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SEM帯電とは

SEM帯電とは、電子線を当てた試料で、入っていく電子と出ていく電子の数が釣り合わず、差の分が表面へたまる現象です。 絶縁膜やレジストのような非導電性の試料では、たまった電荷で像の明暗が変わります。CD-SEMはしきい値で端の位置を求めるため、帯電は寸法の測定値にも影響します。

現場では、同じ座標を撮り直すたびに明暗の出方が動く、という症状から始まります。

帯電は、アースへ流れない電子の差がたまって起こる

Section titled “帯電は、アースへ流れない電子の差がたまって起こる”

試料の表面に電子線を照射すると、入射電子(IpI_\mathrm{p})が試料内部で散乱し、二次電子(IsI_\mathrm{s})や反射電子(IbI_\mathrm{b})が表面から放出され、一部は試料を通ってアースに流れます(IaI_\mathrm{a})。導電性のある試料ではアースに電子が流れるので、入った電子と出た電子の数が等しくなり、Ip=Is+Ib+IaI_\mathrm{p}=I_\mathrm{s}+I_\mathrm{b}+I_\mathrm{a}が成り立ちます1。非導電性の試料ではアースに電子が流れにくく、この釣り合いが崩れてIp≠Is+IbI_\mathrm{p}\ne I_\mathrm{s}+I_\mathrm{b}になり、帯電します。試料の導電性は試料中の自由電子の数で決まり、自由電子が少ないと電子が流れにくくなります。

帯電した状態では、表面の場所ごとに入射する電子より放出される電子が多かったり少なかったりするため、観察される像に異常が起こります2。

導電性試料と非導電性試料の電子の収支
導電性のある試料Ip 入射電子IsIbIaアースへ流れるIp = Is + Ib + Ia非導電性の試料Ip 入射電子IsIb差が表面にたまるアースへ流れにくいIp ≠ Is + Ib
導電性のある試料ではIp=Is+Ib+Iaが成り立ち、非導電性の試料ではアースへの経路が細いためIp≠Is+Ibになります。帯電は、この差が逃げにくいところにたまります。

帯電は電位を変え、二次電子の明暗を通じて寸法に入り込む

Section titled “帯電は電位を変え、二次電子の明暗を通じて寸法に入り込む”

試料上の電位差で二次電子の検出効率が変わって生じる明暗を、電位コントラストと呼びます。電位が高い場所では二次電子検出器との間の電界が弱まって検出効率が下がり暗く写り、電位が低い場所では電界が強まって明るく写ります3。これを使えばLSIなどの回路の動作状態を確認できる一方、この電位コントラストは、非導電性の試料を観察したときの帯電による異常なコントラストの原因の一つにもなります。意図して使う信号と、意図せず加わる誤差が、同じ仕組みで生じます。

SEMで発生する二次電子量は、試料の材質と形状に加えて電位状態でも変化します4。形を測っているつもりで、電位まで一緒に測っている状態が帯電です。

二次電子のエネルギーは50eV以下とすることが多く、二次電子が試料表面から出られる深さである脱出深さは、金属試料で5〜10nmです5。電子線を試料表面に対して斜めに入射すると、放出される二次電子は多くなります。段差の端が明るく写るのはこの角度の効果で、帯電はその明暗に重なります。CD-SEMはしきい値で端の位置を求めるため、この重なりが寸法の値に入り込みます。

帯電の抑え方は、コーティング・低真空・低入射電圧の3つ

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帯電対策は、試料の前処理であるコーティングと、観察条件である低真空と低入射電圧に分かれます。日本電子が示した非導電性試料のワシミミズクの羽根では、入射電圧15kV・試料室1×10⁻³Paのまま観察すると帯電が起こり、オスミウムのコーティング、入射電圧0.8kVへの引き下げ、試料室80Paのいずれでも帯電が抑えられました1。

コーティングは、金、白金、オスミウム、炭素などの導電性材料で試料表面を薄く覆う方法です。入射電子が覆った表面を通ってアースに流れるので、導電性の試料と同じように観察できます。収支の式でいえば、IaI_\mathrm{a}の経路を作る方法です。

低真空は、試料室に空気や窒素ガスを導入して、意図的に真空度を下げる方法です。入射電子で陽イオン化したガス分子が帯電した試料表面を電気的に中和し、真空度が低いほど陽イオン化したガス分子が増えて抑制効果が高まります。試料の前処理を省けるため、簡易な観察でよく使われます。

低入射電圧は、入射電圧1kV程度で観察する方法です。二次電子放出率が1付近の入射電圧を使えば、IpI_\mathrm{p}とIs+IbI_\mathrm{s}+I_\mathrm{b}の平衡が保てます。低い入射電圧でも細いプローブ径を保てる電界放出電子銃を搭載したSEM、つまりFE-SEMで有効な方法です。収支の式でいえば、両辺を最初から揃える方法です。

入射電圧と二次電子放出率
縦は二次電子放出率、横は入射電圧入射電圧が高くなる放出率 = 1低い入射電圧では収支が釣り合う0.8 kV の例高い入射電圧では放出される電子が減るこの差がたまる15 kV の例
二次電子放出率が1付近の入射電圧では入射電子と放出電子の平衡が保てます。日本電子の羽根の試料では、0.8kVで帯電が抑えられ、15kVでは帯電が起きました。

入射電圧は、加速電圧を保ったまま試料側で下げられる

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加速電圧は電子銃の陰極と陽極の間の電位差で、SEMでは一般に約500Vから約30kVです2。多くの場合は加速電圧がそのまま試料への入射電圧になりますが、試料に電圧をかけたときは、加速電圧から試料電圧を引いた値が入射電圧になります。減速法では、加速電圧から試料ステージにかけた電圧、または対物レンズの下の減速電極にかけた電圧を引いた値が入射電圧です6。

