャンバーへ運ばれるので13、運ぶ途中で乾き始めれば倒壊は防げない。TELの2009年の特許は、ヒーターを運転ごとに切る従来の装置では超臨界流体を得るまでの時間が延び、装置の処理能力が下がる14ことを課題とし、例として液処理ユニット6基と超臨界処理ユニット6基を並べる構成を示した。

昇華乾燥は液面を固体に替えるが、固まる段階で倒壊が残る

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昇華乾燥は、隙間の液を昇華する物質で置き換え、固めてから気体へ飛ばす。液と気体の界面を通らないので、表面張力の項がなくなるという発想だ。Applied Materialsの2013年の試験では、線幅32 nm、間隔40 nmのNAND素子分離構造は倒れずに乾いたが、間隔を20 nmにすると全面で付着が起きた7。

SCREENは2025年、倒壊の原因を固化の段階に求めるモデルを提案した。昇華材の固液界面の界面張力が倒壊の主な駆動力だと仮定し、昇華材の液相と固相の粘度差に比例してパターン間隔のnn乗に反比例する力を置くと、7種類の昇華材でn=3〜4n=3\text{〜}4のとき倒壊率とよく相関した15。このモデルに従えば、昇華材は液相と固相の粘度差の小さいものを比較して選ぶことになる。

超臨界乾燥は力をゼロにするが、高圧の別チャンバーと処理時間が要る

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超臨界乾燥は、液を超臨界流体に置き換えてから減圧し、液面を一度も作らずに気体へ移す。TELは、表面張力がゼロになる超臨界流体ならパターン倒壊を起こさず乾かせるとして16、超臨界乾燥の専用チャンバーを載せたCELLESTA SCDを2021年1月に発売した。半導体プロセスで主に検討されている流体は不活性なCO2だ8。Samsungの2006年の特許は、CO2を臨界温度31℃、臨界圧力73気圧で、毒性も燃焼性もなく安い17流体として挙げ、DRAMのキャパシタ下部電極が傾いたり倒れたりするのを防ぐ用途に使っている。

Applied Materialsは2015年の学会で、有機溶剤のマランゴニ乾燥、単分子膜による表面張力の制御、凍結乾燥を比べた結果、倒壊を防げたのは超臨界流体だけで、2D NANDの素子分離構造で倒壊は見られなかった18と報告した。

必要になるのは圧力と専用の部屋だ。CO2とIPAが1つの相になる境界は、神戸製鋼グループの資料で40℃のとき8.3 MPaG、理想的な運転点は9.2 MPaGになる19。この圧力に耐えるチャンバーを洗浄チャンバーとは別に持ち、濡れたウェーハを移し替える。IPAそのものを超臨界にする方式では、TELと東芝(現キオクシア)の特許が、分解したIPAがタングステンなどの金属膜をエッチングする問題を、チャンバー壁の電解研磨と酸素の追い出しで抑えた13。

超臨界乾燥はTELが2021年から販売し、SEMESの超臨界洗浄装置はSamsung専用だ

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Samsungは2006年に、超臨界CO2でDRAMのキャパシタを処理する特許を出願した17。TELは2021年1月にCELLESTA SCDの販売を始めた16。Samsungの装置子会社SEMESについて、Korea Heraldは2022年5月、CO2の超臨界流体でウェーハを洗う装置を世界で初めて開発し、Samsung Electronicsだけに納め、メモリー、プロセッサー、ファウンドリー事業に使われている20と報じた。

乾燥法を構造の弱さに応じて段階で選ぶという見方は、TELの資料にはっきり表れている。TELは枚葉洗浄装置でスピン乾燥、ホットIPA乾燥、新しいIPA乾燥と表面改質乾燥(SMD)をそろえ11、その上に超臨界乾燥のCELLESTA SCD16を置く。TEL九州は2017年、IPAのスピン乾燥、IPAのスキャン乾燥、SMDを同じ尺度で比べ、壁が接触するのに要る表面張力(GammaPC\mathrm{GammaPC})が約4〜5を下回るほど弱い構造には、SMDより強い乾燥法が要るとした3。TEL以外では、SCREENはSU-3300でチャンバー内の温度と湿度の制御による倒壊抑制10を前面に出し、Applied Materialsは2015年に比べた方式のうち倒壊を防げたのは超臨界だけ18と報告した。同じ報告では、倒壊が問題になる場所として素子分離、20層を超える3D NAND、配線のlow-k膜、DRAMの円筒キャパシタ18が挙げられた。乾燥前の洗浄全体の流れは洗浄と表面前処理にある。

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