EUVマスク検査、ACTISを3倍速でファブへCOOの高さを解消へ、Lasertec
LasertecのACTIS A200HiTは、露光と同じ13.5 nmの光でEUVマスクの欠陥を探す検査装置で、2019年に出たACTIS A150の3倍の検査速度1を持つ。アクティニック検査とは、露光と同じ波長の光でマスクを調べる検査のことだ。A200HiTの用途はウェーハ工場(ファブ)での受け入れ検査と定期検査に絞られている。Lasertecの説明では、これまでファブはACTISを一部の検査にしか使わず、その理由はスループットの低さによるCOO(装置の保有コスト)の高さだった。同社の説明を読む限り、遅さは露光機の待ち時間としてではなく、COOの高さとしてファブでのACTISの利用範囲を狭めてきた。
ファブでマスクを検査し直す方法は、アクティニック検査だけではない。KLAは、193 nmのDUV光でマスクを直接見る検査と、ウェーハに転写した像を調べるプリントチェックを組み合わせる方式2を売っている。Lasertecは、プリントチェックでは見逃しが必ず出ると主張し、A200HiTによってファブ向けの需要が今後活発になるとみている。
ファブはEUVマスクを受け入れ時と運用中に検査し直す
Section titled “ファブはEUVマスクを受け入れ時と運用中に検査し直す”マスクショップで欠陥がないと確かめたマスクでも、ファブで使ううちに欠陥が増えうる。KLAとimecは2017年、EUVでは露光機の真空系という新しい異物の発生源や、マスク上の膜や異物の堆積が3、液浸露光用のマスクにはない検査の課題になると指摘した。そのためファブは、届いたマスクを受け入れ時に検査し、使用中も定期的に検査し直す。この検査し直しを再認定と呼ぶ。KLAは、ファブでのマスクの品質をマスクを直接見る検査とプリントチェックの組み合わせ4で保つと説明する。
ペリクル(マスクを異物から守る膜)を付けると、使える検査の手段がさらに限られる。ペリクルとマスク汚染の関係はEUVペリクルの記事にまとめた。TSMCとLasertecは2024年の共同報告で、EUV光の検査装置でペリクル越しに検査できるようになり、ファブでマスクを使い続けられる期間が延びた5と述べている。
アクティニック検査は、ウェーハに写る欠陥を露光と同じ光で探す
Section titled “アクティニック検査は、ウェーハに写る欠陥を露光と同じ光で探す”EUVマスクは光を通さず、基板に積んだ多層膜で光を反射して像を作る。マスクの材料と構造はフォトマスクの入門で扱っている。マスクの欠陥が問題になるかどうかは、EUV露光でウェーハに写るかどうかで決まる。ウェーハに写る欠陥をプリンタブル欠陥(転写性欠陥)と呼ぶ。Lasertecの発表は、装置名の「Actinic」を、EUVリソグラフィの波長である13.5 nmの極端紫外線を使うこと1と説明している。
A150の開発者の論文によれば、A150はウェーハ上の寸法を10%ずらすと見積もられる欠陥を検出した6。Samsungは2024年、A150で自社のDRAMとロジックのマスクを検査し、EUV光で撮った像の解像度がDUV光の4.7倍になった7と報告した。同じ報告は、193 nmの光ではペリクル越しに検査できないことを、DUV検査の限界に挙げている。
Lasertecは、ファブでACTISの利用が一部にとどまった理由をスループットとする
Section titled “Lasertecは、ファブでACTISの利用が一部にとどまった理由をスループットとする”Lasertecは2025年10月31日の決算説明会で、マスクショップには一通りACTISが入った一方、ファブではまだ部分的にしか使われていない8と述べた。同社によれば、顧客はACTISを使いたいと考えていても、スループットのせいでCOOが高かった。ファブで取られている方法として、同社はACTISでの検査とともにプリントチェックを挙げた。
Lasertecは同じ説明会で、プリントチェックは見逃しが必ず出るうえ、露光機を含む多くの装置と工程を通るので時間もかかると主張した。KLAの側は、プリントチェック装置Ageraを、COOを抑えて再認定の抜き取り頻度を上げられる装置4としてファウンドリーとDRAMの両方に売っている。両社の説明を並べると、ファブの再認定では、1回の検査で拾える欠陥の範囲と、検査の頻度を上げられるコストのどちらを重く見るかで見方が分かれている。
