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フォトマスクとは

フォトマスクとは、露光でウェーハへ転写する回路パターンの原版です。 1枚が回路の1層分を受け持ち、何枚ものウェーハへ同じパターンを繰り返し写します。この繰り返しは強みでもあり弱みでもあります。マスク上の欠陥1個は、そのマスクで露光した全ウェーハの同じ座標へ写るからです。描画にも検査にも修正にも、マスク専用の装置を使います。

1枚が回路の1層分を受け持ち、製品には層の数だけ要る

Section titled “1枚が回路の1層分を受け持ち、製品には層の数だけ要る”

露光は、原版のパターンを光で写し取る操作です。フォトマスクは石英などの透明な基板の上に光を遮る層でパターンを描いたもので、光を通す部分と遮る部分の配置がそのままウェーハ上のパターンになります。1枚のマスクは、透明なガラス板の上に電子回路パターンの1層分を形成した原版です1。

半導体チップはトランジスタの層と配線の層を何段も積み上げて作るので、1つの製品を量産するには層の数だけのマスクが要ります。枚数は製品と工程の組み方で幅があります。1枚を作り直せば、そのマスクを使う層の露光だけがやり直しになります。

縮小投影では、マスクを実寸より大きく描く

Section titled “縮小投影では、マスクを実寸より大きく描く”

現在の先端露光は縮小投影方式です。マスク上のパターンを光学系で縮小してウェーハへ写すので、マスク側の寸法は実際に作る寸法より大きくなります。マスクの製造に要る精度が緩むため、この方式が現実的な選択になっています。

倍率は露光装置の仕様です。ASMLの液浸露光装置TWINSCAN NXT:2000iは、波長193nm・開口数1.35の投影レンズと、26mm×33mmのフィールドサイズ、4倍の縮小を備えます2。4倍に当てはめると、ウェーハ上に線幅40nmの線を作るにはマスク上へ線幅160nmの線を描きます。露光1回で写る範囲がウェーハ上で26mm×33mmなら、マスク側では104mm×132mmにあたります。同じ比は欠陥にも働き、マスク上に残った異物や膜の傷は、ウェーハ上へ4分の1の大きさで写ります。

4倍の縮小投影
投影レンズマスク上の露光範囲ウェーハ上104mm132mm26mm33mmマスク上の線160nmウェーハ上の線40nm
4倍の縮小投影では、ウェーハ上の26mm×33mmを写すマスク側の範囲が104mm×132mmになり、40nmの線はマスク上で160nmの線として描きます。

レチクルとマスクは、今はほぼ同じ意味で使う

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歴史的には、ウェーハ全面を一度に写す原版をマスク、一区画ずつ縮小投影する原版をレチクルと呼び分けていました。縮小投影露光を行うステッパーが出現する以前は、レチクルからマスクを作成し、そのマスクでウェハを露光していました3。現在は露光装置へ入れる原版そのものがレチクルで、2つの呼び方はほぼ同じ意味で使われます。

光を遮るか、位相をずらすか、反射させるかで構造が変わる

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遮光膜で光を遮るだけのマスクをバイナリーマスクと呼び、遮光膜には一般にクロム膜を使います4。Tekscend Photomaskは、バイナリーマスクを露光波長より線幅が大きいパターン向けとし、同社と材料メーカーが共同開発したOMOG(Opaque MoSi on Glass、ガラス上の不透明MoSi膜)というブランクスも挙げています。

線幅が露光波長より小さくなると、光の回折で像の輪郭が甘くなります。そこで使うのが位相シフトマスクです。ハーフトーンは、フォトマスクの遮光膜を半透明にして位相差の効果を得るタイプの位相シフトマスクで、遮光膜には一般にMoSi(モリブデン・シリサイド)を使います5。光を完全に遮る代わりに、膜を通した光の位相をずらし、隣を通った光と重なったところで打ち消し合わせます。Tekscend Photomaskは、位相シフトマスクが透過光の位相のずれと透過率を制御して解像度と焦点深度(DOF)を高め、露光波長より細い線を描くときの標準技術だとしています。代表はハーフトーン(Attenuated PSM)とレベンソン(Alternating PSM)です。

EUVはあらゆる物質に強く吸収されるため、EUV露光は反射型のマスクを使います。低熱膨張ガラスの基板にMo/Siの多層膜を重ねて光を反射させ、その上に吸収体でパターンを描きます。反射で使うという一点が、マスクの作り方も検査の仕方も変え、多層膜の内部にある乱れまで欠陥として働きます。

マスクの3つの構造
透過型バイナリー透過型ハーフトーンEUV反射型低熱膨張ガラスクロムで遮るMoSiが位相をずらす多層膜で反射石英・ガラス基板遮光膜・吸収体半透明MoSi膜Mo/Si多層膜
バイナリーは一般にクロムで光を遮り、ハーフトーンは一般にMoSiの半透明膜を通した光の位相をずらし、EUV用は多層膜で光を反射させて吸収体のある所だけ戻しません。

