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EDX(元素分析)とは

EDX(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy、エネルギー分散X線分光法)とは、電子線を当てた場所から出る特性X線をエネルギー別に数え、そこにどの元素があるかを返す分析手法です。 EDSとも書きます。使う側にとって大事な数字は2つです。どこまで小さな場所に元素名を付けられるかは母体の電子顕微鏡と試料の薄さで大きく変わり、1枚の元素マップを何分で取れるかは検出器の受光面積で大きく変わります。

元素名が付いて初めて、手を入れる工程が決まる

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断面の像の明暗は原子番号の差を映しますが、そこにあるのがAlなのかWなのかHfなのかという元素名は、別の信号が答えます。断面の像には、層の厚み、粒の大きさ、細い筋の走り方といった形が写ります。現場で困るのは、その先の一段です。歩留まりが落ちてTEMで断面を撮り、初めて写る薄い層が出てきたとします。それが酸化物なのか、バリアメタルの材料なのか、洗浄で残った有機物なのかによって、手を入れる工程がまったく変わります。EDXは、その元素名を同じ電子顕微鏡の中で付ける手法で、元素名が付いて初めて対策の候補が絞れます。

試料へ電子線を照射すると電子と物質が強く相互作用し、さまざまな電磁波が放出されます1。その中の特性X線は元素ごとに決まった波長を持つため、これを手がかりに物質へ含まれる元素を特定できます。特性X線は、電子線のエネルギーで原子がいったん高い状態へ持ち上げられ、そこから元の状態へ落ちる際に放出されるX線です。得られたエネルギーから、Be(4番)からCf(98番)までの元素の存在を数秒で同定でき2、各特性X線の強度から含有量の定量や、視野の中での偏析のマッピングもできます。

分析できる細かさは、母体の顕微鏡と試料の薄さで1 μmから1 nmまで変わる

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分析できる領域の大きさ
1 nm10 nm100 nm1 µm(対数)SEM(通常)薄膜化・低加速・大面積SDDウインドウレス型SDD分析電子顕微鏡(TEM側)
SEMの通常の分析は1 µm前後で、試料を薄くし加速電圧を下げ大面積の検出器を使うと数十〜100 nm、ウインドウレス型の検出器では10 nm以下に届きます。透過電子顕微鏡側では1 nm程度です。

SEMにはEDXが備わっており、1μm前後の領域なら元素分析もできます3。X線の発生領域は試料の中での反射電子の散乱で決まり、一般に空間分解能はμmとされます。近年は試料の薄膜化、3 kV程度の極低加速電圧、大面積のSDDを組み合わせて、数十〜100 nmの分析が行われています2。特殊なウインドウレス型のSDDは、より低い電圧で動作し、10 nm以下の構造も解析できます。このウインドウレス型はLi(3番)も検出できるので、リチウムイオン電池の開発にも使われています。

透過電子顕微鏡側の分析電子顕微鏡では、数百kVまで加速した電子を当てると透過や回折だけでなくさまざまな相互作用が起こり、EDXやEELSによる元素分析が1nm程度の空間分解能で盛んに行われています4。東レリサーチセンターは、先端LSIのEDX元素マップの例も公開しています。透過電子顕微鏡側で分析するなら、その手前にTEM用の薄片へ加工する工程がまるごと入ります。

同じ元素分析でも、1μm前後と1nm程度では答えられる相手が入れ替わります。異物や汚れの発生源を追うならSEM側の広い視野が向き、ゲート酸化膜やHigh-k膜、コンタクトプラグの底のように数nmの層を1枚ずつ分けるなら、透過電子顕微鏡側の細い電子プローブが要ります。日本電子は、5nmのFinFET試料について加速電圧200kVでHAADF-STEM像とEDSマップを取得した例5を公開しています。この組合せでFinの形、ゲート周りの構造、コンタクト部分の並び、そして元素の分布までが読み取れ、高分解能のHAADF-STEM像ではゲート絶縁膜(SiO2やHfO2)とメタルゲートの層構造がはっきり写るとしています。

検出器の受光面積を広げると、同じマップが200分から20分になる

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検出器と測定時間
受光面積従来SDD100 mm²(3〜4倍)同じ元素マップの測定時間Si(Li)型SDD200分20分
有効口径100 mm²のSDDは従来の検出器の3〜4倍の受光面を持ち、同じNMOSゲート部の元素マップを、Si(Li)型の200分に対して20分で取りました。

EDXの検出器には長らくSi(Li拡散)型の半導体検出器が使われてきました。いま主流のシリコンドリフト検出器(SDD)は、入ってきた特性X線が検出器の中で生む電子に同心円状の電位勾配をかけ、効率よくアノードへ導く6検出器で、Si(Li)型と比べて10倍以上の検出効率を持つとされています。液体窒素で冷やす必要がなく、保守の手間と分析時間が減ったことで汎用化が進んでいます2。検出器の窓の面積が大きいほど、検出効率も上がります。

東レリサーチセンターが導入した装置の検出器は有効口径が100mm2で、従来の3から4倍程度の大きさです。同社がNMOSゲート部の2次元の組成分析マッピングを両方の検出器で取得した比較では、Si(Li)型の検出器で200分、シリコンドリフト検出器で20分でした。シリコンドリフト検出器の側で同程度のS/N比のデータが得られ、さらに低エネルギー領域の分解能が上がったことで、軽元素であるC、N、Oも明瞭に分かるようになったとしています。

