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High-NAマスクは4倍の方向が厳しい|ASMLが2016年の発表で指摘

アナモルフィックマスクとは、High-NA EUVの露光機向けに、スリット方向(x)を4倍、走査方向(y)を8倍に拡大して描くマスクを指す。倍率が方向で違うので、マスク誤差係数(MEF)を1とみなして計算すると、マスク上の同じ1 nmの寸法誤差は、ウェーハ上でx方向なら0.25 nm、y方向なら0.125 nmになる。ASMLの技術者は2016年のEUVL国際シンポジウムで、マスクのCD、位置、欠陥の要件は4倍の方向が左右する(will drive)1と発表した。

しかし8倍の方向にも別の効き方がある。ASML傘下のBrionの技術者が2017年に出した解析では、マスクの描画規則は8倍の方向で緩み、そのぶん補正や補助パターンを置く余地が増える。一方で斜めのパターンは角度が変わり、マスク上で測る寸法が2つから3つに増える。どちらもAdvanced Optical Technologiesの論文2が示した、ASML側のシミュレーションと幾何の解析に基づく結論だ。

縦横で倍率を変えたのは、マスクの大きさを保ったまま入射角を抑えるため

Section titled “縦横で倍率を変えたのは、マスクの大きさを保ったまま入射角を抑えるため”

High-NA EUVは、NAを0.33から0.55へ上げるために鏡を大きくした。ASMLによれば、そのままではマスクへの入射角が大きくなり、マスクが光を反射しにくくなる3。全方向を8倍にすれば入射角は抑えられるが、マスクを大きくする必要がある。そこでASMLは、一方向を4倍、もう一方向を8倍で縮小する光学系をとり、従来の大きさのレチクルを残した。

imecは、この光学系の倍率をx方向に4倍、走査方向のyに8倍4と説明する。6インチのマスクは保たれるが、設計は一方向に引き伸ばされる。8倍の方向で写せる範囲は半分になり、露光フィールドもNXE機の半分になる。半分の露光フィールドをつなぐ露光はHigh-NAのマスク・ペリクル・スティッチングで扱っている。マスクの材料と構造の基本はフォトマスク・レチクルの入門にまとめた。

High-NAのアナモルフィックマスクで、ウェーハ上の正方形がマスク上ではx方向に4倍、y方向に8倍で縦長の長方形になり、45度の線は約63.4度になる。MEFを1とみなすと、マスク上の1 nmの寸法誤差は、ウェーハ上でx方向なら0.25 nm、y方向なら0.125 nmになる。
MEFを1とみなして計算すると、マスク上の同じ1 nmの誤差は、4倍のx方向ではウェーハ上で0.25 nm、8倍のy方向では0.125 nmになる。斜めの線はマスク上で角度が変わる。

MEFを1とみなすと、同じ寸法誤差でもウェーハ上の誤差は方向で2倍違う

Section titled “MEFを1とみなすと、同じ寸法誤差でもウェーハ上の誤差は方向で2倍違う”

マスク誤差係数(MEF)は、マスク上の寸法誤差がウェーハ上の寸法誤差を何倍に広げるかを表す量だ。従来の定義は、マスク上の誤差を縮小倍率で割ってウェーハの寸法に換算してから比べる。

ASMLの2016年の発表は、この定義がアナモルフィック光学系では扱いにくいと指摘した1。同じMEFでも、xとyで許されるマスク上の寸法誤差が違ってしまうからだ。そこで発表は、マスク上の1 nmの寸法誤差がウェーハ上で何nmの誤差になるかを表す新しい係数MEFを定義した。2次元のパターンでは、x方向のマスク誤差がy方向のウェーハ寸法にも効くので、MEFはxとyの組み合わせで扱う。冒頭の0.25 nmと0.125 nmは、この結合を無視してMEFを1とみなした場合の計算だ。

Hsuらの2017年の論文は、2次元のパターンでは結像方式によらずMEFをテンソルとして扱うべきだとし2、アナモルフィック系では縮小倍率が向きに依存するので、そのテンソルに向きごとの倍率を組み込むと示した。

マスクの要件は4倍の方向が厳しくなる

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ASMLの2016年の発表は、アナモルフィックマスクの帰結として、半分の露光フィールド、y方向に引き伸ばされたパターンに加え、4倍の方向がマスクのCD、位置、欠陥の要件を左右する(will drive)1ことを挙げた。冒頭の計算でも、同じマスク誤差がウェーハ上で大きく写るのは4倍の方向だ。

Hsuらは、描画装置の側から同じ非対称を説明している。描画装置の格子と誤差は方向によらないので、マスク上で同じ大きさの描画誤差が出ても、横向きの線は縦向きの線より描画誤差の影響を受けにくい2。横向きの線の幅は8倍のy方向に並ぶからだ。そのため論文は、光源とマスクを同時に最適化する際に、横向きの線には緩い基準を、縦向きの線には厳しい基準を当て、2つの基準でMEFを最適化することを提案した。

8倍の方向では描画規則が緩み、補助パターンを置く余地が増える

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マスクの描画規則(MRC)は、マスク上で描ける最小の線幅や間隔を決める。Hsuらは、マスク製造の仕様の観点では8倍の方向でMRCが緩む2と書く。8倍の方向では、線と間隔、角と角の距離がマスク上で4倍の方向の2倍になるからだ。

この余裕は、光近接効果補正(OPC)でパターンの寸法を調整する幅と、解像しない大きさの補助パターン(SRAF)を置く場所になる。論文は、y方向に多くの補助パターンを、あるいは幅の広い補助パターンを置けると示した。描画装置の格子は方向によらないので、アナモルフィックのマスクでも描画そのものは従来と変わらない。変わるのは、補正と補助パターンの設計がy方向の余裕を使えることだ。

斜めのパターンは角度が変わり、マスク上で測る寸法が増える

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倍率が方向で違うと、斜めのパターンはマスク上で角度が変わる。Hsuらによれば、ウェーハ上の角度とマスク上の角度はtan(マスク上の角度)=2×tan(ウェーハ上の角度)2の関係になり、45度に傾いた長方形はマスク上で約63.43度になる。

縮小倍率もパターンの向きで4倍から8倍の間を変わる。ウェーハ上の傾いた長方形は2つの寸法で決まるが、マスク上では2つの辺の幅と1本の切断線の3つを測らないと形が決まらない。論文はこのため、設計データからマスクへCDの測定位置を対応づける新しい仕組みと、角度ごとの対応を持つマスク3D効果のライブラリが要ると書いている。

8倍の縮小は、マスクとペリクルにかかる光の密度も下げる

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8倍の縮小は、熱の面では余裕を生む。imecは、High-NA機の8倍の倍率にはペリクルとマスクの位置での光の密度を下げる利点がある4と書いている。一方、半分の露光フィールドで処理量を保つために、ASMLはEXE機のレチクルステージをNXE機の4倍の32 gで加速させた3。imecも、High-NA向けのペリクルには強く増した加速への対応が要ると書く。2つの資料を合わせると、8倍の縮小で光の密度は下がる一方、ペリクルにかかる加速は増える。

マスクの供給元と各社の発表はEUVマスクの供給網で扱っている。

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