メタル酸化物レジストとは
メタル酸化物レジストとは、金属酸化物を主成分とするEUV用のレジストです。 従来の化学増幅型より、細い寸法と薄い膜での転写に向きます。寸法が小さくなるほど、倒れないようにレジストは薄くなります。薄い膜のまま下地にパターンを転写するには、膜の厚さ以外でエッチング耐性を確保する必要があり、レジストの材料そのものを替える必要が出てきました。imecは、金属配線の線とスペースではメタル酸化物レジストが今も先頭にあるとしています1。imecが得た露光量の削減も、下地、現像、マスクとの組み合わせを詰めた結果です。
ピッチ16 nmの線には、20 nmより薄い膜が要る
Section titled “ピッチ16 nmの線には、20 nmより薄い膜が要る”高NA EUVの登場とともに、レジストを薄くする流れは続いています。ピッチ16 nmのラインとスペースを印刷するには、高さと幅の比を2対1に保つため、20 nmより薄いレジスト膜が必要です2。細い線を高く作るとパターンが倒れるので、比を一定に保つと、寸法が小さくなるのに合わせて膜も薄くなります。
測定技術も同じ寸法に合わせて進んでいます。CD-SEMの条件を最適化すると、膜厚15 nmまで下げてもパターンを観測できました。
スズ酸化物の小さな分子と、酸の拡散がないことが解像度を支える
Section titled “スズ酸化物の小さな分子と、酸の拡散がないことが解像度を支える”メタル酸化物レジストの材料を開発するInpriaは、スズ酸化物の核を持つ有機金属クラスターを化学の土台にしており、ナノ粒子ではないとしています3。同社は、この有機金属の構成単位が従来のポリマー型レジストのポリマーの何分の一かの大きさなので解像度が高く、従来のフォトレジストに特有の酸の拡散の機構を除いたことで解像度がさらに上がるとしています。
光の吸い方も違います。Inpriaは、自社のレジストがEUV露光装置の光をより多く吸収し、化学増幅型で増幅されがちなフォトンショットノイズを減らすとしています。成分の数が有機レジストより少なく、材料の均一性とデバイスの歩留まりが上がるというのも同社の説明です。Inpriaは2007年にオレゴン州立大学の化学科から独立して設立され、2021年にJSRに買収されてその傘下に入りました。
金属を含む膜は、薄くても下地へ転写できる
Section titled “金属を含む膜は、薄くても下地へ転写できる”imecは、業界では化学増幅型より解像力の高いレジストが必要になる可能性があるとし、メタル酸化物レジストのほうが小さな寸法と薄い膜でのパターン転写に優れているとしています。この転写能力から、imecは高NA EUVで露光する最も解像度の高い金属配線層に特に向くとしています4。金属を含む膜はエッチングに強く、同じ厚みでも下地をより深く掘れるため、膜を薄くしながら転写の力を保てます。
imecは、プロトタイプ露光装置でピッチ20 nmの金属線をメタル酸化物レジストで印刷し、線とスペースで20%超の露光量削減を得ました1。この削減は、下地層の選択、現像工程の最適化、マスクの吸収体、マスクバイアス、マスクの明暗の選び方を組み合わせて得たもので、ラフネスや確率的な不良は増えていません。imecは、露光量の削減が露光装置のスループットを上げてEUVのコストを下げるので、半導体メーカーに高く評価されているとしています。
コンタクトとビアでは、マスクとレジストを組で選ぶ
Section titled “コンタクトとビアでは、マスクとレジストを組で選ぶ”コンタクトとビアのパターニングでは、ポジ型の化学増幅型レジストと二値の暗視野マスクの組み合わせが比較の基準になりました。メタル酸化物レジストと明視野マスクの組み合わせを同じ膜構成へ転写して比べると、6%の露光量削減と30%の局所寸法均一性の改善が得られています1。一方でimecは、コンタクトホール用の明視野マスクには品質と欠陥の懸念が残り、メタル酸化物レジストをコンタクトホールの選択肢にするには慎重な調査が要るとしています。材料とマスクの種類と露光の条件は、組で選ぶことになります。
imecの実験では、露光後ベークの酸素を増やすと感度が15〜20%上がった
