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フォトマスクの基本、DUVは透過でEUVは反射|ペリクル往復の透過は81%と計算

レチクル(フォトマスク)とは、回路パターンを露光フィールドごとに繰り返し写す原版を指す。露光装置は原版の像を投影光学系で縮小してウェーハ上のレジストに結ぶ1。同じ原版で全ショットを露光するので、原版の欠け、余分なパターン、位相のずれは、どのショットでも同じ座標に写る。品質を決める主な量は、基板の平坦度、膜の光学特性、パターンの寸法(CD)と位置、欠陥、そしてペリクルの透過率だ。

一方、EUVでは防塵に加えて透過率がペリクルの仕様になる。反射型のEUVマスクでは、光が入射と反射でペリクルを2回通る。ASMLの技術者は、13.5 nmの光を完全に通す材料はなく、光路に置いたものは光子を奪い、顧客の生産性を下げる2と述べている。ASMLは2021年、ペリクルの透過率を90%に改善し、量産での処理量の向上を支えた3と報告した。ASMLの発表は透過率の値だけを示している。これを片道の値とみて2回通る分を計算すると、残る光は81%になる。

原版は基板、ブランク、レチクル、ペリクルの4つの品目に分かれる

Section titled “原版は基板、ブランク、レチクル、ペリクルの4つの品目に分かれる”

SEMI P22は4、規格本文の「フォトマスク」を「レチクル」と読み替えてよいとしている。材料の流れに沿うと、原版は次の4つの品目に分けられる。

品目届いた時点の状態品質を左右する主な量
マスク基板研磨・洗浄したガラス板平坦度、厚さむら、粗さ、熱膨張、内部欠陥
マスクブランク基板上に遮光膜、または反射膜と吸収膜を持つ未描画の板膜厚、光学特性、膜応力、欠陥の座標、裏面の状態
レチクル/フォトマスク回路パターンを形成し、洗浄・検査した原版CD、位置精度、位相、欠陥の転写性
ペリクルフレームに張った薄膜透過率、膜のむら、強度、熱・光・プラズマへの耐性、異物

EUVブランクは、未描画の段階から欠陥の座標を付けてマスクメーカーへ届く。SEMI P48は5、その座標系の基準になるEUVブランク上の基準マークについて、位置、形状、寸法、線幅、許容差を定めている。描画用のレジストは完成前に剥離するので、完成したマスクには残らない。

DUVは透過、EUVは反射で像を作る

Section titled “DUVは透過、EUVは反射で像を作る”

ArFやKrFのDUVマスクは、合成石英6を透過した光を遮光膜や位相シフト膜で制御して像を作る。EUVマスクは、低熱膨張ガラスの上に積んだ多層膜で13.5 nmの光を反射させ、吸収膜で暗い部分を作る。

図1DUV透過型とEUV反射型のマスク断面
DUV透過型 ArF 193 nm 遮光 合成石英基板 遮光膜・位相シフト膜 ペリクル 透過光をウェーハへ EUV反射型 位相欠陥 静電チャック 裏面導電膜 低熱膨張ガラス基板 Mo/Si多層反射膜 約300 nm・40〜50層 Ruキャップ層 吸収膜(TaBN) ペリクル EUV 13.5 nm 反射光をウェーハへ
DUVマスクは合成石英と膜の開口を透過した光で、EUVマスクは多層膜で反射した光で像を作る。EUVでは光がペリクルを入射と反射で2回通る。

この違いで、受入検査の対象と欠陥の意味が変わる。DUVでは透過率、位相、遮光膜パターンを測る。EUVでは表面のパターンに加え、多層膜の内部にあって像の位相を乱す欠陥(位相欠陥)を、露光と同じ波長で探す。露光装置、レジスト、フォーカス、露光量を含む工程全体は露光とリソグラフィにまとめている。

DUVブランクは遮光膜と位相シフト膜で像のコントラストを作る

Section titled “DUVブランクは遮光膜と位相シフト膜で像のコントラストを作る”

信越化学のフォトマスクブランクスは6、合成石英上のCrバイナリ、MoSiを使うOMOG、ハーフトーン位相シフトの各ブランクを製品群に挙げている。バイナリマスクは、遮光部と透明部の透過率の差でコントラストを作る。ハーフトーン型の位相シフトマスクは透過光の振幅に位相差を加えるので、膜厚、組成、透過率、位相角の組み合わせが像のコントラストを左右する。

HOYAは7、EUV向けとDUV向けの両方のマスクブランクスを手がけている。

EUVブランクは約300 nmの多層膜そのものが鏡になる

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imecの解説によると8、現行のEUVマスクの反射膜はSiとMoを40〜50層交互に積んだ厚さ約300 nmの積層で、その上に薄いRuの保護層、さらにパターンを担うTaBNの吸収膜が載る。層の周期が13.5 nmで反射する条件を決めるので、多層膜そのものが光学素子の本体になる。imecは、High-NA向けの吸収膜として、EUVでの屈折率が異なるRuTaやPtMoなどの材料で位相をずらす候補も検討している。

AGCエレクトロニクスは9、低膨張ガラス、超高平坦度研磨、超精密洗浄、低欠陥成膜、微小欠陥検査をEUVブランクの製造項目に挙げる。ブランクの供給元と各社の増産計画はEUVマスクの供給網で扱う。