遮光膜だけのバイナリー、位相差まで使う位相シフト、多層膜で反射させるEUV用は、同じ「フォトマスク」でも中身も作り方も別物です。マスクの値段も、描画と検査に要る時間も、この違いで大きく動きます。

OPCを入れると、マスク上の図形は設計データと違う形になる

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露光波長に比べてウェハ上に形成すべき回路パターンが小さくなると、マスクパターンをウェハ上で同じ形状に形成することが困難になります6。光近接効果補正(Optical Proximity Correction、OPC)は、変形を見越してマスクパターンに図形を付加したり、マスクパターンの疎密に応じてパターンサイズを補正したりして、ウェハ上に所望の回路パターンを忠実に形成する技術です。

マスクの上には、設計データへ足した小さな突起や、周囲の混み具合に応じて太さを直した線が入ります。四角い設計データが、マスクの上では角に耳の付いた図形になります。ウェーハ上でほしい形へ落ち着かせるための先回りなので、マスク上の線幅とウェーハ上の線幅は、4倍という比からわずかにずれます。マスクの検査も、補正まで含めたマスクデータを基準にします。補正前の設計データを基準にすると、OPCで足した突起まで欠陥として拾うおそれがあるためです。

ブランクスは材料メーカーが作り、マスクメーカーが電子ビームで描く

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フォトマスクは、パターンを描く前の材料から作ります。MoSi層のような遮光膜でのみ覆われたガラス基板と、その上にレジスト膜を設けたガラス基板が、共にマスクブランクです7。ガラス基板に遮光膜まで付いた状態、あるいはその上にレジスト膜まで付いた状態で、マスクメーカーへ届きます。

HOYAは、同社のマスクブランクスが世界シェアNo.1で、国内外の半導体メーカーやマスクメーカーへ提供されているとしており8、EUV用マスクブランクスおよびフォトマスクの開発も進めています。提供先に半導体メーカーとマスクメーカーの両方がいるとおり、マスク工程を社内に持つ半導体メーカーと、マスクメーカーへ委託する半導体メーカーの両方があります。

マスクメーカーの工程では、設計データをもとに電子ビームでマスクブランクへ回路パターンを描き、薬液でエッチングし、フォトレジストを剥がし、洗浄・測定・検査を経て完成マスクになります9。電子ビーム描画、ウェットエッチング、フォトレジストの剥離という、ウェーハ工程のパターン形成とよく似た順番を、1枚のガラス板の上で行います。

描画に電子ビームを使うのは、ウェーハ露光に使う光より細い線を直接描けるためです。ニューフレアテクノロジーは、3nm+ノードのデザインルール向けのマルチ電子ビームマスク描画装置MBM-2000PLUS、3nmノード向けのMBM-2000、7nmノード量産向けのEBM-9500PLUS、16/14nmおよび45から20nmノード量産向けのEBM-8000シリーズ10を製品にしています。

マスク上の欠陥1個は、全ウェーハの同じ座標へ写る

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ウェーハ上の異物1個はそのチップ1個の損失で済みますが、マスク上の欠陥1個は露光した全ウェーハの同じ座標へ広がります。フォトマスク上のあらゆる欠陥はウェーハ上へ何度も転写され、不良チップの原因になります11。マスクの検査と修正に専用の装置と時間を割く理由は、この差にあります。

マスク検査の装置として、レーザーテックはEUV向けのACTISおよびABICSシリーズ、DUV向けのMATRICSおよびMAGICSシリーズ12をそろえています。検査はパターンを描く前から始まり、ブランクス向けには、EUVマスクブランクス上の転写性位相欠陥の検出および欠陥管理を掲げるABICSシリーズE120と、次世代EUVマスク用ブランクス欠陥検査/レビュー装置と掲げるMAGICSシリーズM9750/M9751があります。多層膜の内部にある乱れは完成後のパターン検査で追いにくいため、ブランクス専用の検査装置が別に用意されています。

見つかった欠陥は直して使います。ZEISSは、ほぼすべてのマスクが欠陥を抱えるため信頼できる修正技術が要るとし、ガス支援の電子ビーム描画(gas-assisted electron-beam lithography)を使う修正装置MeRiTと、微小なパーティクルを取り除くParticle Removal System(PRT)を挙げています。

ペリクルは、ゴミの落ちる場所を結像の面から数mm離す

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マスクの表面へゴミが付くと、そのゴミも回路の一部として転写されます。ペリクルは、異物(ゴミ)がフォトマスクの回路パターン面へ直接付着するのを防ぐ保護膜で、パターン面から数mm離れた位置に配置するため、ペリクル面へ付いたある程度の大きさまでのパーティクルはウェハ上への転写を免れます13。

露光装置の光学系はマスクのパターン面をウェーハの表面へ結像させ、ペリクルの膜面はその結像の面から数mm手前にあります。膜の上に載った異物は輪郭のぼけた薄い影として広がり、ある程度の大きさまでなら、レジストの上に像として残るのを免れます。ゴミをゼロにするのは難しいという前提に立ち、ゴミが落ちる場所を結像の面から離しておく設計です。

