フォトレジストの基本と性能指標RLSimecはEUVで不良を4番目の指標に
フォトレジストとは、露光した部分だけ現像液への溶け方が変わる感光膜だ。現像で残った像が一時的な型になり、エッチングやイオン注入はこの型に沿って下地を加工する。性能は、作れる最小の寸法(解像度)、線の縁と線幅の揺らぎ(LER / LWR)、狙いの寸法に必要な露光量(感度)の3つで表し、頭文字からRLSと呼ぶ。EUVのレジストについては、imecがこの3項目に4番目の指標を加えている。
imecは2023年、確率的な不良の重みが増したため、開発の初期段階から不良(failure)を4番目の指標として評価している1と述べた。imecによれば、この指標は確率的なふるまいで限られるプロセスウィンドウの寸法を表す。小さいCDの側ではマイクロブリッジやコンタクトの欠落が、大きいCDの側では断線やコンタクトの合体が急に増えるので、使えるCDは二つの崖の間に残る窓に限られる。この窓の幅は現像の条件でも動く。東京エレクトロン(TEL)が自社の現像法ESPERTを試した2023年の報告では、1種類の金属酸化物レジストとピッチ36 nmのコンタクトホールで、不良の出ないCDの幅が従来の現像の2 nmから6 nmに広がった2。
レジストは露光で溶け方が変わり、残った像がエッチングの型になる
Section titled “レジストは露光で溶け方が変わり、残った像がエッチングの型になる”JSRが示す電子材料の工程では3、スピン塗布、マスク露光、現像でレジストパターンを作り、その像をガイドにして下地をエッチングする。ポジ型は露光部を現像で除き、ネガ型は露光部を架橋させてマスク像にする3。どちらの型でも、露光が変えるのはレジストの化学状態で、下地の形を変えるのはその後のエッチングだ。工程全体の流れは露光とリソグラフィで扱っている。
化学増幅型レジスト(CAR)では、露光で光酸発生剤(PAG)が酸を生じ、露光後ベーク(PEB)の間に酸が拡散して周りのポリマーの溶け方を切り替える。NIST・Sandia・IBMのモデルCARの研究は4、スピン塗布、塗布後ベーク(PAB)、UV露光、PEB、現像、反応性イオンエッチングを1つの試料で順に行い、現像後の線の縁付近の表面組成がPEB時間に依存すると報告した。NISTの別の研究は5、反応の先端の位置を決める要因に、光で生じた酸の拡散、酸が触媒として働く距離、ポリマーの組成、添加剤、温度、時間を挙げている。そのため、配合が同じでもPEBの温度や時間が違う試料は、反応の先端の位置が違う試料として比べることになる。
性能はRLSの3項目で表し、3項目は互いに引き合う
Section titled “性能はRLSの3項目で表し、3項目は互いに引き合う”解像度は1回の露光で作れる最小の線やホール、感度は狙いの寸法を得るのに要るドーズ(露光量)だ。LERとLWRは別の量で、SEMI P47は、最良近似直線からの線の縁の位置のずれをLER、局所的な線幅の変動をLWRと定め、評価長とサンプリング間隔を規格の範囲に挙げている6。SEMI P47-0307(0513再承認)は、現在Inactiveの状態にある。
3項目は同時には良くならない。NISTの酸増殖剤の研究は7、この三者のトレードオフをEUVで特に難しい課題とし、露光と酸の発生の確率的なふるまいを含めたシミュレーションで調べている。ドーズはその中心にある。NISTによれば8、工場はスループットを上げてコストを下げるためにドーズを下げたいが、ドーズを下げるとフォトンショットノイズとレジストの露光不足の危険が増し、どちらもLERを増やして歩留まりを下げる。
材料だけでLERを下げることにも限りがある。NISTの材料限界の研究は9、光酸の大きさ、共重合体の組成、アミン系のクエンチャーを変えて脱保護の界面を測り、理想的な像のコントラストと狭い反応拡散の幅を仮定してもLERに下限が残ると報告した。
LERの数値を材料どうしで比べるには、測り方をそろえる必要がある。NISTのLER・LWR計測のレビューによると10、RMS粗さは測る線の長さとサンプリング間隔で変わり、顕微鏡像のノイズはランダムな誤差と系統的な偏りの両方を生む。そのため、測る長さやサンプリング間隔が違うRMSの値どうしでは、差の一部が測り方から来る。
EUVでは平均CDが合っていても、確率的な不良が歩留まりを左右する
Section titled “EUVでは平均CDが合っていても、確率的な不良が歩留まりを左右する”imecは、確率的な印刷不良を、ランダムで再現性がなく孤立した欠陥とし、マイクロブリッジ、局所的な断線、コンタクトの欠落と合体を挙げている11。原因は2つある。波長13.5 nmでは同じエネルギーに含まれるフォトンが少ないことによるショットノイズと、物質の分子的な性質と反応の確率的なふるまいだ。フォトンの数の計算はEUVリソグラフィの光子と確率的欠陥で扱っている。
