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照明条件(露光)とは

照明条件とは、レチクルへ光をどの角度・どの形の分布で当てるかを定めた設定です。 同じ光源と同じレンズでも、当て方を変えれば解像できるパターンが変わります。解像度の式のうち、波長とNAは装置を替えないと動きません。照明条件は、残るk1k_1を装置を替えずに動かす主要な手段の1つで、その代わりに、パターンの向き、光量、マスクの余裕のどれかを差し出します。

k1だけが、装置を替えずに動かせる

Section titled “k1だけが、装置を替えずに動かせる”

露光の解像度はCD=k1⋅λ/NA\mathrm{CD} = k_1 \cdot \lambda / \mathrm{NA}1で表されます。CD\mathrm{CD}は実現できる最小の寸法、λ\lambdaは光の波長、NA\mathrm{NA}は光学系がどれだけ光を集められるかを表す値で、k1k_1はチップ製造プロセスの多くの要因に依存する係数です。

波長を短くするのは、新しい光源を備えた新しいリソグラフィ装置に加え、新しい光学材料とレジスト材料、新しいプロセスを要する大きな技術転換です。NAを上げるのも装置を入れ替える話です。ASMLは、より小さな臨界寸法は短い波長と大きなNAを組み合わせ、k1k_1を物理限界へできるだけ近づけて達成されるとし、リソグラフィの物理限界をk1=0.25k_1 = 0.25としています。

ニコンの4世代で、k1は0.43から0.27まで削られてきた

Section titled “ニコンの4世代で、k1は0.43から0.27まで削られてきた”

ニコンの露光装置の仕様2から逆算すると、0.25までの距離が数字で出ます。i線ステッパーのNSR-2205iL1はNA0.45で解像度≦350nm、KrFスキャナーのNSR-S220DはNA0.82で≦110nm、ArFドライのNSR-S322FはNA0.92で≦65nm、ArF液浸のNSR-S636EはNA1.35で≦38nmです。

i線365nm、KrF248nm、ArF193nmという波長3を当てはめて解像度÷(λ/NA)\text{解像度}\div(\lambda/\mathrm{NA})を計算すると、k1k_1相当はNA0.45で約0.43、NA0.82で約0.36、NA0.92で約0.31、NA1.35で約0.27です。装置世代が上がるたびに、λ\lambdaとNAだけでなくk1k_1も削られてきました。残る余地は0.25までの0.02ぶんです。EUVでは、ASMLが、High NAの開口数0.55の光学系が13.5nmのEUV光源とあわせてより高いコントラストを与え、8nmの解像度で描画できるとしています4。

ニコン露光装置の仕様から計算したk1相当
k1相当投影側のNA0.450.820.921.35物理限界 0.25i線 0.43KrF 0.36ArFドライ 0.31ArF液浸 0.27
4世代の露光装置で、波長とNAを当てはめたk1相当は0.43から0.27まで下がりました。物理限界の0.25までに残るのは0.02です。

斜めから当てると、回折光が開口の内側へ入る

Section titled “斜めから当てると、回折光が開口の内側へ入る”

レチクルの細かいパターンは、通った光を回折させます。パターンが細かいほど回折角は大きくなり、投影レンズが拾えるのは開口数(NA)で決まる角度の範囲までです。真上から光を当てると回折光は左右対称に開き、パターンが細かくなるほど両方が開口の外へ出て、像を結ぶのに要る成分が失われます。

斜入射照明は、光軸の中心を外した位置に絞りを入れ、マスクへ露光光束を斜めに入射させます。対称性が崩れて回折光の分布が片側へずれ、一方の次数を開口の内側へ入れられます。零次と一次が両方入れば、干渉して像が結べます。この手法は解像度と焦点深度DOFを向上させます5。装置の光学性能は変えずに、当て方の工夫で式の係数を小さくすることが、k1k_1を下げることの中身です。

真上からの照明と斜入射照明
真上から当てる斜めから当てるレチクル0次−1次+1次レンズ開口入るのは0次だけ0次−1次+1次レンズ開口0次と−1次が入る
真上から当てると、細かいパターンの1次光は左右ともレンズ開口の外へ抜けます。斜めから当てると片側の1次光が開口に入り、零次光と干渉して像を結びます。

σは照明側NAと投影側NAの比で、輪帯は内外2つで決まる

Section titled “σは照明側NAと投影側NAの比で、輪帯は内外2つで決まる”

