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フォトレジストのメーカーと世界シェア|EUVでも首位は日本勢、崩れるなら中国のKrF

フォトレジストとは、ウェーハに塗って光を当て、回路の形を写し取る感光性の薬液だ。SEMIの集計を基にTOK(東京応化工業)が算出した半導体用フォトレジストの世界市場は、2025年に30億8,100万ドル(前年比12.7%増)だった1。メーカーは東京応化工業、JSR、信越化学工業、住友化学、富士フイルムの日本勢が中心で、首位のTOKは、調査会社のデータを基にした自社の算出で世界シェア26.1%1を占める。

焦点は、最先端のEUV(極端紫外線)露光で日本勢の優位が続くかだ。2030年ごろまで続くとSemiMapは見る。TOKは2025年にEUV用で2位から首位へ上がった1。JSRは金属酸化物レジストのInpriaを傘下に持ち、ドライレジストのLam Researchとも非独占の相互ライセンスを結んだ。一方、日本勢のシェアが削られるとすれば、先端品より先に、中国の工場が使うKrFなどの成熟品からだ。

フォトレジストのメーカーは日本の5社が中心で、海外勢は品種ごとに入り込む

Section titled “フォトレジストのメーカーは日本の5社が中心で、海外勢は品種ごとに入り込む”

レジストの品種は、露光に使う光の波長で分かれる。波長の長い順にg線・i線、KrF、ArF(液浸を含む)、EUVで、短いほど細かい回路を描ける。仕組みはフォトレジストの用語解説にまとめている。主なメーカーと品種、規模は次のとおりだ。

会社国主な品種シェア・規模(年)
東京応化工業日本EUV、ArF、KrF、g線・i線TOKの算出で世界シェア26.1%、首位1(2025年)
JSR日本フォトレジスト、多層材料、EUV用金属酸化物レジスト(Inpria)半導体材料を含む事業部門の売上2,157億円2(2025年3月期)
信越化学工業日本KrF、ArF、EUV、多層膜材料群馬県の第4拠点に第1期約830億円3(2024年発表)
住友化学日本ArF液浸、EUV、子会社の東友ファインケムでi線・KrF2021年の発表で、先端品の生産能力を2024年度に2019年度の約2.5倍にする計画4
富士フイルム日本EUV、ArF、KrFPFASフリーのネガ型ArF液浸レジストを2025年7月に開発発表5
Qnity米国g線からEUVまで6、ArF系はEpic7DuPontの電子材料事業で、2025年11月1日の分離を予定6と発表
Dongjin Semichem韓国KrF(3D NAND用の厚膜)Samsungの3D NAND用厚膜KrFで唯一の供給元8(2022年)
Lam Research米国EUV用ドライレジストの装置と工程(Aether)メモリー大手の先端DRAMで量産工程に採用9(2025年)

海外勢は、特定の顧客や品種に絞って食い込んでいる。日本勢は5社とも複数の光源をそろえ、最先端のEUVまで手掛ける。住友化学は液浸ArFレジストで世界的に高いシェアを持つ4と説明する。

世界シェア首位は東京応化、光源別で4位はArFだけ

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TOKの統合レポートは、富士キメラ総研の調査を基に、光源別のシェアを出荷数量で示している。2025年はEUV用が29.3%、KrF用が33.3%、g線・i線用が25.3%で、いずれも世界1位だった。ArF用だけは14.4%で4位にとどまる。

東京応化工業の光源別の世界シェアを2024年と2025年の横棒で比べた図。EUVは2024年28.0%で2位、2025年29.3%で1位。ArFは15.9%で4位、14.4%で4位。KrFは32.4%で1位、33.3%で1位。g線・i線は22.7%で1位、25.3%で1位。
東京応化はどの品種で強いのか。EUV、KrF、g線・i線で首位に立ち、2025年にEUVでも首位に上がった。ArFでは上に3社がいる。

順位が変わったのはEUVだけだ。2024年のTOKはEUV用で28.0%の2位だったが10、2025年に首位を取った。TOKは決算説明会で、シェア5割超を持つ顧客向けのEUV用の売上が2024年から2025年に倍増した11と述べている。HBM(広帯域メモリー)向けのDRAMでも、TOKのレジストが量産に入った。シェアの伸び幅が最も大きかったのはg線・i線用で、22.7%から25.3%へ2.6ポイント上がった。

伸び方の差も大きい。富士キメラ総研の予測では1、2025年から2031年の市場の年率成長はEUV用が28.2%で、ArF用の7.4%、KrF用の6.1%、g線・i線用の3.8%を大きく上回る。

日本勢が強いのは、顧客の工程に合わせて1品ずつ作り込むから

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TOKは、レジストを顧客の用途と製造工程ごとにオーダーメイド品として開発し、擦り合わせを繰り返して性能の両立を図る1と説明する。同じ統合レポートは、顧客の開発ロードマップに合わせた金属不純物の検出感度の向上を課題に挙げている。光源ごと、顧客ごとに配合を作り直し、不純物を極微量まで管理する技術が参入の壁になる。

