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フレア(露光)とは

フレアとは、投影光学系の中で散乱した露光光が、像を結ぶべき場所の外側まで届いてレジストを薄く感光させる迷光です。 パターンの有無に関わらず露光量を底上げし、その量は周囲のパターン密度で変わります。量は波長の2乗の逆数に比例するので、波長13.5ナノメートルのEUVではArFの1パーセント以下から10パーセント前後へ跳ね上がると予想されてきました。しかも影響はcmのオーダまで届くため、近接効果の補正では足りず、フィールド全面のパターン密度から補正します。装置で減らせなかったフレアは、ミラーの研磨、補正の計算時間、CDの余裕のどれかで払うことになります。

ミラーの凹凸が光を散らし、短い波長ほど散乱が強い

Section titled “ミラーの凹凸が光を散らし、短い波長ほど散乱が強い”

EUVでは反射ミラーを複数枚使い、短波長のため表面からの散乱が大きく、各ミラーがEUV光を散乱させてフレアを発生させます。表面の微小な凹凸の周期によって散乱の角度分布が異なり、大角度から小角度までさまざまなフレアが生じます1。中でもミラーの中間空間周波数帯の粗さ(MSFR)が生むフレアは、線幅(CD)の制御性に影響します。

ミラー表面の凹凸と散乱
入射光像へ向かう反射光小角度のフレア大角度のフレア多層膜ミラー表面の凹凸
ミラー表面の凹凸は、像へ向かう反射光のほかに、反射光のすぐ近くから大きく外れた方向まで、さまざまな角度の迷光を生みます。

フレア量は波長の2乗の逆数に比例するので1、同じ面精度のミラーでも波長が短いほど散乱が強くなります。露光波長はKrFエキシマ露光が248ナノメートル、ArFエキシマ露光が193ナノメートル、極端紫外線露光が13.5ナノメートルです2。ArF・KrFリソグラフィでは光学フレア量が1パーセント以下でしたが、EUVリソグラフィでは10パーセント前後になると予想されています。

EUVのフレアはArFより桁違いに大きく、CDとコントラストを崩す

Section titled “EUVのフレアはArFより桁違いに大きく、CDとコントラストを崩す”

周囲のパターン密度が高い場所では迷光が多く、疎な場所では減るため、同じレシピで焼いても場所によってCDがずれます。

フレアは多層膜の面精度に依存し、ミラー面の研磨技術が課題です3。2007年から2009年にかけての開発段階の見通しでは、量の目安は稼働中のα機で10パーセント以上、初期の量産機で7パーセント以下とされ、ArFと比べて桁違いに大きい値です。同じα機を10パーセント以上4、初期の量産機を6〜7パーセント5とした見通しもあります。研磨については、平成20年度報告が、EUVAが開発したEEM研磨技術を世界の最先端と評価し、6枚ミラーの光学系を露光波長で計測する収差計測技術もすでに報告されているとしています。

像のコントラストも下がります。フレアはパターンの有無に関わらず露光量を底上げする光なので、明部と暗部の差が縮みます。確率的影響とは、光子数の揺らぎ、レジスト構成材料の不均一性、露光装置のコントラスト低下によって、パターン欠陥が確率的に生じる現象です。フレアによるコントラストの低下はこのうち3番目の要因に加わり、確率的欠陥の原因の1つになると考えられます。

影響はcmのオーダに届き、フィールドの境界で2倍、コーナーで3倍になる

Section titled “影響はcmのオーダに届き、フィールドの境界で2倍、コーナーで3倍になる”
相互作用が届く距離
1µm10µm100µm1mm1cm10cm光リソの相互作用 1.5µmEUVのフレア cmのオーダ相互作用が届く距離(対数目盛)
光リソグラフィでパターンどうしが影響し合う距離は1.5マイクロメートル程度ですが、EUVのフレアはcmのオーダまで届きます。

フレアによる寸法への影響は、数cm離れた場所のパターン密度で決まります。EUVはk1が大きい条件で使われるため、OPCの負担そのものは軽くなります。RETやOPCの負担が軽いとされる一方で、入射角依存の補正とフレアの補正は必要です4。OPCで補正する近接効果の影響範囲はマイクロメートルのオーダですが、パターン間の相互作用の距離は、光リソグラフィの1.5マイクロメートル程度に対して、EUVではフレアのためcmのオーダに及びます。そのため、デバイスパターンの階層を使った高速計算が難しくなり、計算時間が長くなってデータサイズも大きくなります。

フィールド内の位置とフレアの拡大
露光フィールド境界で2倍コーナーで3倍にじみ出るフレアフィールドフレア
フレアはフィールドからにじむように外へ広がり、その影響はフィールドの境界で2倍、コーナーで3倍に拡大されます。

