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イオンビーム成膜(IBD)とは

イオンビーム成膜(IBD)とは、成膜室とは別のイオン源でつくったイオンビームをターゲットに当て、弾き出された原子を基板に積むスパッタリングの一種です。 プラズマをイオン源の中に閉じ込めるので、成膜室を低い圧力に保ったまま緻密で平滑な膜を積めます。

難しさは粒子です。EUV用のマスクブランクでは、Mo/Siの層のあいだに粒子が入るとブランクが使えなくなり、しかもビームを当てる成膜室の部品そのものが粒子の発生源になりえます。

プラズマをイオン源の中に閉じ込め、成膜室は低い圧力に保つ

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成膜室の中の配置
イオン源プラズマを閉じ込めイオンビームターゲット(Mo・Siなど)弾き出された原子基板(回転・傾斜)成膜室:低い圧力グリッドからビームを引き出す
プラズマはイオン源の中だけにあり、グリッドから引き出したイオンビームでターゲットを叩きます。基板はプラズマから離れた位置で原子を受け取ります。

IBDでは、広いエネルギーをもったイオンビームをターゲットに向け、スパッタされた原子が基板へ向かいます1。Angstrom Engineeringによると、プラズマはイオン源の中に収まっているため、成膜室の圧力をずっと低く保つことができ、膜の汚染が減ります。試料はビームの直撃を避けた位置にあるので、膜に取り込まれるガスも少なくなります。

イオン源はイオンの量(フラックス)とエネルギーを互いに独立に制御でき、再現性が上がります。同社はこうした性質から、IBDの膜は緻密で平滑で、基板への密着もよく、光学用途では散乱が小さくなるとしています。Oxford Instrumentsの装置資料でも、成膜用イオン源のグリッドはターゲットの大きさに合わせて設計され、基板ホルダーは回転・傾斜できる構成です。IBDはPVDの一つで、材料を物理的にはがして運ぶ点はほかのスパッタ法と同じです。

Mo/Siを周期6.7nmで40対以上重ね、EUV光を反射させる多層膜を積む

Section titled “Mo/Siを周期6.7nmで40対以上重ね、EUV光を反射させる多層膜を積む”
EUVマスクブランクの断面
Siまたはガラスの精密基板EUV光を多層膜で反射1対の周期 6.7nmMo/Si多層膜40対以上Mo(濃)とSi(淡)層間の粒子はEUV光を吸収・散乱させる
LLNLの2000年の報告によると、EUVマスクブランクの反射膜はMoとSiの1対を周期6.7nmで重ねた多層膜です。AVS 2014の発表は、量産用の反射率には40対以上が必要で、層のあいだの粒子がEUV光を吸収・散乱させるとしています。図の層数は模式です。

EUV露光では反射型のフォトマスクを使います。ローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)の2000年の報告によると、そのもとになるマスクブランクは、Siまたはガラスの精密基板の上に、周期6.7nmのMoとSiの2層を重ねた分布ブラッグ反射鏡2でできています。AVS 2014で発表されたイリノイ大学とVeecoの研究によると、量産の露光装置で使えるだけのEUV反射率を得るには、MoとSiの対が少なくとも40対必要で3、この多層膜はイオンビームスパッタで積まれます。

同じ発表は、層のあいだに汚染粒子が積もると、EUV光が吸収されたり不規則に散乱されたりして、そのマスクブランクは使えなくなるとしています。

1996年の追加欠陥2×10⁻²/cm²から、2000年には200mm基板で0.05/cm²未満へ

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1996年のLLNLの報告では、EUVL用レチクルブランク向けに設計した装置で、150mm径のSi基板に81層のMo/Si多層膜をイオンビームスパッタで積み、追加された欠陥の密度を2×10⁻²/cm²に抑えました4。報告は、これがMo/Si多層膜の欠陥密度を10⁵分の1に減らしたことにあたるとしています。

2000年の報告では、LLNLは装置メーカーから導入したイオンビームスパッタ装置に大幅な改造を加えて、低欠陥の成膜に最適化しました。環境や搬送で加わる欠陥を減らすため、装置はSMIFで完全に自動化されています。当初は150mm基板用でしたが、1999年7月に200mm対応へ改造し、1回に50枚を超える基板に成膜して、100nmを超える追加欠陥の中央値を0.05/cm²未満にしました。報告によると、この改善は装置の改造・更新と運用の変更を重ねた結果で、欠陥の検出・分類と、装置をまたいだ位置合わせの精度にも大きく左右されます。