この壁は、先に入り込んだ会社を守る。Samsungは3D NAND用の厚膜KrFレジストで、TOKを含む日本の4社以上に供給を打診したが、要求の膜厚に届いた社はゼロで、Dongjin Semichemが唯一の供給元のまま残った8。Dongjinは2013年より前からSamsungと共同で開発し、Samsungは工程を全面的に開示していた。日本勢の優位を支えるのは、顧客と共同開発してきた年数だ。顧客が地元のメーカーを育てると決めれば、同じ仕組みで日本勢が締め出される。

JSRは政府系ファンドの傘下に入り、業界再編の核になった

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JSRは2023年6月、産業革新投資機構(JIC)の子会社JICキャピタルによる買収を受け入れると発表した。会見でJSRは、半導体材料の業界再編を進める推進力を得るため12にJICを選んだと語った。公開買付けは1株4,350円13で2024年3月に始まり、4月に成立した。JSR株は2024年6月25日に上場廃止となった14。

非上場化の前後で、JSRはEUV向けの布石を打ってきた。2021年10月には、EUV用の金属酸化物レジストを開発する米Inpriaを完全子会社にした15。2025年3月期には、金属酸化物レジストの国内外の開発・生産体制の拡充を決め、M&Aで成膜用のプリカーサー事業を加えた2。同じ期、ライフサイエンス事業は1,898億円のコア営業損失を出した。半導体材料の比重はさらに上がる。

EUVレジストのメーカー争いは、塗る材料と装置で作る膜の競争になった

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EUVでは、従来の液状レジストに加えて、2つの新しい方式が出てきた。液を塗る金属酸化物レジストと、装置でウェーハに膜を付けるドライレジストだ。ドライレジストは1社のDRAMで量産工程に採用され、金属酸化物レジストではJSRが開発と生産の拡充を決めた段階にある。材料ごとの性能の違いはHigh-NA EUVレジスト比較で比べている。

EUVレジストの3方式と主な供給元を3列で比べた図。従来型の液状レジストは東京応化工業、信越化学工業、住友化学、富士フイルム。金属酸化物はJSR傘下のInpriaが供給し、東京応化工業はポジ型を評価中。ドライレジストはLam ResearchのAetherで、JSRとInpriaはLamと非独占の相互ライセンスを結んだ。
EUVレジストの方式ごとに、誰が供給しているか。従来型は日本の4社、金属酸化物はJSR傘下のInpria、ドライはLamが握り、JSRはLamと相互ライセンスを結んだ。

Lam ResearchのAetherは2025年1月、メモリー大手の最先端DRAMの量産工程に選ばれた9。同じ年の9月、LamはJSR・Inpriaと非独占の相互ライセンスと共同開発の契約を結んだ16。両社は、Inpriaのレジストと膜をLamのエッチングやドライレジストの成膜と組み合わせる開発を進める。ドライレジストが広がっても、JSRは材料の供給元として関われるとSemiMapは見る。

金属酸化物レジストでは、TOKが後を追う。TOKによれば、競合の金属酸化物レジストはネガ型で配線の線と隙間に使われ、TOKのものはポジ型でコンタクトホールに使う。TOKのポジ型はDRAMメーカーの試験で良い結果を得ており、1年以内の採用を目指す11。住友化学も、EUVとArFのレジストの製造技術と品質評価を集める新棟を2027年度末に完成させる17計画で、独自の有機分子レジストの開発を急ぐ。新しい2方式で供給の足場を持つ日本勢はJSRだけで、TOKのポジ型の採用が決まるかが次の分かれ目になる。

2030年まで日本勢の首位は続き、崩れるなら成熟品の中国から

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2030年ごろまで、EUVレジストの首位は日本勢が守るとSemiMapは見る。根拠は、TOKが2025年にEUV用の首位を取り、次世代ノード向けの採用選定が最終段階に入り、前の世代より高いシェアを見込む11と述べていることだ。High-NA EUVで金属酸化物やドライが広がっても、LamとJSR・Inpriaの契約はHigh-NA EUVのパターニングと金属酸化物レジストの共同開発16を含み、日本の材料メーカーは当事者に残る。

成熟品のシェアは、中国から削られるとSemiMapは見る。根拠はTOK自身の説明で、中国の地元メーカーはi線ですでに十分な技術を持ち、いまKrFに挑んでいる11。TOKのKrF用は中国の新工場の立ち上がりで2023〜2024年に大きく伸び11、2026年は歩留まりの改善で伸びが鈍るとTOKは見込む。TOKはKrFとArFでは地元勢の技術が日本勢に届かず、中国向けの売上比率も安定すると説明する。それでも、i線で起きた追い上げは次にKrFで起き、Samsungが地元のDongjinと厚膜KrFを作り込んだのと同じ仕組みが中国で働く。日本勢は、市場の伸びが年3.8〜6.1%の成熟品で失う分を、年28.2%で伸びるEUVで補う構図になる。

判断に使う指標は2つだ。1つは、TOKが毎年の統合レポートで示すEUV用のシェアが30%前後を保つか。もう1つは、KrF用のシェアが33%台から下がり始めるかだ。前者が崩れれば先端での優位が揺らぎ、後者が崩れれば中国の内製化がKrFに及んだ合図になる。レジストの品質を測る工程の仕事や材料の基礎は、フォトレジスト材料とパターン品質で次に確認できる。

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