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計測の相関取りとは

計測の相関取りとは、同じ対象を2つ以上の計測手段で測り、値の差を傾きとオフセットの形で求めて、一方の測定値をもう一方の値に換算できるようにする作業です。 相関を取った後も差そのものはなくならず、換算式が得られます。

測長SEMとスキャトロメータのように方式の違う装置では、同じ試料を測っても値が一致しません。換算式を作れば比較できますが、試料や工程が変わると換算式も変わります。

繰り返し測定で揃っても、装置間のバイアスは残る

Section titled “繰り返し測定で揃っても、装置間のバイアスは残る”

量産ラインの測長SEMやOCDは、1枚を数分で測って値を返します。その値が日ごとに揃っていることは、ゴールデンウェーハの繰り返し測定で確認できます。現在のCD計測は、各プロセスから特別に選別したゴールデンウェーハを標準試料として使い、製造プロセスを通ったウェーハと比較測定して、製造プロセスの再現精度を確保しています1。

この手順で確保できるのは再現精度までで、計測値の正確さは評価できません。そのため、製造プロセス間や計測装置間のバイアスは残ります。ゴールデンウェーハを定期的に交換した場合は、製造現場の環境変化や装置の経年変化も評価できません。微細化が進むにつれて、このバイアスによる計測不確かさは歩留りに影響するほど大きくなり、製造プロセス間、工場間、企業間での計測結果の差として現れます。

繰り返して同じ値が出ることと、その値が別の装置や別の工場と話が通じることは、別々の性質です。後者を作る作業が相関取りです。相関取りで補正できるのは、測定を何度も行って得た値の平均から真の値を引いたかたよりまでで2、ばらつきには別の対策が必要です。

繰り返しの安定性とかたより
繰り返すと、ばらつきが分かる正しい値の位置は分からない点は狭い範囲に集まる時間の経過参照値と比べると、かたよりが分かる参照計測による値この距離がかたより時間の経過相関取りはこの距離を換算式にする
ゴールデンウェーハの繰り返し測定で分かるのは点のまとまり方までで、そのまとまりがどこにあるべきかは分かりません。参照計測の値と比べてはじめて、かたよりが距離として分かります。

プローブの大きさが違う装置は、別のものを測っている

Section titled “プローブの大きさが違う装置は、別のものを測っている”

計測誤差は、時間、装置、試料の3つに依存する量です3。時間は再現性、装置は装置間差、試料は試料間のバイアス変化にあたり、測定の不確かさはこれら3つを含んだ合計のバイアス変化と呼ばれます。

相関取りの対象は、3つ目の試料依存です。測長SEMとスキャトロメータが同じ試料で数値上は同じ精密さを示しても、試料を変えると測長SEMの測定値のほうが大きく変わります。理由はプローブサイズの違いです。測長SEMはライン像の一部を使ってパターン両端の距離を測り、スキャトロメータは格子状のパターンに光を広く当て、散乱光の解析から平均の寸法を求めます。この差は測定限度の差と呼ばれ、プローブの大きさが異なる装置どうしは別のものを測っているため、精密さという尺度では評価できません。

試料のCD変動は、ラフネス周期のフーリエ・パワースペクトルとして表せます。計測装置ごとに感度のある周期の範囲が異なり、観測される測定変動は、その範囲でパワースペクトルを積分した量になります。スキャトロメトリは長い周期に比較的敏感で、測長SEMは短い周期と局所的な変動に感度が高くなります。ライン・エッジ・ラフネスの周期分布が工程で変わると、2つの装置の差もそれに応じて変わります。

換算式は工程とレイヤに固有で、変わるたびに取り直す

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差が試料と工程に依存するため、相関の傾きとオフセットも工程とレイヤに固有です。精密さの値は各プロセス工程ごとに変わるため、エッチング前後のCD差であるエッチングバイアスを求めるのが難しくなっています。レジスト後とエッチング後は、別々に相関を取り直す必要があります。