同じ報告では、大きさをそろえた金の球を基板にわざと置き、その上に多層膜を成長させて、成膜条件によって凹凸がどこまで抑えられるかも調べています。報告は、この研究がEUVリソグラフィーで問題になる欠陥の大きさの下限を確定する鍵になるとしています。

遮蔽板が粒子源の候補で、表面エッチングで13.0から0.022個/mm²に減った

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イオンビームを当てる成膜室では、装置の部品そのものが粒子を生みます。AVS 2014の発表は、粒子の発生源の候補として、ターゲットから散乱した高エネルギー粒子が成膜室の遮蔽板を叩くことと、ビームの裾がターゲットの縁からはみ出して周囲に当たること(overspill)を挙げました。

遮蔽板はステンレス鋼製で、待機中のターゲットを覆い、周囲への堆積やスパッタを防ぎます。遮蔽板には、何層もの堆積に耐え、ビームのはみ出しに叩かれても粒子の発生が最小になる材料と表面仕上げを選びます。研究グループが遮蔽板の試料を広角のイオンビームの下に置き、125nmより大きい粒子を数えたところ、未加工の鋼では13.0±0.7個/mm²、表面をエッチングした鋼では0.022±0.016個/mm²でした。

光学膜と磁気デバイスにも使い、反応性成膜やアシスト成膜も選べる

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Angstrom Engineeringによると、IBDは光学膜の業界で広く使われています。Oxford Instrumentsは自社のイオンビーム装置Ionfab300の資料で、イオンビーム成膜の用途としてレーザー端面コート、高反射膜、反射防止膜、リングレーザージャイロのミラー、X線光学素子、通信用フィルターを挙げています5。同じ資料はこの装置の用途にMRAM(磁気トンネル接合を使うメモリ)や薄膜磁気ヘッドも並べており、MnIr・CoFeなどの磁性合金や、MgOなどの酸化物も扱える材料に含まれます。

同資料は成膜の方式として、イオンビームスパッタ成膜(IBSD)、イオンアシストスパッタ成膜(IASD、アシスト用イオン源を備える)、反応性イオンビーム成膜(RIBD)を挙げ、ターゲットは最大4枚まで載せられるとしています。光学膜では、白色光の透過信号で膜厚の終点を制御する光学モニターも備えます。

イオンビーム成膜(IBD)とは何ですか?

成膜室とは別のイオン源でつくったイオンビームをターゲットに当て、スパッタされた原子を基板に積む成膜法です。イオンビームだけでターゲットをスパッタする方式はIBSDと呼ばれ、IBDにはこのほかアシスト用イオン源や反応性ガスを使う方式もあります。

通常のスパッタリングと何が違いますか?

プラズマがイオン源の中に収まっているので、成膜室の圧力をずっと低く保てます。Angstrom Engineeringによると、これで膜への汚染やガスの取り込みが減り、イオンの量とエネルギーも別々のつまみで調整します。

半導体ではどこで使われますか?

EUVマスクブランクのMo/Si多層膜です。AVS 2014の発表によると、EUVの反射型マスクブランクはMoとSiを主とする多層膜をイオンビームスパッタで積んでつくります。ローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)は1990年代からこの方式で低欠陥の多層膜を開発してきました。

EUVマスクブランクでいちばん難しい点は何ですか?

粒子欠陥です。AVS 2014の発表によると、層のあいだに粒子が入るとEUV光が吸収されたり不規則に散乱されたりして、そのブランクは使えなくなります。

粒子はどこから来るのですか?

AVS 2014の発表では、ターゲットや散乱した高エネルギー粒子に叩かれる成膜室内の遮蔽板や、ターゲットの縁からはみ出したビームの裾が粒子源の候補とされました。遮蔽板の表面をエッチングすると、粒子は13.0個/mm²から0.022個/mm²に減りました。

半導体以外の用途はありますか?

光学膜で広く使われています。Oxford Instrumentsはイオンビーム成膜の用途として、レーザー端面コート、高反射・反射防止膜、リングレーザージャイロのミラー、X線光学素子、通信用フィルターを挙げています。

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