照明条件を数字で指定するときの中心がσ\sigmaで、照明光学系の開口数NAi\mathrm{NA}_\mathrm{i}と投影光学系の開口数NAp\mathrm{NA}_\mathrm{p}の比(σ=NAi/NAp\sigma=\mathrm{NA}_\mathrm{i}/\mathrm{NA}_\mathrm{p}5)です。σ\sigmaが大きい装置ほど、大きな入射角の斜入射露光を行えます。投影側がNA1.35のArF液浸で照明側のNAが1.35まで届けば、計算上σ=1.0\sigma=1.0です。投影側NAで割った比なので、装置のNAを替えれば同じσ\sigmaでも実際の入射角が動きます。輪帯なら輪の内外という2つの半径で形が決まるため、σ\sigmaは組で指定されます。

σ\sigmaが意味を持つのは、照明光学系が2つの絞りを別に持つからです。ケラー照明は集光系(照明絞り)と投影系(開口絞り)という2つの領域を設けます。集光系は光源からの光がより多く投影系へ届くように働き、投影系は照射面へ均一な光を投影します。こうして、光源に輝度分布やムラがあっても、照射面つまりマスク面を均一な照度と大きな開口数で照明できます。クリティカル照明は、光源の輝度分布をそのまま照射面へ映します。

形はパターンで決まり、層ごとに作り分ける

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絞りの形には、円環状に開けるアニュラー(輪帯照明)、向かい合う2箇所のダイポール、4箇所のクアドルポール(四重極照明)があり、近年のSMOでは任意の絞り形状も適用されます。

どれが良いかは焼きたいパターンで変わります。ダイポールが強く解像させるのは2極を結ぶ向きに並んだ線までで、直交する向きの線には別の条件を組み直します。最適解はパターンごとに1つずつ作ることになり、同じ露光装置でも、並ぶパターンの性格が異なるゲート層と配線層では照明条件が違います。

瞳の上で光を通す領域
σ=1.0の縁通常照明輪帯四重極ダイポール塗った部分が光を通す
照明の形は、瞳のどこから光を当てるかで決まります。通常照明から輪帯、四重極、ダイポールへ尖らせるほど、光を通す面積が減り、強く解像する向きが偏ります。

尖らせた代金は、向き・光量・マスクの3つで払う

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1つめは向きです。ダイポールで強く解像するのは2極を結ぶ向きに並んだ線までで、直交する向きには別の条件が要ります。

2つめは光量です。EUV露光装置の反射照明光学系は、FFM(Field Facet Mirrors、多数の可動ミラー)とPFM(Pupil Facet Mirrors、多数の固定ミラー)の組み合わせで、光量を損なわずに任意の形へ斜入射照明ができます5。光量の維持が特長になるのは、絞りで光を捨てる作り方では、形を尖らせるほど通る光量が減るからです。光量が減れば露光時間が伸びるか、レジストへ届く光子数が減ります。微細化が進むと、光子数の揺らぎ、レジスト材料の組成の不均一、装置のコントラスト低下からパターン欠陥が確率的に生じ、この現象を確率的影響と呼びます。EUV光用ミラーは13.5nm光用のMo/Siの約60層の多層膜で、EUV集光点出力は13.5nmを中心波長とする2%のスペクトル帯域内へ単位時間あたりに放射されるEUVエネルギーの総量です。反射面の枚数と帯域の両方で光が削られる前提で、照明の形をどこまで尖らせるかを決めます。この判断は確率的欠陥の問題と地続きです。

3つめはマスクです。MEEFはマスク上の寸法誤差がウェーハ上で拡大される比率で、解像限界の近くで組む条件では、マスク誤差がこの比率でウェーハへ来ます。位相シフトマスクは吸収体と基板間の位相や透過率を変えて光学コントラストを改善し、解像性と焦点深度を増やします。HTマスクや渋谷-レベンソンマスクがその例で、露光波長以下のパターンサイズでは標準的に使われる技術です。隣接する開口部の光へ180度の位相差を与えて0次光の振幅の符号を逆にし、開口部間の振幅を打ち消し合わせる型もあります。照明の形を尖らせるほど、フォトマスク側の作り込みと検査の負担が増えます。

良し悪しはILSとプロセスウィンドウで測る

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イメージ・ログ・スロープ(ILS)は、パターンのエッジ領域で光学コントラストの対数を取った値で、大きいほど解像性が優れ、レジストライン幅ラフネス(LWR)も低減されるとされています。NILSは像の傾きを光強度とパターン幅wwで規格化した値で、寸法の異なる条件でも像の質を比べられます。LWRは光のコントラストが低いほど大きくなり、3σ3\sigmaで表記することが多い値です。照明条件を1つ動かした結果は、ILSの変化となってLWRの3σ3\sigmaに表れます。

