コンテンツにスキップ

NILS(規格化像ログスロープ)とは

NILSとは、露光の像がパターンのエッジでどれだけ急に立ち上がっているかを、光強度とパターン幅で規格化し、どの寸法のパターンでも同じ尺度で比べられるようにした指標です。 エッジでの像の傾きが緩いと、露光量やレジストのわずかな揺れでもエッジの位置が大きく動きます。NILSはその鈍さを数値にしたもので、LWRや確率的欠陥の起きやすさの違いを説明できます。NILSを上げる手段は照明、マスク、露光量とそろっていますが、どれを選んでも焦点深度、スループット、光源パワーのどれかで払うことになります。

パターン幅を掛けて規格化するので、寸法の違う線を同じ物差しで比べられる

Section titled “パターン幅を掛けて規格化するので、寸法の違う線を同じ物差しで比べられる”
像の傾きとエッジ位置のずれ
しきい値の揺れ幅傾きが立った像傾きが寝た像エッジのずれ 小エッジのずれ 大光強度位置
しきい値が同じ幅だけ揺れても、傾きが急な像ではエッジはほぼ同じ場所にとどまり、傾きが緩い像では大きく動きます。NILSはこの傾きを光強度とパターン幅で規格化した値です。

NILSはリソグラフィで像の質を定量的に表す指標で、パターンエッジでの像の傾きを光強度で規格化し、さらにパターン幅で規格化した値です1。光強度の対数値の傾きに相当し、パターン寸法が異なる場合でも像の質を定量的に表現できます。

パターン幅で規格化する前の値がILS(イメージ・ログ・スロープ)で、パターンのエッジ付近の光学コントラストを対数で表したものです。値が大きいほど解像性が良くなり、LWRも小さくなります。ILSは像の幅に依存する値で、解像度の違う像の質を通して評価する尺度にはなりません。そこでILSにレジスト膜へ印刷したい像の幅を掛けると、次元のないNILSになります2。NILSはILSにパターン幅を掛けた値なので、40ナノメートルの線と200ナノメートルの線を同じ物差しへ載せられます。裏返すと、線が細くなるほど、同じNILSを保つために露光装置はILSのより高い像を出す必要があります2。

同じNILSに要るILS
細い線は高いILSが要る太い線は低いILSで足りるNILSが一定の線細い太いパターン幅必要なILS
NILSはILSにパターン幅を掛けた値なので、NILSを一定に保つにはパターン幅に反比例したILSが要ります。線が細くなるほど、露光装置はより急な像を出す必要があります。

レジストは、ある光強度を超えたところが溶けます。像の傾きが立っていれば、しきい値が少し上下してもエッジはほぼ同じ場所にとどまり、寝ていれば同じ揺れでエッジが大きく動きます。CDの平均値は露光量で合わせられますが、揺れに対する鈍さは像の傾きが決めます。

像の傾きが寝ると、CDの平均は合ったまま3σだけが膨らむ

Section titled “像の傾きが寝ると、CDの平均は合ったまま3σだけが膨らむ”

レジストライン幅ラフネス(LWR)1は露光と現像の後に現れるレジストのライン幅のラフネスで、光コントラストが低いと値が大きくなり、3σで表すことが多い量です。ローカルCD均一性(LCDU、同じ露光ショット内の局所的なばらつき)は、解像限界の近くではレジスト成分の分布、光子の数にあたる露光ドーズ量、露光装置のNAで決まる光学コントラストの3つで決まります。像の傾きが寝ると、CDの平均は目標に乗ったまま3σだけが膨らみ、CD均一性バジェットでは露光の項が大きくなります。

確率的影響は、パターンが細くなるにつれて光子数の揺らぎ、レジスト構成材料の不均一性、露光装置のコントラストの低下が重なり、パターン欠陥が確率的に生じる現象です。確率的欠陥のブリッジや断線を生む3つの原因の1つが、像のコントラストです。

NILSは像の量なので、シミュレータで求めます。ウェハ上で測れるのは、像が転写された後の寸法とラフネスです。プロセスウィンドウは、CDフォーカスカーブから寸法のスペック上下限に対応する露光量とフォーカスをプロットしたときのフォーカスマージンと露光量マージンで、寸法の±10パーセントを満たす焦点深度(DOF)と露光量裕度(EL)で表す例があります。露光量裕度は、ベストフォーカスでの露光量の余裕を、ターゲット露光量に対する百分率で表したものです。

