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オーバーレイ補正モデルとは

オーバーレイ補正モデルとは、ウェーハ上の複数の点で測った位置ずれを、露光装置が実際に調整できる補正値に換算する数式です。 測定と補正の間には、必ずこの換算が入ります。

重ね合わせ精度を上げるには、補正モデルの項を増やす必要があります。しかし項を増やすにはマークと計測点を増やす必要があり、計測時間が長くなって露光装置の生産性が下がります。

モデルは、点の集まりをレンズとステージの動きへ変換する

Section titled “モデルは、点の集まりをレンズとステージの動きへ変換する”

オーバーレイ計測で得られるのは、座標ごとのずれの向きと大きさです。一方で、露光装置が調整できるのは、ステージとレンズという限られた機構です。高次ディストーション補正は1、ショット中心を基準にX方向とY方向の2次以上の関数で表せるショット形状の歪みに対して、ウェーハ側またはマスク側の投影像そのものを歪ませ、ショット全体の形を揃える補正です。光リソグラフィでは投影光学系のレンズを動かしてマスクパターンの光学ディストーションを変え、スキャナーではマスクとウェーハの相対位置をずらして合わせます。補正モデルは、点の集まりをこれらの機構が受け取れる形に変換します。

JEITAの半導体技術ロードマップ専門委員会の報告では、この変換方法が変わりつつあります。重ね合わせの制御精度を上げる方法の1つとして、ウェーハプロセスでのチップ内の格子とウェーハ内のチップ配列の格子を、線形近似から高次近似に広げる方向があります2。それに合わせて、ウェーハ内とチップ内、つまりショット内に、複数のアライメントマークと位置ずれ計測マークを配置する必要が生じました。ここから、精度と計測負荷のトレードオフが始まります。

位置ずれの測定から露光装置への補正まで
① 点ごとに測る向きも大きさも点ごとに違う② 式の係数に換算するウェーハ内のショット配列ショット内の格子線形の近似+ 2次以上の項係数が決まる項を増やすには、マークを増やす③ 装置に返すマスクとウェーハの相対位置を動かすレンズの変位で投影像を変えるショットごとに形を合わせる補正はここに入るマークの変形やウェーハの歪みの影響も大きい
補正は、投影光学系内のレンズの変位や、マスクとウェーハの相対位置の変位として入ります。線形近似から高次近似へ広げるには、マークを増やす必要があります。

係数を増やすと、マークは数点から数百点に増える

Section titled “係数を増やすと、マークは数点から数百点に増える”

求めるのは係数で、測るのはマークの位置です。そのため、配置したマークの数と場所によって、求められる係数の数が決まります。

ロジックやメモリーなどの先端半導体では製造工程が複雑になり、ウェーハが歪みやすくなるため、高い精度で重ね合わせるには、数点だったアライメントマークがウェーハ上で数百点に増えています3。それぞれの露光装置内で数百点のマークを個別に計測すると時間がかかり、露光装置の生産性が下がる要因になります。

マークは小さく、1点の計測は速くなる

Section titled “マークは小さく、1点の計測は速くなる”

多数の位置ずれ計測による計測時間と計測コストの問題を避けるため、半導体技術ロードマップの要求表にはMove-Acquire-Measure time2が記載されました。この時間は、計測ポイントから次の計測ポイントまでのサイクルタイムで、計測終了から移動、移動中の計測演算、静止しての計測用画像の取得、次の移動までの1サイクルを指します。

要求値では、光学式のオーバーレイやスキャトロメトリのターゲットの最大寸法が、2010年の40μmから2024年の10μmへ縮みます。ダイ内のマイクロターゲットは2010年の10μmから2024年の2μmへ、Move-Acquire-Measure timeは2010年の1.0秒から2024年の0.5秒へ縮みます。

マーク数の増加と、マーク寸法・計測時間の要求値
補正の項を増やすほどマークが増える数点数百点ターゲットの最大寸法40 μm / 2010年10 μm / 2024年マーク1つに使える面積1点あたりの計測サイクル1.0 秒 / 2010年0.5 秒 / 2024年計測点から次の計測点までの1サイクル
アライメントマークは数点から数百点に増えました。ロードマップの要求値では、ターゲットの最大寸法とMove-Acquire-Measure timeが小さくなります。補正の項を増やす分、マークの面積と計測時間を小さくする必要があります。

全数を露光前に測って渡し、抜き取りの結果を次のロットへ返す

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調整できる条件は2つあります。どのウェーハを測るかと、どこで測るかです。

ニコンは、Litho Boosterが露光の前に全てのウェハのグリッド歪みを絶対値で高速に測り4、その補正値を露光装置へフィードフォワードし、スループットを維持したまま重ね合わせ精度を上げるとしています。同社の流れ図では、全ウェハに対するグリッドのフィードフォワードと、抜き取ったウェハのオーバーレイ計測から返すフィードバックが、別々の経路です。全数の側は今から流すウェーハの実測を渡し、抜き取りの側は結果を次のロットへ返します。キヤノンのLithography Plusでも、APCがロット毎に最適な条件を指示し5、前回結果からの反映と前工程結果の予測値の指示があります。

ニコンは、レイヤー単位、ロット単位、さらにウェハごとショットごとに生じる歪みが重ね合わせ精度を上げるうえで大きな障害になりつつあり、解決にはエラーを事前に検知して補正することが不可欠だとしています。同社は、この計測と補正のモジュールを露光装置内にインラインで組み込んだものをinline Alignment Stationと呼び、スループットを維持したまま全ショットで多点のアライメントを取れるようにしました。Litho Boosterは、そのモジュールを露光装置の外に独立させた装置です。

