計測(メトロロジー)とは
計測(メトロロジー)とは、線幅、膜厚、重ね合わせ、表面形状などを数値として測り、その結果を次のウェーハの露光量やエッチング時間へ反映する活動です。 良否を答える検査に対し、計測は連続量を返すので、そのまま制御量として使えます。
そのかわり、計測器自身のばらつきが工程の使える幅を狭め、測る点の数がラインの時間を使います。
検査は有無を、計測は設計値からのずれを返す
Section titled “検査は有無を、計測は設計値からのずれを返す”検査は「異物や欠陥があるか」を探し、見つかれば有無として報告します。計測は「いくつか」を測り、数値を返します。線幅が48nmでも52nmでも、検査はどちらも良品として通しますが、設計値からのずれとしては大きな違いになります。
数値であることが、工程制御を可能にします。線幅が設計値より太ければ露光量やエッチング時間を調整し、重ね合わせがずれていれば露光装置の位置を補正します。計測の役目は、測った数値で次のウェーハの条件を変えるところまで続きます。
測る量は4つで、どれも工程の直後に測って設定値へ返す
Section titled “測る量は4つで、どれも工程の直後に測って設定値へ返す”- 線幅(CD、Critical Dimension):回路のパターンの太さ。露光やエッチングの後に測り、露光量やエッチング時間へ返します。従来から測ってきた装置はCD-SEM(Critical Dimension Scanning Electron Microscope、測長SEM)です。
- 重ね合わせ(オーバーレイ):前の層のパターンと、いま露光した層のパターンとの位置のずれ。露光装置の位置補正へ返します。精度の因子にはウェーハ加工プロセスのアライメントマークの構造や作り方もありますが、決定的な支配要因は露光装置の基本性能とされています。
- 膜厚:成膜やCMP(化学機械研磨)を終えた膜の厚み。
- 表面形状:表面の凹凸。CMPの後や、ウェーハどうしを直接貼り合わせるハイブリッドボンディングの前に測ります。
露光の後、エッチングの前に測れば、下の膜を刻む前に数値が出る
Section titled “露光の後、エッチングの前に測れば、下の膜を刻む前に数値が出る”ASMLのYieldStar 375Fは1、post-exposure, pre-etch(露光の後、エッチングの前)の計測向けの装置で、回折を使った計測(diffraction-based measurements)で重ね合わせとフォーカスの出来ばえを測ります。この段階のパターンはまだレジストの中にとどまり、下の膜はそのままなので、下の膜を刻む前にウェーハの状態を数値として得られます。ASMLは、425nmから885nmまでの波長を連続的に選べ、1ロットあたり数千点のデータを従来より速く測れるとしています。この装置は同社のメトロロジー・検査システム2の製品群に入ります。
光、電子線、探針のどれを当てるかで測り方を選ぶ
Section titled “光、電子線、探針のどれを当てるかで測り方を選ぶ”光を当てて反射や回折から求める光学式、電子線を当てて像から求める電子線式、探針で表面をなぞる走査プローブ式があり、測る対象と要る分解能で使い分けます。
走査プローブ式のAFM(原子間力顕微鏡)は、探針と試料との間に作用する力(原子間力)を検出して、試料の表面形状を画像化する装置です3。BrukerはInSight 3004を量産環境向けのファブ対応自動原子間力顕微鏡とし、スキャナ平坦度が±1nm以内、ノイズフロアが35pm以内で、CMPとエッチングの用途からベアウェーハの欠陥レビューまで対応し、ハイブリッドボンディング向けにミリメートルスケールおよびベベルエッジの計測要求を満たすとしています。
光学式は、形のライブラリーから測った光り方に合う形を引く
Section titled “光学式は、形のライブラリーから測った光り方に合う形を引く”光学式のうち、線幅や断面の形を求める方式はOCD(Optical Critical Dimension、光最小線幅計測)と呼ばれ、その中でも回折光の分布を使う方式をスキャトロメトリと呼びます。スキャトロメトリは物理モデルを基本としたシミュレーションに基づいている点で、CD-SEMやAFMとまったく異なる手法です5。手順は次のとおりです。
- 測りたいレジストのパターンについて、工程で起こりうる形の範囲を踏まえ、形のモデルを作ります。たとえばレジストの断面を3つの台形の積み重ねとして表し、上・中・下それぞれの台形の上底・下底・高さを形のパラメータとします。
- 下地の材料とレジストの膜厚、複素屈折率をあらかじめ与えます。
- 形のパラメータを振ったときに得られるスペクトルを計算し、データベース(ライブラリー)として蓄えます。
- 装置で実際に測ったスペクトルへ最も近いライブラリーのデータを探し、その元になった形のデータを引き当てます。
表面の形を直接なぞる代わりに、「この形ならこう光る」という対応表を先に用意し、測った光り方から形を逆に引く方式です。
代償として、ライブラリーの作成に時間がかかり、計測の対象は原理として1次元(X方向)あるいは2次元(X-Y方向)の繰り返しパターンに限られます。計算速度の都合で、各材質の複素屈折率は一定値として与えています。形のモデルのパラメータの決め方が利用者へ委ねられているため精度が利用者の熟練度に左右されうるとして、通常のインライン計測機とは一線を引く必要があるとされています。
壊さず測れる方式は限られ、壊すTEMはライン導入が困難
Section titled “壊さず測れる方式は限られ、壊すTEMはライン導入が困難”抜き取って壊して測る方法では、測った枚数のぶんだけ製品が減ります。そのため量産では、製造ラインの中に装置を置き、量産中のウェーハをそのまま測って次工程へ進められる形が要り、この要件が測り方の選択肢を大きく絞ります。3次元の形を求める代表的な3方式を比べると、次のようになります。