像の傾きが寝れば、同じ±10パーセントの窓を通れる露光量の幅が狭まり、ELもDOFも縮みます。CD-SEMで測るLWRの3σと、フォーカス露光量マトリクスから出るELとDOFが、現場でNILSの代わりに追う3つの数字です。

DOFが最大になる条件と、NILSが最大になる条件は別

Section titled “DOFが最大になる条件と、NILSが最大になる条件は別”
NAとσの最適条件
DOF最大DOF 1.215 µm(180 mJ/cm²)NILS最大0.50.690.80.30NAσ
同じ材料のシミュレーションでも、DOFを最大にする条件はNA0.5・σ0.8、NILSを最大にする条件はNA0.69・σ0.30で、別の点になります。

像そのものは、露光、露光後ベーク、現像をPC上で再現する技法3で計算し、DOFのほかに空中像強度対数勾配(NILS)を求められます。NILSは光強度のコントラストにあたり、最大解像度を得るNAとσの条件は、NILSが最大になる条件です。

リソテックジャパンのシミュレーション例では、NAとσを変えたとき、DOFを最大にする条件はNA0.5・σ0.8(露光量180ミリジュール毎平方センチメートルでDOFは1.215マイクロメートル)、NILSを最大にする条件はNA0.69・σ0.30です。焦点位置のずれを大きくすると、空中像のNILSの傾きが落ち、露光量ゼロから現像で抜け切る露光量までの遷移領域が広がると見込まれます2。同じ材料でも、DOFが最大になる条件とNILSが最大になる条件は異なり、この例ではNILSを最大にする条件のほうがσが小さくNAが大きくなっています。照明条件を層ごとに変える理由の1つがここにあります。

マスク側にも調整手段があります。位相シフトマスクは1、マスク吸収体と基板の間の位相や透過率を変えて光学コントラストを改善し、解像性と焦点深度を上げて転写特性を向上させたフォトマスクで、光学側でNILSを上げる方法です。その代わりフォトマスクの構造が複雑になり、MEEFも変わります。EUVマスクでは吸収体の厚さも効き、ロチェスター工科大学の学位論文は、吸収体の反射率がピークになる厚さで、NILSが高くMEEFが低くなる4ことを示しています。

レジスト側は露光量で締めるが、RLSトレードオフに当たる

Section titled “レジスト側は露光量で締めるが、RLSトレードオフに当たる”
露光量とLER
半分1倍4倍露光量LER右へ行くほどスループットが下がる
単純なショットノイズの考え方では、LERは露光量の平方根の逆数に比例し、露光量を4倍にすると半分になります。その分、1枚あたりの露光時間が延びます。

レジスト側の手段は露光量です。LER・LWRを減らす最も単純な方法は露光量を増やすことで5、単純なショットノイズの考え方では、LERは露光量の平方根の逆数に比例します。露光量を4倍にするとLERは半分になる計算です。

一方でEUV露光では10ミリジュール毎平方センチメートル以下の高感度レジストが強く求められ、解像度、LER/LWR、感度の3つを同時に満たすことはRLSトレードオフと呼ばれる課題です。化学増幅型レジストの酸拡散によるボケ(Resist Blur)で潜像と現像後のレジスト像の差が大きくなることは解像力の劣化にあたり、その低減には感度の低下が伴う見通しです。光学側でNILSを上げても、レジスト内のボケの分だけ解像力が下がります。

NILSが下がったときの寸法の動きは、レジストの設計でも変わります。ジョージア工科大学の学位論文のシミュレーションは、露光量を10〜70 mJ/cm²、NILSを3.5〜35の範囲で振りました。同じNILS 17.5のもとで70 nmの寸法を17 mJ/cm²で出すよう感度をそろえた2つのレジストモデルを、30 mJ/cm²の同じ露光量で比べると、NILSを最大から最小へ下げたときのスペースの寸法の増加は、光酸発生剤をポリマーに結合させたレジストで18.9%、混合したレジストで20.7%でした2。

2007年度時点では、3σで3ナノメートル未満のLWR、10ミリジュール毎平方センチメートル未満の感度、40ナノメートル未満のハーフピッチ解像力を1つの材料へ同時に求めることが6、リソグラフィの困難な挑戦の一覧に並んでいました。

フレアと収差は、暗い部分を明るくして像の傾きを削る

Section titled “フレアと収差は、暗い部分を明るくして像の傾きを削る”

