コンテンツにスキップ

MEEF(マスク誤差増強係数)とは

MEEFとは、フォトマスク上の寸法の誤差が、ウェハ上で何倍に拡大されて出るかを表す数字です。 4倍の縮小投影なら、マスク上の誤差はウェハ上で4分の1になるはずです。ところが解像限界に近いパターンでは誤差が拡大され、マスクに許される誤差はMEEFの分だけ小さくなります。MEEFは露光の条件と形で決まり、そのしわ寄せはマスクを作る側の公差だけに来ます。

マスクの誤差は、比例ではなく拡大されてウェハへ移る

Section titled “マスクの誤差は、比例ではなく拡大されてウェハへ移る”

MEEF(Mask Error Enhanced Factor)は、マスクに生じた寸法の誤差が、露光後のウェハ上で何倍に広がるかの比です1。ME(E)Fとも書き、レチクル側の誤差がウェハ側で広がる度合いを指します。

エディンバラ大学の論文は、MEEFをマスク上の寸法誤差がウェハへ非線形に移ることに付けた名前2と位置づけています。像が理論限界に近づくほど、つまりk1係数が0.25に近づくほど、マスク上の誤差は実質的に拡大されます。

フォトマスクは、透明なガラス板へ電子回路の1層分のパターンを作り込んだもので、ウェハへ回路パターンを写すときの原版です3。原版なので、そこに乗った寸法の誤差は、そのマスクで焼いたすべての場所へ同じように乗ります。MEEFは、その乗り方の大きさを表す1つの数字です。

露光波長の半分程度まで解像できているのは4、レジストのコントラスト特性の向上に加えて、位相シフト法・輪帯照明・OPCといった解像度向上技術(RET)を使っているためです。MEEFは、この工夫を積み重ねた領域で使う数字です。線幅だけでなく2次元の形にも話は広がり、バークレー校の技術報告は、MEEFを行列として扱って2次元の近接効果を数量化する研究5を紹介しています。

4倍縮小で得た余裕を、MEEFが削る

Section titled “4倍縮小で得た余裕を、MEEFが削る”

露光装置は、フォトマスクを設計図として、そこにある回路パターンをウェハへ縮小しながら高い精度で投影します6。JEITA 半導体技術ロードマップ専門委員会の平成20年度報告7が載せるフォトマスク要求表では、マスク倍率は4です。

この4倍が、マスクを作る側の余裕でした。マスク上で4ナノメートルずれても、ウェハ上では1ナノメートルに縮みます。MEEFはこの余裕を小さくする係数で、MEEFが2.2なら、マスク上の4ナノメートルの誤差はウェハ上で2.2ナノメートルになります。4倍の縮小で得られる余裕は、4を2.2で割って実質1.8倍分です。High-NA EUVのように縮小倍率が方向で違う装置では、この計算を方向ごとに行うことになります。

マスク誤差がウェハに移るまで
マスク上の誤差4 nm縮小だけなら1 nmMEEF 2.2なら2.2 nm01234寸法誤差(nm)
4倍縮小はマスクの誤差を4分の1に縮めますが、MEEFがそこに倍率を掛け直します。MEEF 2.2では、4 nmの誤差がウェハ上で1 nmではなく2.2 nmになり、縮小の余裕は実質1.8倍分しか残りません。

MEEFはマスク許容誤差の分母に入る

Section titled “MEEFはマスク許容誤差の分母に入る”

同じ表には、ウェハのCD管理値のうち何割をマスクの取り分として配るかという行があり、値は0.4です。この配分とMEEFを組み合わせると、マスクへ渡す寸法仕様が決まります。

2007年の欄に当てはめて計算すると、DRAMのCD管理値(3σ)7.1ナノメートルの4割は2.84ナノメートルです。これをMEEF 2.2で割ると1.29ナノメートル、マスクは4倍なので4を掛けて5.16ナノメートルになります。表のマスクCD均一性(密に並ぶ線)の欄は5.2ナノメートルで、小数第1位で四捨五入すると一致し、同じ手順は2008年から2010年の欄でも一致します。式にすると、マスクに許される誤差は、ウェハに許される誤差 × マスクへの配分 ÷ MEEF × 縮小倍率です。

ウェハの管理値からマスクの仕様へ
ウェハCD管理値7.1 nm× 0.4 マスク配分2.84 nm÷ MEEF 2.21.29 nm× 4 縮小倍率5.16 nm表の値 5.2 nm
MEEFは割り算の側に入るので、2.2で割った段で取り分が半分以下に縮みます。DRAMの2007年の欄では、7.1 nm × 0.4 ÷ 2.2 × 4 = 5.16 nmが表のマスクCD均一性5.2 nmと一致します。