Section titled “imecの実験では、露光後ベークの酸素を増やすと感度が15〜20%上がった”メタル酸化物レジストの性能は、露光後ベーク(PEB)の雰囲気でも動きます。量産のEUVクラスターでは、レジストを塗ったウェーハを真空中で露光し、露光後ベークの装置へ運んで大気の条件で加熱します。imecは、ベーク中の酸素濃度を大気の21%から50%へ上げると感度が15〜20%速くなったと報告しています。この傾向は、モデル材料と市販のメタル酸化物レジストの両方で見られました。
この実験に使ったimecのBEFORCE装置は、量産と同じ動作を模しつつ、ウェーハの搬送と露光後ベークをクリーンルームの空気から切り離し、ガスの注入と混合で雰囲気を精密に制御できます4。ベーク中の化学変化を装置に組み込んだフーリエ変換赤外分光計でとらえ、性能との対応を調べる実験が続いています。
薄い膜ほど、下地のわずかな違いが形に出る
Section titled “薄い膜ほど、下地のわずかな違いが形に出る”下地層の選択が重要です1。レジストの下にある膜が密着性と現像後のパターン形状を左右し、薄い膜ほど下地のわずかな違いが形に出るため、レジストと下地は組で最適化する対象になります。
薄い膜の評価には、検査方法の工夫も必要です。欠陥の評価には、電子線と深紫外光による検査と、機械学習によるSEM画像のノイズ除去が使われています。
薄くするほど、汚染管理が厳しくなり確率的な不良も増える
Section titled “薄くするほど、汚染管理が厳しくなり確率的な不良も増える”金属を含む膜は薄くしても下地にパターンを転写できる代わりに、金属が工程に入るため、装置と洗浄の汚染管理が厳しくなります。薄い膜は浅い焦点深度に対応できる一方、吸収する光子の数が減ってばらつきが増えます。解像度のために薄くするほど、確率的な不良が起きやすくなります。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”メタル酸化物レジストとは何ですか?
金属酸化物を主成分とするEUV用のレジストです。Inpriaの材料はスズ酸化物の核を持つ有機金属クラスターでできており、従来の化学増幅型より細い寸法と薄い膜での転写に向きます。
なぜ薄い膜が要りますか?
ピッチ16 nmのラインとスペースを印刷するには、高さと幅の比を2対1に保つため、20 nmより薄い膜が必要です。
なぜ比を保ちますか?
細い線を高く作るとパターンが倒れるためです。比を一定に保つと、寸法が小さくなるのに合わせて膜も薄くなります。
どこまで薄い膜を測れますか?
CD-SEMの条件を最適化すると、膜厚15 nmまで下げてもパターンを観測できました。
どんな実証がありますか?
imecのプロトタイプ露光装置で、ピッチ20 nmの金属配線がメタル酸化物レジストで印刷されました。下地、現像、マスクの条件を詰めて、線とスペースで20%を超える露光量削減も得ています。
コンタクトでも使いますか?
コンタクトとビアで明視野マスクとメタル酸化物レジストの組み合わせが試され、ポジ型の化学増幅型レジストと二値の暗視野マスクの組み合わせと比べて、6%の露光量削減と30%の局所寸法均一性の改善が得られました。明視野マスクの品質と欠陥が残る懸念です。
下地はどうしますか?
下地層の選択が重要です。レジストと下地は組み合わせで選ぶ必要があり、imecでは下地の選択が20%超の露光量削減の要因の一つになりました。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- フォトレジストとは── 従来の化学増幅型レジスト
- 高NA EUVとは── 薄い膜が必要になる理由
- 確率的パターン不良とは── 膜を薄くすると起きやすくなる問題
- フォトンショットノイズとは── 吸収する光子の数のばらつき
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- 3Inpria:公式サイト(メタル酸化物EUVレジストの技術紹介)inpria.com ↩
- 4imec:メタル酸化物レジストの露光後ベーク中の酸素注入によるEUV露光量削減imec-int.com ab