ミラーの中間空間周波数帯の粗さによってフレアが生じ、線幅の制御性に影響します7。フレア量は波長の二乗の逆数に比例するため、EUVリソグラフィのフレアは従来の光リソグラフィより多くなります。2012年時点では、光学フレア量はArF・KrFの1パーセント以下に対し、EUVでは10パーセント前後になると予想されていました。

フレアは像の暗い部分に一様な光を加えます。暗い部分が明るくなるため明暗の差が縮み、エッジでの傾きが緩くなります。収差でも同じことが起きます。投影レンズ収差は理想の結像からのずれで、点がにじんだ分だけ傾きが失われます。

解像度の式に含まれるk1は、レジスト材料のコントラストを含むリソグラフィのプロセス性能をまとめて表す定数です8。東芝は、NAND型フラッシュメモリのレジストプロセスを考慮すると、k1を0.3以下にすることは困難としています。像の傾きとレジストの応答は、k1という1つの係数にまとめて反映されます。

どの対策も、焦点深度・スループット・光源パワーのどれかを払う

Section titled “どの対策も、焦点深度・スループット・光源パワーのどれかを払う”

σを絞れば像は立ちますが、焦点深度が縮んでウェハ平坦度とベーク板の要求が厳しくなります。露光量を積めばばらつきは締まりますが、1枚あたりの露光時間が延びます。位相シフトはマスクの負担を増やします。

感度を下げる方法では、光源への要求が上がります。EUVで毎時100枚以上のスループットを実現するための集光点出力の試算は、レジスト感度5ミリジュール毎平方センチメートルを前提にしていました。その実現が難しいため、光源パワーの要求値は180ワット、さらに200ワットへ引き上げられ、将来は500ワットを超える可能性もある7とされていました。2012年時点の試算です。

どの対策も限界に達した場合は、層を分ける方法に移ります。マルチパターニングは1つの層を複数回の露光で作り、1回あたりのNILSの要求を下げます。その代わり、露光の回数と重ね合わせの管理項目が増えます。光源マスク最適化とOPCは、計算時間を使って像の傾きを改善する方法です。

NILSとは何ですか?

露光の像がパターンのエッジでどれだけ急に立ち上がっているかを表す指標です。パターンエッジでの像の傾きを光強度で規格化し、さらにパターン幅で規格化した値です。光強度の対数値の傾き(ILS)にパターン幅を掛けた、次元のない量にあたります。

ILSとの関係はどうなりますか?

パターン幅を掛けるかどうかの差です。ILSはパターンのエッジ付近の光学コントラストを対数で表したもので、値が大きいほど解像性が良くなってLWRも小さくなります。NILSはそのILSにパターン幅を掛けた無次元の値なので、寸法の異なるパターンどうしを同じ物差しで比べられます。

値が下がると現場で何が起きますか?

CDの平均は露光量で合わせられますが、ばらつきの3σが膨らみます。レジストライン幅ラフネスは光コントラストが低いと大きくなり、ローカルCD均一性は解像限界の近くで、レジスト成分の散らばり方、光子の数にあたる露光ドーズ量、露光装置のNAで決まる光学コントラストの3つに左右されます。

NILSはどうやって求めるのですか?

像の量なので、シミュレータで求めます。現場で実測するのは、CD-SEMで測るLWRの3σと、フォーカス露光量マトリクスから求める焦点深度と露光量裕度です。焦点深度と露光量裕度は、CDフォーカスカーブから求める余裕度です。

NILSを上げる方法は何ですか?

像の側では照明条件の絞り込み、位相シフトマスクの採用、フレアと収差の低減です。レジストの側では露光量の増加です。最大解像度を得るNAとσの条件は、NILSが最大となる条件です。

露光量を上げれば済む話ですか?

露光量を増やすとばらつきは減りますが、別の問題があります。LER・LWRを減らす最も単純な方法は露光量を増やすことですが、解像度、LER/LWR、感度の3つを同時に満たすことはRLSトレードオフと呼ばれる課題です。露光量を増やした分、スループットが下がり、光源パワーへの要求が上がります。

フレアや収差はNILSへ影響しますか?

影響します。フレアは像の暗い部分に一様な光を加えるため、明暗の差が縮んでエッジの傾きが緩くなります。2012年時点では、ArF・KrFで1パーセント以下の光学フレア量が、EUVでは10パーセント前後になると予想されていました。

8件を表示
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8