日本電子のエネルギー分散形X線分析装置では、シリコンドリフト検出器に検出面積30mm2、60mm2、100mm2の3種類7を用意し、面積の大きいものほど検出感度が上がるとしています。JEM-ARM200F(HRP)に検出面積100mm2のドライSD100GV検出器を組み合わせた構成では、広い受光面積と高い分解能が両立し、B、C、N、Oといった軽元素も明瞭に見分けられるとしています。同社は、Ti酸化物担持上のAu触媒粒子を測定時間約1分(プローブ電流1nA、256×256ピクセル)で検出した例と、SrTiO3のSrとTiの原子カラムを分離した原子分解能マップを測定時間約10分(128×128ピクセル)で取得した例を公開しています。分析する領域を絞るほど1点あたりの計数は減り、同じ品質の分布図を得るための測定時間が伸びます。1点あたりの計数を増やすほど分布図は鮮明になり、そのぶん測定時間が伸びます。受光面積は、その時間を取り戻す手段です。

元素マップは、ピクセルごとに保存したスペクトルの束から描く

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元素マップのデータ
走査した視野(ピクセル)エネルギー元素のピークその元素の分布図
日本電子のEDSは、走査した視野の各ピクセルにスペクトルを保存します。元素のピークにあたるエネルギーの層を取り出すと、その元素の分布図になります。

元素マップは、電子線を走査しながら各点の特性X線を数え、同じ視野を元素ごとの分布図として描いたものです。日本電子のEDSで集めた元素マップは、各フレームのピクセルごとにスペクトルを保存し、各フレームの電子線の像も保存しています7。同社は、この検出系を組み込んだ装置をエネルギー分散形X線分析装置と呼びます。TEMとEDSを一体で操作する製品で、分析データとともに電子顕微鏡本体の倍率や加速電圧などのパラメーターを自動で集めます。

EDSの分析器は、検出した特性X線のエネルギーに比例したパルス電流を作り、マルチチャンネルの波高分析器で測ります8。エネルギー分解能は、5.9 keVのMn Kα線で通常約140 eVです。

定量の精度はEPMAに譲り、空間分解能と試料へのやさしさで勝つ

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EDXは広いエネルギー範囲をまとめて数える手法で、その代わりにEPMAへ譲るものがあります。EPMAは特性X線を分光結晶で検出するため、EDXよりもエネルギー分解能が高く高感度です1。日本電子の用語解説は、分光結晶を使うEPMAと比べて、EDSは空間分解能が100倍高い一方、定量の精度は10倍低いとしています。同社は、X線の検出効率は分光結晶型(WDS)より高いものの軽元素を分析する力はWDSより低く、電子線の照射電流を数pAから数nAまで下げられるので試料のビーム損傷は小さいともしています。ピークが近い元素どうしを分ける場面や、微量の元素を拾う場面では、EPMAや他の表面分析へ回す判断が出てきます。

欠陥検査が面から座標を集め、TEMがその1点の形を撮り、EDXが同じ場所に元素名を付けます。この順で作業を積むと、歩留まりを落としている原因の候補が、材料と工程の名前まで降りてきます。

EDXとは何ですか?

電子線を当てた場所から出る特性X線をエネルギー別に数え、そこにどの元素があるかを返す分析手法です。EDSとも書き、装置はエネルギー分散形X線分析装置と呼ばれます。

なぜ電子線を当てると元素が分かるのですか?

試料へ電子線を照射すると電子と物質が強く相互作用してさまざまな電磁波が放出され、その中の特性X線が元素ごとに決まった波長を持つため、これを手がかりに含まれる元素を特定できます。特性X線は、電子線のエネルギーで高い状態へ持ち上げられた原子が、元の状態へ落ちる際に放たれるX線です。

どのくらい小さな場所まで分析が届きますか?

母体になる電子顕微鏡と試料で変わります。SEMに備えたEDXでは1μm前後の領域の元素分析ができ、透過電子顕微鏡側の分析電子顕微鏡では、EDXやEELSによる1nm程度の空間分解能の元素分析が盛んに行われています。SEMでも、試料の薄膜化や極低加速電圧、大面積の検出器で数十〜100 nmの分析が行われています。

元素マップとは何ですか?

電子線を走査しながら各点の特性X線を数え、同じ視野を元素ごとの分布図として描いたものです。日本電子は、5nmのFinFET試料で加速電圧200kVのHAADF-STEM像とEDSマップを取得し、Finの形やゲート周りの構造、コンタクト部分の並び、そして元素の分布を読み取った例を公開しています。

測定にはどのくらい時間がかかりますか?

検出器の受光面積で大きく変わります。同じNMOSゲート部の2次元組成分析マッピングで、Si(Li)型の半導体検出器は200分、有効口径100mm2のシリコンドリフト検出器は20分でした。

EPMAとはどう違いますか?

EPMAは特性X線を分光結晶で検出するため、EDXよりもエネルギー分解能が高く高感度です。日本電子の用語解説では、EDSはEPMAより空間分解能が100倍高い一方、定量の精度は10倍低いとしています。

軽い元素も分析の対象になりますか?

検出器の性能次第です。日本電子は、JEM-ARM200F(HRP)と有効口径100mm2のドライSD100GV検出器の組合せで、B、C、N、Oなどの軽元素も明瞭に識別できるとしています。シリコンドリフト検出器の導入で低エネルギー領域の分解能が向上し、C、N、Oが明瞭に分かるようになった例もあります。

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