プロセスウィンドウとは
プロセスウィンドウとは、工程の条件を振っても、出来上がりが規格の中に収まる条件の範囲です。 露光量と焦点の条件を、中心の値と余裕の広さの組で選ぶための考え方です。露光量も焦点の位置も、装置とウェーハの状態によって日々わずかに動きます。中心を正確に合わせた工程でも、この動きが規格の外へ届けば不良になります。勝負を決めるのは、窓の広さと、そこへ入ってくるばらつきの大きさの比です。
窓は、寸法が規格の両端に届く露光量と焦点の組から読む
Section titled “窓は、寸法が規格の両端に届く露光量と焦点の組から読む”露光工程では、焦点を振りながら仕上がり寸法を追ったCDフォーカスカーブを用意し、寸法が規格の上端と下端にちょうど届く露光量と焦点の組を平面へ落とします1。すると焦点の側と露光量の側に、それぞれ許される幅が読み取れます。この二方向の幅がプロセスウィンドウです。
規格は寸法のほかにもあります。Chris Mackは、線幅・側壁角・レジストの膜減りという3つの規格をすべて満たす焦点と露光量の領域2をプロセスウィンドウと呼んでいます。焦点と露光量が組になってフォトレジストの線幅・側壁角・膜減りを左右する様子が一枚で分かるので、この焦点・露光量のウィンドウはリソグラフィで最も重要な図の一つだ、というのが同氏の見方です。
窓の高さはDOF、横幅はEL
Section titled “窓の高さはDOF、横幅はEL”窓を測る作業は、条件を意図して振るところから始まります。露光量とフォーカスを段階的に変えて露光し、出来上がったパターンの寸法(CD)を測ります。
使う数字は2つです。焦点深度(DOF)は、寸法が規格の上端と下端に届くところまで焦点をずらせる深さです。露光量裕度(EL)は、焦点をベストフォーカスに合わせたまま寸法を規格へ収めていられる露光量の幅で、目標の露光量に対する百分率で表します。DOFが窓の高さ、ELが窓の横幅にあたります。寸法への要求が厳しくないレイヤーでは、目標寸法の±10%を満たすDOFとELで窓を定義することが多くなっています1。
窓の広さは、入ってくるばらつきの3σと突き合わせて初めて意味を持つ
Section titled “窓の広さは、入ってくるばらつきの3σと突き合わせて初めて意味を持つ”窓の広さと並べて、そこへ入ってくるばらつきの大きさも測ります。パターン寸法均一性(CDU)は、ウェーハ内の複数点のCDを計測し、そのばらつきを標準偏差の3倍にあたる3σで書き表すことが多い値です1。焦点位置精度は、一度の露光で照らす領域の中で焦点の位置がどれだけ揃うかを指します。窓の広さと、この3σの大きさを突き合わせて初めて、余裕が何割あるのかが言えます。
窓を測らずに条件を選んだ工程では、たまたま良い結果が出た条件がそのまま量産条件になり、翌週に同じ条件で流したロットが別の寸法で上がってきます。ロットごとに良否が入れ替わり、装置・材料・作業のどこを直せば良いのかが決まるまでに時間がかかります。同じ製品を別の装置へ移すたびに条件の作り直しが要り、窓が狭い工程ほど、装置ごとのわずかな差が結果を変えます。原因は、条件を1点で持っていることです。窓の広さを測っておけば、余裕が何割あるのか、どちらの向きに余裕が薄いのかが数字で出ます。
逆に窓は、狙う寸法を緩めれば広くなります。緩めた分は設計が使えたはずの性能なので、余裕を取りすぎることは、作れたはずの製品を諦める選択と同じです。
測った値は、窓の中心へ戻すために次の条件へ渡す
Section titled “測った値は、窓の中心へ戻すために次の条件へ渡す”半導体産業でAPCは、一般にRun to Run制御の意味で使われます3。Run to Run制御には、プロセス結果や現在の状況をもとに戻ってプロセスを変更するフィードバック制御と、プロセス前情報を利用して予測して変更するフィードフォワード制御があります。ニコンは、ウェーハの素材にはどうしてもわずかな歪みが出るため、それを打ち消すアライメントステーションが要るとし4、自社の例としてLitho Boosterとinline Alignment Station(iAS)を挙げています。露光にかける前の段階で歪みを測り、その分を補正すれば精度がさらに上がるとしており、これがフィードフォワードにあたります。
装置の中で測って、その場で条件へ渡す道もあります。in-situ測定は、装置の中で加工を進めながら測り、その測定値を加工の条件へ返して条件を良い状態に保ち、加工を続けるか終わらせるかを選びます5。窓の縁へ近づいたときに気づく仕組みも要ります。FDCは、製造装置が送る信号を見張り、おかしな挙動を見つけたら統計の手順にかけて異常の種類を仕分ける技術です。
NAを上げるほど、窓の高さは2乗で縮む