代表試料で傾きとオフセットを求め、TMUで評価する

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相関取りは、工程を代表する一組の試料を用意し、参照側で値を決め、量産機で同じ点を同じサンプリングで測り、傾きとオフセットを求めてレシピに入れる、という順序で行います。標準試料として選別した最良のウェーハを使う方法では計測のバイアスを検出できないため、代わりの指標として総合計測不確かさ(TMU)があります。TMUは対象の技術世代を代表する一組の試料で求め、その試料が各工程に固有の計測バイアスのばらつきを反映していることが条件です。これを製造ラインの複数装置に広げた指標がFMPです。

相関を取る対象は、装置どうしだけではありません。スキャトロメトリは専用のテスト構造上で測るため、SEM、AFM、TEMといった他のCD計測を使って、計測用の構造で得たCDと回路内のパターンのCDとの相関を取っておく必要があります。スクライブライン上のテスト構造とチップ内の特性変化との相関についても、懸念が示されています。配線の計測では、電気的性能、歩留まり、信頼性と相関の取れるCD寸法と物理測定データを提供することが課題として挙げられています。

相関取りで小さくできるのは、装置間マッチングとその他の成分

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不確かさは4つの成分の二乗和、σ2=σP2+σM2+σS2+σother2\sigma^2 = \sigma_\mathrm{P}^2 + \sigma_\mathrm{M}^2 + \sigma_\mathrm{S}^2 + \sigma_\mathrm{other}^2 で表されます。σP\sigma_\mathrm{P} は精密さ、σM\sigma_\mathrm{M} は装置間マッチング、σS\sigma_\mathrm{S} はサンプリング、σother\sigma_\mathrm{other} は不正確さとその他です。工程許容度との比はP/TP/T比として P=6σP = 6\sigma、T=上限−下限T = \text{上限} - \text{下限} で表され、FEP計測の要求表では P/T=0.1P/T = 0.1 が使われています。相関取りで小さくできるのは主に σM\sigma_\mathrm{M} と σother\sigma_\mathrm{other} で、σP\sigma_\mathrm{P} は相関取りでは変わりません。

現場では、試料の幅、測定点数、取り直す周期を調整する

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1つ目は、相関に使う試料の条件の幅です。条件を広く振れば傾きが使える範囲が広がり、外挿が減ります。製造中に使う標準試料は、現在流れている工程と構造を代表し、テスト時の値がプロセス変動を正しく反映している必要があります。条件の幅を狭めれば非製品ウェーハと参照側の装置時間を節約できますが、換算式が使えるのはその狭い範囲だけになります。複数の作製元が供給する一次標準試料は、使う側の生産プロセスと異なる部分が多く、必要なプロセスばらつきを含まないため、適用範囲が限られることが多いとされています。

2つ目は、測定点数です。点数を増やせば σS\sigma_\mathrm{S} が下がり、APCに渡す平均値の信頼度が上がります。測定点数が少ないと測定値の変動が大きくなってAPCが誤動作しうる一方、測長SEMで複数パターンをまとめて測るMFMを使えば像を大きく取れるため、実際のプロセス変動への感度を保ったままプロセス平均の信頼度を高められます。点数を減らせば計測時間は短くなりますが、サンプリングノイズが増えて制御が不安定になります。重ね合わせ計測では、スループットを上げて精度をほとんど落とさずに全数サンプリングに近づけるため、インライン化が必要とされています。

3つ目は、相関を取り直す周期です。周期を短くすれば、ドリフトと環境変化を早く検出できます。計測再現精度には、繰り返し精度、ウェーハの再ロードによる変動、長期のドリフトが含まれます。周期を延ばせば参照側の装置時間は空きますが、環境変化と経年劣化を見落とす可能性が高くなります。参照側にも手間がかかります。NMIJの線幅校正では、校正対象の前後に線幅標準試料を同じ条件で測ることで、測定中の探針摩耗による不確かさを定量的に見積もれますが、線幅計測が3回必要になります。