計測を露光装置の外へ移すのは、時間のため

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キヤノンは、2023年に発表したウエハー計測機MS-001を導入すると、アライメント計測の大部分を露光装置に搬送する前に一括で計測でき、露光装置内の計測負荷が減って生産性を上げられるとしています。MS-001には新しいアライメントスコープ用の光源が採用され、同社は露光装置内で計測するより1.5倍の波長域を確保でき、任意の波長でアライメント計測ができるとしています。マークの信号が弱いときに波長を変えられる範囲も、装置の外に移すことで広がります。

計測を外に移すと、装置が1台増えます。ニコンは2026年7月に、Litho Booster 1000で計測精度を従来機種比で約35%、生産性を約10%高めたとしています6。ウェハホルダの構造を見直して吸着時に生じる誤差を大きく減らしたことで計測精度が約35%上がり、ウェハ搬送ロボットの速度を上げたことでスループットが約10%上がりました。計測装置側の吸着や搬送そのものも、誤差の原因になります。

点そのものがずれていれば、モデルの次数では直らない

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補正モデルは測った点に合う係数を返しますが、点そのものが正しく測れているかは別の問題です。2009年度時点の見方では、ピッチスプリッティングで異なる露光でエッジが形成されるため、重ね合わせ誤差がそのまま寸法誤差になります7。最新の露光装置は仕様値で3nm以下を示す一方、プロセスに起因するアライメントマークの変形や歪み、ウェーハの歪みの影響も大きくなっていました。高次のアライメント補正で精度を上げるのと並行して、検出精度の高いアライメントマークの開発や、ウェーハの歪みを抑える成膜と熱処理の開発も必要とされています。

計測の章も同じ向きで、重ね合わせ精度についてはウェーハ加工の側でアライメントマークの構造と作り方を詰めることも精度因子の一つになるとしたうえで、支配的な要因は露光装置の基本性能だとしています。したがって現場での順序は、モデルの次数を上げる前に、マークの信号が取れているか、膜応力や熱処理でウェーハの反りがどれだけ動いたかを確かめる側になります。マルチパターニングやウェーハ接合を挟む工程では、この確かめ方の重みがさらに増します。

1台で流すか複数台で流すかで、補正できる範囲が変わる

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同一露光装置でのアライメント精度はDedicated Chuck Overlay、つまりSingle Machine Overlayと呼び、異なる露光機の間のアライメント精度はMatched Machine Overlay1と呼びます。キヤノンはi線ステッパーFPA-5550iZ2のオプション適用時の重ね合わせ精度を8、SMOで18nm以下、MMOで25nm以下としています。

FPA-5550iZ2は、ショット形状補正機能SSCを投影光学系に搭載したことで、露光領域を一括で露光するステッパーでありながら、ショット単位で下地レイヤーの形に合わせた重ね合わせ露光ができます。ショット単位の項を補正式に加えるには、それを実行する機構が装置側に必要です。装置マッチングは、この機構の応答を装置間で揃える作業でもあります。

オーバーレイ補正モデルとは何ですか?

ウェーハ上の複数の点で測った位置ずれを、露光装置が実際に調整できる補正値に換算する数式です。重ね合わせの制御精度を上げる手法の1つとして、チップ内の格子とウェーハ内のチップ配列の格子を線形近似から高次近似へ広げる方向があります。

補正した結果は、装置のどこが動くのですか?

マスクとウェーハの相対位置と、投影像の形です。高次ディストーション補正では、光リソグラフィなら投影光学系のレンズを動かして光学ディストーションを変え、スキャナーならマスクとウェーハの相対位置をずらして合わせます。

高次にすると何が増えますか?

配置するマークと、それを測る時間です。高次近似へ広げるにはウェーハ内とチップ内に複数のアライメントマークと位置ずれ計測マークを配置する必要があり、計測時間と計測コストの問題を避けるため、Move-Acquire-Measure timeが要求項目に加えられました。

マークは実際にどれくらい増えたのですか?

重ね合わせの精度を上げるため、かつては数点だったアライメントマークがウェーハ上で数百点まで増えました。それぞれの露光装置内で数百点を個別に計測すると時間がかかり、露光装置の生産性が下がる要因になります。

露光装置の外で計測する利点は何ですか?

露光装置のスループットを保ったまま点数を増やせる点です。ニコンは、Litho Boosterが露光の前に全てのウェハのグリッド歪みを絶対値で測り、その補正値を露光装置へフィードフォワードし、スループットを維持したまま重ね合わせ精度を上げるとしています。

フィードバックとフィードフォワードはどちらが何をしますか?

前のロットの結果を返すか、これから露光するウェーハの実測を先に渡すかの差です。キヤノンのLithography Plusでは、APCがロット毎に最適な条件を指示し、前回結果からの反映と前工程結果の予測値の指示があります。

モデルを高次にすると、残差はどこまで小さくなりますか?

小さくなる方向ですが、点そのものの誤差はそのまま出ます。2009年度時点で最新の露光装置は仕様値で3nm以下を示す一方、プロセスに起因するアライメントマークの変形や歪み、ウェーハの歪みの影響も大きく、高次のアライメント補正技術に加えて、精度よく検出できるマークの開発や、ウェーハの歪みを抑える成膜と熱処理の開発も要るとされています。

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