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EUV露光で断線を生む光子のばらつき|光子のエネルギーはArF液浸の約14倍

EUV(極端紫外線)リソグラフィとは、波長13.5 nmの光で回路パターンをレジストに焼き付ける露光方式だ。その光子は、1個あたりのエネルギーがArF液浸の約14倍ある。同じ露光量(mJ/cm²)を当てても、届く光子の数は約14分の1しかない。光子が少ないと、場所ごとの光子の数のばらつきが大きくなり、線の断線や隣の線とのブリッジが確率的に起きる。imecは、波長が短くなると光源のエネルギーがより少ない光子に分配されると説明し、寸法(CD)を細くすると失敗の確率がほぼ指数関数的に増える現象を「確率的な崖」と呼ぶ1。露光量を下げると、光子の数はさらに減る。光子数の計算とASMLの説明から、EUVでは露光量を下げて露光機を速くする余地が、光子のばらつきで狭められる。

露光量と速さの関係はASML自身が示している。ASMLはHigh-NA機の説明で、像のコントラストが上がれば露光量を減らせ、1層の露光にかかる時間が縮んで工場の処理枚数が増える2と書く。露光量を下げられれば、それだけ速くなる。それでも露光量を下げきれないのはなぜか。露光量を下げると光子の数が減り、場所ごとのばらつきが大きくなるからだ。

13.5 nmの光子は1個がArFの約14倍のエネルギーを持つ

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光子1個のエネルギーは波長に反比例する。E=hcλE = \frac{hc}{\lambda} から計算すると、13.5 nmの光子は約92 eV、ArFの193 nmの光子は約6.4 eVで、比は約14になる。同じ露光量は同じエネルギーなので、EUVで届く光子の数はArFの約14分の1になる(図3)。

図3同じ露光量で届く光子
= 同じ露光量 ArF液浸(193 nm) EUV(13.5 nm) 光子1個 6.4 eV 光子1個 約92 eV 光子の数の比 14 光子の数の比 1
同じ露光量でも、EUVの光子は1個のエネルギーがArFの約14倍あるため、届く光子の数は約14分の1になる。

数にすると差がはっきりする。30 mJ/cm²を当てたとき、1 nm²に入る光子はEUVで約20個、ArFで約290個と計算できる。10 nm角の正方形なら、EUVは約2,000個、ArFは約29,000個だ。光子の到着はポアソン分布に従うので、数のばらつきは平均の平方根になる。この計算では、10 nm角に入る光子の数のゆらぎはEUVで約2.2%、ArFで約0.6%になる。この光子の数のばらつきを光子ショットノイズと呼ぶ。

レジストに効くのは、入った光子のうち吸収された分だけだ。Inpriaは、EUVをより多く吸収することで、化学増幅型レジストで増幅される光子ショットノイズを減らせる3と説明する。Inpriaの材料は、スズ酸化物を核に持つ有機金属クラスターの金属酸化物レジスト(MOR)だ。

光子のばらつきは、断線とブリッジになって現れる

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EUVの光子は、レジストの分子を直接反応させる前に光電子と二次電子をたたき出す。光重合科学技術の論文は、二次電子による光酸の発生と、光子1個あたりに発生する酸の数を主題にしている4。二次電子が動く距離は電子によるぼけ(電子ブラー)になり、ACS Applied Materials & Interfacesの論文は、その長さの目安を非弾性平均自由行程として報告している5。光子の数のゆらぎに、酸の発生と電子の動きのゆらぎが重なる。

その結果が確率的欠陥だ。imecは、マイクロブリッジ、線の局所的な断線、コンタクトの欠損と融合1を挙げる。どれも繰り返し現れない、孤立した不良だ。imecは、寸法を細くすると失敗の確率が急増する崖に加え、断線の崖があり、マイクロブリッジの数がゼロまで下がらない「床」が残る例もあると報告している。

imecが露光量に触れるのは、材料の選び方の話だ。imecによると、高い露光量で使うレジストはマイクロブリッジの崖を押し戻したが、断線の崖と床には効果が見られなかった。光子数の計算から言えば、露光量を上げると光子の数のばらつきは小さくなり、そのぶん露光機のスループットは下がる。

解像度、ラフネス、感度を同時に満たしにくい関係はRLSトレードオフと呼ばれる。東京応化工業と日立製作所は2006年の発表資料で、高解像度・高感度・低LERの3つを同時に満たすのは原理的に難しいとした6。imecはRLSに確率的な不良を加えた4つでレジストを評価し、MORは薄い膜でも低い露光量でLERと欠陥が良い7と示している。

用語中身測るもの
CAR(化学増幅型レジスト)光酸発生剤と酸の拡散で反応を増幅する樹脂系露光量、酸の拡散長
MOR(金属酸化物レジスト)スズ酸化物の核を持つ有機金属クラスター系EUVの吸収率、狙いの寸法に必要な露光量
ドライレジスト気相で成膜する真空プロセス系膜厚の均一性、欠陥密度
LER / LWR線の縁の凹凸(LER)と線幅の凹凸(LWR)SEM画像から求める3σ3\sigma
LCDU露光野内の局所的な寸法ばらつきコンタクト径の分布
確率的欠陥断線、ブリッジ、コンタクトの欠損と融合大面積の電子ビーム検査による欠陥密度

Lam Researchは、気相成膜のドライレジストで、露光量と欠陥のトレードオフを越えて28 nmピッチの配線層を直接描けた8と発表した。材料ごとの比較はHigh-NA EUVレジスト比較にある。

露光量はそのままスループットに跳ね返る

Section titled “露光量はそのままスループットに跳ね返る”