ペリクルと結像の面
パターン面に異物異物パターン面投影レンズウェーハくっきり写るペリクル上に異物異物ペリクル膜数mmぼけた薄い影
パターン面の異物は結像の面にあるのでウェーハへくっきり写り、数mm手前のペリクル膜に載った異物はぼけた薄い影として広がります。

膜そのものの性能は、露光量へ直に返ります。三井ペリクルは、各露光波長に対して耐光性のある膜材料を選び、高い透過率を得られるように膜厚設計したフォトマスク用防塵カバーで14、三井化学は光学特性として透過率99%以上を挙げています。露光光はペリクルの膜も通り抜けるため、透過率が低いほど露光量の損失が大きくなります。三井化学は2021年5月26日にEUVペリクルの商業生産を開始しました15。同社はペリクルを1984年に発売して以来、半導体の微細化に合わせたペリクルの改良と製品品質の向上に努めてきたとしています。

この用語に対応する装置と製造メーカー

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装置カタログDBから、この用語に一致する製品familyを持つメーカー 1社/2family を引いています。 各行は各社の公式製品ページを出典とします。 DBからの生成日: 2026-08-22

出典は各社の公式製品ページです。 装置カタログDB では、同じ製品familyを工程・メーカー横断で検索できます。

フォトマスクとは何ですか?

露光でウェーハへ転写する回路パターンの原版です。石英などの透明な基板の上に遮光する層で回路1層分のパターンを描き、1枚で何枚ものウェーハへ同じパターンを繰り返し転写します。

レチクルという呼び方との関係は?

現在ではほぼ同じ意味で使われます。歴史的には、ウェーハ全面を一度に転写する原版をマスク、一区画ずつ縮小投影する原版をレチクルと呼び分けていました。現在の先端露光は縮小投影方式です。

実寸より大きく描くのですか?

大きく描きます。縮小投影方式ではマスク上のパターンを縮小してウェーハへ写すので、マスク側の寸法が緩み、マスクの製造が現実的になります。

縮小の倍率はどれくらいですか?

ASMLのDUV液浸露光装置TWINSCAN NXT:2000iは、4X reduction(4倍の縮小)と26 x 33 mmのフィールドサイズを備えます。4倍の縮小では、ウェーハ上に40nmの線を作るためにマスク上へ160nmの線を描き、露光範囲はマスク側で104mm×132mmにあたります。

EUVマスクは何が違いますか?

反射型である点です。EUVはあらゆる物質に強く吸収されるため、多層膜で光を反射させ、その上の吸収体でパターンを描きます。多層膜の内部にある乱れも欠陥として働くので、ブランクスの段階から検査します。

どうやってパターンを描きますか?

電子ビームで描画します。NuFlare Technologyの描画装置には、3nm+ノードのデザインルール向けのマルチ電子ビームマスク描画装置MBM-2000PLUS、3nmノード向けのMBM-2000、7nmノード量産向けのEBM-9500PLUSなどがあります。

マスクの検査はどうしますか?

専用の装置で行います。レーザーテックは、EUV向けにACTISおよびABICSシリーズ、DUV向けにMATRICSおよびMAGICSシリーズをそろえています。1枚の欠陥が全ウェーハへ写るため、使う前の検査が重要になります。

フォトマスクは1つの製品に何枚要りますか?

1枚のマスクが受け持つのは回路の1層分で、チップは層を積み上げて作るため、量産には層の数だけのマスクが要ります。枚数は製品と工程の組み方で幅があります。

マスクブランクスとは何ですか?

パターンを描く前のマスク材料で、遮光膜でのみ覆われたガラス基板と、その上にレジスト膜を設けたガラス基板を共にマスクブランクと呼びます。HOYAは、同社のマスクブランクスが世界シェアNo.1で、国内外の半導体メーカーやマスクメーカーへ提供されているとしています。

マスク上のパターンは設計データと同じ形ですか?

補正を加えた形です。光近接効果補正(OPC)は、変形を見越してマスクパターンに図形を付加したり、疎密に応じてパターンサイズを補正したりする技術で、マスク上には設計データへ足した小さな突起や太さを直した線が入ります。

ペリクルとは何ですか?

フォトマスクのパターン面へ異物が直接付くのを防ぐ保護膜です。パターン面から数mm離して配置するため、ペリクル面へ付いたある程度の大きさまでのパーティクルはウェハ上への転写を免れます。三井化学は三井ペリクルの透過率を99%以上としており、2021年5月26日にEUVペリクルの商業生産を始めました。

マスクに欠陥があるとどうなりますか?

そのマスクで露光したウェーハの同じ座標へ繰り返し写ります。ZEISSは、フォトマスク上のあらゆる欠陥はウェーハ上へ何度も転写されて不良チップの原因になるとし、ガス支援の電子ビーム描画による修正装置MeRiTを挙げています。

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