実務で調整するのは、この入射電圧です。入射電子の試料への侵入深さは入射電圧で決まり、下げると侵入は浅く、上げると深くなります。浅くすれば表層の情報だけを取れますが、下地の情報は得られません。深くすれば下地の情報まで得られますが、収支が1から離れて帯電しやすくなります。電子ビーム検査で下層の導通を測るときと、レジストの線幅だけを測るときで、選ぶ入射電圧が異なるのはこのためです。

低真空は電子を散らし、低入射電圧は電子銃を選び、コーティングは膜を足す

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低真空の欠点は、電子が試料に届くまでの経路です。電子源から出た電子がガス分子と衝突せずに試料に届くには、10⁻²〜10⁻³Paの真空が必要です7。日本電子が帯電対策に使った80Paは、この10⁻²Paよりおよそ4桁高い圧力です。帯電を抑える陽イオンを作るガスは、一次電子を散乱させる原因にもなります。

低入射電圧の欠点は、電子銃と真空系のコストです。SEMの分解能は試料上に結ぶ電子スポットの直径で決まり、この径が細いほど分解能が上がります。電界放出形の電子源を動作させるには電子銃を10⁻⁸Paの超高真空にする必要があり、専用の真空ポンプが要ります。そのかわり、タングステンフィラメント形の約1000倍の輝度が得られ、1nm以下のスポット径を実現できます。低い入射電圧で細いプローブを保つには、この電子源が必要です。

コーティングの欠点は、試料の表面に膜を1層加えることです。走査型電子顕微鏡は光学顕微鏡より焦点深度と解像度に優れる一方、電子線照射による帯電で像の劣化とトランジスタ素子の損傷が起き、寸法検査の妨げになっていました8。1984年に日立がこの問題を解決してCD-SEMのS-6000を開発し、電界放出型の電子銃を使って約1keVの低加速電圧にすることで、帯電と素子の損傷を防ぎ、高分解能の計測を可能にしました。量産の測長で採用されたのは、観察条件を変える方法でした。

帯電がゼロになる条件は材料で動くので、レシピごとに決める

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帯電がゼロになる条件は、対象の材料と下地と膜厚が変われば動きます。そこで現場では、レシピごとに入射電圧とプローブ電流と走査の条件を決め、そのレシピの中で値を比べます。観察試料には水分の除去などの前処理を行い、電子線照射での帯電を避けるために試料表面へ導電性を与える前処理も行われます7。ラインを流れるウェーハでは前処理の側を使いにくい分、観察条件の側で詰めることになります。

同じレシピを複数の装置へ広げるときは、装置マッチングの対象に入射電圧と真空の条件も入ります。どこを何点測るかというサンプリングの設計も、1点あたりの照射量を通じて帯電の出方を動かします。チャージングダメージはプラズマ工程で表面へ電荷がたまる現象で、電荷の出どころが電子線か放電かの点でSEM帯電と異なりますが、薄い絶縁膜の上で電位が動くという構図は共通します。

SEM帯電とは何ですか?

電子線を当てた試料で、入射する電子と放出される電子の数が釣り合わず、その差が表面にたまる現象です。導電性のある試料ではアースに電子が流れて入射電子と放出電子の数が等しくなり、非導電性の試料ではアースに電子が流れにくいため釣り合いが崩れます。

帯電すると像はどう動きますか?

像の明暗が変わります。試料上の電位差で二次電子の検出効率が変わって生じる明暗を電位コントラストと呼び、電位が高いと検出器との間の電界が弱くなって暗く、電位が低いと電界が強くなって明るくなります。この電位コントラストは、非導電性の試料での異常なコントラストの原因の一つにもなります。

入射電圧を下げると帯電が減るのはなぜですか?

二次電子放出率が1に近い入射電圧を選べるためです。放出率が1付近の入射電圧を使うと入射電子と放出電子の平衡が保て、日本電子の羽根の試料の例では入射電圧は0.8kVです。低い入射電圧でも細いプローブ径を保てるFE-SEMで有効な手法です。

加速電圧と入射電圧の関係を教えてください。

試料に電圧をかけたときに、両者が異なります。加速電圧は電子銃の陰極と陽極の間の電位差で、試料に電圧をかけた場合の入射電圧は加速電圧から試料電圧を引いた値になります。入射電子の侵入深さは入射電圧で決まります。

低真空で観察すると何が起きますか?

ガス分子の陽イオンが表面の電荷を中和します。試料室へ空気や窒素ガスを入れると、入射電子で陽イオン化されたガス分子が帯電した試料表面を電気的に中和し、真空度が悪いほど陽イオンが増えて抑制効果が高まります。日本電子の例では、試料室の圧力は80Paです。

コーティングはウェーハでも使えますか?

表面に膜を1層加える方法になります。コーティングは金、白金、オスミウム、炭素などの導電性材料で試料表面を薄く覆う方法で、入射電子はその表面を通ってアースに流れます。量産の測長で採用されたのは、約1keVの低加速電圧という観察条件でした。

帯電を避ける方法には、どんな欠点がありますか?

電子銃と真空系への投資です。電界放出形の電子源を動かすには電子銃を10⁻⁸Paの超高真空にする必要があり、専用の真空ポンプが要ります。そのかわりに、タングステンフィラメント形の約1000倍の輝度と1nm以下のスポット径が得られます。

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