MEEFは分母に入るので、MEEFが2倍になれば、マスクに求められる精度は2倍厳しくなります。マスクを作る側にとってMEEFは、露光の条件で決まり、自分たちの公差だけを小さくする数値です。

同じマスクの中でも、形の種類でMEEFは2倍以上開く

Section titled “同じマスクの中でも、形の種類でMEEFは2倍以上開く”

同じ表には、パターンの種類ごとにMEEFの欄が並びます。2008年度報告に載る見通しの数値で、2007年の欄では、孤立した線が1.6、密に並ぶ線が2.2、コンタクトが3.5です。同じマスク、同じ露光装置でも、描かれている形の種類で値が上下し、線と穴とでマスク誤差の拡大率が2倍以上開きます。

パターンの種類ごとのMEEF(2007年の欄)
孤立した線1.6密に並ぶ線2.2コンタクト3.5MEEF 1
同じマスクでも、コンタクトのMEEFは3.5で、孤立した線の1.6の2倍以上です。どのパターンも1を超えるので、縮小の余裕はどれも目減りします。

ウェハ側はCDUを測り、マスク側は検査と計測で要求値を守る

Section titled “ウェハ側はCDUを測り、マスク側は検査と計測で要求値を守る”

測る対象は2つあります。ウェハ側のパターン寸法均一性(CDU)は、ウェハ内の複数点のCDを計測してばらつきを3σで表したものです。マスク側では、上の表のマスクCD均一性が、そのままマスク検査と計測への要求値になります。

確かめる対象は余裕の広さです。プロセスウィンドウは、CDフォーカスカーブをもとに、寸法のスペック上下限を満たす露光量とフォーカスの範囲を取ったときのマージンで、露光量裕度(EL)は、ベストフォーカスでスペックの上下限に収まる露光量の幅です。MEEFが高いパターンは、この余裕を先に食いつぶします。

調整できるのは、照明とマスクです。斜入射照明は光軸の中心から外れた位置に絞りを置き、マスクに斜めから露光光を入射させる手法で、解像度と焦点深度が上がります。位相シフトマスクは、露光波長より小さい寸法のリソグラフィで標準的に使われている技術です。マスクの形そのものは、OPCで作ります。

MEEFを下げる手は、別のパターンの余裕を削る

Section titled “MEEFを下げる手は、別のパターンの余裕を削る”

MEEFのいちばん大きいパターンに合わせてマスク仕様をそろえると、その厳しさがマスク全面にかかります。マスクの値段と製作日数は、そこで決まります。

照明条件を選び直せば拡大率は変わります。ただし斜入射照明の絞り形状には輪帯・ダイポール・四重極があり、ある形に合わせた条件は、別の形では余裕を削ります。1つのパターンのMEEFを下げる選択は、別のパターンの余裕を削る選択でもあります。

OPCで補助パターンを増やす道もあります。ただし補助パターンは限界解像度以下の図形で、ウェハ上で像を結ぶ手前の細さに抑えた図形についても、その寸法をマスク側で保証することになります。MEEFという1つの数字は、こうしてマスク・照明・設計ルールのすべてへ跳ね返っていきます。

MEEFとは何ですか?

マスクに生じた寸法の誤差が、露光を経たウェハの上で何倍に拡大されて出るかを表す比です。誤差は縮小倍率どおりに比例して移らず、解像限界に近いパターンほど大きく拡大されます。

マスクが4倍なら、誤差も4分の1で済みますか?

縮小の効果だけなら4分の1ですが、そこにMEEFが掛かります。MEEFが2.2なら、マスク上の4ナノメートルの誤差はウェハ上で2.2ナノメートルになり、4倍の縮小で得られる余裕は4を2.2で割って実質1.8倍分になります。

どのくらいの値になりますか?

半導体技術ロードマップ専門委員会の平成20年度報告のフォトマスク要求表では、2007年の欄で孤立した線が1.6、密に並ぶ線が2.2、コンタクトが3.5です。

パターンによって値が変わりますか?

変わります。同じマスク、同じ露光装置でも、描かれている形の種類でMEEFが変わり、上の表ではコンタクトの欄がいちばん大きく、孤立した線の2倍以上です。

MEEFが大きいと何が困りますか?

マスクに許される寸法の誤差が小さくなります。MEEFはマスク許容値の分母に入るため、MEEFが2倍になれば、マスクへ出せる仕様は2倍厳しくなります。

誰が使う数字ですか?

マスクの寸法仕様を決める担当と、その仕様で作れるかを確認するマスク製造・検査の担当です。ウェハ側のCD管理値をマスク側の許容値に換算するときの係数として使われます。

OPCとはどう関係しますか?

OPCはマスクの形を作る技術で、MEEFはその形の誤差がウェハにどれだけ影響するかを表す係数です。OPCで形を細かく作るほど、マスクの寸法管理は厳しくなります。

7件を表示
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7