平坦度の値は、板そのものの形状と、支持のしかたによる変形の和になる。NISTのChuらは2010年、薄い平行平板を密度の高い液体に浮かべて保持力による変形を取り除く測定法10を示し、EUV用のブランクと基板でその効果を確かめた。露光装置側では、SEMI P4011がEUVマスクの取り付け要件を定め、平らな基準面へ押し当てて保持することを前提にしている。そのため、自由状態での形状と、チャックで保持したときの形状は別の値として扱う。

EUVのペリクルは異物を防ぐ膜で、透過率が生産性を左右する

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ペリクルは、フレームを介してマスク面から数mm上に張る薄膜だ8。膜に落ちた異物は焦点から外れるので、ウェーハに写りにくい。ペリクルが受け止める異物の種類と、ペリクルでは防げないマスク表面の劣化はEUVペリクルとマスクの汚れで扱っている。

EUVでは、防塵に加えて透過率と耐熱が仕様になる。ASMLの最新のペリクルは厚さ13 nmの膜で、高真空中で最大500 ℃に耐える2。imecも、ペリクルの吸収をできるだけ小さくすることがEUVの処理量と経済性を保つ条件8だと書いている。

往復の効き方を数字で見る。各社の発表は透過率の値だけを示しているので、ここではその値を片道の透過率とみなし、2乗して往復で残る光を計算する。ASMLの90%なら81%、三井化学がCNTペリクルに掲げる92%以上12なら約85%、imecと三井化学が2023年に示した94%以上13なら約88%になる。光源の出力が同じなら、同じ露光量を得るための照射時間は届く光に反比例して延びる。同じ前提で、90%のペリクルではペリクルなしに比べて照射時間が約1.23倍になる計算だ。処理時間のうち露光量によらない部分もあるので、処理枚数への効き方は露光量と処理枚数の関係に従う。鏡とマスクの反射を含めた光の損失の全体はEUVの鏡と光の損失にまとめた。

ペリクルの供給元と量産設備はHigh-NA EUVを支えるASML以外の供給元にまとめている。

回路は電子線でブランクに描き、エッチングで膜へ移す

Section titled “回路は電子線でブランクに描き、エッチングで膜へ移す”

Tekscend Photomaskは14、マスクブランクに電子線で回路パターンを描き、エッチング、レジスト剥離、洗浄、測定、検査を経てフォトマスクを完成させる流れを示している。

図2マスク製造の工程順
① データ準備 ショット分割 ② 塗布・電子線描画 電子線 レジスト 遮光・吸収膜 基板 ③ 現像・エッチング ④ レジスト剥離・洗浄 ⑤ 検査・修復 修復 余剰欠陥 ⑥ ペリクル装着 ペリクル フレーム
電子線で描いたレジスト像をエッチングで膜へ移し、レジストを剥がしてから検査・修復とペリクル装着へ進む。

DNPは2020年、26万本の電子線を照射するマルチビーム描画装置で5 nm世代相当のEUVマスクの製造プロセスを開発した15。描画装置の供給元と、マスクメーカー各社が発表した描画時間はEUVマスクの供給網で扱う。

検査と修復は、対象ごとに装置が分かれる

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欠陥の分類と寸法の測り方はSEMI P22が4、品質認定の用語はSEMI P4316が定めている。

レーザーテックは17、EUVのパターン付きマスク、ブランク、ペリクル、裏面、DUVマスクの検査装置を別系統の製品として並べている。ブランク用のABICS E12018は13.5 nmの光で多層膜の中の位相欠陥を探す。パターン付きマスク用のACTIS A15019は露光と同じ波長でウェーハに写る欠陥を探し、ペリクル越しにも検査する。PELMISは20、ペリクルを付けたEUVマスクで、異物がペリクルの表側にあるか裏側にあるかを自動で分ける。露光と同じ波長で見る検査の仕組みはLasertec ACTIS A200HiTの装置研究で詳しく述べている。

修復も欠陥の種類で装置が分かれる。ZEISSは21、集束電子線と前駆体ガスで余分な膜を除き、欠けた部分を補うMeRiTシリーズと、異物を除くPRT 100-Mを別製品にしている。修復が済んだかどうかは、修復後に測ったCD、位相、反射率で確かめる。Berkeley Lab CXROは22、EUVマスクをEUVの波長で観察し、欠陥の像と転写性を調べている。

High-NAでは縦横で縮小倍率が違い、マスクの仕様が方向別になる

Section titled “High-NAでは縦横で縮小倍率が違い、マスクの仕様が方向別になる”

High-NA EUVでは、NAを0.33から0.55へ上げるために鏡を大きくし、その分だけマスクへの入射角が大きくなる。ASMLは、反射率の低下を避けながら従来の大きさのレチクルを使い続けるために、投影光学系がパターンを一方向に4倍、直交方向に8倍で縮小する23構成をとった。その代わりに露光フィールドはNXE機の半分になる。TWINSCAN EXE:5000は24、NA 0.55で8 nmの解像度を掲げる。

倍率が方向で違うので、マスク誤差係数(MEF)を1とみなして計算すると、マスク上の同じ1 nmの寸法誤差は、ウェーハ上で4倍の方向なら0.25 nm、8倍の方向なら0.125 nmになる。この非対称がマスクのCD仕様、位置仕様、描画の規則をどう組み替えるかはHigh-NAのアナモルフィックマスクの仕様で扱う。半分の露光フィールドをつなぐ露光とペリクルの加速度はHigh-NAのマスク・ペリクル・スティッチングにまとめている。

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