外側の枠はプロセスウィンドウです。CDフォーカスカーブ上で、寸法のスペック上下限に当たる露光量とフォーカスを取ったときのフォーカスマージンと露光量マージンを指し、CDへの要求が緩いレイヤーでは寸法の±10%を満たす焦点深度(DOF)と露光量裕度(EL)で取ることが多い量です。照明条件の作り込みは、この2つを同じカーブから取り分ける作業になります。

つまみごとに、得るものと捨てるものがある

Section titled “つまみごとに、得るものと捨てるものがある”

σ\sigmaを上げれば大きな入射角の斜入射が使え、細かい周期のパターンが解けます。下げれば真上照明に近づき、回折光が開口から抜けます。絞りの形を尖らせれば特定の向きと周期に強くなるかわりに、直交する向きと他の周期を捨てます。丸く広げれば向きの偏りは減り光量も稼げますが、解像限界近くのコントラストが落ちます。

露光量とフォーカスは、同じCDフォーカスカーブから露光量マージンとフォーカスマージンを取り分けます。ELを広く取れば日々の露光量のばらつきに強くなり、DOFを広く取ればウェハ平坦度と高さ制御への要求が緩みます。どちらも寸法±10%という同じ枠のなかの取り合いです。

マスク側で位相シフトやOPC(マスクパターンを先に変形して目的の形へ近づける手法)を入れれば、光学コントラストが改善し、解像性と焦点深度が増えます。かわりにMEEFの比率でマスク誤差がウェーハへ拡大されます。

レジスト側でも稼げます。解像限界に近いパターンの解像性と焦点深度を上げる解像性向上手法には、斜入射照明、位相シフト、SMOと並んで高解像レジストの採用も含まれます5。金属酸化物レジストは解像力が高くEUVで用いられます。レジスト側で稼げば照明を尖らせる度合いを抑えられますが、材料を切り替えるとレジストとベークと現像の条件を組み直す工数が付いてきます。

照明条件は、手で選ぶ設定から計算で解く対象へ移った

Section titled “照明条件は、手で選ぶ設定から計算で解く対象へ移った”

ASMLは、波長の転換の合間に進む道として、レンズの開発と、リソグラフィのプロセスへの巧妙な工夫や計算リソグラフィといった技術によるk1k_1の低減1を挙げています。計算リソグラフィは、マスクの形と照明の形を計算で同時に最適化する手法です。手法にはILT(マスクパターンや位相を変化させる手法)とSMO(光源形状とマスクパターンを最適化する手法)の2つがあり、Low k1k_1露光は解像性向上手法と同義です。照明条件は手で選ぶ設定から、計算で解く対象へ移ってきています。

照明条件とは何ですか?

レチクルへ光をどの角度・どの形の分布で当てるかを定めた設定です。同じ光源・同じレンズでも、当て方を変えれば解像するパターンが変わります。

なぜ解像度を左右するのですか?

解像度の式 CD = k1・λ/NA のうち、装置を替えずに動かせるk1に効くからです。k1はチップ製造プロセスの多くの要因に依存する係数です。

k1はどこまで下げられますか?

ASMLはリソグラフィの物理限界をk1 = 0.25としており、照明条件の作り込みはこの限界へ近づける手段の1つです。ニコンのArF液浸の解像度≦38nmとNA1.35から逆算すると、k1相当は約0.27で、限界の手前です。

斜めから当てると、なぜ細かいパターンが解けるのですか?

レンズが拾える回折光の組が入れ替わるためです。真上から当てると細かいパターンの回折光は左右ともレンズの外へ抜けますが、斜めから当てれば片側の回折光を開口の内側へ入れられ、零次と干渉して像を結びます。

σ(シグマ)とは何ですか?

照明光学系の開口数NAiと投影光学系の開口数NApの比(σ=NAi/NAp)で、σが大きい装置ほど大きな入射角の斜入射露光を行えます。投影側NA1.35の装置で照明側NAが1.35まで届けば、計算上σ=1.0です。

どんな形がありますか?

円環状(アニュラー)、2極(ダイポール)、4極(クアドルポール)などが代表で、パターンの向きと周期に合わせて光を通す領域の形を選びます。近年のSMOでは任意の絞り形状も適用されます。

照明条件を尖らせると何が悪くなりますか?

強く解像する向きが限られ、瞳のうち光を通す面積も減ります。EUV露光装置の反射照明光学系は、可動ミラー群と固定ミラー群の組み合わせで光量を損なわずに任意の形の斜入射照明を行っており、光量が代金の1つであることがこの工夫から分かります。

パターンごとに変えるのですか?

変えます。ある方向の線に最適な条件が合うのは、その向きの線までです。k1を下げる手段には、マスクと照明を計算で同時に最適化する計算リソグラフィもあります。

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