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マルチパターニングとは

マルチパターニングとは、1回の露光の解像限界を超える細かいパターンを、同じ層で複数回の工程に分けて作る技術の総称です。 露光装置の開口数が1.35で頭打ちになった後も、より細かいパターンが求められました。装置を替えずに工程を繰り返せば解像限界を超えられますが、繰り返すたびに工程数とコストが増え、誤差が積み上がります。どちらの方式を選ぶかは、線の位置を2回目の露光の位置合わせで決めるか、線の幅を膜の厚みで決めるかの選択です。

開口数1.35で装置が頭打ちになり、工程の繰り返しで細かさを稼いだ

Section titled “開口数1.35で装置が頭打ちになり、工程の繰り返しで細かさを稼いだ”

露光装置で解像度を上げる方法は、波長を短くするか開口数を上げるかの2つです。SEAJの2012年版ロードマップは、開口数1.30から1.35のArF液浸露光装置で生産に使える解像限界は、ハーフピッチ40nm付近、プロセス定数k1にして0.30とし1、それより細かいパターンには、ダブルパターニングの技法を液浸露光へ組み合わせることが要るとしています。

同ロードマップは、純水を使った開口数1.35を当面の最高の開口数としています。純水より屈折率の高い液体に替えて開口数を上げる検討は、2008年の段階で技術的な困難が多いことが分かりました。そこで選ばれたのが、工程を繰り返して解像度を上げる方法です。同ロードマップは、複数回のプロセスでパターニングする技術を総称してマルチパターニング(MP)と呼んでいます1。4回分割のQuadruple Patterningも視野に入れ、k1が0.09以上0.14未満の領域をMultiple Patterningで届く領域に当てています。

装置メーカーも、この道に合わせて装置を作りました。ニコンは2008年、現行のNSR-S610Cのプラットフォームを使ったダブルパターニング対応の液浸スキャナーを、2008年第4四半期に顧客へ提供する2と発表しました。

同ロードマップによると、2011年の時点で、開口数1.35の液浸露光装置を使ってハーフピッチ40nm程度までのデバイスが量産され、同時にNANDフラッシュメモリなど一部のデバイス種では、側壁ダブルパターニング技術と組み合わせてハーフピッチ20nm台の生産が行われていました。露光装置はそのままで、工程の組み方だけで倍近い細かさへ届いています。

リソ・エッチ型は回数の分だけ、自己整合型は倍々で細かくなる

Section titled “リソ・エッチ型は回数の分だけ、自己整合型は倍々で細かくなる”

東京エレクトロンは、マルチパターニングを大きく二つに分けています3。SEAJのロードマップも同じ分け方で、ダブルパターニング技術を「自己整合タイプ」と「パターン分割タイプ」に大別しています。imecの言い方では、チップのパターンを2枚以上の単純なマスクへ分ける技術で4、いくつもの変種があります。

1つはリソ・エッチ型です。同じ層でリソグラフィとエッチングを繰り返す手法で、露光装置の解像能力に繰り返した回数を掛けた解像能力に相当するパターニングができます。1回目の露光とエッチングで作ったパターンの間に2回目でパターンを作るので、通常のリソグラフィの解像限界より小さいピッチが作れ、理論的には解像限界の半分以下のピッチも作れます5。この露光とエッチングを繰り返す技術はLELEとも呼ばれます。トランジスタと配線をつなぐコンタクト、配線間のビア、ラインを切るカット、スペースを埋めるブロックのように、フォトマスクのピッチを小さくする用途に向いています。

もう1つは自己整合型です。リソグラフィの後に成膜とエッチングを繰り返す手法で、1回行うと通常のリソグラフィの2倍、2回行うと4倍の解像能力に相当するパターニングができます。芯材として転写したパターンの両側に成膜とエッチングで新しいパターンを作り、ピッチを1/2にする技術が自己整合ダブルパターニング(SADP)で、2回繰り返して1/4ピッチにするとSAQP、3回繰り返して1/8ピッチにするとSAOPと呼びます。ラインとスペースの繰り返しパターンのピッチを小さくする用途に向いています。自己整合タイプは、微細化が先行したNANDフラッシュメモリでいち早く量産に採用され、定着した技術です。