| 方式 | 測定形態 | 利点 | 欠点 |
|---|---|---|---|
| スキャトロメトリ | 非破壊 | 計測器がシンプル、計測時間が短い、広い工程範囲へ導入済み | ライブラリー作成時間が長い、繰り返しパターンのみ |
| GI-SAXS・透過型SAXS | 非破壊 | 計測器がシンプル、計測時間が短い | 繰り返しパターンのみ、未商用 |
| TEM-トモグラフィ | 破壊 | 高い空間分解能で3次元の可視化が可能 | 破壊を伴いライン導入が困難、試料回転時のアライメントの影響が大きい、高価 |
TEM-トモグラフィは、医療のX線CT(Computed Tomography)と同じ原理で断層画像を組み立てる方式で、空間分解能が最も高い計測技術とされています。ただしウェーハからFIB(集束イオンビーム)で試料を切り出す破壊を伴うため、量産ラインへの導入が困難です。分解能の高さと、測ったウェーハを製品として先へ送れることは、ここで釣り合いの関係に立ちます。
計測のばらつきが、工程の許す幅を食う
Section titled “計測のばらつきが、工程の許す幅を食う”計測器そのものにもばらつきがあります。繰り返し性6は「測定装置に起因する変動。同じ測定者が同じ装置を使用して同じ条件で同じサンプルを測定した場合に観測される変動」です。同じウェーハの同じ場所を続けて測っても、返る数値には幅が生じます。
この幅は、工程の許す幅を食います。2重露光の重ね合わせ制御では、要求精度の20%(Precision to Tolerance)が計測に対する要求精度です。工程が許す幅のうち、計測器のばらつきへ割り当ててよいのは2割まで、という取り決めです。
割り当てが要るのは、読み取った数値に工程のずれと計測のばらつきが重なって入るためです。線幅が51.4nmと返ったとき、その1.4nmのうちどこまでが工程の動きで、どこまでが計測器の揺れなのかは、1回の測定では1つの数値へ混ざったままです。
計測器の揺れを工程のずれと取り違えたまま露光量やエッチング時間を動かすと、工程そのものが設計どおりの状態でも、条件のほうが設計値から離れていきます。計測の精度を上げることは、工程が使える幅を広げることと同じ意味を持ちます。
高次補正で測る点が増え、1点あたりの時間が要求値になった
Section titled “高次補正で測る点が増え、1点あたりの時間が要求値になった”計測はラインの時間を使います。測る点を増やすほど補正は細かくなり、そのぶんウェーハがラインで待ちます。
重ね合わせの制御精度を上げる方法のひとつに、チップ内の格子やウェーハ内のチップ配列の格子を、従来の線形近似から高次の近似へ移す動きがあります。高次で補正するには、ウェーハ内とショット内へ複数のアライメントマークおよび位置ずれ計測マークを配置する必要があり、計測点数が増えて、計測時間と計測コストが問題になります。
そこで要求表にはMAM time(Move-Acquire-Measure time)という項目が入りました。MAM timeは「計測ポイントから計測ポイントまでのcycle time」で、位置ずれ計測の場合は、計測終了、移動(移動時間中に計測演算)、計測用画像情報の取得(静止)、移動の1サイクルにあたります。
2009年度のロードマップの要求値は、1測定あたり2010年で1.0秒、2014年で0.9秒、2016年と2018年で0.7秒、2020年以降は0.5秒です。OCD・スキャトロメトリや回折を使う重ね合わせ、光学式の重ね合わせのターゲットパッドの大きさは2010年の40マイクロメートル(µm)四方から2024年の10µm四方へ、チップ内マイクロターゲットは10µmから2µmへ縮む要求が並びます。測る点を細かくする動きと、1点あたりを速く測る動き、目印を小さくする動きが、同じ表の上で同時に進みます。半導体の計測装置が「速く測る」ことを性能として掲げるのは、この釣り合いのためです。
この用語に対応する装置と製造メーカー
Section titled “この用語に対応する装置と製造メーカー”装置カタログDBから、この用語に一致する製品familyを持つメーカー 14社/26family を引いています。 各行は各社の公式製品ページを出典とします。 DBからの生成日: 2026-08-22
- AMAT
- ASMLジャパン
- Bruker
- Bruker semiconductor metrology suite検査・計測
- InSight 300 automated AFMAFM(原子間力顕微鏡)計測
- Camtek
- Eagle G5検査・計測
- Golden Eagle欠陥検査
- Hawk検査・計測
- Hitachi High-Tech
- KLA
- Archer familyオーバーレイ計測(重ね合わせ計測)
- レーザーテック
- ニコン
- Nova
- Nova Metrion / Elipson材料・表面分析
- Nova PrismOCD(光学式寸法計測)
- Nova VeraFlex材料・表面分析
- NuFlare Technology
- Onto Innovation
- PVA TePla
- Skyverse Technology
- Toray Engineering
出典は各社の公式製品ページです。 装置カタログDB では、同じ製品familyを工程・メーカー横断で検索できます。
関連するデータ・ツール
Section titled “関連するデータ・ツール”- 計測・メトロロジの工程ページ── 工程分類と、この工程の公開求人
- 計測の求人一覧── 現在この工程で募集している企業
- 装置カタログDB ── 公式製品ページ単位のメーカーと製品family
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”半導体の計測とは何ですか?