Section titled “NAを上げるほど、窓の高さは2乗で縮む”窓が狭くなる理由は式に表れています。レイリーの式では、解像性Rは波長λをレンズ開口数NAで割った値にプロセス定数k1を掛けたもの、焦点深度DOFは波長λをNAの2乗で割った値にプロセス定数k2を掛けたものです。細い線を引くにはNAを上げれば良いのですが、窓の高さにあたる焦点深度はNAの2乗で縮むため、はるかに速く失われます。
窓が狭いままなら、装置側の精度で埋めることになります。キヤノンは、線幅が90ナノメートルを下回る回路を焼き付けるとき、ウェーハを載せるステージを動かす精度が数ナノメートルの単位で問われるとしています6。同社は近年、自社装置のステージの位置制御へ機械学習などのAI技術を持ち込み、前後・左右・上下のどの向きについても±1ナノメートルの単位でウェーハの位置を決められるとしています。
窓を広げる工夫は、マスクと計算と工程数で払う
Section titled “窓を広げる工夫は、マスクと計算と工程数で払う”窓は工夫で広げられます。変形照明(斜入射照明)は、絞りを光軸の中心からずらして配置し、レチクルへ光を斜めから当てるやり方で、解像度とDOFが上がります1。位相シフトマスクは、光の明暗の差を付け直すことで解像性と焦点深度を稼ぎます。SMOは、光源の形とマスクのパターンを同時に最適化し、解像性や焦点深度といったプロセスマージンを改善します。
そのかわり、目的のパターン形状になるようマスクのパターンや位相を変えるILTや、SMOのような超解像の手法を使う場面では、マスクの形や光源の形を計算機で見積もる手順が要ります1。これが計算機リソグラフィです。窓を広げる分だけ、マスクの作り込みと計算の負担が増えます。ニコンは、ArF露光装置へ液浸露光とマルチプルパターニングを取り込んで解像度を上げ、10nm以下のプロセスノードまで微細化を進めたとしています。マルチプルパターニングは露光を繰り返す技術なので、工程数がそのぶん増えます。窓を広げる工夫と、ばらつきを削る投資は、どちらへ金を回すかという取引になります。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”プロセスウィンドウとは何ですか?
工程の条件を振っても、出来上がりが規格の中に収まる条件の範囲です。露光工程では、寸法が規格の上端と下端にちょうど届く露光量と焦点の組を平面へ落として読み取る、焦点側の余裕と露光量側の余裕を指します。
中心の値のほかに何が要るのですか?
中心の周りに残る余裕の広さです。露光量も焦点の位置も日々わずかに動くため、中心が合った工程でも、その動きが規格の外へ届けば不良になります。中心の値と余裕の広さは別の情報です。
焦点深度(DOF)と露光量裕度(EL)は何が違いますか?
振る向きが違います。DOFは寸法が規格の上端と下端に届くところまで焦点をずらせる深さ、ELは焦点をベストフォーカスに合わせたまま寸法を規格へ収めていられる露光量の幅です。DOFが窓の高さ、ELが窓の横幅にあたります。
窓はどうやって測るのですか?
露光量とフォーカスを意図して振り、出来上がった寸法を測ります。焦点に対する寸法の変化を追ったCDフォーカスカーブを用意し、規格の上端と下端に届く点を平面へ落とします。寸法の要求が緩いレイヤーなら、目標寸法の±10%に収まる範囲で窓を言い表すことが多いです。
測った値はどこへ渡すのですか?
次のロットの条件と、次の工程の条件です。半導体産業でAPCは一般にRun to Run制御の意味で使われ、結果をもとに戻ってプロセスを変更するフィードバック制御と、前情報から予測して変更するフィードフォワード制御があります。
窓を広げると何を払いますか?
費用と工程数です。変形照明や位相シフトマスクは解像度や焦点深度を上げますが、SMOのような超解像の手立てでは、マスクの形と光源の形を計算機で解く手順が要ります。ニコンは、液浸露光とマルチプルパターニングによって10nm以下のプロセスノードへ対応したとしています。
微細にするほど窓は狭くなるのですか?
レイリーの式では、解像性はレンズ開口数に反比例し、焦点深度は開口数の2乗に反比例します。開口数を上げて細い線を狙うほど、窓の高さにあたる焦点深度は2乗で縮み、速く失われる関係になります。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- 工程能力指数(Cp・Cpk)とは── 窓が条件側の余裕を測るのに対し、こちらは出来上がり側の余裕を測ります
- 分解能とは── 窓の狭さを生む、細かさそのものの限界です
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- 4ニコン:半導体露光装置の基礎知識jp.nikon.com ↩
- 5日本半導体製造装置協会(SEAJ):半導体製造装置用語集 計測seaj.or.jp ↩
- 6キヤノン:サイエンスラボ 半導体露光装置global.canon ↩