同じimecの記事によると、密なパターンでは、スペースやコンタクトのCDが小さい側でマイクロブリッジとコンタクトの欠落がほぼ指数的に増え、大きい側では断線とコンタクトの合体の確率が急に増える。二つの崖の間には不良の出ない窓があると期待されるが、imecはマイクロブリッジの数がゼロまで下がらず一定の「床」にとどまる例も示した。ドーズを上げたレジストはマイクロブリッジの崖を遠ざけたが、断線の崖と床には効果が見られなかったという。
不良はCDの揺らぎとは別に数える必要がある。不良の箇所では測れるCDがないことが多いからだ。imecのDe Bisschopは2017年、SEM像から不良を検出して数えるNOK(not OK)という指標を作り、CDの揺らぎの指標を補うものと位置付けた12。imecは2018年の時点で、ピッチ32 nmの密な線とピッチ36 nmのコンタクトホールについて、スペースやコンタクトが小さいほどマイクロブリッジとコンタクトの欠落が増え、ドーズを上げるとこうした不良が大きく減る13と報告している。
不良を4番目の指標にすると、CDの中心値は二つの崖の間で決まる
Section titled “不良を4番目の指標にすると、CDの中心値は二つの崖の間で決まる”imecは4番目の指標を、確率的なふるまいが決めるプロセスウィンドウの寸法1と説明している。この定義から導くと、平均CDとLERがそろった2つの材料でも、崖からどれだけ離れているかは別に測ることになる。CDの中心値は、小さい側の崖と大きい側の崖からそれぞれどれだけ離れられるかで決まる。
TELの研究者らによる2023年の報告は、0.33 NAのEUV露光機でピッチ36 nmの六方配列のコンタクトホールを作り、自社の現像法ESPERTで2種類の金属酸化物レジストの露光余裕度と不良の出ない幅が、現像後とエッチング後の両方で広がった2と述べる。基準のレジストでは、従来の現像と比べて露光余裕度が16.0%から49.1%に、不良の出ないCDの幅が2 nmから6 nmに、不良の出ないドーズの範囲が13.3%から72.2%に広がった。現像の改良でホールの中の残渣を取り除き、コンタクトの欠落の側の余裕を広げた結果だという。
この報告は1種類の材料と1つのパターンの結果で、その範囲では、不良の出ないCDの幅が配合を変えずに現像の条件だけで3倍(6÷2から計算)になった。imecが4番目の指標とする窓の寸法が、同じ材料でも工程の条件で変わる例になる。
不良率を測る手段にも制約がある。imecの2019年の記事によると、CD-SEMはレジストのウェーハにもエッチング後のウェーハにも、どの種類の不良にも使えるが、見られる面積が小さい。ウェーハ全体を走査できる光学式検査について、imecは1 cm²あたり0.01個という検出の目標を挙げている。
レジストの上下の膜と現像液も、同じ評価の一部になる
Section titled “レジストの上下の膜と現像液も、同じ評価の一部になる”レジストの性能は、上下に入る膜の条件と組で決まる。Brewer Scienceは、下地からの反射が定在波と反射ノッチングを生み、パターンの忠実度を損なう14と説明する。同社の説明では、上層反射防止膜(TARC)は屈折率と膜厚による干渉で反射を下げ、下層反射防止膜(BARC)はこれに光の吸収を加えて下地からの反射を抑える15。
膜厚も条件になる。imecは、High-NAで8 nm幅の線を作る場合、アスペクト比2:1を保つには20 nmより薄いレジスト膜が要り、厚い膜ではアスペクト比が上がって線が倒れる危険が増すと述べている16。同じ記事は、下層膜を替えるとSEM像のコントラストが良くなる場合があるが、計測のために下層膜を替えるとパターン転写に影響するとも述べている。
現像は、レジスト像の寸法と粗さが最後に決まる工程だ。東京応化工業は、ポジ型フォトレジストの現像液に水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)を使い、濃度は一般に2.38%で、リンス液には純水を使う17と説明する。NISTの研究は18、TMAH水溶液の中でレジスト薄膜がイオン形へ移ることが、膜の膨潤と溶解の両方の原因だと述べている。塗布と現像の装置が欠陥をどう抑えるかはTEL LITHIUS Pro DICEの装置記事にある。
材料メーカーの製品区分も、この組を反映している。JSRは多層材料として下層膜とトップコートを挙げ3、信越化学はスピンオンの中間層と下層ハードマスクを19、東京応化工業は密着強化材、現像液・リンス液、シンナー、剥離液を20レジストと並べて提供している。
現像後とエッチング後の値は、別の状態として記録する