ピッチを半分にする2つの工程
リソ・エッチ型(LELE)P1回目の転写P/22回目を間に転写自己整合型(SADP)P芯を形成側壁膜を成膜エッチバックP/2芯を除去下地1回目のパターン・芯2回目のパターン側壁膜(スペーサ)
リソ・エッチ型は2回目の露光で線を間に足すので、線の位置は2回分の位置合わせで決まります。自己整合型は1回の露光で作った芯の両脇に側壁を残すので、線の幅は側壁膜の厚みで決まります。

倍々で効くのは、自己整合型の強みです。imecは、ピッチ20nm未満でラインとブロックを作る選択肢として、ArF液浸によるSAOP、EUVによるSADP、EUVによるSAQP、自己整合型のリソ・エッチを2回行うSALELEの4つを検討しました。この細かさでは、ArF液浸はSAOPと組み合わせるしかなく、SAOPは128nmピッチから倍化を3回重ねます4。128nmを3回半分にすると、64nm、32nmを経て、計算上16nmピッチです。

SAOPのピッチとEUV単一露光の限界
ArF液浸の露光 128nm倍化1回 64nm倍化2回 32nmEUV単一露光の限界倍化3回 16nm30〜32nm128nm
ArF液浸で露光した128nmピッチの芯から、倍化を3回重ねるSAOPで計算上16nmピッチに届きます。imecは、EUVの単一露光は30〜32nmピッチで限界に達するとしています。

リソ・エッチ型は重ね合わせ、自己整合型は膜の厚みが寸法を決める

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リソ・エッチ型で測るのは重ね合わせです。ニコンは2008年に、ダブルパターニングの開発で最も大きな課題を重ね合わせ精度の向上としていました。最終的な重ね合わせ精度は2回の露光の重ね合わせ精度を足し合わせたものになるため、各露光への要求は従来の装置より大幅に厳しくなり、当時の要求値は約3〜4ナノメートルでした2。SEAJのロードマップによると、その後の開発で重ね合わせ精度を2nm以下にする取り組みが進み、2012年時点では単一の装置での重ね合わせで実現されています。

自己整合型で測るのは、膜の厚みです。SADP後のラインの寸法は、ほぼスペーサ材の成膜の制御性で決まり、線の幅を決める条件が、露光量やフォーカスから成膜の厚みに移ります。一方、スペースの寸法は、芯パターンの寸法、スペーサ材の膜厚、エッチング性能によって別々に変わります。

SEAJのロードマップによると、スペースの寸法を調整するうえで最も厄介なノイズ成分は、スペーサパターンのLER(ラインエッジラフネス)です。LERはパターン転写後、現像後、エッチング後のパターンエッジのラフネスで、ばらつきは3σ値で表すことが多い6とされています。

既存の装置で微細化できるかわりに、工程数とコストと誤差が積み上がる

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SEAJのロードマップは、従来の工程を分割して作ることが前提になるため工程が複雑になりコストが上がる点を懸念材料に挙げ、エッチングや成膜の技術を駆使する手法としています。一方で、大掛かりな設備投資を伴わずに既存の装置を組み合わせるだけで微細なパターンが得られる点は、大きな利点としています。

誤差も累積します。東京エレクトロンによると、リソグラフィとエッチングを1回だけ行うなら許容できる誤差でも、同じ層で複数回繰り返すと誤差が累積します。imecもSAOPについて、本質的な欠点は非常に長く複雑な工程フローで、プロセス制御とコストの課題を生むとしています4。

EUVを使って同じ層のマスク枚数を減らせば重ね合わせのずれが小さくなり、歩留まりの向上が期待されています。SEAJのロードマップでも、マルチパターニングによる微細化はコスト増大の問題が大きく、EUVリソグラフィの実用化が求められています1。imecは、EUVの単一露光は30〜32nmピッチで限界に達することがはっきりしたとしています4。20nm未満のピッチでは、imecはEUVをSADPやSAQPと組み合わせる案も検討しています。