相関直線で補正できるものと残るもの
量産機の測定値一致する線オフセット傾きは1からずれる参照計測の値補正できるもの・残るもの傾きとオフセットは補正できる線のまわりの散らばりはそのまま残る工程やレイヤが変われば取り直しが必要
相関直線は平均のずれを補正しますが、点が線から離れる分はそのまま残ります。傾きとオフセットは試料と工程に固有なので、レイヤが変わるときは取り直しが必要です。

相関を取った後も、正確さと参照側の不確かさは残る

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第一に、正確さは標準試料だけでは見積もれません。バイアスが試料に依存するため、標準試料や標準物質から正確さを正しく見積もることはできず、標準試料は対象の製品やプロセスとは別のものです。相関取りは、この代表性の不足をできるだけ小さくする作業です。

第二に、参照側の不確かさが下限として残ります。NMIJが2015年に始めた線幅の校正サービスは、校正範囲が30ナノメートルから0.5マイクロメートル、校正値の拡張不確かさが包含係数2で13ナノメートルで、装置は傾斜探針AFMです。不確かさは4、誤差や精度といった言葉の使い方が分野や国でばらばらだったところに1990年代から導入された、計測データの信頼性を表す尺度です。換算の基準側にこの大きさの不確かさがある以上、換算後の値の確からしさもこれが上限になります。

第三に、参照側の装置どうしにも測定限度の差があります。NMIJの2つの校正装置では、レーザー干渉計を組み込んだ原子間力顕微鏡は1回に測れる領域が狭いため狭い領域ごとの値を返し、深紫外レーザー回折式ピッチ校正装置はレーザーの当たった領域の平均を返します5。量産機の間の差は、参照計測の側でも形を変えて現れます。

装置マッチングは同じ方式、相関取りは方式の違う計測を揃える

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相関取りが答えるのは、どの装置の値をどの装置と比べてよいか、という点です。装置マッチングが同じ方式の装置ごとのかたよりを揃えるのに対し、相関取りは方式の異なる計測どうしに換算式を与えます。SPCの管理図に載る値も、トレーサビリティの連鎖につながる値も、この換算に基づいています。

計測の相関取りとは何ですか?

同じ対象を2つ以上の計測手段で測り、値の差を傾きとオフセットの形で求めて、一方の測定値をもう一方の値に換算できるようにする作業です。差そのものはなくならず、換算式が得られます。

ゴールデンウェーハの繰り返し測定で足りる範囲はどこまでですか?

製造プロセスの再現精度までです。選別したゴールデンウェーハと製造プロセスを通ったウェーハとの比較測定では、計測値の正確さや、プロセス間と装置間のバイアスは評価できません。

なぜ同じウェーハでも装置ごとに値が離れるのですか?

測る範囲が違うためです。測長SEMはライン像の一部からパターン両端の距離を測り、スキャトロメータは格子状のパターンに光を広く当てて散乱光の解析から平均の寸法を求めます。プローブの大きさが異なる装置どうしは、別のものを測っています。

相関を取るとばらつきも小さくなりますか?

相関取りで補正できるのは平均のずれ、つまりかたよりまでです。かたよりは、測定を何度も行って得た値の平均から真の値を引いたものです。ばらつきには別の対策が必要です。

相関取りに使う試料はどう選びますか?

工程を代表する一組にします。製造中に使う標準試料は現に流れている工程と構造を代表し、テスト時に出てくる値がプロセス変動をきちんと写している必要があります。

一度取った相関はいつまで通じますか?

工程とレイヤが同じ間です。精密さの値は各プロセス工程ごとに変わるため、エッチング前後のCD差を求めるのが難しくなっています。レジスト後とエッチング後は、別々に相関を取り直します。

TMUとは何ですか?

総合計測不確かさのことです。対象の技術世代を代表する一組の試料で求め、その試料が各工程に固有の計測バイアスのばらつきを反映していることが条件です。製造ラインの複数装置に広げた指標がFMPです。

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