Section titled “現像後とエッチング後の値は、別の状態として記録する”現像後に測るCD(ADI)とエッチング後に測るCD(AEI)は、別の物を測っている。ADIはレジストの像、AEIは下地へ写した形だ。エッチングは形を写すだけでなく粗さも変える。imecは2018年、ピッチ32 nmの線で、粗さを平滑化するエッチングの後処理により、エッチング後の粗さが従来のエッチングに比べて約20〜30%下がった13と報告している。
ADIとAEIのどちらで値が動いたかで、先に調べる条件を分けられる。レジストのロットを替えてCDがずれたときの切り分けの手順は、レジスト変更でCDが動いたときのADIとAEIの切り分けで詳しく扱う。エッチングの側の条件はエッチングにまとめている。
材料は露光世代で分かれ、EUVには金属酸化物とドライレジストが加わった
Section titled “材料は露光世代で分かれ、EUVには金属酸化物とドライレジストが加わった”露光世代は、材料の候補を絞る入口になる。東京応化工業の製品一覧20はg線・i線、KrF、ArF、EUVのフォトレジストを並べ、富士フイルム21はブロードバンド、g線、i線、248 nm、193 nmのドライと液浸、電子線、EUVで材料系列を分けている。JSR3はEUVからg線まで、Qnity Electronics22は436 nmから13.5 nmまでの製品群を挙げる。住友化学23は感光性樹脂「スミレジスト」を半導体向けに供給している。メーカーごとのシェアはフォトレジストのメーカーと世界シェアで比べている。
EUVでは、CARに加えて金属酸化物レジスト(MOR)とドライレジストが出てきた。Inpria(JSRグループ)は自社のMORについて、EUVの吸収が多いのでフォトンショットノイズが下がり、CARに特有の酸拡散の機構をなくしたことで解像度が上がる24と説明する。Lam Researchはドライレジストについて、原料の使用量が従来の液体レジストの5分の1から10分の1になるとしている25。MORでは酸拡散の代わりに露光後の雰囲気や湿度が新しい管理項目になり、その中身は金属酸化物レジストの湿度と雰囲気の管理で扱う。High-NAでの材料ごとの実証結果はHigh-NA EUVレジスト比較にある。
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- 1imec:パターニングの課題と革新、RLSに不良を加える評価(2023年3月)imec-int.com ab
- 2
- 3JSR:電子材料事業の工程と製品jsr.co.jp abcd
- 4NIST・Sandia・IBM:フォトレジスト膜の表面組成と脱保護のX線吸収分光(2005年)tsapps.nist.gov ↩
- 5NIST:化学増幅型レジストの脱保護反応フロントの変化nist.gov ↩
- 6SEMI:P47 LERとLWRの評価方法(規格)store-us.semi.org ↩
- 7NIST:酸増殖剤がレジストの確率的挙動に与える影響のモデル化nist.gov ↩
- 8NIST:次世代EUVレジストのための計測プロジェクトnist.gov ↩
- 9NIST:化学増幅型レジストの材料限界nist.gov ↩
- 10NIST:LERとLWRの計測の課題(レビュー)nist.gov ↩
- 11imec:EUVリソグラフィの確率的な崖(2019年7月)imec-int.com ↩
- 12
- 13imec:EUV単一露光の限界、ピッチ32 nmの線と36 nmのコンタクト(2018年3月)imec-int.com ab
- 14Brewer Science:反射防止膜(ARC)brewerscience.com ↩
- 15Brewer Science:TARCとBARCの比較brewerscience.com ↩
- 16imec:High-NA EUVリソグラフィ、薄膜レジストと下層膜(記事)imec-int.com ↩
- 17東京応化工業:現像液・リンス液tok-pr.com ↩
- 18NIST:現像液中のレジスト薄膜の界面構造nist.gov ↩
- 19信越化学:フォトレジストと下層材料shinetsu.co.jp ↩
- 20東京応化工業:半導体前工程の製品一覧tok.co.jp ab
- 21富士フイルム:フォトレジスト製品fujifilm.com ↩
- 22Qnity Electronics:リソグラフィ用フォトレジストqnityelectronics.com ↩
- 23住友化学:IT関連化学品sumitomo-chem.co.jp ↩
- 24Inpria:金属酸化物フォトレジストの技術inpria.com ↩
- 25Lam Research:EUVドライレジスト技術の発表newsroom.lamresearch.com ↩