線幅、膜厚、重ね合わせ、表面形状などを数値として測り、その結果を次のウェーハの露光量やエッチング時間へ反映する活動です。良否を答える検査に対し、計測は連続量を測って工程を制御する側にあります。
検査と計測はどう違いますか?
検査は「異物や欠陥があるか」を探して有無を答え、計測は「いくつか」を測って数値を返します。前者は歩留まりの直接的な敵を見つけ、後者は工程が設計値からどれだけずれているかを示します。
インラインで測るとはどういうことですか?
製造ラインの中に装置を置き、量産中のウェーハをそのまま測ることです。抜き取って壊して測る方法と違い、測ったウェーハを次の工程へ進められ、結果をすぐ次のウェーハの露光量やエッチング時間へ反映できます。
どんな測り方がありますか?
光を当てて反射や回折から求める光学式、電子線を当てて像から求める電子線式、探針で表面をなぞる走査プローブ式などがあります。測る対象と要る分解能で使い分けます。
測定結果はどう使いますか?
次のウェーハの条件へ反映します。線幅が設計値より太ければ露光量やエッチング時間を調整し、重ね合わせがずれていれば露光装置の位置を補正します。
計測装置にはどれくらいの精度が要りますか?
目安のひとつは、工程が許す幅の2割までを計測器のばらつきへ割り当てる取り決めです。2重露光の重ね合わせ制御では、要求精度の20%(Precision to Tolerance)が計測に対する要求精度です。読み取った数値には工程のずれと計測のばらつきが重なって入るため、計測器が揺れるぶんだけ工程の使える幅が狭まります。
OCD(スキャトロメトリ)はどうやって形を求めるのですか?
形のパラメータを振ったときのスペクトルを計算してライブラリーとして蓄え、装置で実際に測ったスペクトルへ最も近いデータから元の形を引き当てます。「この形ならこう光る」という対応表を先に用意し、測った光り方から形を逆に引く方式です。
測る点を絞るのはなぜですか?
計測がラインの時間とコストを使うためです。計測ポイントから計測ポイントまでのcycle timeであるMAM time(Move-Acquire-Measure time)の要求値は、2020年以降で1測定あたり0.5秒です。測る点を増やすほど補正は細かくなり、そのぶんウェーハがラインで待ちます。
露光の後、エッチングの前に測るのはなぜですか?
この段階のパターンはまだレジストの中にとどまり、下の膜はそのままです。ASMLのYieldStar 375Fはこの段階の計測向けで、重ね合わせとフォーカスをここで測れば、下の膜を刻む前にウェーハの状態を数値として得られます。
壊して測る方法もありますか?
あります。TEM-トモグラフィは医療のX線CTと同じ原理で断層画像を組み立てる方式で、空間分解能が最も高い計測技術とされています。ただしFIB(集束イオンビーム)でウェーハから試料を切り出す破壊を伴うため、量産ラインへの導入が困難です。
計測装置のメーカーはどこですか?
KLA、ASML、Applied Materials、Bruker、Onto Innovation、Nova、ニコン、レーザーテックなどです。当サイトの装置カタログDBでは、計測に一致する製品familyを持つメーカーを公式製品ページ単位で引けます。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- 計測・検査装置── 装置としての計測と検査
- 検査・計測ベンダー比較── メーカー別の比較
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- 1ASML:YieldStar 375Fasml.com ↩
- 2
- 3SEAJ:半導体製造装置用語集(計測・検査)seaj.or.jp ↩
- 4Bruker:InSight 300bruker.com ↩
- 5JEITA 半導体技術ロードマップ専門委員会:平成21年度(2009年度)報告 第12章 WG14(計測 & 故障解析SWG)semicon.jeita.or.jp ↩
- 6レーザーテック:繰り返し性(Repeatability)lasertec.co.jp ↩