ASMLは製品ページで、スループットを必ず露光量と組にして示す。0.33 NAのNXE:3800Eは30 mJ/cm²で毎時220枚以上9、0.55 NAのEXE:5200Bは50 mJ/cm²で毎時175枚以上だ10。露光量の前提が違うので、2つの数字を並べても処理能力の差にはならない。High-NA機のスループットを同じ露光量でどう読むかは、High-NA機の毎時110枚と0.33 NA機の220枚は露光量が違うで計算している。

Reutersの報道によれば、ASMLは2026年2月、現行の約600 Wの光源で毎時220枚のところを、1,000 Wの光源で2030年までに毎時330枚へ上げる11と説明した。これらの数字から、露光量を下げる以外に処理枚数を上げる手として、光源の出力を上げる方法がある。

光源の光の大半は、反射だけの光学系で失われる

Section titled “光源の光の大半は、反射だけの光学系で失われる”

13.5 nmの光を通す材料はない。ZEISSによると、EUVは空気にもガラスにも吸収されるため、光学系を鏡だけで組み、真空中で動かしている12。鏡は、モリブデンとシリコンを交互に重ねた多層膜だ。ZEISSは、1層では1%ほどしか反射しない膜を最大100層重ね、光の最大70%を使えるようにしている13と説明する。投影光学系は鏡6枚でできている。

反射率0.7の鏡で7回反射すると、0.77≒0.080.7^7 \fallingdotseq 0.08 で、ウェーハに届く光はマスクに入った光の約8%になる(図1)。その手前にも集光ミラーと照明系の鏡がある。光源から先の損失の積み上げは、反射率70%なら、EUVの光はマスクと鏡の7回の反射で9割以上を失うで鏡ごとにたどっている。

図1反射のたびに減る光
集光ミラー プラズマ 中間集光点 照明系の鏡 マスク 投影光学系の鏡6枚 ウェーハ 100% 70% 49% 34% 24% 17% 12% 約8% 残る光の割合 マスクに入る光を100% 反射1回で約3割減る
マスクと投影光学系の鏡6枚で計7回反射し、そのたびに約3割を失うため、ウェーハに届く光はマスクに入った光の約8%になる。

光源は、この鏡に合わせて選ばれている。ARCNLのレビュー論文によると、多層膜の光学系が反射できるのは13.5 nmを中心とする幅2%の帯域だけで、この帯域への変換効率はスズのプラズマがキセノンやリチウムを大きく上回る14。ASMLの光源は、高速で飛ぶスズの液滴にCO2レーザーから2回のパルスを当て、これを毎秒最大50,000回繰り返す15。TRUMPFは、このドライブレーザーを、液滴を円盤状に広げるプリパルスとプラズマにするメインパルスの2パルス方式として説明している16。

反射型マスクは、斜めの光で影を作る

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マスクも鏡だ。低熱膨張ガラスの基板にMo/Si多層膜を重ね、その上の吸収体でパターンを描く。光を垂直に当てると入射光と反射光が重なるため、ZEISSとASMLの2015年の資料では17、主光線をマスクの法線から6度傾けている。

図2反射型マスクと斜めの入射
入射光 法線 反射光 6° 影 反射光の一部が欠ける 60〜70 nm 吸収体(Ta系) キャッピング層(Ru) Mo/Si多層膜(数十対) 低熱膨張ガラス基板 裏面導電膜
光が法線から6度傾いて入るため、高さ60〜70 nmの吸収体は入射側に影を作り、反射側では光の一部を側壁で削る。

斜めに当てると、吸収体の高さが像に影響する。imecは、Ta系吸収体の厚みを典型的に60〜70 nmとし、このマスク3D効果が像の明暗の境目の鋭さ(NILS)を下げる18と説明する。6度の傾きでも、高さ70 nmの吸収体が作る影の幅は、70 nm ×tan⁡6∘\times \tan 6^\circ から約7 nmと計算できる。

マスクを異物から守る膜(ペリクル)も光子を奪う。ASMLは、どんな材料も13.5 nmを完全には通さず、光路に置いたものは光子を失わせて生産性を下げる19と書く。マスクの欠陥は露光と同じ13.5 nmの光で探す。その検査装置の役割はLasertec ACTIS A200HiTの記事、High-NAに特有のマスクの制約はHigh-NA EUVのマスク・ペリクル・スティッチングにある。

High-NAは像のコントラストを上げて、欠陥と露光量を減らす

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開口数を0.33から0.55に上げると、解像度は13 nmから8 nmになる。ASMLは、EXE:5000が0.33 NA機より40%高いコントラストを持ち、欠陥を減らす2と説明する。ASMLは同じページで、コントラストが高いので露光量を減らせるとしている。

項目0.33 NA0.55 NA出典
解像度13 nm8 nmASML NXE:3800E / EXE:5000
倍率4倍xx方向4倍、yy方向8倍imec
露光野26 × 33 mm26 × 16.5 mmZEISS 2012 / ZEISS・ASML 2015
焦点深度基準2〜3分の1imec

レイリーの式 CD=k1λNA\mathrm{CD} = \frac{k_1 \lambda}{\mathrm{NA}} に、ASMLが示す13 nm(0.33 NA)と8 nm(0.55 NA)を当てはめると、k1k_1はどちらも約0.32になる。Micromachinesの論文20がこの式と焦点深度の式をまとめている。High-NAの量産で光子以外に効く条件はHigh-NA EUVの量産ボトルネックにある。

露光工程の全体像は露光とリソグラフィの記事に、EUVの職種と装置名を含む求人はEUVを含む求人の一覧にある。

書籍では、Harry J. Levinson『Extreme Ultraviolet Lithography』第2版(SPIE Press、2025年、ISBN 9781510692534)が、光源、露光機、マスク、レジスト、計算リソグラフィ、工程管理、計測、コストを1冊にまとめている。

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