自己整合型には、設計の難しさもあります。芯材として転写するパターンと最終的な回路パターンが異なるため、設計に高度な工夫が必要で、マスクのパターンとウェーハ上に作られるパターンが異なるので、レイアウト設計を直観的に行うことが難しくなります。自己整合型は解像能力の上がり方が大きい分、芯のパターンと最終のパターンの形の違いも大きくなります。

それでも、この手法は現在も使われています。ニコンは、マルチプルパターニングを露光を繰り返して回路の密度を高める技術とし、液浸露光方式やマルチプルパターニングを取り入れてArF露光装置の解像度を上げることで、10nm以下のプロセスノードまでの微細化を実現しています7。

LELE・LELELE・LFLEを工程順で区別する

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LELEはリソグラフィとハードマスクへの転写を二回行い、二つのパターンを交互に配置する方式です8。LELELEはこれを三回行い、三枚のマスクへ分けたパターンを合わせます。東京エレクトロンはLELELEを「Litho-Etch×3」と示しています9。繰り返すたびに位置合わせと転写の誤差が入るため、露光の解像度だけでなく、最終エッジの位置を管理します。

LFLEは最初のレジストを固定して二回目のレジストを作り、二つをまとめて転写します。SADPは一回の側壁形成、SAQPは側壁形成を二回使って密度を増やす方式です。露光を繰り返す回数と側壁を作る回数を同じものとして数えません。

マルチパターニングとは何ですか?

1回の露光の解像限界を超える細かいパターンを、同じ層で複数回の工程に分けて作る技術の総称です。リソグラフィとエッチングを繰り返すリソ・エッチ型と、成膜とエッチングで芯の両脇に線を作る自己整合型があります。

なぜ必要になったのですか?

露光装置の解像限界に当たったためです。開口数1.30から1.35のArF液浸露光装置で生産に使える解像限界はハーフピッチ40nm付近で、それより細かいパターンを作るにはダブルパターニングの技法を液浸露光へ組み合わせることが要ります。

どんな種類がありますか?

同じ層でリソグラフィとエッチングを繰り返す「リソ・エッチ」(パターン分割タイプ)と、リソグラフィのあとに成膜とエッチングを繰り返す「自己整合型」の二つに大きく分かれます。自己整合型は1回でピッチを1/2、2回で1/4、3回で1/8にします。

リソ・エッチ型でいちばん厳しい要求は何ですか?

重ね合わせ精度です。最終的な重ね合わせ精度は2回の露光の重ね合わせ精度を足し合わせたものになるため、各露光への要求が従来の装置より大幅に厳しくなり、ニコンは2008年に当時の要求値を約3〜4ナノメートルとしています。

自己整合型では何が線の幅を左右しますか?

成膜の厚みです。SADPを終えたあとのラインの寸法は、ほぼスペーサ材の成膜の制御性で決まります。すき間の寸法のほうは、芯パターンの寸法、スペーサ材の膜厚、エッチング性能によって別々に動きます。

マルチパターニングの欠点は何ですか?

工程数とコスト、誤差の累積です。リソグラフィとエッチングを1回だけ行うなら許容できる誤差でも、同じ層で複数回繰り返すと誤差が累積します。imecは、非常に長く複雑な工程フローがプロセス制御とコストの課題になるとしています。

EUVを使うと繰り返しの回数はどうなりますか?

減らせます。EUVで同じ層のマスク枚数を減らせば重ね合わせのずれが小さくなり、歩留まりの向上が期待されています。ただしimecは、EUVの単一露光は30〜32nmピッチで限界に達するとしており、それより細かい線ではEUVとSADPやSAQPを組み合わせる案を検討しています。

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    JEITA:DFM用語集 2014semicon.jeita.or.jp ↩
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