Lasertec自身も、ファブ向けにDUV光の検査装置を売っている。MATRICS X9ULTRA9は193 nmのレーザー光源を使い、ペリクルのないEUVマスクをファブで検査する装置だ。同社は、ペリクルはまず新しいノードで最もクリティカルな層から付き、それ以外の層ではX9によるDUV検査が続くとみている。
A200HiTは光学系を作り直し、価格をA150とA300の間に置いた
Section titled “A200HiTは光学系を作り直し、価格をA150とA300の間に置いた”Lasertecは、3倍の検査速度を光学系の最適化と検査システムの作り直し1によるものとし、ファブで生じうる転写性欠陥を全て検出できる感度を保ったと発表した。2025年10月の説明会では、新しい光学系に合わせて部品交換の頻度を変え、照明系も最適化したので、サービス費も下がると述べた。価格はA150より高く、A300シリーズより低いという8。感度の主張がどの欠陥を対象にし、何で確かめたのかは、A200HiTの感度の記事で掘り下げる。
ACTISの各機種と、ブランクス用のABICS、DUV光のMATRICS、KLAとZEISSの装置がEUVマスク検査のどの段を受け持つかは、EUVマスク検査の方式と供給元の記事で整理した。
Lasertecは、量産向けの受注を2027年以降とみる
Section titled “Lasertecは、量産向けの受注を2027年以降とみる”Lasertecは2025年10〜12月期にA200HiTの1号機を受注した10。2026年4月には、複数台を受注したことなどを理由に、2026年6月期の受注見通しを1,700億〜2,200億円から2,000億〜2,400億円へ引き上げた11。同社の説明では、顧客のマスクを持ち込んだ社内のデモ評価で、スループットは事前に示した値を満たし、転写性欠陥は全て検出できるという評価を受けた12。
2026年8月6日の説明会で、Lasertecは装置を順次顧客のファブへ納めて現地での評価に入り、導入の開始は早くて2027年初めになる13とみていると述べた。最初の評価を待たずに、別のファブやノード向けの初号機の追加注文も受けているという。生産に使われて多くの受注が入るのは2027年以降と同社はみている。
引き合いはロジックが多い。DRAMについて、Lasertecは2025年10月の時点で、まだMATRICSが強いと述べた。2026年8月には、DUV光では検出できないとされる高さのない異物がDRAMのファブでも問題になり始め、問い合わせが来ていると説明した。A200HiTがファブの再認定の主な手段になるかは、顧客ファブでの評価の結果と、2027年にかけての追加受注の台数で判断できる。
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- 1Lasertec:ACTIS A200HiTの発売とACTIS A150との比較(2025年10月)lasertec.co.jp abc
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- 4KLA:マスク検査装置とプリントチェック装置の製品一覧kla.com ab
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- 8レーザーテック:2026年6月期第1四半期決算説明会の書き起こし(2025年10月)ssl4.eir-parts.net ab
- 9Lasertec:MATRICS X9ULTRAの製品ページlasertec.co.jp ↩
- 10レーザーテック:2026年6月期第2四半期決算1on1 FAQ(2026年1月)ssl4.eir-parts.net ↩
- 11レーザーテック:2026年6月期第3四半期決算説明会の書き起こし(2026年4月)ssl4.eir-parts.net ↩
- 12レーザーテック:2026年6月期第2四半期決算説明会の書き起こし(2026年1月)ssl4.eir-parts.net ↩
- 13レーザーテック:2026年6月期通期決算説明会の書き起こし(2026年8月)ssl4.eir-parts.net ↩