フレアの影響はフィールドからにじむような形で現れ、フィールドの境界で2倍、コーナーで3倍に拡大されます1。装置の構造も効きます。散乱で生じるフレアは点広がり関数(PSF)で表されますが、アパーチャなどで一部が遮られて強度が下がり、形状も変わります。ニコンは2009年のEUVLシンポジウムの発表で、光学系の内部で光を遮るものとして、アパーチャ、機構部品、ミラーのコーティング領域、フレアストップを挙げています。さらに、マスク周辺の反射防止層であるブラックボーダーにもわずかな反射が残り、その反射光をReMaで遮りきれずに隣のフィールドを弱く露光してしまいます。

ショット内の位置そのものが、CDの要因になる

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計測に出るのは寸法の場所依存です。CD-SEMやOCDでフィールド内の複数点を測り、周囲のパターン密度とフィールド内位置の両方でCDを層別します。到達距離がcmのオーダにおよぶため、ショット内の位置そのものが要因の1つになります。

フレアそのものの測り方にも注意が要ります。ニコンは、実験で強度比として観測できる「Kirkフレア」は「フレア」と等しくないとしています6。

調整できるのは、面精度、補正の細かさ、レジストの3つ

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1つ目は、ミラーの面精度です。EUV露光装置の課題は、低収差・低フレアの光学系の製作です。面精度を上げればフレアは減りますが、研磨精度と多層膜の製作そのものが課題です。面精度の要求を緩めればフレアが増え、その分をマスクデータ側の補正で対応することになります。

2つ目は、フレア補正の細かさです。パターン密度マップとフレアの畳み込み計算でフレアマップを作り1、さらに光学像とフレアマップの畳み込み計算を行って、フレアを考慮した光学像を求めます。細かく補正すればCDの変動は減りますが、計算時間とファイルサイズが増えます。EUVL特有の圧縮を行った例では、補正にかかる時間がDRAMで100分の1、ロジックで20分の1に、ファイルサイズがDRAMで40分の1、ロジックで20分の1になりました。検証はフィールド全面のチップをチェックする必要があるためさらに時間がかかり、短縮も補正より難しく、圧縮前のフラットデータと比べて平均7倍の高速化を達成した例があります。補正を粗くすれば計算は軽くなりますが、残差がCDのばらつきとしてCD均一性バジェットを圧迫します。

3つ目はレジストです。EUV向けネガレジストはフレアの影響の低減を目的とし3、ドライエッチング耐性の改善なども同時に要求されます。レジスト材料面からの光学フレア対策は、今後の課題になりうる項目として残っています。

減らせなかったフレアは、補正の計算量とCDの余裕で払う

Section titled “減らせなかったフレアは、補正の計算量とCDの余裕で払う”

EUVではフレア、OPC、シャドーイング効果の3つの補正が必要です。シャドーイング効果はルールベースの方法で補正できますが、微細化が進むとモデルベースの補正が必要になります。フレアの補正ではマスク全面を補正する必要があり、単純なルールでもマスクの全パターンに補正をかけることになるため、EUVL専用のマスクデータ準備(MDP)技術の開発が急務です4。

フレアへの対策は、ミラーの研磨、計算時間とデータ量、CD均一性の余裕のいずれかで対応することになります。装置側で減らせなかった分は、マスクデータの補正と分解能の余裕から差し引かれます。

フレアとは何ですか?

投影光学系の中で散乱した露光光が、像を結ぶべき場所の外側まで届いてレジストを薄く感光させる迷光です。EUV露光装置の検討項目の1つで、フレアの量は多層膜の面精度に依存します。

どこから発生しますか?

ミラー表面の凹凸です。EUVでは反射ミラーを複数枚使い、各ミラーが光を散乱させます。凹凸の周期で散乱の角度分布が変わり、中間空間周波数帯の粗さ(MSFR)で生じたフレアは線幅の制御性に影響します。

どのくらいの量になりますか?

ArF・KrFリソグラフィでは光学フレア量が1パーセント以下に収まっていた一方、EUVリソグラフィでは10パーセント前後になると予想されています。稼動中のα機で10パーセント以上、初期の量産機で7パーセント以下とされ、ArFに比べて桁違いに大きい値です。

波長を短くするとなぜ増えるのですか?

フレア量は波長の2乗の逆数に比例するためです。同じ面精度のミラーでも、波長が短いほど同じ凹凸から生じる散乱が強くなります。

隣のパターンだけを見れば済みますか?

済みません。パターン間の相互作用の距離は光リソグラフィでは1.5マイクロメートル程度ですが、EUVではフレアのためcmのオーダに及びます。そのため階層を使った高速計算が難しくなり、計算時間が長くなってデータサイズも大きくなります。

フィールドのどこで測っても同じ値になりますか?

変わります。フレアの影響はフィールドからにじむような形で広がり、フィールドの境界で2倍、フィールドのコーナーで3倍に拡大されます。

どう補正しますか?

パターン密度マップとフレアの畳み込み計算でフレアマップを作り、さらに光学像とフレアマップを畳み込みます。単純なルールでもマスクの全パターンに補正をかけることになるため、EUVL専用のマスクデータ準備技術の開発が急務です。

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